はーい、マユで~す! でもごめんなさい、いまマユは生体CPUになってるのでお話しできません 作:何を書けばいいんだ
はーい、マユで~す! でもごめんなさい、いまマユはお話できません。
なにせコンディションレッドが発令されて出撃しなきゃならないからね。
コンパスの活動にも手慣れたものでザクはいつでも出せる状態だ。
ただ一つ問題があるとすれば、今回救援に行く場所がオルドリン自治区ってことぐらいかな。
つまりいよいよFREEDOMの時期に突入するってことだ、まあどうなったとしても私は私として戦っていくだけである。
フォーメーションはいつも通り、准将が前線へ向かってお兄ちゃんたちが防衛、私は後から引っ付いていって病院を設営する。
じゃあ降りていこうか、コノエ艦長から伝えられた敵部隊は中隊規模だがそれだけじゃないってことを私は知っている。
そして上空から見下ろすとやっぱりいたね、デストロイ。
ちょっとした思い入れのある機体ではあるけど敵に回ると害悪極まりないヤツである。
オルドリン防衛軍の陣形がめちゃくちゃにされて乱戦状態になってるし避難した市民が直接ブルーコスモスの攻撃に晒されてる状況だ。
負傷者を集めている救護用テントの辺りに降りるけど普通にビームが飛び交ってるし、ちょっと前線に進むとジンが戦ってる有様だ。
チッ、面倒だな、とりあえず病院を設営するだけしたあと適当なビルを担いできて即席の盾を作ろうか。
デストロイの砲撃の余波を防ぐのにちょうどいいサイズ感の物を持ってきて壁にすれば護身完了、まああっちはフリーダムに夢中なようだからこっちに意識は向かないだろうけど。
「アグネスさん、援護お願いします」
「ったく、世話が焼けるわね」
ダガーの小隊が近いからギャンに露払いを頼む。
上空を見ればフリーダムがデストロイのシュトゥルムファウストを破壊しているところだ、こうなったデストロイはリフレクターでの防御が難しくなる。
そして案の定フルバーストを防ぎきれずに撃破されたようだ。
やれやれ、デストロイは引き気味に戦っても火力が高いんだから無理に攻めなくていいのに……いやいや、何言ってるんだ私は。
『オルドリン防衛司令部より達する。この戦闘の裏にはミケールがいる。カナジを制圧し、ミケールを引きずり出せ!』
「なんだって……!?」
「マジ?」
敵の態勢が崩れてからの逆進撃か、戦術としては悪くないけど逃げ遅れた市民が大勢いる状況で戦域を拡大するのはよろしくないよ。
それとライフルはともかくD装備のM66キャニスはやめろ! ヘリオポリス崩壊の教訓を忘れてるのかな、市街地でぶっ放すもんじゃないからそれ。
「警告します! 進軍を中止してください! ミケール大佐はここにはいません!」
准将が制止してるけどザフトは聞く耳持たずだ、この辺は指揮系統の問題もあるからなぁ~。
基本的に軍人は指揮官の命令には絶対服従なので司令部が突っ込めって言うなら文句を言わずに突っ込むのが正しい在り方ではあるしね。
まあそれはそれとして周囲のジンは止めるよ。
『なんのつもりだコンパス!』
『奴らに思い知らさなければ気が済まない!』
「負傷者を見捨てて進むつもりですか」
『ッ!』
今更ジンの守りがなくなったところでおそらく問題は起こらない、だから私の言っていることは詭弁だ。
でもこれで少しは頭も冷えると思う、遠くの敵を討つより近くの味方を守るのに務めていただきたい。
そしていよいよカナジにザフトが進軍して市民を巻き添えにしながらブルーコスモスへの攻撃が始めた瞬間フリーダムがジンの鎮圧を始めた。
全くもって准将の暴れ振りはすごいもんだ、戦術マップのアイコンを見るだけでもとんでもない動きをしているのがわかる。
フリーダムがぬるぬると動き回るのに合わせて無力化された敵と味方のアイコンが次々と消えていくよ、ここまで来ると怪異か何かとしか思えない。
あまりにも高い戦闘力とその鬼気迫る勢いに後続のジンは狼狽えたのか動きが鈍ったね、ただブルーコスモスはあっちの方でまだやる気らしい。
押し返したとはいえまだまだ敵は残っているしカナジ市にも民間人はいる、となると……。
「アスカ大尉、指示を願います」
「えっ? マユ……?」
この状況で最新鋭の三機を遊ばせるわけにはいかないだろう。
准将からの命令更新はないけど、状況が変わった以上対処しなくちゃならない。
少なくとも戦場がオルドリンからカナジに移ったからにはそっちの救援をしてあげないと。
「お兄ちゃん、命令。隊長は手が離せないんだから臨時で指揮取ってよ」
「あっ、そうかっ! よし、ルナとアグネスはザフト防衛軍の進軍阻止とカナジの市民保護をしてくれ! マユはそこで待機! 俺は隊長を援護する!」
「ちょっと、なんでアンタなんかの命令に――」
「アグネス! 上官命令でしょ、さっさとやるわよ!」
お兄ちゃんたちはすったもんだしつつも前線に飛んで行ったね。
准将一人でも制圧するのは可能だろうけど、楽するのに越したことはないでしょ。
私は待機を命じられたのでのんびりと病院ユニットにバッテリーを供給するとしますかね。
で、みんな強いな~と戦術マップを眺めていたら恙なく戦闘は終了した、今回も無事に生き残れて何よりである。
今回はデストロイがいたから街はメタメタのぐちゃぐちゃ状態だ、派手にやってくれるよホントに。
時刻的にはそろそろ夜が明ける頃、アークエンジェルが空にポツリと浮かんでいるのが見えた。
それじゃあお兄ちゃんが迎えに来てくれるのを待ちますかね。
「よう! 今回も活躍したみたいだな!」
そう言って私の頭にガツンと手を乗っけるのはネオ・ロアノーク大佐もといムウ・ラ・フラガ大佐、私のことを何かと気にかけてくれる頼れるおっさんだ。
ビシッと敬礼をすると何とも言えないもにょっとした表情を浮かべられてしまう。
生体CPUの私がこういう事をするのがムウさんの過去を突っつくような形になるのはわかるんだけどね、ファントムペインのロアノーク大佐って知ってしまってるせいでどうにも部下としての振る舞いが出てしまう。
こればっかりは強化されるときに刷り込まれてるからどうにもならないんだよなぁ。
「ったく、相変わらずお堅いね~!」
ムウさんにぐわんぐわんと頭を揺さぶられてされるがままになる。
ああーうあー、上官に褒められてドーパミンがでるー、生体CPUは単純なんだからやめろー。
「ちょっ! おっさん! マユが嫌がってるだろっ!」
「だ~か~ら~! おっさんじゃないっての!」
お兄ちゃんのせいでムウさんから引っ剝がされてしまった。
せっかくいい気分だったのに、おのれコーディネイターめ……失礼、ブルーコスモス仕草が出てしまった。
「何はともあれ、みんなお疲れ様。あとの処理はこちらに任せてゆっくり休んで」
マリュー艦長から労わりの言葉を賜る。
技術畑の人なのに艦長としての能力もかなり高い人だ、ついでに腕っぷしもすこぶる強い。
一部からは指示が雑だと不評らしいけどそこはケースバイケースってやつだろう、裏返せば柔軟性に富んだ指示とも言えるのでクルーが優秀と言う前提に限れば有効だし。
自身の差配を隅々まで行き渡らせて統制するか、部下に裁量を与えて能力を引き出すかはタイプの違いであって優劣の差ではないってわけだ。
「マリューさん、被害の状況は?」
「今のところは死者は118名、そのうち民間人は47名……多分もっと増えるわ」
この時点で死者三桁、瓦礫に埋まったアレコレもほとんど掘り出せてないことを考えるとまだまだ序の口ってところだろう。
MS部隊による奇襲攻撃で避難も完了しないうちに街中火の海だからこればっかりはね。
しかしミケール大佐もよくもまあこんな大部隊を動かせるもんだ。
やっぱりファウンデーションが裏から手を引いているんだろうか、彼らはザフトとも繋がりがあるから防衛網の穴を知ることも、なんなら作ることだってできるだろうし。
「クソッ! あいつらいつまでこんなことを続けるつもりなんだ!」
お兄ちゃんもだいぶやさぐれて来てるな、結局私たちがやってるのは火消しで犠牲者が出るのを防ぎきれてないからね~。
家族を失って精神をやられてたわけだし目の前で誰かの家族が吹き飛んでるのを見てストレスを溜め込んでるんだろう。
原作知識的にはもうブルーコスモスもかなり苦しいと思うけどね、私が所属してた頃も火の車で残り少ない戦力を切り崩してたような状態だったし。
でもそれをお兄ちゃんに話すことはできない、だってブルーコスモス時代の話をしようとしたら凄い機嫌悪くなるんだもん。
さて、アークエンジェルで機体の整備が終わったら宇宙のミレニアムへ帰還だ。
私のザクちゃんはオルドリン自治区でまだまだ働かないといけないのでイモータルジャスティスに相乗りさせてもらっている。
もちろん席なんてないのでお兄ちゃんの膝の上で横抱きにされる姿勢になっている。
別で機体を用意してくれるって言ってるけどねえ……私はこれで特に不満はないので遠慮している、これも予算の節約ってやつだ。
「大丈夫か~マユ、あともうちょっとで着くからな~」
「私はへいきー」
大気圏の離脱途中でガタガタ揺れる機体の中でお兄ちゃんが声を掛けてくる。
意外とこの揺れが眠気を誘うからテキトーに返事だけしてスヤスヤタイムだ、お兄ちゃんの膝あったかいなりぃ……。
「俺……やっぱ信頼されてないのかな……」
「はぁ?」
そろそろプラントに入港するって時にお兄ちゃんがルナの姉御にお悩み相談を始めた。
准将がいつも前線に出て戦い、他の隊員には後方での防衛戦を命じてるのが信用されてないんじゃないかと思っているらしい。
別に前に出て敵の殲滅をするのだけが戦いじゃないと思うんだけど……そういえばお兄ちゃんってエースとして前に出て戦う経験しかしてないじゃん……これが原因かぁ。
ミネルバ時代はアスランを中心にルナの姉御とかレイ・ザ・バレルが後方でフォローやってたから重要性がイマイチ理解できてないのかな、まったくこれだからお兄ちゃんは。
そりゃあ今まで最前線に出て並み居る敵をバッタバッタと倒してた人が後方でチマチマ戦ってたら当てにされてないってなるだろうね。
でもお兄ちゃんの仕事は普通にエースパイロットがこなすような内容なんだが? スーパーエース様からすれば物足りないかもしれないけどそんなの基準にするなって話だ。
やれやれ、頑固だから何を言ったところで考えを変えるとは思えないけど、ここは少し説教をしなきゃならないかな。
「信頼なんてされてるワケないじゃない、フリーダムキラーなんて呼ばれてたアンタが」
あ、アグネスだ、相変わらずお兄ちゃんを貶す気マンマンである。
いやでもフリーダムキラーはある意味誉め言葉か……? 本人は喜んでないけど。
「ねえ、譲りなさいよ……ジャスティス。アンタが持っていても宝の持ち腐れよ」
「な、なんでだよ」
「だってアカデミーじゃ技術も評価も私の方が上だったじゃない」
「ちょっとアグネスっ! やめてよ!」
アグネスはジャスティスに乗りたいのか、そりゃあ最新鋭の高性能機の方がいいって気持ちは分かるけどさあ。
ギャンだっていい機体だと思うんだけどな~、ショートレンジ中心の武装構成だけどシールドが優秀だから強みを押し付けやすいし。
トリデンティビームガトリングみたいな奇襲向きの面白武装だってあるんだから堅実な設計のジャスティスと比べても劣ってるわけじゃないと考えてるけど。
ただアグネスはジャスティスのネームバリューが欲しいのかもしれないね、ギャン乗りとジャスティス乗りなら後者の方が強そうって感じるし、他人からの評価を重視するならフリーダムと並ぶ名MSのジャスティスのパイロットに拘るのも合理的ではあるか。
私は強ければ別になんでもいいんだけどな~。
アグネスにはわからないか、このレベルの話は。
「おかしいと思ってたのよね、アンタがFAITHだなんて。結局、アンタはデュランダル議長にとって丁度いいコマだったから贔屓されてたってことでしょう?」
「ちょっといい加減にしてよアグネス!」
「ふん、なによ。私は何も間違ったことは言ってないんだけど? ほら、行くわよマユ」
「え?」
腕をガッツリホールドされて私はアグネスに拉致されてしまった、お兄ちゃんたちも唖然としていて固まってるじゃん。
「まったく、ルナマリアもなんであんなバカで妥協する気になったのかしら。元ミネルバクルーだからって出世の目がなくなって人生諦めたのかしら?」
「お茶です、どうぞお納めください」
「はいはいご苦労様」
拉致されてしまったものはしょうがないので大人しくアグネスの給士をする。
彼女は私を舎弟か何かと考えているのか、よく取り巻きその一にしたあげくパシリに使おうとするのだ。
くっ、先任で上官で年上の人物のせいで逆らえない……! アグネスもヘーコラする私を見て満足気である。
こき使うだけこき使って用が済んだら放り出すみたいなことをしてくれたら私も遠慮なく後ろから刺せるんだけど、アグネスの場合先輩風を吹かせたぶん世話も焼いてくれるので隙がないのが厄介だ。
伊達にこれまで優等生を演じてきたわけではないね、ガス抜きが上手いので未だに私も流されるまま従っている。
しかもアグネスは子供同然である私のフォローをする姿を他の職員に見せつけて面倒見の良さと優しさアピールをする始末、私の境遇すら利用してアクセサリとするその胆力には舌を巻くね。
アグネスの中では私がご機嫌取りをした時点で明確なカーストが出来上がってたんだろう、ただこうやって雑に扱われつつも適度にフォローされるのが生体CPUの感性としては気楽なのが我ながら情けないよホントに。