親愛なるシャーロックへ   作:カニ漁船

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ウマ娘編ですわ~。


※7/28廊下の叱る描写を少し修正。


ウマ娘編 衝撃のカフェテリア

 昼休みのチャイムが鳴る。

 

「それでは、今日の授業はここまでです。みなさん、今日の復習はしっかりとやっておくように。それではメジロシャーロックさん、号令をお願いします」

「はい。それでは皆様。起立、礼」

「ありがとうございましたー!」

 

 退屈な授業がやっと終わったな。

 たまには出てやるか、って感じで聞いていたのだが……うん。

 

〈変な気を起こすもんじゃねぇな。退屈で死にそうだったわ。もう死んでるようなもんだけど〉

「フフ。そうは言いますけど、最後までしっかり残っていたじゃないですか。ロックはやっぱり真面目ですね」

〈途中で退出したら、なんか悪い気がするだろ。だから残ってたんだよ。真面目とかそういう問題じゃない〉

「そういうところ、ですよ。どうせ見えないから退出してもバレませんのに」

 

 それはそうなんだが。

 けど、なんとなく悪い気がするので最後まで残っていたのが俺である。

 真面目、なのかねぇ。

 

 授業が終わったので、さっさとご飯を食べたい。

 トレセン学園のカフェテリアは激戦区。毎日血で血を洗う、なんてことはないが、激込みするのが日常だ。

 

〈とりま早くカフェテリアに行くぞ。飯食わせろ飯〉

「分かっていますよ、ロック。それでは、誰を誘いましょうか?」

〈お前の場合、カフェテリアに着いたら誰かしら声をかけるだろ。今ここでやる必要はねぇ〉

 

 とにかく急ぐことを優先に。

 シャロは人気者だからな。コイツとご飯を食べたい、って奴は多い。

 この前のグルーヴさんとユニさんが良い例だ。

 

(あの2人に関しては、俺の姿を見るや否や一目散に飛んでくるからな。一人で食べる機会はほぼない)

(そうですね。大変ありがたい限りです)

(うん。お前はそうやって平和に思っておけばいいよもう)

 

 不思議そうな顔をするシャロは放っておく。その方が幸せだ。

 

 で、教室を出た瞬間のことである。

 

「シャロさぁぁぁん!」

 

 猛烈な勢いで走ってくるウマ娘が一人。

 そいつは俺達の名前を呼びながら、一目散に駆け寄ってきて。

 凄い勢いで抱き着いてきた。茶色の長い髪を靡かせながら。

 

 シャロは、微動だにしない。体幹トレーニングをしっかりとやっている証拠だ。

 

「ディープさんではありませんか。そんなに急いで、どうされたのですか?」

 

 ぶつかってきたウマ娘、ディープインパクトは人懐っこそうな笑みを浮かべている。

 機嫌良さそうに耳がピコピコ動いているし、尻尾なんてもう凄いもんだ。

 ブンブン振ってるよ。微笑ましいね。

 

 で、何の用事なのかを聞くと。

 

「シャロさん、今からお昼でしょ? 一緒にどうかなって思って!」

 

 どうやら昼飯を一緒に食おう、とのことらしい。

 別にそんな急がなくても、普通にくればいいものを。

 

 シャロの反応はというと……あ~、ちょっと怒ってるな。理由は察しが付くが。

 

「お食事に関しては、分かりました。僕も相手を探していたところですので、問題はありません」

「やった」

「で・す・が」

 

 ディープを叱るように、彼女の口元に指を押し付ける。

 

「廊下を走ってはいけませんよ? 他の方々もいらっしゃるのですから、ぶつかったりでもしたら大変です」

「うっ」

「また、誰かに飛びつくのもダメです。僕だからよかったものの、他の方でしたら被害が大きくなるかもしれません」

「それは大丈夫! シャロさんにしかしないから!」

 

 俺にもやめろや。正確にはシャロだけどよ。

 

「でしたら問題はありませんね」

 

 お前も止めろや。大有りだよド阿呆。

 

 怒られているディープはしゅん、としている。目に見えて分かるくらいに落ち込んでいた。

 別に廊下を走るのは禁止されている訳じゃない。張り紙に【廊下は静かに走りましょう】って書かれてるくらいだし。

 とはいえ、危ないのは事実だ。だからこそ、シャロも注意している。ディープもそれを分かっている。

 

「……ごめんなさい」

 

 少し震えた声で、ディープは謝る。

 それは俺達だけじゃない。周りにも頭を下げていた。

 

「周りの方々も、ごめんなさい。シャロさんを見つけて、気が逸ってしまって。迷惑を考えていませんでした」

 

 深々と、心の底から悔いているように。

 しっかりとした謝罪をしていた。

 

 ま、これで怒る理由はなくなったな。

 

「はい、よく謝罪できましたねディープさん。周りの方々も、申し訳ございませんでした」

「いやいや、気にしなくていいよシャーロックさん。ディープちゃんも、次からは気をつけてね~」

「お2人の仲が良さそうで羨ましいですな~」

 

 シャロの方も周りに頭を下げる。こういうとこは律儀だ。

 周りも、全然怒っていない。むしろ微笑ましいものを見る目、仲の良い家族に向けるような目をしていた。

 嬉しいのやらなんやら。

 

 シャロはディープの頭を撫でる。

 

「次からは気をつけましょうね? ディープさん」

「はい! 次はしないようにします!」

 

 にっこりとほほ笑む。それを見て、ディープも笑った。

 

 ここだけ切り取ると、仲の良い姉妹なんだよな。

 別にディープとは姉妹じゃないし、コイツの姉はちゃんといるけど。

 

「でぃ、ディープ。またシャロさんを困らせていたの?」

 

 ついでにその姉が今来たけど。

 

 隣のクラス。真っ黒の髪を長く伸ばしたウマ娘が、ディープを咎めるような目で見ていた。

 ブラックタイド。ディープインパクトの姉である。こっちもしっかりいる模様。

 

 迷惑、という言葉に反応したディープはバツが悪そうにしている。

 

「ご、ごめんなさい、タイドお姉ちゃん。シャロさんが目に入ったら、つい暴走しちゃって」

 

 先ほどの一部始終を包み隠さず。

 嘘を言わずに、姉であるブラックタイドに報告をしている。

 

「そ、その。走って抱き着きに行っちゃったの。もうしないから、ごめんなさい!」

「……シャロさんは? 後、周りのみなさんは?」

「あ~いいのいいの。気にしなくていいよ、タイドさん。あたしら全然気にしてないから」

「ケガもないしね。それに、ディープちゃん人がいないとこ走ってたから。大丈夫だったよ」

 

 ジロッと周りを見て、最後にシャロを見る。

 嘘を吐かないようにか、見破ろうとしているのか。

 

 ただ、シャロはにっこりとほほ笑み。

 

「ディープさんはもうしない、と仰っていますので。反省もしているようですし、僕から言うことはもう何もありません」

 

 怒る気はないと口にした。

 

 周りも気にしていない。タックルされた本人も気にしていない。

 さらには、ディープ本人がしっかり反省している。

 ならば、言うことはないと悟ったのだろう。

 

「……シャロさんがそう言うなら。でもディープ、淑女としてよくないことだよ。次からは気をつけてね」

「は、はい!」

 

 大きなため息を一つ吐いて、タイドはディープを許した。

 

 で、紆余曲折あったものの。

 

「では、ひと段落したということで。皆様でお食事に行きましょうか。勿論、タイドさんも」

 

 飯を食いに行くことに。

 ついでに出てきたタイドを誘って。

 

 タイドはというと、面食らった表情。

 まさか自分も誘われるとは思ってなかった、って感じの顔だな。

 

「えっと、その、わ、私も?」

「はい。タイドさんも、ぜひご一緒にいかがでしょうか?」

「お姉ちゃんも来るの!? わーい!」

 

 ふむ、こうして包囲網は完成していくんだなって。

 前門のシャロ、後門のディープ。

 笑顔の2人に囲まれて、オロオロするタイドに逃げ道なんてものはない。

 

 そもそもディープは妹、シャロは友達だ。

 

「そ、それなら。お言葉に甘えて。一緒に行きます」

 

 拒否権なんて最初からなかった、ってとこか。

 

「それでは行きましょう。早くしないと席が埋まってしまいますので」

「行こう行こう! ほら、お姉ちゃんも!」

「わ、分かってるから。引っ張らないで、ディープ」

 

 カフェテリアに向けていざ出発、である。

 

 

 で、カフェテリアでは。

 

「シャロ、一緒に食べるわよ」

「アルヴさん! えぇ、僕は勿論構いません。ディープさんもタイドさんも、よろしいでしょうか?」

「わたしは全然いいよ! 人数が増えて楽しいな~」

「わ、私も、別に」

 

 案の定グルーヴさんと遭遇した。

 あんたカフェテリアで張ってたりしてねぇだろうな?

 見透かしたようなタイミングで来たじゃねぇか。俺達が丁度、ご飯を受け取ったタイミングで。

 もはや見張ってた、と言われても納得するぞ。

 

 そんなことを気にしないシャロたち。4人で食べることに。

 席に着いて、トレイを置いて。

 

「そういえば、今日はオグリ先輩はいないのね。いつもシャロと一緒に食べているのに」

「オグリさん、今日もお仕事があるみたいで。やっぱり忙しいみたいです」

「それは、仕方ないよ。オグリキャップさんはアイドルウマ娘だから」

 

 とりとめのない会話。学園であったこととか、その他諸々の話を。

 

「そうだ、聞いてよシャロさん、お姉ちゃん、アルヴさん! 今日抜き打ちで小テストがあったんだよ!? しかも、基準点以下だと課題が増えるおまけ付きで!」

「まぁ。それは大変ですね。それで、ディープさんはどうだったんですか?」

「え、わたし? わたしは別に。満点取ったから特に何もなかったな~」

「……ハァ。こういうとこだよね、ディープは」

「そうね。こういうところね。天才肌というか」

 

 学生らしい会話だこと。

 

 ちなみに、食べ方は全員お上品。

 ナイフとフォークの使い方がしっかりとしているし、制服に跳ねたりもしない。

 口元も綺麗なまま。めちゃくちゃ行儀よく食べるな本当。

 

(思えば、ディープとタイドも普通にお嬢様だしな。礼儀作法がしっかりとしてるわ)

 

 グルーヴさんもきちんとしている。

 この辺は個人の努力の賜物だろう。後は本人の性格。

 

 上品に、それでいて学生らしく。

 うんうん。

 

〈はぁ~てぇてぇ。この景色が見れて幸せもんだ。いつ成仏してもいいわ〉

 

 と、口にした途端の出来事である。

 

 突如としてシャロが立ち上がった。信じられないものを見るような目のおまけつきで。

 

「じ、成仏!? そんなの、冗談じゃないですよロック!!」

「どうしたのシャロさん!?」

 

 おい、落ち着けシャロ。そんなに焦るな。

 フォークとナイフを叩きつけるように置くんじゃない。ちょっとひび入ったぞ。

 それに、タイド達めちゃくちゃびっくりしてるぞ。

 そりゃそうだ。この3人は俺の存在を知っていても、見ることは出来ないんだから。

 

〈落ち着けシャロ。言葉の綾って奴だ。なにも本気で言ってるわけじゃ〉

「本気じゃなかったとしても、そんなこと口にしないでください! 全くもう……!」

〈分かった分かった、俺が悪かったよ。軽率に口にし過ぎた〉

 

 俺の言葉が冗談だと分かってか、シャロは席に座り直した。

 つっても、まだぷりぷり怒っている。不機嫌そうな態度を隠そうとしない。

 

「シャロさんがここまで態度に出すって、珍しいねお姉ちゃん」

「そ、そうだね。そもそもシャロさん、滅多なことじゃ怒らないし」

「そうね。やんわりと怒ることはあっても、こんなに怒ることはないわ。私も見たことがないものでも怒ってる顔もメロいわね

 

 タイド達は珍しいものを見ている、って感じだ。後グルーヴさん、あんたは何を言ってんだ。

 いや、タイド達だけじゃない。周りのウマ娘も同じ。

 

「シャロさんどうしたんだろう? なにかあったのかな?」

「急に席を立ちあがってね。ディープインパクトさん達が怒らせた、ってことはなさそうだけど」

「同じ席の3人も呆然としているもんね」

 

 怒っているシャロというのは、それだけ珍しいってことだ。

 

 なんにせよ、変な発言は控えるべき、か。

 注意すべきことが増えたところで、やるべきことをやろう。

 シャロのご機嫌取りだ。今も不機嫌そうにしているコイツを、どうにかして宥めないといけない。

 

〈悪かった。お詫びと言っちゃなんだが、この後アップルパイを追加してもいいぞ〉

「……2つ」

〈構わん。遠慮なく食え〉

 

 単純に物で釣ることにした。

 コイツは俺と同じで、リンゴに目がないからな。

 アップルパイで釣るのが一番効果的である。

 

 その分俺が表に出た時にカロリー消費しないといけないが、まぁいいだろう。

 それだけでシャロの機嫌が直るなら、安いもんだ。

 

 取引は成立。シャロの機嫌も直ったようだ。

 

「シャロさんって、意外と大食いだよね~。この後アップルパイを2つも食べるなんて」

「そ、そうなのでしょうか? 普段からオグリさんに食べさせられているので、そのおかげでしょうか?」

「あはは……そ、それはありそうだね、シャロさん。オグリ先輩、かなり食べるから」

「ありそう、というよりは間違いなく原因よタイドさん。悪いことではないけれど」

 

 結果、先ほどの空気は元通り。

 和気藹々とした雰囲気が戻ってきた。

 さっきまでのやり取りがなかったかのように、みんな普通に過ごし始める。

 

 何とかなってよかったな、うん。




ディープインパクト

身長:161cm
体重:少し落ち気味
スリーサイズ:84/56/79
高等部

天真爛漫、走るの大好きウマ娘。茶色の髪を長く伸ばしている。メジロシャーロックにはかなり懐いており、姿を見かけたら一目散に駆け寄るほど。
レースの実力は飛び抜けている。

ブラックタイド
身長:163cm
体重:太ってない!
スリーサイズ:88/61/85
高等部

少しオドオド、自信なさげなウマ娘。真っ黒な髪をディープインパクトのように長く伸ばしている。メジロシャーロックとは同室で友達。妹であるディープインパクトの行動を姉らしく窘めることも。
家は名家。メジロやシンボリとも並んでいるとか。
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