はーい、マユで~す! でもごめんなさい、いまマユは生体CPUになってるのでお話しできません 作:何を書けばいいんだ
「量子触媒反応スタート、パワーフロー良好、全兵装異常なし、神経接続開始……」
はーい、メリーで~す! でもごめんなさい、いまメリーはお話できません。
なんか出撃しないと行けなくなったので機体の立ち上げをやってるところだからね、ここでミスって上手く動けなかったり弾が出なかったりで死にましたなんてのはお断りだ。
どっかの准将みたく戦闘中にOSを書き換えられるならともかく私にはそんな芸当できっこないので余裕のある時に確実にやらなくちゃならない。
それで私がガチャガチャとコンソールをいじってる最中にも作戦概要とか何とかを指揮官殿が喋っておられる模様、普通の機体ならまだしもこの機体は手間かかるからあんまり聞いてられないんだけどなぁ……。
とりあえず適当に聞き流したところ、攻撃目標はプラントの経済特区として指定されてるどっかの街、ザフトの守備隊はいるけど大半がジンやディン、ところによりゲイツってところらしい。
ふ~む……ビーム兵器持ちのゲイツが厄介だね、ただこの時期のゲイツは改修されていてゲイツRになっているはず、これが結構大事でビーム発振器のついたワイヤー兵器――エクステンショナル・アレスター――がレールガンに置き換えられているのだ。この変化は私の機体に有利に働く。
ほかの旧式は脅威らしい脅威にはならないかな、どっかのエクステンデッドがMSの性能で強さが決まるわけじゃないって言ってたけどそれをできるのはマジもんのトップエリートだけだから私らとは無縁の概念なんだ。
攻撃の目的はプラントの対ナチュラル感情悪化のために暴れて来いっていうアバウトな内容、こちらの戦力は少数の支援車両にウィンダムと105ダガーを混成させた一個中隊、それと生体CPUが一体……つまり私ですな。
ちなみに一個中隊が具体的に何機かっていうと十二機です、四個小隊で構成されてるってことだね。
これだけだと守備隊がいる街に攻め込むのにはちょっと心持たない数かな? まあそのために私が出るわけだけど。
街への攻撃は友軍に任せてザフトを一掃するのが私の役目だ、市民の虐殺だろうが敵兵の殺害だろうが殺しは殺し、そこに違いはない……ないけど……互いに殺し合うというある意味で対等な関係っていうのがせめてもの救いだろうか。
といっても罪悪感とか殺戮への忌避感も取り除かれてるんだけどね。
何ならコーディネーターとザフトへの敵意も刷り込まれてるぐらいだよ。
私はそこらへんを制御してドライにやるけどさ、あんまり前のめりな衝動に身を任せてたらすぐ死ぬって知識と経験で知ってるし。
「作戦を開始します、MS隊発進どうぞ」
オペレーターの通信が入ると同時にジェットストライカーを装備した味方が空へと飛び立つ、そしてその後ろから援護のためのミサイルが街へと発射された。
カメラ越しにその煙の軌跡を眺めながら私は輸送艦――ハンニバル級――のハッチが開くのを待つ。
「続いてX1デストロイ、プラットフォームゲート解放、発進せよ」
「了解」
さあ行こうか、デストロイのホバースラスターを吹かす。
ウィンダムとダガーを伴い進軍開始だ。
前方には街を守るために布陣したザフト、デストロイなんてデカブツを持ち出せばNジャマ―の電波妨害があってもあっさり探知される、向こうは準備万端のようだね。
だけど来るのが分かったところで……。
「全機、攻撃を開始せよ」
命令が出たね、それじゃあお仕事をするとしますか。
私は慣れた手つきでデストロイの象徴的な武装、アウフプラール・ドライツェーンを起動する。
射線確保、照準合わせ、照射。
デストロイの円盤型兵装ユニットに備え付けられた長大な砲身から発射される極太の赤色ビームが街への侵攻を阻むべく布陣していたジンとゲイツを蒸発させる。
発射の反動で後退する機体を制御してそのまま薙ぎ払うと、ただの一射でザフトの前衛は壊滅した。
敵の集団を消し飛ばすことに腕が震える。
これは何も今更殺しに怖気づいたわけじゃない、今感じているのは高揚感と歓喜だ。
生体CPUはマインドコントロールで敵を殺すことに対して脳内に快楽物質が湧くように条件付けされているからね。
だからデストロイで派手にぶっ放して薙ぎ払うのはたまらなく気持ちがいい、けどこの思考は戦闘に対して意欲的になるという利点があるものの快楽を求めて自暴自棄的な攻撃衝動が発生するのが厄介だ。
さっさと気持ちを落ち着かせないとね、まだまだ敵はいるんだ、戦いに楽しむことなんていらないんだよ。
しかしまあデストロイはやはり相手のヘイトを買うのか、街中から多数のミサイルがこちらに殺到しそれに続くようにディンの編隊が押し寄せてくる。
意味のない反撃だよ、ドライツェーンをミサイルに向けて照射、膨大な熱量にミサイル群はあっさりと消し飛ぶ、続けて6連装多目的ミサイルランチャーからミサイルを斉射しディンに叩き付ける。
軽装甲のディンは直撃せずとも爆風だけでカトンボの如く堕ちていった。
生き残った少数のジンとゲイツが散開しながら攻撃してくるが陽電子リフレクターの前には蟷螂の斧だ、ビーム攻撃の合間を縫ってもういっちょドライツェーン、味方もジェットストライカーからミサイルを発射してしっかり撃ち漏らしを始末してくれる。
さてこれで一つ片付いたね、上空のMS隊の接近を妨げる壁が消えたためウィンダムを先頭にダガーたちが街に雪崩れ込み所かまわずビームをぶちまける。
もちろん街の中にも敵部隊は配置されているため私もあとからついていくよ。
まあジェットストライカーをつけた連合機は普通にジンとかゲイツより強いからあんまり私いらないと思うけどね。
ふう~やれやれ、正直街中で戦うのは嫌いだ。
副次被害がひどいっていうのもあるのだが……デストロイだって無敵じゃないんだよねえ、巨体が災いして足元がお留守になりがちなんだ。
現にビルの死角から出てきたジンから突撃銃をぶち込まれているわけで。
巨体故の大容量バッテリーとフェイズシフトの組み合わせでかなりの耐久力を持っているデストロイだが、やはりバッテリーのインジケーターが少しづつ削れていくのを眺めるのは心臓によろしくない。
ビームに対してもそれなりに耐えられると言っても実弾ほどではない、ジンを片手間に処理しながらゲイツが潜んでいないか血眼になりながら索敵する。
こういうときに直掩機がいたら助かるんだけどデストロイは攻撃範囲が広すぎて味方を傍につけて守ってもらうのに向いてないのよね。
おっ、ヤバ、ゲイツがビームを撃ってきたのでリフレクターで切磋に防ぐ、いかにもおっかなくて恐怖をまき散らしてるデストロイだが乗ってる側も普通に怖いんだ。
バックパックに搭載されているネフェルテム503……たくさんくっついてるビーム砲で制圧するのが一番なんだろうがイマイチ気が進まない、派手にぶち壊すのは脳内麻薬がドバドバ出てきて思わず笑顔になってしまうほど気分がよくなるけど、私の中の常識がそれはいかんでしょと言ってくるんだよね。
もちろん必要になったら構わずぶっ放すけどもね、情けない話だけど根っこの部分が凡人である私は我が身が一番かわいいのだ。
そうしてなんかちゃっかりいたザウートを蹴り飛ばしたり味方のダガーを撃ってるゲイツを破壊していたらやがて帰投命令が下った。
もちろん街は見渡す限りの廃墟状態である。
そういえば、FREEDOMの時期だと帰還を想定せずに暴れまくってたブルコスだがこの時期だとひとしきり破壊したら普通に撤退している。
おそらく今は憎しみを増幅させるターンでコーディネーターの暴発を誘導するのを目的にはしてないんだろうねえ、悪辣だなぁ。
母艦に戻ってきてデストロイを待機状態にする、この子はこれから整備されるわけだがそこに私の出る幕はないのでとっとと退散することにする。
デストロイの操縦で凝った肩を回しながら生体CPUを管理している科学者たちの元に颯爽と舞い戻る私、彼らから無言で手渡された薬液を自身に投与してようやく一息つける。
この薬液は抑制剤だ、何の? と思うだろうから答えるけどγ-グリフェプタンの禁断症状を抑えるやつね。
いやぁ~これがないと薬が抜けきるまでの離脱症状が辛くて辛くて……抑制剤が開発されるまえのブーステッドマンたちには本当に同情するよ、追加のグリフェプタンを投与し続けないと廃人まっしぐらだなんて使い捨てもいいとこだ。
備品……もとい生体CPUを長持ちさせるためにグリフェプタン自体も改良してるようだけどやっぱりピンポイントで効果のある薬があるに越したことはないし。
ただこの抑制剤は私みたいな人を実験体にして作られたんだけどね、うーんこの。
薬関係も日進月歩で進化してるみたいだけど、もっとこう穏便なやり方で優しい効果のものを作って欲しいもんである。
とりあえず待機室まで戻った私はこれからのことを考える、というかコンパスについてだ。
まだコンパスのコの字も聞かないけど確かあの組織ってブルコスのテロがひどいからそれに対処するために結成されたのよね。
そんでもって今も絶賛テロをやってる真っ最中なわけでして、もうそろそろ設立されてもおかしくないよなぁ。
うーむ、ハッキリ言って生き残れる気がしない、あんなバケモンみたいな強さの連中とやり合えるわけないんですよね。
私がいる基地にはエクステンデッドがもう一人いるけどさぁ、そいつと一緒にいったところでチョロっと抵抗したあと淡々に処理される未来しか見えない。
ジブリール時代に運用された一線級の連中、それこそスティングとかステラでも主人公組にはあんまり対抗できてなかったのだ、補欠生体CPUの私らにどうしろと。
もうこんな職場脱走したいけどそもそも脱走できないし脱走しても野垂れ死にが関の山なのが完全に詰んでる、もう終わりだよ私の人生。