親愛なるシャーロックへ   作:カニ漁船

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今回も登場オリジナルウマ娘、というよりは名前は先出ししてたあの子達。


ウマ娘編 ちょっとした事件

 メジロシャーロックファンクラブ、というものがある。

 非公式と思うかもしれないが、しっかりとした公認のファンクラブだ。

 

 名前の通り、メジロシャーロックのファンコミュニティであり、彼女を慕うメンバーで構成されている。

 別に大層なことをするわけではない。

 年に数回のファンミーティングで語り合ったり、会員特典のグッズやチェキ、本人公認のグッズが販売される程度。

 どこにでもあるファンクラブとなんら変わりない、普通のものだ。

 

 ただ、会員の中には当然のようにメジロ家のウマ娘もおり。

 なんならファンクラブの開設者、もとい代表を務めているのがメジロ家のウマ娘である。

 

 その名はメジロシンフォニー。

 

「さてさて、今回のチェキは白ワンピースでいきましょうか」

 

 葦毛の髪を腰まで伸ばした、物腰の柔らかいメジロ家のウマ娘。

 優しさを感じさせるたれ目でありながら、芯の太さを感じさせる瞳。

 学園の制服にカーディガンを羽織い、微笑を浮かべながら写真を選別している。

 

「あぁ、やはりシャーロック様はいつものように麗しい……写真越しでも、美しさが伝わります」

 

 メジロの令嬢に相応しい出で立ちのウマ娘。

 今は会心の出来栄えである写真を片手に、うっとりとしていた。

 

 

 

 

 

 

 誰にも使われていない空き教室。

 そんな場所で、俺はあるウマ娘と向かい合っている。

 

「汚れなき純白のワンピースがよく映えている……まるで絵画の世界の住人、一つの芸術だ」

 

 ワンピースを着た俺の写真を見てうっとりとしている葦毛のウマ娘、メジロシンフォニー。

 名前で察せると思うが、俺と同じメジロ家のウマ娘だ。

 

 うん、なんというか。

 

「お前もお前でよくやるわな。褒めすぎだろいくらなんでも」

 

 今回の写真は、俺のファンクラブ特典用のもの。

 シンフォニーが写真を撮って、会員に卸すよう現像したものだ。

 なんというか、気恥ずかしさがある。俺本人だし。

 

 照れを誤魔化すが、シンフォニーは至って真剣。

 

「褒めすぎではありません。シャーロック様の美しさが、よく表現できている一枚だと思っております」

「そういうもんかねぇ」

「はい。会員の皆様も、きっと喜ぶに違いないでしょう。アクスタの販売も決定しておいて正解でした」

 

 なんなら写真だけに留まらず、白ワンピースの俺をアクスタにして販売しようとまでしている。

 情熱が凄いわ。よくそこまでかけられるな。

 

(前世を思い出す熱だな。結局、俺の人形ってどれくらい売れたんだか)

 

 ちなみに許可は俺が出してあるし、シャロも良いと言っている。

 なので、全く問題なしだ。

 

 で、だ。

 

「シンフォニーが楽しそうなのは良いとして……お前はどうした? セレナーデ。不機嫌そうにしているが」

「そうですね。私も気になっていたところです。どうかしましたか? セレナーデ」

 

 不機嫌そうに目をつり上げている、鹿毛のストレートロングのウマ娘──メジロセレナーデ。

 俺の方をチラチラと見て、申し訳なさそうにしつつも。

 

「どうしたもこうしたもないわ、ありませんよ! またあのアホ姉、フェルマータお姉様に散々な目に遭わされたんですから!」

 

 怒りの方が勝ったのか、机を乱暴に叩きながら立ち上がった。

 すげぇな、ウマ娘のパワーでも壊れないこの机。

 どういう材質なんだろうか。純粋に気になる。

 

 おっと。今は机の材質よりも、目の前で怒っているセレナーデの方だ。

 どうもフェルマータがなにかやらかしたようだが……心当たりしかねぇな。

 シンフォニーも思い当たることがあるんだろう。苦笑いを浮かべている。

 

「あのアホ姉、唐突に花火が見たいとか言い出しやがったのよ!? とっくに夏は終わってるってのに!」

「そうだな。この前のメジロの本邸、やたらと騒がしかったからな」

「そうですよ! 市販の花火をしこたま用意して、周りを巻き込んで! おかげさまでおばあ様に怒られたんですから!」

「この前、急に花火大会の告知が来てると思ったら、フェルマータが原因だったんだね」

 

 そして、セレナーデが語った怒りの原因は、容易に想像がつくものだった。

 

 フェルマータなぁ。

 別に悪いウマ娘じゃない。少々、というかかなりアホっぽいが、自分から進んで違反を犯すようなウマ娘ではない。

 ただ、その、なんというか。

 

「アイツは短絡的な行動が目立つからなぁ。今回もまた、なにか理由があってのことなんだろうが」

「間違いなく、なにかがあったのでしょう。ですがいろいろと過程をすっ飛ばして、結果だけを得ようとした……いつものフェルマータですね」

 

 学園で打ち上げなかっただけマシだ、と思うしかない。

 それに、あの日なら音的に打ち上げていたのは河川敷の方だ。メジロ家の本邸でもない。

 つまりはまぁ、よくあることだ。

 

 とはいえ、妹であるセレナーデからしたらそんなの知ったことじゃない。

 

「確かにアホ姉、フェルマータお姉様にも理由があったのかもしれません。ですが! 毎回毎回そのあおりを受けるのはボクなんですよ!?」

「お前はフェルマータの妹だしな。そういう目で見られるよな」

「その通りです! そしてその結果、ボクに生暖かい視線が向けられるんですよ!? 恥ずかしくて恥ずかしくて……!」

 

 わなわな震えているセレナーデ。

 周りは姉妹仲良いな~、程度なんだが、セレナーデには伝わっていないようだ。

 

 さて。やるべきことは。

 

「んで、フェルマータがなんでそんな行動に出たのか、心当たりはあるのか?」

 

 真相の解明だ。フェルマータが花火をやろうと思った理由について、解き明かすとしよう。

 

 さっきも言ったように、フェルマータはアホだが考え無しじゃない。

 理由もなく人に迷惑をかけるような奴じゃないんだ。

 そういう奴だったら、学園で針の筵になってるだろうしな。

 そうなってないってことは、アイツにもなにか理由があって行動している。

 そしてその行動は、周りからしたら微笑ましいものなんだ。今回の花火の件もそう、周りは事情を知っているからこそ、無理に止めなかったしあるいは協力していた。

 

 この時点で、ある程度理由を割り出すことができるな。

 

(おそらくだが、メジロ家の誰かのため。その中で一番可能性があるとしたら……目の前にいる、セレナーデのためだ)

 

 アイツはシスコンだからな。

 セレナーデのことを可愛がっているし、目に入れても痛くないと豪語していた。

 セレナーデのためならば、アイツは多少の無茶もする。

 

 花火の件は、セレナーデのためと仮定。

 では、なんで花火なのか? だ。

 

「心当たり、と言われましても……ボクは別に花火を見たいとは言ってませんし、どうして打ち上げたかなんてよく」

「そうですね。花火を見たい、ではなくとも、ここ最近なにかありませんでしたか? セレナーデ。例えば、テストで悪い点を取ったとか」

「何でそれを!? じゃ、じゃなくて! いい、いえ別に!? なにもありませんけど!?」

 

 ……テストで悪い点取ったんだな、セレナーデ。

 別に責める気はないが、勉強はしっかりしような。

 

 そしてセレナーデだが、あまり話したくないことなのか。

 

「と、とにかく! ボクに心当たりなんてありません! なんでフェルマータお姉様が花火をやろうと思ったかなんて」

 

 会話を打ち切ろうとした。

 

 だが、それは許さない。

 

「本当か? 本当に、心当たりはないのか?」

「うっ……しゃ、シャーロック様……」

「別に、ないならそれでいい。無理に聞こうとは思わない」

 

 セレナーデだって本当は分かっているはずだ。

 フェルマータが何の考えもなしに、変な行動に出る姉ではないと。

 口ではアホと言っているが、誰かのための行動であるのも、知っているはずだ。

 

 バツが悪そうに視線を逸らすセレナーデ。

 

「けれど、お前だって分かっているんだろう? フェルマータがどんな奴か、どんなウマ娘か。お前の姉は、理由もなく理不尽に迷惑をかけるような姉だったか?」

「そ、それはっ」

「セレナーデ。分かっているのであれば、話した方がよろしいですよ。このまま、我々に誤解されたままでよろしいのですか? おばあ様への口添えも、出来なくなりますよ?」

 

 シンフォニーからの追い打ち。

 メジロのおばあ様に誤解されたままでいいのか? と訴えかける。

 

 悩みに悩んで。

 セレナーデの出した結論は。

 

「……実はボク、この前の小テストで補習になったんです」

 

 事の真相を打ち明けてくれた。

 シンフォニーのカマかけが、というよりただのたとえ話が、真相だったみたいである。

 

 

 明かされた内容はというと、セレナーデが小テストで補習になったことが始まりだった。

 たまたま勉強を忘れていた範囲から出題されて、焦りに焦って点が取れず。

 気落ちしていたところにフェルマータと遭遇。テストの点を話した。

 

「そしたらフェルマータお姉様は、自分がいいものを見せてあげますわ~! って言って。どっかに走り去って行っちゃって。後でLANEに場所と時間の指定が送られてきたんです」

「んで、それが花火だった、と。なんで花火?」

「多分、ですけど。ボクが夏祭りの花火を綺麗と言ったのを、覚えていたんだと思います。一緒に見に行きましたから」

 

 落ち込んでいることを察したフェルマータは、どうにかして元気づかせることができないかと考えた。

 その時頭に思い浮かんだのが、今セレナーデが語った出来事なんだろう。

 花火を見れば元気になると考えたフェルマータは、方々を回って花火を用意。

 大人数ならより楽しく元気になるだろうと、声をかけた。

 

 結果……今に至る、と。

 

「本当は、分かっていたんです。フェルマータお姉様は、ボクのためにやってくれたんだって。ボクのために、花火を打ち上げてくれたって」

「なるほど、ねぇ。そういうことかい」

「シャーロック様の推理がズバリ、でしたね」

「推理じゃねぇよ。状況と全員の性格、それらを考えた結果、フェルマータならこうするんじゃないか? って思っただけだ」

 

 フェルマータはセレナーデのために花火大会をやった、というのが事の真相。

 つまりは、落ち込んでいる妹のために、姉として何かしてあげたい、という気持ちが先行しすぎた結果、か。

 

 美しき姉妹愛、良き、という前に。

 

「ま、あんまり褒められたことじゃないのは確かだな。周りを巻き込んで、メジロのお屋敷で花火大会をやり始めたんだから」

「そうですね。急なご連絡になったのですから、迷惑になるのは確かです」

「う、うぅ……。で、でも、フェルマータお姉様に悪気はなくて!」

 

 言うべきことは言っておかないとな。

 

「ただ、フェルマータらしいと言えばらしいな。セレナーデのために、季節外れの花火をやろうなんてな」

「っ、え?」

「はい、とても彼女らしいと思います。プレリュードと似たものを感じますから、微笑ましいですね」

 

 怒ることではあるが、そこまで叱るものではない、と。

 

 褒められた行為じゃないのは確かだ。そこは否定しない。

 ただ、フェルマータもセレナーデを思ってのこと。元気づけるためにと行動したことだ。

 怒るに怒れない、ってのはこういうことを言うんだろうな。なんつーか、微笑ましいっつーか。

 

「っつーわけだ、セレナーデ。おばあ様には俺の方から言っておく。多分だが後日、おばあ様から呼び出しがかかると思うから、そのつもりでな」

「えっと、あの、その……い、いいんですか? シャーロック様。悪いのは、ボク達なのに……」

「いーよ。おばあ様だって詳しい事情を知らねぇんだろ? 俺の方から伝えておけば、ちょっとは情状酌量をくれるだろ」

「ふふ、シャーロック様のお言葉ですからね。おばあ様も、シャーロック様には弱いですから」

 

 んなことはねぇよ。あの人身内には激甘だし。

 

 で、セレナーデはというと。

 

「そ、その……あ、ありがとう、ございます、シャーロック様」

 

 顔を俯かせて、恥ずかしそうにしつつも。

 おばあ様に取り合ってくれて、自分達の罪を軽くしてくれるよう働きかけてくれることに、感謝していた。

 

 全く、気にする必要はないってのに。

 

「気にすんな、セレナーデ。誤解されたままってのは嫌だからな。しっかりと、情報は共有しておかねぇと」

「……はい。ボクの方からも、フェルマータお姉様に謝らないと」

 

 本当に、な。

 

 さて、どうおばあ様に伝えたものか、なんて考えていると。

 

「やっぱりここにいましたわ~、セレナーデー!」

「索敵ッ! 発見ッ! 突撃ッ! わたしの目に狂いはない!」

 

 件のフェルマータと、ついでのようにプレリュードがやってきた。

 うん、一気にやかましくなったな。

 

「ふぇ、フェルマータお姉様。そ、その、この前はごめんなさ」

「この前? 何のことだか分かりませんわね。それよりもセレナーデ! 面白いものを発見しましたの! 貴方にも是非見せたいと思って、探していましたのよ! 早速行きますわよ~!」

 

 フェルマータががっしりと、セレナーデの手を握る。

 そして、思いっきり引っ張って。部屋を出ていった。

 

「待ってぇぇぇぇぇ!? や、やっぱりこのアホ姉ぇぇぇぇぇ……」

「うん、まぁそういう奴だよな、フェルマータは」

 

 あの分なら大丈夫だろ。心配するようなことは起きない。

 

 で、もう一組は。

 

「シンフォニー姉さん、勉学で分からないことを教えてくれ! 今度の小テストヤバいんだ!」

「おやおや、予習復習はしっかりしているのかい? プレリュード」

「してない!」

 

 自信満々に言うな、プレリュード。しっかりやれ。

 

 ただ、シンフォニーは少しも気を悪くせず。

 

「ならば、私が教えようか。今日の夜、私の部屋に来なさい。一から教えてあげよう」

「助力ッ! 感謝ッ! 深謝ッ! ありがとうシンフォニー姉さん!」

「構わないよ。妹に頼られて、嬉しくない姉などいないからね」

 

 微笑みを浮かべながら、最後に俺に頭を下げて。

 

「それではシャーロック様。私はこの辺りで失礼します。今日はありがとうございました」

「さようならだ! シャーロック様!」

「おう、気をつけて帰れよ」

 

 プレリュードと一緒に部屋を出ていった。

 

 さて、と。

 

「俺もやるべきことをやるか」

 

 部屋を出て、メジロの本邸へ行くことを決めた。

 

 

 

 

 

 

 メジロの本邸。おばあ様と向かい合う。

 

「……ということです。フェルマータも、妹であるセレナーデを思ってのことですので、あまり叱らないであげてください」

 

 事の経緯を説明し、情報を共有する。

 あまり叱ってあげないでくれ、というお願いも添えて。

 

 おばあ様はというと。

 

「ですが、褒められた行為ではない。それは分かりますね? シャーロック」

「えぇ、その通りです。褒められたことではありません」

「ではなぜ、情状酌量を与えるべきだと?」

 

 射抜くような目。真意を探っている、ってとこか。

 

 とはいっても、別に考えなんてものはない。

 

「誰かのためを思っての行動ですから。フェルマータもフェルマータでやるべきことはやっていますし、反省しています」

「……それで?」

「反省しているのであれば、それ以上叱るべきではない。誰かのためを思っての行動が間違っているものではない……そう考えていますので」

 

 これが全てだ。それ以上でも、それ以下でもない。

 これでフェルマータやセレナーデに、負い目を感じてほしくない。

 反省はしてほしいが、引きずってほしくないだけだ。

 

 おばあ様はというと。

 

「……分かりました、シャーロック。貴方の顔に免じて、これっきりにしてあげましょう」

「ありがとうございます、おばあ様」

 

 無事に許してくれた。

 呆れつつも、俺の言葉にも一理あると理解を示してくれたんだろう。

 今回の件についてはこれっきりにすると、約束してくれた。

 

 やれやれ。これで正真正銘、一件落着だな。

 

 帰るか、なんて思っていると。

 

「それとシャーロック。貴方も貴方で、あまり無理はしないように」

 

 おばあ様から呼び止められた。

 なんだろうか? 無理をするなってのは。

 

「どういうことでしょうか?」

「深い意味はありません。ただ、貴方を心配しているだけですよ。貴方は無茶しがちですからね」

 

 ……ステゴもそうだが、俺ってそんなに心配されるようなことしてるのかね?

 別に心配する必要はないってのに。

 

「大丈夫ですよ。なにも問題はありません。俺は俺の、なすべきことをなすだけですから」

「……そういうところですよ、シャーロック」

 

 呆れられた。なんで?

 

 

 その後部屋を退出し、おばあ様と別れ。

 

「……さて、と。シャロにもいろいろと教え込まないとな。やるべきことは山積みだ」

 

 今後の練習計画表を立てる。

 

「時間があるうちに、やれるだけのことをやっておかないと」

 

 シャロのために、な。




メジロシンフォニー…葦毛の髪を腰まで伸ばした、物腰の柔らかいメジロ家のウマ娘。身長は160前半でハーフパンツ。メジロプレリュードの姉であり、姉妹仲は良好。体がそんなに強くない。メジロブライトとよく一緒にいるところが目撃されている。

メジロセレナーデ…鹿毛のストレートロングのウマ娘。身長は150後半のブルマ。メジロフェルマータの妹であり、フェルマータをアホと言いつつも姉妹仲は良い。よくメジロドーベルのところに入り浸っている。

メジロセレナーデのお名前はSimca V様からアイディアを頂きました! 本当にありがとうございます!
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