はーい、マユで~す! でもごめんなさい、いまマユは生体CPUになってるのでお話しできません 作:何を書けばいいんだ
はーい、メリーで~す! でもごめんなさい、いまメリーはお話できません。
なにせベッドに縛り付けられちゃってるからね、全身ベルトでギチギチに固定されて身動きも取れないや。
いたいけな少女に対するこの仕打ち、すわ事案かと思われるかもしれないが安心してほしい。
これは私がちょっとした発作を起こしたので鎮静剤をぶち込まれたあと、暴れ出したりしないための処置なのだ、これはこれで事案っぽいかな?
でもまあこんなのはもう慣れたもんなので今更気にしてもねえ……? ただこうやって縛られるのに慣れないといけないんだから本当に難儀なものだよ、生体CPUっていうのは。
私の名前はメリー・ゴーランド、どこにでもいる普通の生体CPUだ、生体CPUの時点で普通じゃないってことには目を瞑っていただきたい。
それと遊園地のアトラクションみたいな名前してんなと思われるかもしれないけど、こればっかりは製造者様の気分で決まるので私個人ではどうしようもないのよね。
人の名前で遊ぶなと言いたいところだが生体CPUは人間じゃないからセーフってことなんだろう、人権が欲しいよ。
それで、過激派武装環境保護団体であるブルーコスモスの温情で生かされてる私ことメリーには他の生体CPUとはちょっと違う点がある。
それは記憶、あるいは知識とでも言うべきか……生体CPUとしての処置を受けた私の頭の中には機動戦士ガンダムSEEDという言葉とこの世界の出来事にリンクする様々な設定的な何かが存在していたのである。
おいおい、なんだいこれは? 科学全盛期の時代にオカルト全開じゃんと思ったりしたが、ガンダムSEEDの知識を顧みるに、この世界にはシン・アスカとかいうなんか霊界通信してる逸般人とか精神攻撃をしてくるアコードとかいう非科学的な連中が跋扈しているらしい。
なら私がいわゆる原作知識的なもんを受信するのも上述のイレギュラー共の亜種って考えればあり得るのかな? 知らんけど。
それとこの知識のおかげで私は生体CPUにも関わらず自我とかメタ認知能力を人並み程度には持つことができている、まあ要するに精神的に安定してるってことだ、生体CPUとしてはって補足が入るけどね。
でもって原作的に今がどういう時期かと言うとDESTINYが終わってすぐぐらいの時期と思われる。
推測系なのは私が自由にニュースを見たり外に出たりできる身分でないのだから仕方がない、この体のメンテナンスを行う科学者たちの会話とか移動させられてる最中の兵員の雑談でしか外界の情報が得られんのです。
せいぜいジブリールが死んでこれからやばい、おかしなことをやろうとしたプラントの議長が死んだ、ラクス・クラインがプラントで復権したとかそんな具合だ。
で、現状私はブルーコスモス通称ブルコスに所属しているわけだが、現在のブルコスは盟主のジブリールを失って混乱していたところをミケール大佐が掌握。
彼の指針に従ってユーラシア連邦の勢力圏を活動拠点としてコーディネーターたちに対する独自闘争という名のテロ攻勢を仕掛けている最中である、当然のことながら貴重な生体CPUである私も駆り出されているってわけだ。
ふぅ~やれやれ……また戦争がしたいんですかねえ、アンタたちは。
いや戦争再開したがってるのは知識で知ってるけどもさぁ……自由にしてくれとは言わないからいい感じに死蔵しておいてほしいもんである。
まぁとりあえず現在のわかってる範囲の情勢はこんな感じ、ただ私の知識が正しい保証なんてどこにもないので当てにはしつつも全幅の信頼は置かないってのを心掛けないとね。
あとは私自身のことも整理しておくべきか。
まずCEことコズミックイラで製造されている生体CPUには二つの種類があるのは知っているね? そう、ブーステッドマンとエクステンデッドのことだ。
お薬キメキメで戦闘力マシマシにされた前期型生体CPUのブーステッドマン、それらに加えて精神的な操作を施すことでより安定感を増した改良型のエクステンデッド。
基本的にはエクステンデッドの方が優秀だけど個体の性能差が激しいのでどっちだから強いってのは断定できない程度のものだ、ただブーステッドマンは情緒がめちゃくちゃすぎて使い道が限られるっていう大きな欠点がある。
対するエクステンデッドは定期的に大掛かりな調整が必要な代わりに、市井に潜伏して高度な作戦行動を取るぐらいの判断能力や作戦遂行能力を有している。
そしてどっちも非人道的な方法で製造されて、これまた非人道的に運用されるというCE世界のヤバさをこれでもかと表す存在である。
では私ことメリーはどっちの生体CPUなのでしょうか、となるわけだが……実はどっちでもない、強いて言えばプロトエクステンデッドとでも言う存在だろうか。
なんじゃいそれって思うじゃん? でもこれにはちょっとした事情があるのだよ。
まず自分で言うのも悲しくなるが私は生体CPUとしては割と不良品の類いである。
第一に五体が満足じゃない、右手とか義手だし内臓も損傷してたからブルーコスモスで培養されたなんか強化済みの臓器を移植されてる。第二に強化処置を受けた年齢に問題があってだね、適齢よりも若干高い年齢だったので通常の個体よりも強化に対する適性が低かったし期間も限られていたから処置の効果が薄かったみたい。
どうしてそんなことになったのかと言うと、どうも私は瀕死状態の戦災孤児だったらしくエクステンデッドに施す処置の実験体として納入されたみたいなのだ。
謎に生命力が高かったから生き残っちゃっただけで本来は同時期に連れて来られた同じような境遇の子たちと同じく、適当に使い潰されて処分されるはずだったらしい、こわいね~。
まあそういうわけで私は強化率の低さを補う為にブーステッドマンよろしくγ-グリフェプタンを投与され禁断症状に苦しみつつ、エクステンデッドみたいなブロックワードも搭載されてるという全く嬉しくない盛り合わせセットとなっている。
まっこと酷い状態ではあるけれども命を拾えただけまだマシと思って頑張るしかない。
たまたま私が戦争被害に遭ったタイミングで生体CPUの需要が増加していて死にかけの不適格品でも実験体としてかき集められていたこと、私が被害にあった国がとんでもなくゴタゴタしていたおかげで上手くブルーコスモスに闇流しされたこと、過酷な手術と薬物の治験に耐えられる肉体を持って生まれたこと、全てが嚙み合って私はここに生きているってわけだ。
縛り付けられた体の中で唯一動かせる首を曲げる、部屋の中からは基地の廊下がガラス越しに見える、そのガラスにうっすら映る私の姿。
白い肌に金髪……というよりはプラチナブロンドという方が近いか、ともかく色の抜けた不健康そうな髪色に悪くはないが平凡な顔立ち、これが今の私……メリー・ゴーランドだ。
見ようによってはジェネリックステラに……いやぁやっぱり別人かなぁ? 金色っぽい髪色の生体CPUってだけで先入観が働いてるだけでしょうねこれは。
なんか科学者の雑談を聞く分には昔は茶髪だったとか何とからしいが案外あいつら適当なので完全に鵜呑みするのもちょっとね、薬で色が抜けたってのは信憑性あるけどさ……。
私の過去、私の思い出、全ては闇の中だ。
いやまあ単純に記憶処理されてるってだけなんだけどもね、エクステンデッドも使ってるゆりかごって技術で余計な記憶は思い出せないようにしまっちゃおうねえされたので自分が何者なのかまーったくわからん、分かってもそれはそれでトラウマ的なのがフラッシュバックして頭がおかしくなるかもしれないけど。
実際薬物投与の苦痛とか瀕死の状態で体をいじられた時の記憶とか苦しみは全部ゆりかごのおかげで処理されていて、精一杯思い出しても実感は伴わないしぼやけた映像を見てるような感覚になるから記憶処理には大変助けられている、この技術もっと平和利用できない? なんて思うこともしばしばだ、この世界こんなのばっかだな。
それにしてもいつまで縛られてればいいんだコレ、もう私は正気に戻ったんだが? おーい誰かー、このベルト外してくださいよ、ねえ。
なーんてアホな脳内芝居を繰り広げていたら兵隊を伴った科学者が来た。
あーはいはい、出撃ね。わかってますよ、やればいいんでしょやれば、それじゃあちょっくら悪事を働いてきますかね。