はーい、マユで~す! でもごめんなさい、いまマユは生体CPUになってるのでお話しできません   作:何を書けばいいんだ

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心の古傷

「コンディションレッド発令」

 

 世界平和監視機構コンパスに所属する戦艦――ミレニアム――にて艦内放送が響き渡る。

 

「また!?」

 

 コンパス所属のMS部隊、ヤマト隊のシン・アスカは放送を聞いて目を見開いた。

 ブルーコスモスのテロ行為による度重なるスクランブル、終わりの見えない戦いにこのような言葉が出てくるのも致し方ない面はあった。

 

「シン! 早く!」

「私たちを待たせてんじゃないわよ!」

「あ、ああ! わかってるって!」

 

 同じくヤマト隊に所属するルナマリア・ホークとアグネス・ギーベンラートに急かされ彼は自身の搭乗機たるイモータルジャスティスへ急ぐ。

 彼はコックピットに飛び込み機体の起動を行いながらコノエ艦長から伝えられる状況を咀嚼していく。

 

 下手人はいつも通り、ブルーコスモス。すでに現地の防衛軍は壊滅状態だと聞いてシンの操縦桿を握る手に力が籠る。

 そしてコノエ艦長の説明が終わるとヤマト隊を指揮するキラ・ヤマトから各隊員に指示が下される。

 

「フリーダム突入後、シンは政府施設の防衛を、ルナマリアとアグネスは市民の避難を優先しつつブルーコスモスの進軍を阻止を」

 

 これを聞いた三人はまたなのかと考え異議を唱えたがキラは受け入れなかった。

 モニターの端に映る露骨に不満そうな顔を浮かべるアグネスを横目にシンはなぜ隊長は頼ってくれないのかと自問自答していた。

 無論その問いに答えを出せるような時間などあるはずもなく、ルナマリアのゲルググ、アグネスのギャンが発艦しジャスティスの番となる。

 

「シン・アスカ、ジャスティス行きます!」

 

 続けて発進したフリーダムの後背につきシンたちは大気圏に突入する。

 そして宙から地へ。

 やがて編隊を組んだ四機のMSは雲を切り裂き、火に染まった街の上空へと達した。

 そこで彼らが見たのは地球連合が生み出した悪名高き黒の巨人。

 

「あれは……」

「デストロイ……!」

 

 ブルーコスモスのダガー隊に続くようにゆっくりと進むその威容はまさに破壊の化身といったところだろう。

 これ以上被害を出すわけにはいかないと、キラは彼らに警告と呼びかけを行うべく通信回線を開く。

 

「こちらは世界平和監視機構コンパス。攻撃部隊に告ぐ。直ちに――」

 

 キラが言い切るその前にデストロイの長大な砲が彼らに向けられる。

 

「隊長ッ!」

「くっ」

 

 彼らは迫りくるビームを躱すため散開しそのまま各々の役目を果たすべく散っていく。

 シンに与えられた任は政府施設の防衛だ。

 故にまずそちらの方面に展開している敵部隊を打破しなければならない。

 

 単騎でデストロイへ向かうフリーダムを横目にシンは眼下を悠々と歩くダガーとゲルズゲーに向かっていく。

 それらの機体がほんの数機ばかり残ったジンを嬲り殺しにしようとする光景を見てシンは吠える。

 

「やめろおおおお!」

 

 ジャスティスが急降下しダガーを切り裂く、突然の急襲にゲルズゲーはその四つ足で素早く下がりつつ計四門のビームでジャスティスを狙い撃つ。

 

「そんなもので……!」

 

 若くしてザフトのトップエースとなったシンはこの程度で負けるほどやわではない。

 すぐさまビームライフルでゲルズゲーに反撃するが、それは陽電子リフレクターに防がれてしまう。

 だがそれは誘いの一手、リフレクターを展開する為に射撃の止まったゲルズゲーにシンはビームブーメランを二本投擲し両腕を奪った後、シールドブーメランを射出し制御ユニットを破壊して撃破した。

 

 高い実力で軽々と敵部隊を撃滅したシン、彼は戦術マップで敵機を確認するがどうもブルーコスモスは積極的に進出してきていないようであった。

 

 シンはフリーダムがどうしているか見やる。

 

 フリーダムはいまだにデストロイと交戦していた、あのキラ・ヤマトとしては苦戦していると言ってもいい。

 それを見たシンは気づけば飛び出していた。

 

「隊長ッ!」

「シン……!?」

 

 ジャスティスのスラスターを全開にしてシンはデストロイへと突撃、それに気づいたデストロイはビームの束を浴びせたがそんなものシンにとっては見慣れた光景だった。

 網目を縫うようにビームをかいくぐったジャスティスはビームブーメランを手に持ちエネルギーを供給しサーベルとする。

 

 シンが狙うのはただ一つ、コックピットのみ。

 彼はデストロイにどのようなパイロットが乗せられるのかをよく知っていた。

 非道な方法で体と精神を弄ばれ、戦うために生き、都合よく死ぬよう設計された呼吸する兵器。

 その報われない境遇と悲劇的な運命を見てきたシンはせめて苦しむことなく、一瞬で終わらせようとサーベルを振るった。

 

「なっ!?」

 

 ただその情けは空振りに終わった。

 デストロイがバックパックからスラスターを噴射して強引に距離を取ったのだ。

 コックピットを抉り取るはずの一撃はその手前、パイロットの搭乗用ハッチを破壊しその中身を晒した。

 

「くっ」

 

 反撃のスキュラを躱しつつシンはつい、とデストロイを操縦するパイロットを視界に入れてしまう。

 桃色を基調としたスーツを着込んだ小柄な人の姿をシンは捉え、見るべきではなかったと彼は記憶を消さんと頭を振った。

 

「今度こそ!」

 

 もう一度とばかりに突入しようとするシンであったがそれはビームで作られた壁に阻まれる。

 エクステンデッドらしからぬ守りを意識した戦い方にキラが攻め手に欠いていた理由を体感することとなった。

 

「シン!」

「へっ……?」

 

 フリーダムがデストロイにフルバーストを放ったところでキラから通信が入る。

 

「僕に続いて!」

「っ、はい!」

 

 抜刀し翔け抜けるフリーダムのあとにジャスティスが続く。

 真っ向からデストロイへ突き進めば当然の如く迎え撃たれる。

 デストロイからのスキュラが放たれた。

 キラは瞬時にビームシールドを展開しその強力な砲撃を受け止めてみせる。

 その衝撃でフリーダムが押し返されるもシンはジャスティスをその横から滑り込ませデストロイに肉薄した。

 

 そしてシンは反撃しようとしたデストロイの腕をビーム重斬脚で切り落としビームライフルをコックピットへと向けた、あとはトリガーを引けば終わる。

 だがそこで彼は見てしまった。

 デストロイのパイロット、まだ幼さの残る金色に近い髪色をした少女、怯えた表情を浮かべながらジャスティスを見つめる目がシンと合った。

 

「っぁ……!?」

 

 その瞬間、心臓を握られたような悪寒がシンを包む。

 シンの脳裏に去来する忌まわしき記憶、守ると約束して結局守り切れなかった少女の姿を幻視した。

 体が動かない、まるで全身が石になったかのような感覚をシンが覚えたその瞬間、強い衝撃がジャスティスを襲った。

 

「ぐあああああ!?」

 

 デストロイの拳がジャスティスに叩き付けられ、機体が地面に叩き付けられたのだ。

 黒き巨体が地に落ちたシンを見下ろす。

 

「シンっ!」

 

 フリーダムがジャスティスを救うべき放った攻撃がデストロイに直撃しその機体を大きく破損させる。

 デストロイが爆炎と共に大きくぐらつく隙をついてジャスティスは空中へ退避する。

 

「シン、いったん下がるんだ!」

「隊長……俺……」

 

 すでにデストロイの意識はフリーダムに向いていて残った武装を向けるが、ダガー隊を片付けたルナマリア駆るゲルググが特斬槍で踏み込んできておりデストロイの右脚部を切断した。

 炎を上げながら少しづつ解体されていくデストロイ、それを見るシンの表情は苦いものだった。

 

「ちょっと! 隊長の足引っ張ってんじゃないわよ」

 

 トドメはデストロイの背後に回ったギャンのビームアックスだった。

 背面のバックパックを大きく袈裟切りにすると動力系やミサイルが誘爆しデストロイの巨躯が崩壊していく。

 そして地響きを響かせて倒れこんだ。

 

「はっ、大したことないわね」

 

 アグネスの声が戦闘の終わりを告げた。

 

 

 

 

 

 燃え盛るデストロイの残骸を茫然と見つめていたシンはそのすぐそばに転がっている人間の姿を見つけた。

 

「あれって!?」

 

 それを目にした瞬間シンはジャスティスを飛ばしていた。

 機体を地面に降ろした彼はすぐにコックピットから飛び出して走る。

 

 まさかと思いつつ息を切らしながら駆けつけたそこにいたのはやはりデストロイのパイロットだった。

 仰向けに倒れこんだ彼女は血を流しており、ヘルメットやパイロットスーツの一部が周囲に飛散していた。

 機体から放り出された時に相当強く体を打ち付けたのだろう、だが僅かに上下している胸が彼女の生存を証明していた。

 

 シンは激しい動悸を抑えながら彼女を抱き起こす。

 彼の顔はまさしく驚愕という概念が張り付いたような表情を浮かべていた。

 少女はいまだに年若いシンから見ても……子供としか言えない姿だ。

 

「ステ……ラ……」

 

 ぼそりと呟く、少女の姿形はハッキリ言ってステラ・ルーシェとは違うものだ。

 金色に近い髪ではあるがシンの知り合いで近い色合いは強いて言えば、今は亡き親友のレイ・ザ・バレルだろう。

 

 顔立ちも似ても似つかないものではあったが……別の意味でシンのトラウマを抉るものだった。

 その顔は忘れられない、そして決して忘れてしまわないようにしていた顔、戦争に殺された最愛の妹であるマユ・アスカによく似ていた。

 

「ぁ……! あぁ……っ!」

 

 シンの手は酷く震えていてその瞳は正気を保てていなかった。

 

 薄ぼんやりとしてた少女の目がゆっくりと、ほんの少しだけ確かに開き、僅かに涙を湛えた茫洋とした瞳がシンへと向く。

 

「……しに……たく……な……」

「っ……!?」

 

 ひどく眠たげな表情を浮かべた彼女は蚊の鳴くような声を漏らしたあと完全に意識を失い脱力した。

 確かに聞こえたその言葉にシンはギョッとした、瀕死の人間の漏らすものとしては何の変哲もないものだが、この状況とこの光景は彼に一種のデジャヴを感じさせたのだ。

 

 少女の頬を一滴の涙が伝う間、彼は石のように固まり、そして今がどういう状況なのかを思い出した。 

 シンは焦燥に駆られた表情を浮かべながら少女を抱きかかえてジャスティスへと駆ける。

 一秒の時間すら惜しいのか、彼はシートベルトすら付けずに機体を飛翔させ、慎重な操作で振動を最小限に抑えながらも一直線に飛ぶ。

 向かう先は当然アークエンジェル、彼女を救えるのはそこしかない。

 

 そして飛び去るジャスティスを見送るのはヤマト隊の三機。

 

「シン……」

「ちょっ、ちょっと隊長! シンの奴任務放棄ですよ!? いいんですか!?」

 

 心配そうな表情を浮かべるルナマリアとシンの行動の是非を問うアグネス。

 

「いいんだアグネス、行かせてやってくれ」 

「……隊長がそういうなら、私は構いませんけど……」

 

 不服そうではあるがひとまず黙ったアグネス、ブルーコスモスは制圧したが彼らにはまだ役目が残っている。

 三機はいまだ燃え盛る街の方へと向かった。

 

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