はーい、マユで~す! でもごめんなさい、いまマユは生体CPUになってるのでお話しできません 作:何を書けばいいんだ
「MS隊射線軸より退避! ローエングリン、発射!」
クサナギの特装砲がザフト艦隊を貫きレクイエム外殻部に更なるダメージを与える、さすが破城砲と呼ばれるだけの威力はあるね。
私も仕事をしていくとしようか。
慣れた手つきでデストロイの主砲――アウフプラール・ドライツェーン――を操作、狙いはザフト艦隊だ。
放たれた極太のビームは奇襲を受けて動揺していたザフト艦の横っ腹を貫き一瞬で四隻を沈める、そこから薙ぎ払って更に二隻。
こう派手にやるのは久々だ、薬の影響もあってか頭はクリアで気分も透き通る、心拍数が増え戦意が高揚し加虐心が刺激され……深呼吸をして冷静さを取り戻す。
これで高笑いしながら突っ込むのが並みの生体CPUだ、私はそうはならないよ。
『バカな!? デストロイだと!? なぜアレがこんなところにいるッ! 奴をレクイエムに近づけてはならん、撃ち墜とせ!』
初撃としてはバッチリ、いきなりデストロイが出てきたらそりゃあ驚くよね。
反撃のエネルギー収束火線砲を陽電子リフレクターで余裕綽々で防いだら返す刀でもういっちょドライツェーンだ。
あっちも回避運動を始めているからそう何隻も巻き込むことはできないが、こちらに攻撃して動きの鈍った敵を一撃で轟沈させた。
今更な話だけど戦艦ってのはそう易々と沈むものじゃない、基本は同クラスの主砲を何発も食らって船体が崩壊するとか対艦ミサイルを雨あられと降らされて内部で誘爆しつつ爆散、あとは肉薄してきたMSにバイタルパートをピンポイントで撃ち抜かれて破壊されるって感じである。
こうも一瞬でポンポンと沈んでいくのは単純にデストロイの火力がおかしいから、ビームが減衰しやすい地上でも一撃で陸上戦艦を墜とすようなバケモノなんだよね。
しかもこのデストロイは新型のパワーエクステンダーを搭載されていてバッテリー容量が大幅に増加するのと同時に副次効果で武装や駆動系など機体各部の出力も底上げされているアップグレード版だ。
レクイエム発射という実質的なタイムリミットがあるこの戦場でなら最初から全開フルパワーで戦ってもエネルギーの心配をする必要はないだろう。
やっぱりオーブのバッテリー技術は世界一!
さすがに開戦十数秒で暴れすぎたのかザクが散開しつつ突っ込んできた、対デストロイの戦法はもう広まり切っているから向こうもセオリー通りにやってくるか。
「取舵最大戦速、対MS戦闘開始! ムラサメ隊はデストロイを援護せよ!」
アマギ一尉の指示でムラサメが私の直掩に付く、クサナギとの数は半々ってところか。
ローエングリンは冷却中、つまり本部隊の最大火力は私のデストロイってことになる、この指示は艦隊撃滅に専念しろって意味合いもあるね。
対艦誘導ミサイルを計二十門搭載されているネフェルテムで迎撃していく、こっちの多目的ミサイルは念のため温存しておこう、ビーム主体のデストロイにとっては数少ないブラックナイトに通用する武装だ。
それじゃあザクの相手はムラサメに任せつつ敵艦を狙っていこうか、優先目標はナスカ級だ。
ザフトの主力艦でありMS母艦でもある艦だけど、こいつは何よりも足が速い。
こっちは敵の防衛網を食い破って前進していかないといけないのに、敵を撃ち減らしたそばから速力を活かして戦列を埋められたら進むに進めないからね。
全長二五五メートルのデカい的だから狙いやすくて助かる、ドライツェーンを一発撃てば一隻沈む、向こうからすれば悪夢のような光景だろう。
でも今の戦況では攻撃ばっかりするわけにもいかないのが辛いところだ。
なにせ敵の数が多い=敵の攻撃密度が高いってことになる、デストロイは陽電子リフレクターで守れるしムラサメも遠方からの砲撃なら回避できるだろう。
けどクサナギだけはそうはいかない、プロトアークエンジェルとも言えるクサナギはこの時代においても高性能な艦ではあるけどそれにも限界はある。
ただでさえデカい上にたった一隻しかいない母艦なんて狙われるに決まってるよ。
ところでデストロイにはシュトゥルムファウストというドラグーンが二基装備されている、腕部のやつね。
そしてこのドラグーンにもそれぞれ一基ずつ陽電子リフレクターが装備されているんだ、つまり……。
私はドラグーンを射出してクサナギの前面に配置した。
やることは単純、クサナギに飛んできた攻撃をドラグーンをチマチマ操作してリフレクターでキャッチするだけ、難しくない? しかもそれをやりながらデストロイ本体の攻撃と防御もしなくちゃならない。
まったくひどいワンオペもあったもんだ。
ドライツェーンの砲身状態に目をやりながらどれぐらい熱が溜まっているのかを確認、宇宙は空冷が効かない分この辺の管理がタイトになる。
大型のラジエーターを積んでいると言ってもあんまり連射しすぎたら壊れちゃうからね、地上と同じ感覚でギリギリを攻めるとアウトだ。
ったく、ただでさえデストロイは操縦が面倒なのにこれだもんなぁ~。
そりゃあ私だって昔と違って訓練でかなり腕を上げたよ? なにせコンパスのMSシミュレーターは世界各国の機体のデータが詰まってるから色々な機体で訓練を積めた。
今やってるドラグーンの操作だってストフリやレジェンド、あとはプロヴィデンスで慣らしたんだからね。
そこにプラスアルファで薬物強化を入れてようやくギリギリ回せてるって状態だ、でも……ちょっと期待が重いかな。
まあでも味方に文句を言うつもりはない、ここで戦っているのはオーブ軍の中でも優秀な人たちを上から順に選んでいったドリームチームのようなものだし。
ムラサメはザクをこちらに寄せ付けないように奮戦してるし、私が援護してるクサナギだって敵が攻撃力を発揮できない地点に絶えず移動することで防御の負担を減らしてくれている、操舵うまいっすね。
ドラグーンのエネルギー量を見て適宜帰還させながら再発射、敵もデストロイを潰すのは厳しいと踏んでアンチビーム爆雷を投射し始めた。
向こうのビーム兵器も封じられるとはいえこの状況だと時間稼ぎに徹されるのも面倒だなぁ。
とはいえアレだって万能じゃない、ビーム攪乱幕の隙間を縫うように撃ち込むだけだ、狙える敵が限定されるけどとりあえず頭数を減らすのも大切ってね。
「後方より高速接近する熱源あり! 数は三!」
およ? 前の敵に集中しすぎて後ろに回り込まれたかな、幸いデストロイなら真後ろにも射角が取れるので感覚をキリキリ尖らせながらネフェルテムを動かすけど……ある程度近づくとレーダー上で機体が識別された、そこに表示された型式はTS-MB1B。
ユークリッドだねこれ、連合の部隊が援護に来てくれたみたいだ。
猛スピードで突っ込んできてクサナギと並び合うユークリッドたち、全長五十メートル以上で縦に並べたならばMA形態のデストロイよりも余裕でデカいやつなのだ、まあ全高は二十三メートルぐらいだから正面からだとデストロイの方が大きいけどさ。
何はともあれリフレクター持ちが来てくれたのは頼もしい、ドラグーンを戻してユークリッドにクサナギの防御を任せる。
続けてするのはデストロイを前に出しながらユークリッド隊への通信……と言ってもちょっとした符丁を伝えるぐらい、一言で済む。
すると彼らは了解と返しながら三機のうち二機がデストロイの左右に展開した。
別に特殊なことをするわけじゃない、ただのスタンダードフォーメーションってやつだ。
そして前衛として機動戦を行っていたムラサメを私たちMA隊の付近まで後退させる。
じゃあ準備が整ったのでデストロイで号砲を鳴らそう、ムラサメの壁がなくなったことでこちらに雪崩れ込んでくるザクに向かって主砲をぶっ放す。
直撃と貫通、余波で損傷とまずは出鼻を挫けた、勿論それだけで止まるような敵じゃない、特に宙間戦闘は三次元機動が容易だから回避もしやすい。
そこに追加で刺さるのがユークリッドの高エネルギービーム砲――デグチャレフ――だ、通常装甲のザクを貫通してこれまたポコポコ撃墜していく、ついでにデストロイのネフェルテムもばら撒いて火線を増やしちゃうよ。
そしてそれらのビームを連射だ連射! MA特有のバカでかい冷却器でどんどん冷やしてビームを垂れ流す、相手は死ぬ! 特に高出力で照射時間の長いビーム砲は上記の通り貫通するので点ではなく線での攻撃になるんだ、そのまま撃ちまくるとビームが線から面の攻撃へと段々変わっていく。
これをやり過ごすのはとても難しい、中の人が反応できても機体の限界速度とサイズがネックとなり回避不能へと陥るのだ。
昔の面攻撃と言えばミサイルだったんだけど搭載数と装甲技術の向上、それと迎撃能力の増加等の理由で以前と比べて効果が薄くなってしまったからね。
その代替とは言わないけど新たな弾幕形成手段として大出力のMAの砲台化に目が付けられた結果がこのフォーメーションだ。
けどコーディネイターの操るMSを駆逐するのにはまだ足りない、そこを補うのが直掩のMS隊となる。
「そこだッ!」
ビームの弾幕を器用に抜けてきた敵機がムラサメのライフルで撃ち抜かれる。
あれだけの攻撃を抜けてきたのに呆気ないなと思うかもしれないけど、あっちからすれば全方位MAのビームで埋まってるようなものだからさ。
無理にムラサメの攻撃を避けようとしたら私らのビームに捕まって爆散するだけのこと、この即席のキルゾーン敷設と手首を動かすだけで精密に射角を調整できるMSとの連携がこの陣形のキモってわけ。
強いて言うなら本当はもっと物量を用意してやるべきなんだけどね。
クサナギ一隻を中心にした極狭い戦線かつ、月面のおかげで敵の侵入角が制限されているからこそ通用している状態だ。
そうやって網を張って耐えていたらようやくと言うべきか、連合の残存艦隊がゾロゾロと前線に辿り着く。
ドレイク、ネルソン、アガメムノンと連合お馴染みのメンツにちょびっとだけどっから来たのかイズモ級が混じっている、鬱陶しい識別の通知を切りながらクサナギの前面に展開して再度火力を投射するよ。
前にいたら邪魔だどけぇ! と思われるかもしれないけど一尉は合流してくる味方の掌握で忙しいからね、回避運動の指示とかを出してる場合じゃないから私らで壁になって艦隊指揮の方に集中してもらうためだ。
こんな感じで頑張ってると艦隊陣形もようやく様になってきた。
味方の機体はそれなりの数のウィンダムにちょいちょい混じる105ダガー、ストライクダガーとかいう骨董品からは目を逸らそう。
ユークリッドは少数とはいえ頼みの綱にできる程度には残存しているしちょっと離れた所で飛び回っているあのバカでかくて特徴的なシルエットはザムザザーかな……実は生で見たのは初めてだけど唖然とするぐらいのサイズだ。
さて、本格的な会戦が始まったわけだが……彼我の物量は大体互角ぐらい、質の差を考えるとやはり不利だね。
けど思ったよりも連合将兵の粘りが強いのは嬉しい誤算だ、艦隊が壊滅しても突っ込んでくるような人達だけあってか士気は旺盛なようす。
まあ相手はレクイエムぶっぱマンだから必死にもなるか、彼らにだって守りたい家族と故郷があるんだ、モスクワの惨状を見れば尻に火が付くってもんよ。
それにアコード達は要求を呑めば撃たないって演説してたけどそんな甘い言葉を信頼するほどこの世界は平和じゃないし、絶滅戦争をやったって事実は伊達じゃないのである。
しかし気合とやる気だけで勝てたら苦労はしない、頑張って不利な戦況の所を互角に渡り合っているわけだけどこっちには時間制限がある。
「全艦、全MS部隊は前進! 敵陣を突き破りレクイエムを制圧せよ!」
一尉もこのままだと押し切れないと分かってるみたいだ、連合軍では個人技がモロに出る近接戦じゃなくてセンサー性能で決まる射撃・砲撃戦に持ち込むのが基本だけど状況が状況だしね、MA軍団の火力支援で無理押しするしかない。
そうしてグイグイ前に出て押しまくる連合軍、敵に肉薄しようとするのはザフトの十八番なのにこれじゃ普段と真逆の戦いだ。
でもやけに優勢だな、敵の防御が嘘のように溶けて自軍が浸透している。
キミらこんなに強かったっけと思って戦況図を見て納得、これ予備軍も投入してるね。
予備軍ってのはそのまんま交代要員のことだよ。
人間の集中力というのはあまり長く持たない、戦闘という極限状態なら尚更だ、そして集中力の低下すると当然戦闘力も大きく下がる。
それを防ぐために前線部隊とローテーションを組んで補給と休憩を交互に行う為の仕組みだ、少し深呼吸をして肩の力を抜くだけでも精神はかなり回復するからね。
こうやって常に一定の戦闘力を保った兵士が正面に立てるように工夫しているわけ、まぁ一部のエースは延々と戦い続けてたりするんだけど……。
とにかく、こうやって予備を投入すると前線で数的優位が生まれる。
しかしこの優位は時間制限ありのものだ、最初が一番強くて後になるほど兵士が疲弊してどんどん弱くなっていく。
押し切るのに失敗したら総崩れになって敗退必至の諸刃の剣ってとこかな。
ここは生体CPUとして一肌脱ぎますかね。
デストロイを中央戦線から下げて右翼側に移動させるよ、デカいデカいと言われるデストロイだけど艦船と比べると流石に小さいし周りにユークリッドがいると案外目立たないもんなのだ、コソコソと移動しながらアマギ一尉に通信を飛ばして部隊を貸してもらおう。
「了解したデストロイ。ユークリッドとウィンダムを向かわせる」
カルガモのようにチョロチョロと行進してやって来たるは戦列の左翼、中央が一番戦力が多くてそこから遠ざかるほど少なくなるってことでここも大して敵がいない。
そこを私らコーディネイターバスターズで切り崩そうってわけよ。
大戦力を他の戦線から引き抜いて大丈夫なのかって疑問はあるけど……私たちは義によって立ってるから大丈夫でしょ、ヘーキヘーキ。
というわけで過剰戦力で一気に叩き潰して突き進む、叩き付けられるビームの嵐にザフト軍は見るも無残に爆散しそこに空いた穴を埋めるが如くドレイク級とここを仕切っていたネルソン級が詰め寄せる。
ほんの数十秒間の奇襲的大攻勢によりザフトの右翼が文字通り消し飛んだ。
これの意味するもの、それは手隙となった味方の左翼部が進出することによる中央戦線に対する十字砲火が可能となったということだ。
瞬く間に半包囲陣形を作り上げてザフトを挟撃するよ、いや~戦艦の横っ腹は大きいねぇ、ドライツェーンで薙ぐと一瞬で敵の艦列が千切れてデブリ帯へと変わった。
敵は総崩れ、艦隊戦においてはもう勝ちが確定したと考えてもいいかな。
あとはクーデター軍がこの状況に見切りをつけて撤退するかどうかだけど……逃げる様子はないね、ほとんど死兵のような状態で踏みとどまっている。
全滅覚悟で時間を稼ぐつもりか、向こうは向こうで覚悟が決まってるようだ。
生体CPUってのは目が良い、だから戦闘中でも余計なものを認識できてしまう。
砕けた装甲に付着した肉片、宇宙に放り出された死体、敵に突進する機体の動きからパイロットの精神状態も推し量れる……おっと宇宙に投げ出されてもがく誰かが流れ弾のビームで蒸発した。
いやはや……こういう光景を見るとなんとも言えない虚しさに胸が満たされる。
大勢の人間がバタバタと死ぬ様は個人の生き死よりもっと単純な数字の減少でしか物を捉えられなくなってしまう。
面と向かい合えば誰にだってその人だけの人生あるってわかるはずなのに、今の私に見えているのはただ抵抗して殺されていく敵の姿だけだ。
生きるために戦って、そして死んでいく自軍と敵軍のみんなは何を思っているんだろう、そんなことを考えながら私は十八隻目の敵艦を撃沈した。