はーい、マユで~す! でもごめんなさい、いまマユは生体CPUになってるのでお話しできません   作:何を書けばいいんだ

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混沌を齎す白き騎士

『レクイエムには一隻たりとも近づけるな! おのれ、ナチュラル共の寄せ集めが……!』

 

 火に包まれながら月面に墜ちていくローラシア級を横目にデストロイをクサナギの方まで飛ばす。

 現状は押せ押せムードだ、水際で踏みとどまったクーデター軍を連合軍が数の暴力、もとい砲門数の暴力ですりつぶそうとしている。

 左翼方面でつるべ撃ちに参加してもいいんだけどデストロイという機体は巨大制圧火器集約要塞の名前の通り大量の敵と正面からぶつかり合った上で叩き潰すのを本分としているからね。

 いまだに頑強な抵抗を続けている中央戦線にまで戻った方がいいだろうという判断をした。

 

 これが地上での戦闘だったら移動時間を考慮して踏みとどまったんだけど低G環境ならデストロイだって結構早いからさ、戻ることのタイムロスもペイできると思ったわけだ。

 ノロマだの遅いだの言われて鈍重な機体のイメージが染みついているデストロイだけど、なんのかんの言っても地上を浮遊しながら動けるぐらいの推力はあるからね。

 質量の大きさからくる初動の遅れはともかく月の引力ぐらいなら加速度が勝るからどんどん速くなるのだよ。

 

 そんなことを考えながら猛スピードでガンガン飛び回っているザムザザーをちらり……あれは何なんだろうね、デストロイより三割増しの重量なのになんであんなに速いの?

 やたらとデカい機体だから艦船用のレヴィテーターでも搭載しているんだろうか、というかそうでもないと地上でフォースインパルスに追い縋れるとはとても思えないんだろなぁ、純粋に推力で飛んでるならそのスラスターをこっちに分けて欲しいよ。

 

 それとあと数㎞進出したらレクイエムがドライツェーンの射程に入りそうだ、ローエングリンと違ってこっちは連射が効くからそこまで行ければレクイエムを外側から攻撃し続けて発射を阻止できるね。

 もう一息だと気合を入れ直していると後方から高速接近する二つの物体をセンサーが捉えた。

 識別はアンノウンだけど重なるようにミーティアが表示されているのを見るにイザークのデュエルブリッツとディアッカのライトニングバスターか。

 ミーティアの殲滅力も加われば死に体のザフト艦隊などあっという間に叩いて見せるわ、まぁあっちはクーデター軍の説得に来てるからそこまで当てにはしないけどさ。

 

「こちらはザフト軍情報省、イザーク・ジュール中佐だ。軍本部からの命令を達する、ジャガンナート中佐旗下のザフト軍将兵は直ちに戦闘を停止! 原隊に復帰せよ!」

 

 さっそくイザークが全域回線で通告したけど返答はなし、敵軍も攻撃を継続している。

 

「ジャガンナート中佐! 反逆罪に問われたいかッ!」 

『これは反逆などではない! 我らはプラントの未来の為に立ち上がったのだ!』

「ふざけるな! プラントを想うならなぜ尚更こんな事をする! 兵を無駄に殺すな!」

『無駄であるものか! 死んでいった者たちの流した血と涙に報いる為、オーブを討ち世界を変えねばならんのだ!』

 

 説得はやはり望み薄だね。

 ジャガンナートの行動理念を考えたら今更やめることはできないだろう。

 ここで降伏したらレクイエムを守るために死んだクーデター軍に顔向けできないし。

 どうせ止まらないのならいっそのこと、私の手で……。

 

 ドライツェーンの照準をザフト艦隊の旗艦が居そうな位置にざっくりと合わせる、超長射程の兵器ならもう狙えないこともない距離だから沈めてしまおうかな。

 

「デストロイのパイロット!」

「え……? はい、なんでしょう」

 

 いきなりイザークから通信が来てビックリした。

 ちなみにだけど私が敵旗艦を狙っているであろうことは味方にも通知される、広範囲の砲撃だからマップ上に予測攻撃線が表示されちゃうんだ、誤射の防止になるし結構士気にも影響があったりする機能である。

 しかしまあ説得中に問答無用で片付けに行こうとするのはちょっとマズかったかな……でもこっちも急いでるし。

 

「そちらの事情はわかっているつもりだ、その上で頼む。奴は……ジャガンナートはザフトで始末を付けねばならん相手だ、この場は譲ってくれ」

 

 イザークからのお願いか~、うーむ……少し考えてから照準を外し手近なローラシア級を沈める。

 ハッキリ言って今ジャガンナートを積極的に排除するメリットはあまりない。

 彼がいなくなれば指揮系統が乱れることが期待できるけど今のクーデター軍に必要なのは巧みな指揮ではなくやる気とか意地とかの方だからね。

 少なからずジャガンナートの理念に共感しているであろう彼らの場合、ジャガンナートが没したところで混乱するどころか逆に殉教者となって激しく抵抗する可能性も考えられる。

 

「こちらはオーブを守るのが最優先なので譲るのは構いません。ただ、彼に集中しすぎてレクイエムの破壊がおざなりになるなんてことはないようにお願いします」

 

 だったらここはイザークたちに恩を着せる為に撃たないってのもありでしょ。

 こっちが譲歩したんだから向こうにも何が何でもレクイエム破壊の為に尽力してもらうって取引だ、いやまぁ私的にはあんまり譲歩してるってわけじゃないんだけどさ、メリットデメリットが釣り合わなかったら無視して沈めにかかってたし。

 

「そこは安心してくれよ。実は俺ら、アレにはちょっと嫌な思い出があってさ。今度こそ完全にぶっ壊してやるつもりだからよ」

 

 ディアッカは頼もしいことを言ってくれるね。

 たしかこの二人は不可抗力的な面もあったとはいえ、レクイエムの攻撃を防ぎきれずにプラントが甚大な被害を受ける光景を目の当たりにしたんだっけ。

 これも一種のリベンジなのかもしれないね。

 

 さて、残り時間がどれほどかは不明だけどレクイエムの発射口は未だに解放されておらず沈黙を保っている。

 火力お化けのミーティアも加わったしこの分なら余裕を持ってダイダロス基地を制圧できると思うけど……。

 

「敵艦隊の後方より高速で接近する多数の熱源! 数は……ダメです、補足しきれません!」

 

 まあそう簡単にはいかないよね、通信を聞いた後すぐにカメラを望遠モードにして確認すると夥しい数の飛翔体が見える。

 あれは……ミサイル……? てことはジグラートっ!?

 

「回避!」

「撃ち落とせ!」

 

 ミサイルの軌道は艦隊全体に降り注ぐように設定されてるらしく、まるでバケツをひっくり返したような勢いでこっちに飛んできている。

 薄々予想はしていたけど流石にこの数はドン引きだよ、なにせ視界全部がミサイルで埋まるレベルで撃ってきてるんだから、どんなに少なく見積もっても数千発は発射されていると思われる。

 眉間に皺を寄せながらドライツェーンとネフェルテムをミサイル群に発射してそのまま陽電子リフレクターを展開、クサナギに覆いかぶさるように機体を動かすと近場のユークリッドも察したのか私の傍まで飛んできてリフレクターを貼ってくれたね。

 アレをデストロイで迎撃しきるのは流石に無理だ範囲が広すぎる、砲門数が自慢のミーティアも一回フルバーストをした後は推力に物を言わせて後退するレベルだ、なのでさっさと守りを固めて受けるのを優先する。

 

 ミサイルの土砂降りで機体がガタガタと振動しコックピット内にアラームが鳴り響く、だけどこっちだって重量級の機体なんだからこの程度で弾き飛ばされたりはしないよ。

 凄まじい火力を叩き付けられているがなんのこれしき、デストロイとユークリッドのリフレクターの力場が合体し、より強固で巨大となった防御膜は多少揺らぎつつもしっかりとその役目を果たしてくれた。

 お隣のユークリッドもご無事なようでなにより、御覧いただいたようにリフレクターを用いた肉壁はバカの盾と呼ばれもするが非常に有効な戦法なのだ。

 

 しかし……ミサイルの爆炎が晴れた後の光景はひどいものだ。

 前衛に立っていた艦は軒並み被弾しており中破に大破、轟沈しているものも少なくない、後衛は比較的マシな損傷状況だけど対空砲火を抜けたミサイルがちらほらと突き刺さって航行不能に追いやられている物もいる……それにこれで終わったわけじゃない。

 デストロイをクサナギの前方に移動させリフレクターを起動した瞬間、視界の奥に三つの光点が現れたかと思うと高出力のビームが連合艦隊を貫き、そればかりか湾曲しながらクサナギに一点収束するように照射された。

 そして照射されたジグラートの超高インパルス砲――ザナハリィ――は私のデストロイに直撃、強烈な威力に機体が押されてクサナギの艦首に激突して潰してしまった。

 

 いやはや、情報アドバンテージというのは実に頼りになる。

 艦隊の旗艦であるクサナギが狙われることは分かっていた、これは事前にジグラートのことを識っていたからこそできた対応だ。

 ただ分かっていてもできないことはある、一連の攻撃で連合艦隊はかなりボロボロにされてしまった、さすがにそこまで手は回らないよ。

 

『愚かな旧人類が……! それほどまでに我らの導きを拒むかッ……!』

 

 そして遂に現れた純白と金の装甲に包まれた識別不明の機体、オルフェの専用機であるブラックナイトスコードカルラだ。

 戦場に似つかわしくない荘厳な機体の出現とこちらが受けた被害の大きさに味方がたじろいでしまっている。

 レクイエムが窮地に陥ったらオルフェ直々に守りに来るだろうとは考えていたけど想像以上におっかない相手だね。

 でもこれでファウンデーションはとっておきの切り札を切ったわけだ、こちらもボロボロとは言え向こうも余力を出し切った上に艦隊総司令が前線まで引きずり出されたことになる、ミレニアムの方面もグッと楽になるだろう。

 

 ここまで来たら後は全力の叩き合いだ、どちらかが擦り切れるまで火力をぶつけ合うのみよ。

 てなわけで改めて開戦の号砲としてドライツェーンをカルラに照準、味方にデストロイが攻撃することを警告音と共に伝える。

 そして発射、迸る赤色の熱線は案の定ひらりと躱されるがそれでいい、想定通りだ。

 そもそも距離が遠いんだから当たるはずもないし、よしんば当たったとしてもフェムテク装甲に弾かれてしまう。

 大事なのは連合艦隊のフラグシップ機とも言えるデストロイ、つまり私が臆すことなく攻撃を仕掛けたという事実だ、どんなに強そうな相手でも味方の強そうな奴がしっかり反撃すれば恐怖心とか怯えっていうのは払拭されちゃうものなんだよね。

 

 幸い私の目論見は上手くいったようで大型の実弾砲塔――ドッペルホルン連装無反動砲――を装備したウィンダムがカルラに向かって攻撃を始めた。

 ファウンデーション機……もといフェムテク装甲の情報は事前に共有済みだから連合もしっかりと対策を講じてくれている。

 確かにカルラはジグラートの援護も相まって手数が多いし基礎性能においても当代最強クラスの機体であることは間違いないだろう、だけど所詮は一機のMSであることに違いはない、大勢で寄ってたかってボコれば旧世代機でも勝てる可能性はあるはず……。

 

 しかし、密集することで命中率を高めようとするウィンダム軍団にカルラがドラグーンを放ち瞬く間に二十機近くが撃墜された。

 これには流石に私も驚愕で目を見開いた、数の暴力で潰そうとしたら質の暴力で思い切り殴り飛ばされた気分だ。

 くっ、フリーダムは……到着までもうちょっとかかりそうかな。

 ちなみに准将とは緊急回線を開いていて暴れまわっているカルラの映像を垂れ流している、新型機体だろうと手札が割れれば対策を立てられるからね、新型特有の初見殺しは許さないよ。

 

『ふん、デストロイか。そのような醜い機体を持ち出すとは、所詮はナチュラルの浅知恵だな』

 

 くそぅ舐めやがって、そのデストロイに暴れられてピンチになってる癖に……!

 カルラのドラグーン四基がこっちに向かってきたのでデストロイのスラスターを全開で逃げる。

 あのドラグーンはビームカッターを搭載していて陽電子リフレクターの天敵のような相手だ、ただいくら小回りの利くドラグーンとはいえ推力そのものは低いから足を止めさえしなければ当たるようなものじゃあない。

 

 まあだからといって振り切れるほどデストロイは速くないので一基につき四門のビームガンには撃たれ放題だ。

 なのでこちらもシュトゥルムファウストを射出する、ドラグーン対決? 冗談じゃない、貴重なリフレクターに撃ちあいなんてさせないよ、本体と合わせて三基のリフレクターでビームを防ぐのだ。

 こっちのドラグーンをデストロイの周囲で飛び回らせて大回りで死角を突こうとするカルラのドラグーンに対応する。

 

 ただそれだけじゃ普通に間に合わないのでデストロイ本体のリフレクターも活かさないと、鈍重な機体ですばしっこい相手にどう対処するのかと言うとこうするのだ。

 デストロイの足を思い切り振るとその反作用、つまりAMBACで機体がひっくり返った、宇宙空間ならこういう方法が使えるんだよね。

 やってることはブレイクダンスみたいで傍から見るとシュールかもしれないけど私は大真面目である、というか片手間のカルラ相手にここまでやってどうにか持ちこたえられているって状況だ、オルフェ君これで実戦経験ほぼ無しって冗談でしょ。

 

「ローエングリン! てぇーッ!」

 

 クサナギからの援護射撃が私を追い回すドラグーンのうち二基を飲み込み破壊してくれた、おかげでヘルメット内の汗を振り払うぐらいの余裕ができた。

 しかしそのせいでオルフェはターゲットを変えたのか、クサナギのローエングリンは一瞬でドラグーンの餌食となって破壊されてしまった、コイツやりたい放題じゃん。

 

「くっ、こんな奴にッ!」

 

 戻って来たデュエルのミーティアがカルラに向かっていく、追いついて挟撃したいけどデストロイじゃ無理だ。

 ミーティアが対艦ビームソードで斬りかかるもそんな大振りの攻撃が当たるはずもなく、カルラは余裕綽々に躱してみせる。 

 

『貴様もコーディネーターだろうに! どうしてナチュラルの肩を持つ! デュランダル議長の示した世界こそが正しきものだとなぜ気が付かない!』

「うるさいッ! ただ与えられただけの平和になぞ何の意味がある! そんな思考停止した世界なんてお断りだッ!」

『どういう形であれ平和は平和でしかない! 欲深き者たちは優れた存在に従い生きていくべきなのだ!』

 

 イザークも勢いだけは負けてないけど……残念ながらカルラが強すぎた、ミーティアの長大なアームユニットが重斬刀に両断され脱落しデュエルがピンチに陥る。

 

「ジュール中佐!」

 

 時間がないから名前だけ呼んでデストロイの砲身を向ける、たのむ~察してくれ~!

 

「ッ! ディアッカ!」

「あいよ!」

 

 そう言ってイザークは残ったミーティアのアームユニットにビームソードを発振させてカルラに振り下ろす。

 よしきたと私が狙いを付けているうちに状況は動く、先ほどの焼き直しとばかりに最小限の動きで躱したカルラが追撃でデュエルにトドメを刺そうとしたところへバスターのミーティアが砲撃、直撃コースの高出力ビームと逃げ場を塞ぐミサイル群が殺到する。

 普通なら余裕を持って撃墜できる密度の攻撃をカルラは針の穴に糸を通すように抜けてくる。

 

 けど回避行動は天才を凡夫にするものである。

 避けた先にドライツェーンの広範囲ビームを置いておくだけで相手は被弾せざるを得ないという寸法よ。

 十分近づいてからの高出力ビームの直撃、いくらFT装甲とはいえ内部の電装系や武装類を故障させるぐらいはできるだろうと見込んでいる。

 

「いけ……!」

 

 直撃コースで突き進むビームに思わず声が漏れる。

 当たると思ったその瞬間、カルラのドラグーンが射出されバリアを形成、デストロイのビームを防ぎきった。

 ちょっと!? 知らないよそんな武器!?

 いやまあ……ブラックナイトのフラッグシップ機なんだからそれぐらい積んでてもおかしくはないんだろうけど……。

 

 こちらの目論見を潰されカルラはフリーハンドとなった。

 ドラグーンから牽制のビームで私とバスターを抑え込みながらデュエルを刈り取らんと重斬刀を振り上げミーティアの残るアームユニットを斬り落とし更に距離を詰める。

 

「イザークッ!」

 

「来るなディアッカ! お前のミーティアまで失うわけにはいかん!!」

 

 マズいデュエルがやられる。

 咄嗟にデストロイのシュトゥルムファウストを射出してカルラの方に飛ばしてスプレッドビームを撃ち込む。

 十門のビームがカルラに命中し、いっそ清々しいまでに弾き返された。

 ただ機体の軸をずらすことはできたようでカルラの凶刃はデュエルの左腕を落とすのに留まる。

 

 そして続けざまに飛び込んでくるザムザザー、大型クローによる接近戦と強烈な実弾兵器を搭載したFT装甲持ちとも戦えるMAだ。

 自慢のクローでカルラを掴んで引き千切ろうとするが速度差が厳しく避けられ超高インパルス砲のカウンター、ザムザザーもリフレクターで咄嗟に防ぐがそこを重斬刀でコックピットを貫かれて撃墜されてしまった。

 

 いいようにやられている状況に歯噛みしていると後方から急速接近する友軍機がカルラに斬りかかる。

 

『フリーダム……キラ・ヤマトか! だがもう遅い!』

 

 そのまま二機は付かず離れずの距離を保って切り結びながら主戦場から遠ざかって行き、やや遠方にあったシヴァの信号もそちらに向かう。

 うーむ……一応脅威は去ったけどオルフェの言う通りこっちは割と手遅れ感がある。

 

 連合艦隊はボロボロにされた上にファウンデーション艦隊の増援がカルラの後続としてレクイエム付近に陣取っている。

 所詮旧世代のMSと決して多いとは言えないバルドル級……デストロイなら十分殲滅できる程度の戦力だがそんな時間は残されていない。

 強引に突破して発射直前に破壊するにしても機体が足りない。

 

 となると……不本意ではあるけど……私はお兄ちゃんとの通信回線を開いた。

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