迫真スカーレット部 果てしなきウラワザ   作:迫真スカーレット部

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 実はハーメルンには果てしなきスカーレットの二次創作が既に2本あるんですよ。


迫真スカーレット部 生のウラワザ 1

 王女『スカーレット』は謀殺された父の無念を果たすことも無く、叔父であるクローディアスの策謀によって19歳という短い生涯を終える筈だった。しかし、彼女の意識は絶えることは無かった。

 

『――ここは、生も死も混じり合う場所。対立するものでは無い。時もまたしかり。ここでは過去も未来も常に溶け合っている――』

 

 故郷のデンマークでもどこでもない場所で目を覚まし、その場にいた老婆から言われた。死者の国。と言われている、この世界には仇敵である叔父『クローディアス』も落ちてきているらしく、果たせなかった復讐の為に歩を進めていたが。

 

「泥まみれの王女など。誰が敬うか」

 

 死者の国においても。なお、艱難辛苦は続いた。かつて父に仕えていた兵士達でさえ、自分を騙し、手に掛けようとして来たのだ。

 辛くも切り抜けたが、死して尚。スカーレットの心を荒ませるには十分すぎる裏切りだった。

もはや、信用できる物は何も無い。こけた頬も相まって幽鬼の様な表情でさ迷っていた時の事である。

 

「田所さん。こんな所で寝ていないで」

「見られてないですかね?」

 

 奇妙な物が映った。砂漠と称しても語弊の生じない荒涼とした地で、下着姿の浅黒い肌をした男が御満悦な表情を浮かべて五体を投げ出していた。

 だらしなくはないが、引き締まってもいない浅黒い肌は碌に手入れもされていないのか、顔と同じ位に汚かった。

 隣にいる坊主頭の青年が辞めさせようとしているが、田所と呼ばれた男は言うことを聞いてないのか。自らの下着を捲っていた。

 

「焼けたかな?」

「知りませんよ」

 

 あまりに素っ頓狂なやり取りをしているので、自分は白昼夢を見ているのではないかと思い掛けた頃、どうやら奇行を繰り広げる2人の視界に入ってしまったらしく、寄って来た。

 

「大丈夫ですか? こんな傷だらけで……」

 

 もしも、この坊主頭の男性だけならばスカーレットは拒絶を示していただろう。だが、隣にいる『田所』と呼ばれている汚物の存在が彼女から思考を奪っていた為、反応ができなかった。呆気に取られている間に、勝手に手を取られた。

 

「酷い。打撲に切り傷。いったい何が?」

「触るな!!」

 

 ようやく、正気を取り戻して青年の手を弾いた所。2人の眼前を何かが通り過ぎた。数瞬後、寝ていた田所から悲鳴が上がった。

 

「ンアッー!!」

「田所さん!?」

 

 浅黒い胸板に矢が突き立っていた。直ぐにスカーレットは青年を蹴り飛ばし、矢が飛んで来た方向へと駆けだした。

 剣や槍を携えた兵士達が自分を殺そうと向かって来る。更に後方を見れば弓兵。どうやら、自分を仕損じたことを根に持っているらしい。

 

「はっへっははははひひ!」

「憐れな……」

 

 既に正気を失っていた兵士に引導を渡す様にして、鎧の隙間から短剣を差し込んで首を掻っ切った。

 復讐には用いられなかった剣技は見事に発揮され、兵士は鎧の上から首を掻き毟りながら、やがて動かなくなった。彼女らが攻防を繰り広げている後方では、坊主頭の青年が男を助けようとしていたが。

 

「頭に来ますよ!!!」

「え?」

 

 自らの胸に突き刺さった矢を引き抜くと、田所は全速力で駆けだした。

 まるで野獣の如き咆哮を上げながら突っ込んで行くので、その場にいたスカーレットはおろか、兵士達まで身を竦ませてしまった。致命的な隙だった。

 

「ヌッ!!」

 

 スカーレット達は16世紀のデンマークから来ている。この時代において鎧と言うのは正に鉄壁と言える代物で、相手の剣や弓を通さぬ盾であった。

 しかし、田所が繰り出した手刀はプレートアーマーごと首をへし折っていた。ダラリと頭部だけが垂れたグロテスクな光景に全員の意識が奪われている間も、野獣の動きは止まらなかった。

 

「ホラホラホラホラ」

 

 唄を口ずさむかのような気軽さと共に振り下ろした踵落としは、兵士の頭蓋を胴体へと埋没させ、弓を番えていた兵士に対しては拾った石を投擲していた。

 彼の手から放たれた物はまるで砲弾の様な威力を持って、弓兵の頭部を吹き飛ばし、胴体を貫いていた。

 瞬く間に死体が積み上げられていく様子にスカーレットも青年も理解が追い付けずにいた。

 

「とんだ化け物を飼ったようだな」

 

 スカーレットが自らに起きたことを理解したのは殴り飛ばされた後のことだった。

 起き上がってみれば、そこには禿げ頭の巨漢。かつて騎士団長として父に仕えていた老将『コーネリウス』がいた。

 

「コーネリウス……!」

「クローディアス王を殺そうとしていると聞いたぞ。そうはさせん」

「暴れんなよ。暴れんなよ……」

 

 因縁浅からぬ2人の間に割って入った田所を見て、コーネリウスは背中に走る怖気に気付いたが、折れなかった。

 

「どけっ!」

「悔い改めて」

 

 鍛え抜かれた膂力から繰り出される拳打はいかなる武器にも劣らない。と考えていた。むしろ、コーネリウスも一介の戦士として興味があった。

 

「(この素性も分からぬ東洋の武闘家に俺の拳がどれだけ通じるか)」

 

 矜持はあった。志半ばで倒れ、死者の国へと来てしまったが、もう一度、強者と戦えるならと奮い立った物だったが。

 

「硬くなってんぜ?」

「なにっ」

 

 彼の戦士としての矜持は簡単に叩き壊された。身に着けていた皮の鎧と衣服はまるで布切れの様に引き裂かれ、田所と同じく下着だけになっていた。彼と違うのは、コーネリウスの肉体は年老いても精悍で引き締まっていた。

 

「お前のことが! 好きだったんだよ!」

「や、やめろ!」

 

 当事者であるスカーレットを置き去りにして事態は進んでいた。屈強な老将は、素性も分からぬおっさんに絡みつかれていた。

 だらしなくはない様に見えるだけの田所の方が鍛え抜かれているのか、コーネリウスは身動きも取れないまま胸を弄られていた。

 

「ぐっ。ふっ……」

「おっ、大丈夫か、大丈夫か」

 

 死者の国で行われる同性による生者の営みにスカーレットが思考停止するのも無理からぬ話だった。自分と敵対こそしていたが、デンマークが他国に侵されるのを防いでいた騎士団長が犯されている。

 幾ら、仇の手先と言えど止めるべきかという迷いが生じる辺り、彼女の生来の気質は穏やかで優しい物だということが見て取れた。

 

「田所さん! 何しているんですか!」

「ファッ!?」

 

 たまりかねたのか。田所がコーネリウスを貪り尽くした辺りで、青年が彼の首に向けて注射器の様な物をぶち込んでいた。すると、どういう訳か。あれほど屈強で暴力的だった男がコロリと落ちてしまった。

 

「大丈夫ですか?」

「お前、止めなかったなよな?」

 

 善人面してコーネリウスを手当てしているが、彼が攻め込まれている間に何もしなかった所を見るに、この青年も大層面の皮が熱いのだろう。スカーレットの中で要注意人物としてリスト入りさせられた。

 肉体的損傷はないが、心に負った傷は大きいのか。コーネリウスは短く『殺せ』と呟くだけだった。心が折られたのだろう。

 

「大丈夫。貴方は生きているんだ」

「イキスギィ!!」

「ひっ」

 

 昏睡していたハズの田所が目を覚まし、被害者をなぶる様な鳴き声を上げていた。スカーレットの中に二つの気持ちが生じていた。

 

「なんて、思いやりのない男なんだ……」

 

 傷ついた相手には寄り添う言葉の方が必要だろうと思ったが、同時に悪魔的な発想が思い浮かんでいた。

 自分の仇であるクローディアス王に付けば、騎士団長でさえメスジジイになる程の屈辱が与えられる。復讐の形は殺害だけではないのだと。スッと立ち上がった。

 

「イケっ。コーネリウス。もう既にお前の処女は取られた。クローディアス王に着くということは、そう言うことになるのだと伝えるんだな!」

「い、イカれている」

 

 かつて、屈強で勇壮だった老将は尻を抑えながら逃げ帰って行った。彼の尊厳が悉く破壊される様子を見て、スカーレットの全身に稲妻にも似た快楽が走り抜けるのを感じた。これしかない。と。

 

「お前達! 待ってくれ! 私に協力して欲しい!」

「え?」「ヌっ」

 

 そこで、彼女は話した。自分が謀殺されたこと。討ちたい仇がいること。

 

「相手は父を辱めたんだから、こちらも相手を辱めたい。協力して欲しい!」

「やりますねぇ!」

「何も良くないですよ。スカーレット、復讐は復讐を産むんだ。そんなことをしてはいけないよ」

「お前に聞いていない! 田所に聞いているんだ!」

 

 スカーレットからすれば青年は翻訳兼コントローラーにしか過ぎなかったので、あまり興味がわかなかったが、青年もカチンと来たらしい。

 

「お前じゃない。俺には『聖(ひじり)』という名前があるんだ。それに田所さんは人殺しでもなんでもない。殺人の道具に使うなんて、それこそ君が言う非道な叔父と変わりないじゃないか」

「お前には聞いていないと言っているだろう! 田所。どうなんだ?」

「あぁ~。いいっすね」

 

 同意と受け取ったのか。スカーレットはグッと拳を握っていた。コレには聖も呆れていた。

 

「2人だけにしておくと心配だ。俺も付いて行くよ」

「勝手にしろ」

 

 かくして、死者の国を漂う奇妙な3人組ができた。

 復讐を誓う王女スカーレット。素性の分からない聖。暴力と性欲を兼ね備えた田所。クローディアス王の運命や如何に。

 

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