はーい、マユで~す! でもごめんなさい、いまマユは生体CPUになってるのでお話しできません   作:何を書けばいいんだ

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水底の便利屋

 はーい、メリーで~す! でもごめんなさい、いまメリーはお話できません。

 いま水深約四百メートル地点の深海を航行してるからね。

 なんか通商破壊をするらしくて商船護衛の任に就いてるザフトの潜水母艦を撃破したいらしい。

 おかげでこっちは海中を単独行する羽目になっている、場所はどこらへんだっけ? たしかスエズ運河周辺だから地中海とか紅海辺りだと思うけど。

 

 それで今回乗ってる機体は地球連合が生み出した傑作……いや、怪物MSであるフォビドゥンヴォーテクスだ。

 本機はゲシュマイディッヒ・パンツァーの技術を利用して水中戦において本来無視できない要素である水圧と水の抵抗を無視することができる……物理法則に喧嘩売ってるよねこれ。

 まあつまりヴォーテクスは水中を凄く速く動けるし運動性も従来の水中MSとは比較にならないレベル、ほかのMSが頑張って水中を泳いでいるのに対してヴォーテクスは水中を文字通り飛行してるようなものなのだ。

 身贔屓かもしれないけどね、私は水中戦で最強の機体はこいつだと思っているんだよ。

 

 実際ザフトが使っていて連合に猛威を振るった水陸両用MSのグーンやゾノなんて相手にならない、速度が数倍違うんだから当たり前だよねぇ?

 一応ヴォーテクスを筆頭とした海フォビドゥン族に脅威を感じたザフトは新型としてアッシュやガンダムタイプのアビスを開発してたりもするけど、そのどちらも水中じゃ真価を発揮できないビーム兵器を多数搭載していて水中戦よりも強襲揚陸からの地上攻撃に重きを置いている。

 要するにフォビドゥン自体の撃破は諦めて、さっさと陸上に上がって拠点をぶっ壊そうぜという制海権については随分と割り切った設計をしているという状態だ。

 

 本来パイロットの能力に優れるコーディネーター集団のザフトにナチュナルが主力の連合軍が数押しで立ち向かうって図式が世界中で見受けられたものだけど、こと水中に限ってはフォビドゥンが投入されてから完全に図式が逆転して少数の本機に多数のザフトMSが群がってごり押しで撃破するって形になっている。

 

 現場の兵士からしたら相手の方が強い機体を使っているのに自分たちは対抗できる機体を配備してくれないというお辛い状態だ。

 でも水中というニッチな戦場に特化した敵を出会ったら運が悪かったということにして陸戦能力にリソースを振って汎用性を高めるってのも合理的ではあるのかも、フォビドゥンなんて生産数の関係で重要海域にしか配備されてないし。

 ただまぁ重ね重ねコイツと出くわす羽目になったザフト兵にはお悔やみ申し上げることしかできないね、遭遇したらまず殺されるんだからさ。

 

 で、その海の死神ことヴォーテクスは今現在、懐事情がお寒いブルーコスモスにとって虎の子と言っても過言でない機体だ、保有してるのも私が今乗ってるこの一機だけみたいだし。

 通常の海軍戦力じゃグーンにすら歯が立たない以上コイツで護衛を排除できなきゃ海でのテロ活動はほぼ不可能となるので私には大いに期待が寄せられてるってわけだ、悪の手先をするのは大変だ~。

 ちなみにこちらのヴォーテクスちゃんだが整備用のパーツがないので本来の八十パーセント程度の性能しか出せないらしい、大事に使えって言われたけど知らんし酷使してあげよう。

 

 

 

 

 

 

 ソナーで索敵しつつルルルと静かに水中を我が物顔で突っ走る。

 しっかしこの機体操縦しやすいわ~、このレスポンスの高さが非常によろしい、デストロイとは大違いだよ。

 いやまあデストロイもいい機体なんだよ? 強いし、あと強いでしょ、それに強いし……強いだけだなデストロイ。

 生体CPUじゃないとまともに動かせないってのもさもありなんって感じだよアレは、何なら私も薬抜きだとあんまり動かせないし。

 

 重過ぎるから慣性が効きすぎるし、あと武装が多すぎる、理論上は六十近くの標的を同時攻撃可能らしいけど無理でしょ、ミーティアかよ、マルチロック機能ついてないのに。

 そのサイズ感のせいで死角も多い……一応射角がバカみたいに広いから補えるとはいえ背中に目を付けないと真価を発揮させられないって何考えてるんだろうね、私はお薬キメないと視界外の敵機の存在とかあんまり感じ取れんのだが?

 

 負担を軽減するために複座にしたところで射手が二人必要なぐらいデストロイは扱いづらいし、何なら武装積みすぎてコックピットを広げられないぐらい機体に余裕がない、まさに積み込めるものを詰め込めるだけ詰め込んだような機体だ。

 MS形態になるとホバースラスターの使用に制約がかかって機動力が落ちるってのもよろしくない、あの形態は正面に火力を集中できるから少数の強力な敵と対峙するときに使用するわけだけど足が遅いからうまくポジション取りができなくなるのが困りものだ、しかもドラグーン飛ばすとリフレクター使えなくなるし……守りの要を飛ばすってどういう設計してるんだ。

 

 ……ちょっとボロクソに言ったけど私個人は別にデストロイが嫌いというわけではない、結構助けられてるしね。

 現状のブルコスにおける生体CPUの価値はデストロイを操縦できるって一点で大いに上がっている、私みたいなエクステンデッド未満の旧式がお高い機体に乗せてもらえるのも替えが利かない存在だからだ。

 そういう意味では大勢を虐殺してるデストロイだが、私たちみたいなごく少数の命を救ってくれているとも言えるね、ありがとね、でももっと操縦しやすくなってもろて。

 

 さて、一人寂しくしょうもないことを考えていたらソナーに感あり、識別ザフト潜水艦ボズゴロフ級ベニアミノフと確認、悪いけど沈んでもらうよ。

 向こうもこっちの接近に気づいたのか艦載機を発進させたらしく反応が増える、ゾノが一機とグーン二機、オーソドックスな編成だね。

 

 敵の魚雷発射を探知してコックピット内でアラームが鳴る、機体を捻りながらこれを回避、ヴォーテクスを加速させすれ違いざまにグーンを装甲に取り付けられた近接兵器――ニーズヘグ――で切り裂く。

 装甲に穴が開いて圧壊していくグーンをよそに旋回、ヴォーテクスの携行兵器――トライデント――でこちらに振り向こうとしているゾノの背部に一突き、僚機が全滅してもなおノタクタと泳いでいるグーンの背部にフォノンメーザー砲を照射して撃破した。

 うーむ圧倒的、まあ別に私が操縦しなくてもヴォーテクスならこんなもんだよね、旧世代の水中機体なんて瞬殺だ。

 

 最後に残ったボズゴロフ級も魚雷を撃ちながら逃げようとしてるけどこちとら連合の青い悪魔である、ここは魚雷を撃ち込んで……あれ?……弾切れとるやん……出撃前に言ってよ。

 しょうがないのでフォノンメーザー砲で攻撃をした後トライデントをぶっ刺して撃沈した。

 やっぱりヴォーテクスとやり合うならアビスでも用意しないと無理だね、今回の状況ならこっちはアビス無視して母艦沈めて帰るけど。

 

 

 

 

 基地に戻ってきて私は待機を命じられた、やることもないのでボーっと思考を巡らす。

 考えるのはもちろん原作についてだよ。

 当然のことながらこの世界ではSEEDシリーズでは描かれなかった人々たちも日々の生活を送っていて、時に悲劇的な死を遂げたりする。

 この基地にいる兵士だってコーディネーターぶっ殺すと息巻いているのもいれば、今更やめられないという結論に至ってなし崩し的に戦い続けてる人もいる。

 

 その中でブルーコスモスの尖兵、生体CPUとして私はどういう結末を辿るのだろうか。

 画面の外でひっそりと消え去る? それともオルドリン自治区で暴れていたデストロイ辺りに乗って敗死するのか。

 私みたいな自己決定権のない兵器がこんな事を考えてもしょうがないかもしれないけどこれでも生きてるからね、どうしても未来に待ち受けるものは気になる。

 

 ふと同類のエクステンデッド君に思いを馳せる、彼は今ゆりかごで調整を受けていて今はいない、真っ当なエクステンデッドはこまめなメンテが必要で難儀なもんだよね

 名前も性格も知らないけど彼はどういう人生を送ってきてどういう最期を迎えるんだろうね、あの子は正規のエクステンデッドだから幼少期からブルコス流の英才教育を受けてきたわけだが、家族はいたんだろうか。

 ただここにいるってことはスターゲイザーに登場したスウェンや私のように孤児になってたんだろうな。

 

 私はどこで生まれ、どう育ち、どうやってここに来たのだろう……私の家……私の家族……私の、兄……兄……?……あっあっあっ……!

 

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