はーい、マユで~す! でもごめんなさい、いまマユは生体CPUになってるのでお話しできません   作:何を書けばいいんだ

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自由の盾

 さて、お兄ちゃんに連絡を終えた私は改めて戦場を見渡して一息ついた。

 こうなってしまったらデスティニーになんとかしてもらうしかない。

 あんまりにも他力本願だから使いたくはなかったけどこればっかりはね。

 ちなみにお兄ちゃんが来れないというのは想定してない、デスティニーに乗ったイケイケお兄ちゃんは無敵だから心配するだけ無駄ってわけよ。

 

 問題は私がこれからどうするかってところだ。

 ここで戦って艦隊の援護をしてもいい、敵戦力が減ればそれだけ突破も容易になりデスティニーの負担が軽くなる。

 でもそれをやる必要があるかというとなんとも言えないんだよね。

 時間が足りないってだけでそもそもお相手さんはボロボロなのだ、一騎当千の高速機体が適当にかっとべば通り魔的にレクイエムを損傷させるぐらいできてしまう。

 だからこそオルフェたちは二機掛かりでフリーダムを抑えつけているわけで。

 

 そういう事情を考えるとやるべきことは一つだ、気は進まないけどさ。

 

「アマギさん」

「どうしたデストロイ」

 

 一尉に直接通信を飛ばす、ズタボロにやられたからか少し焦った表情を浮かべつつも指揮官としての意地なのか平静な口調を保ってるね。

 忙しいところ悪いけどちょっくらお願いするとしよう。

 

「フリーダムの援護に向かいます。戦線離脱の許可を」

 

 私の言葉に一瞬沈黙するアマギ一尉。

 味方の戦線が崩れてるのに何言ってんだって話だが、この状況で脅威なのは青息吐息のザフト艦隊ではなくフリーダムを抑え込むと同時にフリーダムに抑え込まれているブラックナイトスコードの二機だ。

 カルラにしろシヴァにしろどちらかがレクイエムの防御に専念するだけで一気に敗色が濃厚になるからどうにかこうにか邪魔してやらないといけないのである。

 

「……許可する。キラ様を頼んだぞ……!」

「了解です」

 

 お許しも出たのでさっそく准将の元へとレッツゴーだ、あいにくご期待に沿う自信は全くないけどやるだけやってみるさ。

 月の重力に機体を任せ推進力を前進に回す。

 鈍重な機体でたっぷり数十秒飛んで主戦場から離れた場所、メサイア要塞の残骸付近までやってきた。

 

 そこには案の定ボコられているフリーダムの姿。

 とはいえ損傷は最低限で背面のウィングとドラグーンユニットが数基脱落している程度、相変わらずダメコンがお上手である。

 だがそれもここまでだね、センサーに映る大量のミサイルはこの危うい均衡を打ち崩すのに十分だ。

 

 ま、それはフリーダムが単騎で戦った場合の話だけど。

 

 確かにジグラートの飽和攻撃は脅威だ。

 ただ今回の場合ターゲットはフリーダムという小さく素早い相手だ、いくらミサイルをバカスカと撃ったところでその着弾点は限られた範囲に収まる。

 つまり……ドライツェーンを起動し照準を合わせる。

 撃ち込む場所はミサイルの飛翔経路、高速で飛んでいようと小さな標的に向かっているのであれば移動ルートを特定するぐらいできるし、当のフリーダムがミサイルを警戒して月面スレスレを飛んで入射角を絞っているのだから尚更簡単に予測できる。

 そうして照射された極太のビームはフリーダムへの直撃弾はもちろん移動を阻害するための牽制弾すら巻き込んで薙ぎ払った。

 

「准将! 援護します!」

「マユ……っ!? どうして……!?」

 

 こんな機体でノコノコやってきた私に准将が驚いてるね。

 それを尻目にデストロイをMS形態に移行させ白兵戦に備えるよ。

 

『おのれっ、邪魔立てはさせんぞマユ・アスカ!』

 

 ちょろっと妨害しただけでシュラが釣れた、ミサイルをFT装甲で作ってないそっちが悪いんじゃん。

 デストロイにとって格闘戦に特化したシヴァは天敵だ、パイロットの能力も相まって下手をしたら一瞬で三枚おろしにされかねない。

 とはいえそこまで簡単にやられる気はないけどね。

 

『墜ちろ!』

「甘いよっ!」

 

 シヴァのヒートソードを陽電子リフレクターで受け流す。

 リフレクターは近接武器に対して弱いイメージがあるが言うほど無力というわけではない、対ビームコーティングさえされていなければやりようはある。

 まあまだ一撃凌いだだけ、シヴァの強みはその豊富な武装による絶え間ない波状攻撃だ。

 実際すでにシヴァはシールドに備え付けられたクローを振りかぶって連撃の構えを取っている。

 

「やらせない!」

『くっ、キラ・ヤマト……!』

 

 だけどその攻撃がこっちに振るわれる前にフリーダムのビームサーベルがシヴァに対応を強要する。

 二対一なら防戦一方の准将だがどちらか片方の注意さえ引けば反撃を試みるぐらいの余裕はあるのだ。

 いや~やっぱり盾は強いに限るね、フリーダムが壁になってくれると安心感がダンチである。

 

『劣等種共が次から次へと……ッ!』

 

 シュラの突撃が跳ね返されてオルフェもご立腹のようでカルラからドラグーンを射出してきた、あのドラグーンもデストロイには厳しい相手だね……ちょっとデストロイ不利すぎだな。

 そこのところは准将も分かってるのか劣勢と知りつつすぐにドラグーンを出して迎撃に入る。

 こうなると私は蚊帳の外だ、攻撃を引き付けるべく前に出るフリーダムに全てを押し付けて後退、虎視眈々とフリーダムの隙を突こうとするシヴァにスーパースキュラをちらつかせるがそれにどこまで意味があるか、射線の数を稼げるスプリットビームとネフェルテムが無力なのが向かい風だよ~気軽に牽制すらできないなんて。

 

 さて、目の前にはもみくちゃにされるフリーダム。

 やはりカルラのドラグーンに対抗するのは難しいのかビームの間隙を縫うようにかろうじて飛んでいる。

 そして互いのドラグーンが決定打を放つために超至近距離で撃ちあっている……ふーん、私はデストロイの全砲門を起動した。

 

「准将!」

『――っ!? オルフェ!!』

 

 シュラが私の考えを読んだみたいだけどもう遅い、思いついた時点でトリガーを引いたからね。

 そしてデストロイの全火力がドラグーンの群れを飲み込む。

 フリーダムは多少逃がしたみたいだがそれでも巻き添えは防ぎきれず、カルラの方は完全に逃げ遅れてドラグーン全機が火花を上げながら漂うばかり。

 

 うーん……FT装甲とはいえ普通に原型保つんだ、フリーダムの方は跡形も残っていないのになぁ……まあ推進器とビーム発振器が破壊されて機能停止したからいいけどさ、後で悪用されても嫌だからミサイルを撃ち込んで念入りにぶっ壊しておく。

 

『なっ……クソッ!』

 

 気分良く圧倒しているところに水を差されて怒ったのかカルラの超高インパルス砲がこっちに撃ち込まれたけどリフレクターで雑に止める。

 デカいだけのウスノロだと思ったらいかんよ、これでも巨大制圧火器集約要塞ってお題目があるのだ。

 しょぼい射撃は全部受け止めるし、無視するようならストレスで禿げる量のビームを撃ちこむ準備ができている。

 

「レクイエムは!」

「そっちはお兄ちゃんが行ってくれます! だからこっちを!」

 

 私がなぜレクイエム攻略を放り出してアコードの抑えに回ったのか聞かれたので言葉少なに答える、お相手さんも待ってる義理はないから突っ込んできてるし。

 

「シンが……わかった、僕はシンを信じる!」

 

 やることは変わらない、ここで互いに相手を封じ込めるために戦い、勝った側がレクイエムに対する主導権を得る。

 フリーダムが矢面に立ち敵の攻撃を受け止めデストロイがコソコソと援護をする、そして後ろから妨害に専念するこっちを先に潰そうと突っ込んできたら私が粘っている隙に准将が仕掛けて引きはがすという簡単な作業だね。

 いや別に簡単ってわけじゃないけどね、なにせ高速で乱戦している所にビームを撃ち込まなくちゃならないってのに、敵は最悪当たっても派手に跳ね飛ばされるぐらいで味方に誤射したら撃墜確定という割に合わない状況なんだから。

 

 ただ私にはフリーダムの……いや、キラさんの動きが何となくわかる。

 別にアコードのテレパシーよろしく彼の考えが読めるとかそういうんじゃないよ。

 私はある意味で特殊な体質ではあるけど本質的には凡人なんだ、だから痛いことや怖いことはきらいだし嫌なことをされたらカチンときて根に持ったりもする。

 

 で、キラさん……いや、コンパスの連中はデストロイで暴れてる私をさんざんボコって痛めつけてくれたよね。

 コンパス陣営に加入した後もシミュレーターで教導の為にボコボコに負かして私の唯一の取柄である戦闘技能に対する自信を喪失させて落ち込ませてくれたよね。

 これは私の逆恨みで彼らは正しいことをしているというのは承知している、でもそれと私の心情は何の関係もないでしょ?

 みんなのことは好きだ、頼れる味方としても大好きだ、でもそれはそれとしてコノヤローと思っているのも事実。

 だから訓練した、過去のデータを漁りメンバー全員の戦闘記録を見返し、操縦の癖や戦い方の志向を把握していつか仕返ししてやろうと暇があれば励んだのだ。

 

 それ故の読み、キラさんがこの状況でどう戦うのか、どこに位置取りをしてどういう攻撃を選択するのかが感覚的に理解できる。

 なら合わせればいい、敵を知り己を知ればとはよく言ったもので自陣営を知り尽くすことで格上相手でもいい勝負ができるようになるんだよ。

 

「マユッ!」

 

 准将の声と共にフリーダムがこちらに寄ってきた、それにブラックナイトも若干距離を取ったようだ、見ればミサイル群がこちらに。

 いったい何発積んでいるのやら……足の遅いデストロイじゃ逃げ切れないと向こうもわかっているのか、こちらを囲い込むように一点集中で撃ち込んでくるつもりらしい。

 やはり機動力は正義だ、これがないだけで取れる選択肢が劇的に減る、例え行動が読まれていても乗るしかない。

 

 フリーダムがドラグーンを展開するのに合わせて私もデストロイの火砲を全方位に向け、仲良くダブルフルバーストで迎撃する。

 周囲が爆炎で包まれたところに急速で接近する二つの機影をセンサーが捉える。

 わかりきっていた突撃、しかしこっちの武装は再チャージ中だ。

 

 障害が消えたことで悠々と突っ込んできたシヴァを受け止めるフリーダム。

 一回の突進ならまだ弾き返せる、けど続いて突っ込んできたカルラには後手に回らざるをえない、しつこく詰め寄ってくるカルラに押し込まれ私と准将とのラインが分断された。

 

「准将!」

『させると思うかっ!』

 

 カルラを引き剥がすために援護を試みるが一旦は下がったシヴァが私の方に。

 何の工夫もない簡単に防げる刺突を渋々リフレクターで止める、見え透いた足止めだけどこっちの機動力じゃあ押し付けられた択を跳ね除けることはできない。

 

 フリーダムに視線を向ける、頑張ってはいるけどカルラからの捨て身にも近い執拗な攻撃で完全に固められてる、それでも強引に振り切ろうとしたらジグラートからの曲射ビームに進路を塞がれる始末。

 あの火力を妨害の為だけに使ってるってことはつまり……シヴァをデストロイに専念させることでサクッと片付けた後、じっくりと二機でフリーダムを料理しようって魂胆だね、舐めやがって。

 

 眼前でこれ見よがしに構えて見せるシヴァを睨む。

 超至近距離で手数を活かした格闘戦を行うシヴァと大型故に懐に入られたら脆さが露呈するデストロイ、考えるのも嫌になるほど相性の悪い相手だ。

 

 でもまぁ頑張るしかないか~、よくよく考えれば私の戦場はいつもこんなもんだ、機体も相手も状況も選べない、いまさら最強の相手と最悪の状況で戦うなんてことにぶつくさ言うのも野暮ってものだろう。

 せいぜい生体CPUらしく暴れて困らせてあげようじゃないの。

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