シェリーと助手君の事件簿①温泉旅館とファーストキス   作:メリーさんのアモル

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終章「ファーストキス」

「つ、疲れた……」

 あなたはそう言って、布団に倒れ込んだ。

 シェリーと二人での推理を終え、ルイの話を聞き、警察が来るまでの証拠保全やルイをどう扱うかなどを相談することになり、気がつくと深夜だった。

「えへへ。レイド警部、褒めてくれましたね」

 嬉しそうにシェリーも隣の布団に入る。

「だね」

 隣同士、お互い横になりながらシェリーの顔を見る。

『探偵ごっこ、なんて言ってすまなかったね。君達を見くびっていたよ。君達は紛れもない名探偵コンビだ』

 そうレイドが言ってくれたことは、シェリーにとってもあなたにとっても嬉しいことだった。

「えへへ、私達、名探偵コンビですって」

「ボクもシェリーの隣に立つにふさわしい存在だと認められたみたいで嬉しいよ」

「何を言ってるんですか。助手君はいつだって、私のベストパートナーですよ」

「ありがとう、シェリー」

 ニコニコ笑顔で微笑むシェリーにあなたも微笑む。

 直後、ふわりとあくびが出る。

「疲れて眠くなってきちゃった。もう寝ちゃおっか」

「はい。なら、助手君はそのまま横になっていてください。私が電気消しますね」

 シェリーが立ち上がり、部屋の電気を消してくれる。

「ありがとうシェリー。じゃあ、おやすみ……」

 あなたが目を閉じる。

「はい、おやすみなさい、助手君」

 直後、唇に何か生暖かくて柔らかい感触が当たった。これまでに感じたことのない感触だった。

「!?」

 思わず目を見開くと、シェリーの顔が視界いっぱいに広がっていた。

「し、し、シェリー!?」

「ふふふ、寝る前にファーストキス、でしたよね? 忘れてましたか? 油断しましたね」

 自分の布団に戻って枕に頭を預けながら、シェリーがそう言って微笑んでいた。

「いや、だからファーストキスはこう、ムードとかタイミングとか……!」

 とあなたは抗議するが。

「これがキス……。ただ唇を重ねるだけだと思ってましたけど、なんだか幸せな気分になりますね!」

 シェリーはそう言っていつもとは違う確かな笑顔を浮かべているのを見て、それ以上続けるのを躊躇ってしまった。

「助手君。もう一度だけキスしましょう!! 今度は助手君の方からして欲しいです!!」

 よほどキスの感触が興味深かったのだろうか、シェリーはハイテンションでそんな事を言う。

「ボク、寝るところだったんだけど。……まぁいいか」

 さっきのキスで目が覚めちゃったし、と言いながらフッと笑って、あなたはシェリーの顔に顔を近づける。

 そして、そっと唇と唇を重ね合わせる。

「キス! すごいです! 助手君、もっともっとキスしましょう!」

「えぇ……。いや、こうもっと余韻とか……」

 何度も嬉しそうにあなたの袖を引くシェリーに、あなたは苦笑しながらも、あなたとシェリーはいつまでもキスにまみれた幸せな夜を過ごすのだった。

 

 それから数日後。

 なんとか土砂崩れによる道の封鎖も解決し、シェリーとあなたはそれぞれの家に帰ることが出来た。

「あ、助手君、助手君〜」

 更にその翌日。

 いつものように駅でシェリーと落ち合う。

「おはよう、シェリー」

「はい、おはようございますー! ふふふ、また今日から学校ですね」

「うん」

「じゃあ、再会を祝してキスしましょう!」

「うん」

 あなたはシェリーに言われるがまま、シェリーに口付けた。

 駅前のロータリー、どまんなかで。

「ちょいちょいちょい、なにやってますの!」

 そこにハンナが合流してくる。というより、慌てたように走ってくる。

「あれ、ハンナさん、合流する場所はもっと向こうですよね?」

「なにか嫌な予感がして様子を見に来たんですわ! 何を往来の前でちゅっちゅちゅっちゅしてますの」

「恋人ですから、キスくらいしますよ。助手君、もう一回やりましょう」

 大慌てのハンナにシェリーは相変わらずのマイペースだ。

「ダメですわー!!」

「えー」

 ハンナはすごい剣幕だったが、シェリーは平坦に抗議する。

「えー、じゃないですわ。というか、助手さんも、この前は往来でキスするなんて……みたいなこと仰ってたじゃありませんの!」

「え、えっと……。ファーストキスは済ませたし、それ以降ならシェリーがしたいなら叶えてあげたいかなって……」

 ハンナの矛先があなたにまで飛び火したので、あなたはしどろもどろになりながら自分の考えている通りに回答する。

 そもそも、シェリーの望むままにしたいのが本来のあなたであった。

「あぁもう……。ともかく、人がたくさんいる場所では、キスは禁止ですわ!」

「なんでですかー」

「めちゃくちゃ周りに見られてますわよ! 恥ずかしくないんですの?」

「いえ別に」

 ケロッとしたシェリーだ。

「助手さんは?」

「え、え、と、シェリーがいいなら、ボクは別に……」

「あぁ……本当にこの二人は……」

「でも、ハンナさんがそんな顔をしているのは嫌ですから、そう言うなら、人前でキスはやめます」

 ところが、問答はやや困った顔をしたハンナに、シェリーがそう言ったことで終わりを迎えた。

「じゃあ助手君、また二人きりになったらキスしましょうね」

「うん、そうだね」

 シェリーの言葉にあなたが頷く。あなたは変わらず、シェリーがそうしたいならそうしてあげたい、それだけだった。

「そうだ、ハンナさん、聞いてください。私達、温泉旅館で事件を解決してきたんです!」

「チャットで聞きましたわよ」

「いえいえ、ぜひ口頭でも聞いてください。このシェリーちゃんと助手君の名探偵コンビの名推理を!」

「別にいいですけど、その話、最後にはキスで終わるんですわよね?」

 そんな話をしながら、三人は通学路を歩いていく。

 一つ事件を解決して、キスをして、あなたとシェリーはまた一つ、後に名探偵夫婦となる道を進めたのであった。




 これにて、一旦物語は完結となります!
 これまでお付き合い頂き、ありがとうございました。

 これで完結ですので、よろしければ感想などお聞かせください。
 直接コメントやリプライするのが恐ろしい方はマシュマロ(匿名質問箱)もございますのでご検討頂けますと幸いです。
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