はーい、マユで~す! でもごめんなさい、いまマユは生体CPUになってるのでお話しできません 作:何を書けばいいんだ
はーい、マユで~す! でもごめんなさい、いまマユはお話できません。
なんかブルーコスモスにトドメを刺すってことでファウンデーション王国へ行くことになったからね、悪の総本山に乗り込むってわけだから心臓がドキドキだ。
それにしてもちょっと前に宇宙へ上がったのにすぐ地上に戻ることになるとは、コンパスってのは本当に目まぐるしい。
ずっとこんな生活続けていたらそのうち重力酔いか無重力酔いのどっちかになりそうだ。
しかしいよいよファウンデーションとの戦いが近づいてきた、プラウドディフェンダーは完成したのだろうか。
コノエ艦長が准将のワーカーホリックっぷりを愚痴ってたから開発は進んでるんだろうけど……。
とはいえ私が悩んでもしょうがない、とりあえず目の前でルナの姉御がヒルダの姐さんにセクハラされてるから逃げとくか。
さすがに子供には手を出さないと信じたいけどコンプラにうるさい昨今において、ここまで堂々とやらかす人を信用するほど私は迂闊じゃないんでね。
そうしてやって来たるはミレニアムのブリッジ、外にはファウンデーション王国の首都イシュタリアが悠然と広がっている。
はぇ~、すっごいお洒落な都市……こういうのアンティークって言うんだろうか、石造りの建物と近代的なビルが混在する街並みは歴史を感じさせながらも洗練されていて古臭さを感じさせないね。
ここを核で吹き飛ばすってマジ? ちょっともったいない気がするんですけど。
アコードは素直にこの国を発展させるって発想にならないのかなぁ、彼らの能力ならうまくやってやれないことはないと思うんだけど。
外面だけ取り繕わずに真面目に内政を充実させ続ければ彼らが老年に差し掛かる頃にはデスティニープランで成功を収めた一角の国ってことでDPの有用性を証明できたかもしれないのに。
やっぱりアウラが悪いよアウラが~、文字通り年を食った子供と言えども短絡的に動きすぎだよ。
別に彼女に限った話ではないけど大きな成果をポンと欲しがりすぎだ、せっかちが悪いとは言わないけど時間を掛けなきゃどうにもならないことだってある。
でもやっぱ、それも杞憂が杞憂で終わらないこの世界が原因なところもあるのかもな~、空が落ちてくるならぬレクイエムとかの大量破壊兵器が降ってくる世界だからそれにやられる前に世界を掌握するって気持ちもわからんでもない、多分アウラの人そこまで考えてないけど。
「左舷にアークエンジェル!」
おお、湖にアークエンジェルは映えるねえ、まるで白鳥のようだ。
ザバーンと豪快に着水するミレニアムとなんかスッと着水するアークエンジェルで操舵手の熟練度の違いがわかるね。
まあミレニアムは新造艦で習熟期間も少ないから今後に期待ということで。
しかしノイマンさんはさすが歴戦の操舵手って感じだ、当たり前の話だけどデカくて重いものほど操縦の難度は上がるからね。
私も大型のMAやらMSを操縦したことがあるけど、どれもアークエンジェルの半分以下のサイズにも関わらず質量で遅延する動作に振り回されてきた。
あそこまでスムーズに動かせるのは艦全体の形状と操作特性が体に染み込んでいて、艦と意識を一体化させるレベルにまで持っていけてないと無理だよ。
なんならミレニアムだって着水の時に船体が軋んでいない時点でやるなぁと感銘を受けているぐらいだ、コンパスってホントに精鋭揃いである。
さ~てそろそろ入港か……式典だから軍帽を被ってバッチリ決めないとね、制服は毎日アイロンがけしてるから問題なしだ。
ただ私は基本一兵卒でやってきたからこういうのはよくわからないというのが正直なところだ、担え銃で行進するのは慣れてるんだけどな。
一応ルナの姉御に一夜漬けで指導してもらったから無難に乗り切れることを祈る、それにどうせこっちは脇役なんだから多少間違ってても誰も見てないってヘーキヘーキ。
他に不安要素があるとすればアコードの読心能力ぐらいか。
記憶をそのまま読まれるわけじゃないだろうけど、私が彼らに警戒しているのがバレるのはちょっとよろしくないよね。
もちろん対抗策は考えてある、それは読まれてもいい考えを表に出してその裏で本命を考える……心に二重底の蓋を作り上げると言えばわかりやすいだろうか。
そんなこと可能なの? って疑問は出るだろうけど、こんなのデストロイの操縦してる時の平行思考を応用するだけで済むから慣れたもんよ。
だからファウンデーションに滞在している間は脳内に今までの戦闘映像でも垂れ流して読心を欺くよ。
どうせプラント経由で私のアレコレに関する情報は流れてるだろうし、頭のおかしい生体CPUとして認識してくれたら万々歳だ。
一応アコードがより深く心を暴こうとしたらこっちの仕掛けにも気づくだろうけど、そこは心配していない。
なにせ彼らは心が読めてしまうばかりに他者に疑念を抱くという発想が乏しいからね。
今見えているものが全てだと確信してそこで手を止めてしまう油断と傲慢にこそ付け入る隙があるってことだ。
まさか向こうも私が宇宙からの謎電波で読心能力をあらかじめ知ってるだなんて想像もしないだろうし、読心能力を知らないはずの人間が読心対策をしてくるなんてまともな脳みそをしていたら考えるはずもないでしょ。
「ようこそ姫。ファウンデーション宰相、オルフェ・ラム・タオです。おいでを心より歓迎いたします」
私たちは今しがたファウンデーションのヘリポートに乗りつけ、そこでブラックナイツから出迎えを受けているところだ。
左からなんかキャラの薄い赤毛の男リュー・シェンチアン、マスクをしたダニエル・ハルパー、アコード最強のシュラ・サーペンタイン、オルフェの側近で恋煩いをこじらせているイングリット・トラドール、闇に堕ちろのおにぎり頭グリフィン・アルバレスト、生意気な毒舌女リデラード・トラドールが並んでいる。
そして一歩前に出て挨拶しているこの金髪の優男がオルフェか。
なるほど確かに気品に溢れているし総裁と似たような一種のカリスマも纏っている、運命の相手と言うのも吹かしというわけではなさそうだね。
ただ偏見かもしれないけど丁寧な物腰からはどこか軽薄さが感じられる。
慇懃無礼とまではいかないけれども……これから騙し討ちする相手だと思って内心ほくそ笑んでたりするんだろうか。
「コンパス総裁、ラクス・クラインです。お目にかかれて光栄に存じます」
そう言って二人が握手をすると、なんかお互い固まってしまった。
これが感応ってやつなのかな? 傍から見たらちょっとボーっとしてるぐらいにしか見えないけど。
「ラクス……?」
ほんの二秒程ではあるが、固まった総裁を不審に思って准将が小声で促すと我に返ったようだ。
准将の彼女を寝取ろうとするとは、オルフェって奴はけしからんな。
そしてオルフェに先導されて王城へと歩き始めたら、今度はスパムテレパシーを送られたらしく准将が固まった、危うく背中に激突するところだよまったく。
そうしてやってきた謁見の間、目の前にはアウラがいる。
思ったより小っちゃいな……あとお化粧が濃い。
アンチエイジングの薬液を浴びてこうなったみたいだけど恐ろしいな、新手の非殺傷兵器か何かだろうか。
総裁とアウラが形式的な挨拶をやってる間こっちは周りに合わせて頭をペコペコ下げるだけだ、楽ちんで大変結構。
そして向こうも特に長話をすることなく簡潔にまとめてくれたので謁見はすぐ終わった。
この後はエルドアでの共同作戦の打ち合わせなり何なりがあるわけだけど、まずは歓待を受けて旅の疲れを癒すみたいだ。
そういうわけで夜会までの時間潰しとしてヤマト隊とムウさん一同でイングリットに宮殿内を案内してもらっていたら、ブラックナイツのシュラとリューがサーベルでチャンバラをやっている場面に出くわした。
銃の時代に剣の訓練なんてしてどうするんだという考えもあるだろうけど、まったく無意味ってわけではない。
MSのビームサーベルを扱う時の参考になるからね、ブラックナイトが装備してるのは対艦刀に近い武器だって? まあ……いいじゃんそういう細かいことは。
そうやって眺めていたらリューのサーベルが弾き飛ばされてこちらに……なんか思った以上に近くて危ないから准将の前に出ていってキャッチしとくか。
こういう時に義手ってのは便利だね、刃の部分を持っても怪我しなくて済むんだから。
サーベルは柄の部分に持ち替えて地面に刺しておく、程々の切れ味だ。
よくもまあ真剣使って訓練なんてできるもんだよ。
「マユ……!? このぉ……!」
お兄ちゃんが滅茶苦茶シュラたちを睨んでる。
やめなよ失礼でしょ。
「一手、御指南いただけませんか? ヤマト隊長」
悪びれもせずに挑発してくるシュラ。
准将がたじろぐと他のブラックナイツたちも挙って揶揄し始めた。
「へ~、剣が使えない隊長さんかい」
「コンパスっての、案外大したことないんじゃな~い?」
「それはこの間実証したし……」
こいつら軍規はどうなってんだ軍規は。
准将ってのは将官だぞ、すごく偉いんだぞ、政治とかにも関わる人だぞ。
まったく、もしキラさんが連合軍の人間だったら一発ずつ修正を食らわせてやっていたところだ。
「お客人に失礼ですよあなたたち!」
「……隊長! ここは俺が……!」
イングリットがちょろっと窘めるけどお兄ちゃんはそれじゃあ収まりがつかないみたい。
あんな刃引きもしてない剣でやり合うのは危ないからやめてほしいな。
生兵法は大怪我の基と言われるように素人ほど怪我をしやすいんだ、刃で切りつけたりせずとも体を変に動かして筋を痛めたりすることだってあるんだから。
「お兄ちゃん剣なんて使ったことないでしょ、やめときなよ」
やるならせめて訓練を積んだナイフでやってくれという思いを込めてお兄ちゃんを引き留めるよ。
「大丈夫だッ! 剣なら使えるッ!」
「え? そうなの?」
そうだったんだ、私はてっきり完全に素人だと……。
まあ私の知識だって割と穴だらけなんだしお兄ちゃんがどこかで剣術を学んでる可能性は十分にあったしね、それなら勝てずともやらせてみてもいいかもしれない。
「剣の扱いならアロンダイトでッ……!」
思わず素っ転びそうになった。
アロンダイトって……あのさぁ~……! お兄ちゃんはデスティニーにでもなったつもりなのだろうか。
人間とMSは参考にできる部分はあっても根本は全然別物だから! そういう台詞は姿勢制御用のスラスターなりヴォワチュール・リュミエールなりを体にくっつけてから抜かしてくれないかな。
ああもう顔から火が出そうだ。
気合満々で前を向いているお兄ちゃんは気づいていないだろうけどヤマト隊一同みんな呆れちゃってるよ。
ルナの姉御は頭に手を当てながらシンのバカって言ってるし、アグネスはここまでバカだったなんてねってドン引きしてるし、ムウさんもやれやれってお手上げポーズだ。
なんでも好意的に受け取ってくれる准将も今回ばかりは苦笑いだし。
これが私のお兄ちゃんかぁ、今から二時間ぐらいだけ絶縁して他人になれないかな~。
「ま、やらせてやれよ」
はい……フラガ大佐……。
もうどうにでもなれだ、お兄ちゃんがんばえ~と心の中で応援してあげよう。
それでシュラと打ち合いを始めたお兄ちゃんなわけだけど……うーん、対艦刀だなぁ。
サーベルは刀身の重さを利用して撫でるように切りつけるべきなのにお兄ちゃんは腕力に任せて叩き切る使い方をしてる。
その後、お兄ちゃんも頑張ってはいたのだが背後に回られた際に振り向くのが遅れ、サーベルを弾き飛ばされて負けてしまった。
お兄ちゃんはまさかそんなって顔してるけど私たちはまあそうなるよねって態度である、ただ首スレスレに突きつけるのはちょっとヤバいだろって感じだ。
「なんだよ、フリーダムキラーも大したことないな」
「よく持った方じゃない? アハハ!」
好き勝手言ってくれるな~、でも油断してくれる分にはありがたいか。
「やはりアスラン・ザラが最強か」
「はぁ!? 誰があんな――」
「やめろ! シン!」
お兄ちゃんが准将に注意されちゃった。
も~、相変わらず堪え性がないんだから。
そしてシュラがこちらにサーベルを突きつけると私は反射的にムウさんのホルスターから拳銃を抜いてシュラに向けてしまった。
あ、やば……ち、ちが、これは刷り込みのせいで……あ~あ、シュラがキョトンとした顔でこっち見てるじゃん、これじゃ私もお兄ちゃんのことあーだこーだ言えないよ。
「銃を降ろすんだマユ!」
「はい……すいません……」
怒られちゃった。
「サーペンタイン団長! いい加減にしてください!」
イングリットさんもっと言ってやってくれ、ここは喧嘩両成敗ってことで誤魔化そう。
「フッ。いやすまなかった、あのキラ・ヤマトと会えるとあって思いのほか興奮してしまったようだ。君の指揮で戦うのを楽しみにしている」
そう言って彼らは去っていった、ただシュラだけ私に流し目していったな。
なんだろう、私に纏わりついた戦いの匂いでも嗅ぎ付けたのだろうか、脳内でずっと戦いに関するあれこれ垂れ流してるし。
「アンタってホントに情けないわねぇ。何がアロンダイトよ、バッカじゃないの?」
「う、うるさいな!」
「そこまでにしといてあげなさいよアグネス」
そうだそうだ、この件の追及はここまでにして忘れてください、お兄ちゃんの恥ずかしいアレコレは出来る限りなかったことにしたいんだ。