はーい、マユで~す! でもごめんなさい、いまマユは生体CPUになってるのでお話しできません   作:何を書けばいいんだ

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悪夢の予兆

 はーい、マユで~す! でもごめんなさい、いまマユはお話できません。

 エルドアでヤマト隊に混じってミケール捕縛に行くことになったからね、ひとまず最初の関門は超えたようで一安心だ。

 さすがに准将に進言する時は緊張したがオルフェとアウラがこちらの思惑に乗ってきて執り成してくれた。

 悩む総裁と准将にファウンデーションの民の為にも是非にと沈痛そうな表情で訴える姿は本気でブルーコスモスの脅威に晒される民を思う為政者の物だったよ。 

 准将もミケールを絶対に捕らえないといけないと強迫観念にも似た思いを抱いているし、総裁もそんな准将の姿に精神をやられ気味だったのであっさりと流されてくれた。

 

 まあ会議が終わったあと他の面々に困った子を見る目で見られてしまったけどね、そんな目で見ないでよ。

 しかもルナの姉御には昔のシンを見ているようだと言われてしまった。

 お兄ちゃんを悪く言うつもりはないけどあんな独断専行で命令違反の常習犯と一緒に扱われるのは非常に遺憾である。

 私はやり方は兎も角ちゃんと許可を取っていると抗議をしたらその悪知恵を賞して拳骨を賜ることと相成った、大変身に沁みる思いであります。

 

 そういうわけで私は今アークエンジェルに乗っている。

 今回の搭乗機はムラサメ改、他部隊の予備機を使わせてもらうことになったよ。

 ただムラサメに関してはシミュレーターで何度か訓練したことはあるけど実機は初めてなんだよね。

 でも空戦型の可変機ならファントムペインがまだ存在してた時期にレイダーを乗り回した経験があるから何とかなるでしょ。

 

 今回の作戦はユーラシアとファウンデーションの軍団でエルドア地区を包囲してミケールの脱出を防ぎつつコンパス部隊が敵の要塞に突入して制圧するという手筈だ。

 奇しくも作戦が進むと自然にファウンデーション部隊に包囲される陣形を取ることになる……これエルドアへ潜伏するっていうのもあっちが一枚嚙んでるんじゃなかろうか。

 考えれば考えるほど不利な状態だ、こんなところに飛び込むなという兵士としての感性とお兄ちゃんたちが危険な目に遭うのを見過ごせないという私の心がせめぎ合ってるよ。

 

 ……今更言っても仕方ないか、ムウさんに続いてシキシマ隊とマホロバ隊が発艦した後こちらも出撃する。

 ふむ、ムラサメのスペックは確認済みだけど実際に飛ばしてみると随分と軽いな、レイダーとは操縦感がはっきりと違うのがわかる。

 速度といい反応性といいレイダーよりも直感的に操れるのが優れてるね、ただちょっと防御力に難があるから一撃離脱のスタイルでいくのが良さそうかな。

 

 要塞に接近する道すがら追いついてきたフリーダムの後ろに張り付く。

 フリーダムとジャスティスはその速度で以て突出、敵を薙ぎ払いながら進みそれで減速したところに私たちが合流して残敵掃討という流れを繰り返して浸透する。

 部隊ごとに性能の違うMSが配備されている関係で可能な限り素早く足並みを揃えて進撃するためにはどうするかということでこの戦法が採用された。

 しかしブルーコスモスはもう戦力が払底したのか、どの機体も動きが悪くて有り体に言えば弱いね、慣らし運転には丁度いい。

 

 そうやって楽々と防空陣地を突破していくと高出力のビームが一筋、後ろの森林地帯を薙ぎ払う。

 

「さがれ!」

 

 准将の警告と共に現れたのはお馴染みのデストロイ、でもオンボロにも程があるね。

 片腕なしでスキュラも一門塞がっている、しかも背面の兵装ユニットすら取り外された情けない姿だ。

 動きもガタガタで整備不足が見てわかるしパイロットもかなり質が低いな……。

 ただ不意打ち気味に放たれたスキュラで味方のムラサメが被弾した、撃たれたのは足と腕ではあるけど軽い機体なのが災いして衝撃で吹き飛ばされるまま態勢を立て直せず墜落してしまった。

 

 そしてその流れ弾がエルドアの居住区域に直撃、逃げ出した市民の中に紛れ込んでいたブルーコスモスのテロリストが自爆攻撃でファウンデーション軍にも被害が発生してしまった。

 ただの砲台をやってるだけで厄介な相手だよまったく……墜とすか。

 

 ムラサメを飛行形態に切り替えて突進、デストロイは迎撃してくるけど狙いも甘いし射線も少ない、前面投影面積の少ないムラサメなら簡単に抜けられる。

 速度はもちろん全速、地面に突っ込む勢いだ。

 このままいけば地面に激突して爆発炎上だが問題ない、デストロイとの間合いを見切ってMS形態に変形、空力特性の変化で一気に減速する。

 内臓に掛かる負担が凄いけど私ってそこらへん強化されてるんでへっちゃらだ。

 

 至近距離に近づかれたデストロイはリフレクターを掲げて身を守ろうとするけどそいつは悪手だ、サーベルを引き抜いて突き立てればもう機体を守る盾はなくなった。

 雑に撃たれたスキュラとツォーンを自由落下で躱しながらデストロイの足元を飛ぶ、この位置はネフェルテムとスプレッドビームがないと射線が通らないからね、キックでも使えるなら話は別だけど……あの反応の鈍いパイロットじゃあ無理でしょ、蹴るまでもなくひっくり返るのが目に見えている。

 そしてコックピットに向けるのはビームライフル、グッバイお仲間さん、悪いけどこれが仕事なんでね。

 

 トリガーを連続で四回引く、一点に放たれたビームはデストロイを貫きその巨体を炎上させながら打ち倒した。

 いかに強固でビームに対して多少の耐性を持っていたとしても、この至近距離かつ連続で撃ち込まれれば耐えられるわけがない。

 

 ちなみに連続で発射されたビームライフルは熱を持ち、冷却前に撃つと故障してしまう。

 つまり今ムラサメのライフルは数秒間使用できない状態である、これは明確な隙となる。

 

「マユ!」

 

 ジャスティスの射出したフラッシュエッジが周囲のダガーを撃破してくれたね、やっぱり持つべきものは頼れるお兄ちゃん……もとい僚機だ。

 

『エルドア市街地の負傷者を至急救助せよ! よろしいですね?』

『やむを得ん。エルドア地区に限り、救助活動を許可する」

 

 むむ、ユーラシアの将校がエルドア地区へのファウンデーション軍侵入を許可する通信が。

 ブラックナイツが動き出し無人機の大群もそれに続く。

 そして唐突に明後日の方向へ飛んでいくフリーダム、わかってても前触れなく突っ走られるとさすがに驚く……これがアコードの精神干渉か、何の予兆もないとは厄介な。

 とにかくここは追いかけておくか、正気に戻せるならそれに越したことはない。

 

「隊長どうしたんですか!」

「ミケールを確保する! シン、援護を!」

「は? だって……え?」

 

 このまま飛んでいけばすぐにユーラシアとの軍事境界線だ、いくら快速のムラサメといえどフリーダムとの追いかけっこでは分が悪いのかグングン距離が離される。

 

「ヤマト隊長止まってください! そちらの方角にミケール大佐はいません!」

「いや! ミケールはそこにいるんだ! 逃がすわけにはいかない!」

 

 准将は聞く耳持たず、声色に平静さがなく強い焦りが見える。

 

『フリーダム! 直ちに引き返してください、キラ!』

 

 本部から総裁の声も聞こえてくるけどそちらにも耳を貸さないんだ、私の言葉が届くわけもないか。

 ムラサメのミサイル――六八式空対空誘導弾――の照準をフリーダムに向ける……向けはしたがどうしようもないな、攻撃許可も出てないし出た時にはブラックナイツも来るだろうし。

 

「どうしたキラ! 境界線に近づいているぞ、何してる!」

 

 ムウさんも制止するけど効果なし、ひたすらミケールを捕らえるのだと言っている。

 

「クソッ、嬢ちゃんはこっちに戻れ! お前さんまで境界線を越えちまったら話にならん!」

「……了解」

 

 まあ、業腹ではあるがここまでは想定通りだ、ムラサメを旋回させてジャスティスに合流しよう。

 背後ではユーラシアから警告射撃を受けるフリーダム、機内にはコンパス内の混乱に満ちた通信が飛び交っている。

 今はとにかくブルーコスモスの数を減らすのを優先する、ブラックナイツの奇襲に備えなければ。

 

「まて……クライ……総裁……」

 

 レーダーと通信機器に異常が発生した、NJダズラ―での妨害も来たか。

 一応ミレニアムに通信を飛ばすけどまったく通じない、距離が離れるほど通信精度が落ちるみたいだ。

 というかそんなことを確かめている間にもブラックナイトスコードがフリーダムに攻撃を仕掛けている、ちょっと速すぎでしょ。

 レヴィテーターで重力の影響を受けないとはいえ……額面のスペックは知っているが実際に目の当たりにすると驚異的だ。

 

 強引に弾幕を切り抜けてジャスティスとフォローしあえる距離まで近づく。

 これでようやく最低限勝負の土俵に立てる、いや……分の悪い賭けってところかな。

 

 お兄ちゃんが准将を救うべく飛び立つのを見守りながら周囲のブルーコスモスを手早く処理する。

 ジャスティスと交戦している二機のブラックナイト、そのうちの一機が離脱してからが本番だ。

 そしてお兄ちゃんがブラックナイツの一人、グリフィンと一対一での戦いに移った瞬間ムラサメで割って入る。

 

「お兄ちゃん!」

「マユっ……!」

『ハッ、ザコが一匹増えたところでなァ!」

 

 私のやり口は簡単だ、お兄ちゃんを援護しつつグリフィン機を二対一で襲って撃墜する。

 ブラックナイツはたった七人の超少数精鋭体制の組織だ、たった一人欠けるだけでその戦力がガタ落ちする。

 この後に控えているレクイエム攻防戦をより有利に進めるためにここでファウンデーション側の戦力を削っておきたいところである。

 

 ちなみにグリフィンを選んだ理由はこれまた単純。

 まずダニエルとリューは論外、二機同時に動いている相手はさすがに無理だ。

 そしてシュラ、フリーダムと協力できる相手だが最初の奇襲を乗り越えるのが厳しく、そこを越えたとしても相手はアコード最強であろうシュラ、ムラサメでは物のついでに撃破されかねない。

 次にリデラード、彼女は後始末の為に一機で孤立しているが共に戦ってくれる味方もいない、ムラサメでやり合うのは厳しいだろう。

 そういうわけで消極的に選ばれたのがグリフィン、無人機を除けば単騎かつお兄ちゃんのジャスティスと協力できる相手だ。

 ジャスティスなら近接武器に恵まれているのでフェムテク装甲相手に一番可能性がある機体とも言えるし、お兄ちゃん自身もブラックナイト四機を相手取って勝利できるだけのポテンシャルを持っているからね。

 

 ムラサメのCIWSでジャスティスに飛来するミサイルを叩き落しつつ、碌に回避行動も取れないジンとディンを破壊する。

 この機体ではブラックナイトと直接戦闘するのは危険だ、故に援護に徹する。

 

 味方の状況は……なんとも言えないな、戦術マップに異常がある上にIFFではファウンデーションが味方として表示されているから目視じゃないとよくわからない。

 通信も至近距離のお兄ちゃんとは良好だけど無人機の攻撃で分断された友軍とは微弱だ。

 くそう、盲目にでもなった気分だ、目の前の敵にすら集中できない。

 イシュタリアに核はもう行ったのか、アークエンジェルはどうなってる。

 

「こいつら一体……!」

 

 まずいお兄ちゃんが押されてる、なにぶん爆発力重視だからこういう錯綜した情勢だと実力を発揮しきれないか……いやいやそこを私が何とかするのが今回のキモなんだから気張らないと。

 どうにか割り込んでミサイルでもぶつけてやりたいところだけど……速すぎるしビームマントの残像による撹乱で当てにいけない。

 せめてビームライフルが効果的なら牽制もしやすいんだけど……。

 試しに無人機を倒しつつブラックナイトがジャスティスと鍔迫り合いになったところにサーベルを抜いて突っ込むがあっさりと躱された。

 経験ではもう少し欲張ってもいいけど相手が相手、さっさと変形して一目散に距離を取る、無理に追いかけてくれるならお兄ちゃんがやってくれるんだけど……ダメだね、こっちの思惑は全部お見通しか。

 

 困ったな……思った以上にアコードが強い、読心能力で奇襲がまったく通じないのが痛いな、機体性能で押せるわけもないし搦め手も無意味ときた。

 無理をすればミサイルかビームライフルを当てるぐらいはできるだろうけど、それはフェムテク装甲で防がれてしまう、どうすればいいんだこれ。

 ヤキモキしていたら戦術マップが機能しなくなった、反射的に周囲を見回すと黒煙を上げるアークエンジェルと無人機の増援がこっちに向かってくる姿。

 アークエンジェルの管制機能による情報支援が途絶したか。

 

「アークエンジェルが……!?」

『よそ見してんじゃねえよッ!』

「お兄ちゃん前!」

 

 動きが止まったジャスティスにブラックナイトが突っ込んでくる、ジグザグとめんどくさい動きしやがって! しょうがないからジャスティスにミサイルをぶち当てて無理やりお兄ちゃんを逃がす、こういう時にPS装甲は便利だ。

 

「ぐぁ! すまんっマユ!」 

「敵から目を離さないでお兄ちゃん!」

 

 状況を鑑みるにエルドア地区が核で吹き飛ぶまであと十分弱ってところか、こうなったら時間切れまで粘って――

 

『へぇ~、お前ら兄妹か』

「だったらどうした!」

 

 なんだろう、どうしてグリフィンは突然そんなことを……?

 いや、この背筋が凍えるような、自分が塗り替えられていく感覚はまさか……!?

 

『こうしてやるんだよ。闇に堕ちろ、マユ・アスカ』

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