はーい、マユで~す! でもごめんなさい、いまマユは生体CPUになってるのでお話しできません 作:何を書けばいいんだ
うひゃぁ!? 助けてフリーダム!! 心の中で私は絶叫した。
シヴァの攻撃を受け止めるたびにコックピットがグラグラと揺れる。
『マユ・アスカ、お前とは一度戦ってみたいと思っていた』
私は思ってないよ!
あっちはお喋りする余裕があるようで羨ましい限り、こちらは防戦一方だ。
幸いだったのはデストロイの武装構成が思い切って守りに専念するのに有効だったことぐらいか。
両腕に装備された陽電子リフレクターはシヴァの攻撃を受け止めるのに最適だ。
あちらの実体剣は防御態勢を崩し押し切り勝ちを狙えるものだけど流石にデストロイの馬力には敵わない。
それに武器が固定兵装だけというのも良い、おかげでフリーハンドの反撃ができるから常に腕部を守りに回せる。
相手がFT装甲ってのもこの状況では逆にありがたいかもしれないね、ビームが偶然直撃して撃墜というワンチャンすらないから変な色気を出すこともなく割り切って戦える。
『フッ、この程度か? 所詮は愚かなナチュラルの作った生体CPUといったところか』
うぐぐ……ポジティブに考えてもみたけど、現実は非情なもので私は一方的にぶちのめされてる最中だ。
辛うじて耐えられている、シヴァの連続攻撃を二基のリフレクターで止めながらスキュラとツォーンの牽制で動作速度の差を埋め粘る。
まだやられてないのはこれまでの訓練と実戦経験の賜物……ではないんだなこれが。
シュラの攻め方は私から見て不自然だ、馬鹿正直に真っ正面から仕掛けてくるし反撃のスキュラにも回避や防御の対応を取っている。
私ならFT装甲とビームシールドの優位性を信じてデストロイの悪あがきを無視するごり押し、あるいは旋回性能の低さを突いて後ろに回り込んで仕留める。
つまるところシュラは遊んでいるってわけだね、少し悪意のある言い方だけどさ。
彼は私と戦ってみたかったと言ってきた、ならシュラにとって重要なのは彼我の力量差を明確にし自身の強さを証明すること。
そして私が挙げた方法は言ってしまえば機体性能に頼り切ったやり口、パイロットの実力なんて関係なしに勝てる楽な方法だ、向こうからしたらこんな勝ち方をしても意味がないってことなのだろう。
『その通り、俺の使命は最も強き存在だということを証明すること。あらゆる敵を打ち負かし勝利する、それが俺の存在意義だ!』
読心か、便利なものだね。
物は試しにと若干距離が空いたシヴァに対してネフェルテムとスプリットビームを撃ちこんでみる、無論考えなしにばら撒くのではないよ。
ざっと三十門のビームを束ねて一点攻撃を仕掛ける、一門毎の威力は大したことがなくても、これならFT装甲とはいえシャワー気分で浴びるわけにもいくまい。
『小細工だな』
わかっていたかのように回避されるがまだまだ、束ねたビームをばらけさせ拡散させる。
シヴァの機体表面を撫でるも装甲に弾かれるビームはまるでただのステージライト、けど賑やかし同然の攻撃でも視界妨害には丁度いい。
間髪入れず何も見えていないであろう相手にドライツェーンを向けすぐにトリガーを引く……が、駄目……発射した瞬間に急加速されて逃げられた。
『無駄だ。お前が何を企もうとも俺には見えている!』
はて、どうにか勝ち筋がないものかと考えてみるけど、間に合わせの戦法はその場で読まれて対策されちゃうのがなぁ。
シヴァのスペックはだいたいわかっている、どうにか付け入る隙はないか。
『お前では俺に勝つことはできない。ただ流されるまま、我欲を満たす為に戦うお前ではなッ!』
……中々痛いところを突いてくる、私の体が闘争を求めているのは正しく事実なわけで、シュラの言葉を否定することができない。
『ハッ! 当然だろう! あの日、お前の心の奥底に垣間見た破壊と殺戮への渇望。そして今、この瞬間すらも、お前は戦いに酔い楽しんでいる! お前自身もわかっているはずだ!』
くっ、楽しんでる……ね。
まぁ図星だ、この圧倒的な不利な状況であっても私はそのスリルとストレスを悦楽に変換してしまっている。
口ではヤバいだとか苦しいだとか言ってても表情は緩んでいるし、目の前でちょこまかと動くシヴァにデストロイの全火力をぶつけて叩きのめしてやりたいという加害欲がふつふつと湧き出している。
『俺はシュラ・サーペンタイン。最強のアコードとしてオルフェとデスティニープランが導く世界を守る者……! オルフェは平和と平等に満ちた世界を作り出す! その世界にただ戦いを求め混沌を齎すお前のような存在は必要ない!』
まったく言いたい放題言ってくれるよ。
確かにブルーコスモスの下では言われるがまま戦い、コンパスに移った後もただ何となく戦場の匂いに誘われるように戦ってきたのは他でもない私自身だ。
今回だって客観的には世のため人の為に戦っているが実際はどうだかわからない、何時ものように口実があったからノコノコ戦いに来たという可能性は私自身でも否定できない。
だけど、それだけじゃないはずだと思いたい、ただ自分の為だけに戦ってきたわけじゃないと。
『それはどうかな、マユ・アスカ。お前は生体CPU、戦いに生きることを運命付けられた者、そしてその運命にお前は従ってきたはずだ! そこに他者の存在はなく、自分の存在証明の為だけにお前は街を焼き、人々を吹き飛ばしてきた!』
さっきから一方的に捲し立てて……! 人が気にしてることをチクチク刺してくるのは読心能力の賜物か、どうにか一発食らわせてやりたいけどその力がない。
『フハハ! さあ自分の心に聞いてみるといい。お前がザフトの艦隊を吹き飛ばしたときに感じた胸の高鳴り、俺と戦うことで得られる高揚。それこそマユ・アスカ、お前が求めているものだ、お前はその為に戦っている! 誤魔化すことはできんぞ!』
シヴァの連撃を受けコックピット内でアラームが鳴る。
くそっ、この馬鹿シュナイドシュッツ! もうパワーがやばい!
陽電子リフレクターとビームソードは互いに相殺し合う、シヴァのそれはリーチこそ短いものの最新型だけあって出力は高く、こっちの守りが貫通されてしまう。
ここまでは貫かれるまでの間に攻撃を滑らせ受け流すことで耐えてきたけど、それでもごく微量のビーム粒子がリフレクターの発振器にダメージを与えていたのだろう。
既に左腕のリフレクターは展開が安定せず点滅している始末、ダメだこりゃ。
向こうの蹴撃を左腕で受ける直前、スプリットビームにエネルギーを回し発射体制に。
今度は受け流さず正面から力技で止めると一瞬の反発と共にリフレクターが破られシュトゥルムファウストにビームソードが食い込んだ。
それと同時にドラグーンとして射出するとデストロイとシヴァとの間で内部のエネルギーが暴走して爆発、その爆風をも利用して更に逃げる。
『中々粘るな。だがその機体で逃げられると思うなッ!』
月面に背中を削られかねないレベルのスレスレで飛ぶ。
のらりくらりとフリーダムの方に近寄っていければいいけどそこまでシュラは甘くない、機体の敏捷性を活かしてこちらを上から抑えつけようとしてくる。
盾が一つの状況で近寄られるのは流石にマズイ、少し強引な手段になるけど……。
ネフェルテムを起動して月面にビームをばら撒き瓦礫を飛ばす。
こっちにもぶつかって速度が落ちるけど予測不能な軌道で飛び交う岩塊は読心で対処できるようなものではない、これならシヴァの足止めも期待できる……と思いきや普通にスイスイ抜けて目の前に迫ってくる、伊達に最強を名乗ってはいないってことか。
しっかし全くもってしつこい男である、戦う理由がどうのだとか運命がなんだとごちゃごちゃと……私の内面が終わっているというのは否定しない、むしろ認めようじゃないの、だけどこっちだって理由もなしに暴れ散らかすほど狂っているつもりはない! これでもそれなりに悩んだり考えたりしてんだっての!
『フッ! 面白い! ならば言ってみるといい、お前がノコノコとここまで戦いに来た理由とやらをな!』
言ってみろだって……?
眼前で剣を振り上げたシヴァにちょっと思考停止する、だってハッキリとした理由なんて考えてなかったし。
でも、ふとオーブの青い海が脳裏に浮かんだ。
「青き清浄なる世界のためにぃー!!!」
大声を上げながらスラスターペダルをベタ踏み、同時にデストロイをMA形態に変形させ後退から一転リフレクターを張りながら突っ込む。
『なにっ!? ぐぁああ!?』
デストロイとシヴァの正面衝突で激しい衝撃がコックピットを襲う、だが私は薄っすらと笑みを浮かべていた。
へっへっへ、良いのを食らわせてやったよ。
シュラは言っていた、私は血に飢えた生体CPUだと……そうだね、私はオーブのマユであり生体CPUメリーでもある。
だからなのかつい元某過激派環境保護団体の標語が出てしまったがこれは文字通りの意味で他意はない、私にとっての青き清浄なる世界はオーブであり自由の為に戦う人々が生きるこの世界そのものなんだ。
それをレクイエムで焼き払い、DPで縛ろうとするアコードなんて許すわけないでしょ!
『クッ……猪口才な真似を……ッ!』
シュラは動揺しているようだ、まぁ突き飛ばす瞬間にちゃっかりドライツェーンを一門斬り落とされたんだけど、抜け目のないやつめ。
だが互いにぶつかったってことは向こうの機体も相応の衝撃を受けたってこと、しかも重量差もある、言ってしまえば自動車とトラックの交通事故みたいなものだ。
あっちがペシャンコになっていないのは流石FT装甲ってところだね、なにせあれは剛性が高い代わりに耐衝撃性が高いインチキ装甲だからしょうがない。
とはいえ、無傷とはいかなかったようだ。
若干機体の動きがぎこちない、フレームが歪んだりしたのかな? 何にせよ大変結構なことである。
MSは堅牢な兵器と精密な機械の二つの特性を併せ持つ、ちょっとやそっとの攻撃でガタが来ることはないが、ちょっとやそっとの攻撃で性能が落ちるのだ。
針の穴を通すような操縦技術を持つシュラにとっては手痛い被害だろう、どれだけ扱う人間が優れていても機体がついてこないと意味がないからね。
『調子に乗るのもそこまでだ……! 貴様はここで殺すッ!』
おっかないなぁ、こっちもチマチマ削られてるからお手柔らかにして欲しいもんだけど、と思っているとアラート。
ジグラートから垂れ流されたミサイルが迫ってきている、けれども流石に弾切れなのか数が少ない、そして軌道はフリーダムとデストロイの二手に別れている。
フリーダムの方はウィングユニット以外に損傷らしい損傷はない、ドラグーンのないカルラ相手なら押されつつも危なげなくあしらえるらしい、今更追加のミサイルが来たところでどうにでもなりそうではある……が。
デストロイの火砲をフリーダムに向かっているミサイル群に向け発射する。
損傷している分、撃ち落とせる数は少ないがこれで十分、こちらに降り注ぐミサイルに申し訳程度にリフレクターを張り耐える、ネフェルテムの砲門が次々とオフラインに変わっていくがそれでいい、今この状況でデストロイを守ってもしょうがないから。
『血迷ったな! この期に及んで他人を助けるとは』
「視野が違うんだよ視野が!」
『弱者の戯言だな。そうやって言い訳することで勝ち目がないことを誤魔化しているのか?』
何と言われようとこれが私のやり方でこれが私の勝ち方だ。
最強故に自分しか見えていないシュラにはわからないだろう。
真っ直ぐ向かってくるシヴァを見る私の瞳は冷ややかでありながら強烈な戦意による熱を帯びている。
迎撃のビームをシュラはさっきまでの回避主体とは違い、装甲とシールドで受けながらごり押しを仕掛けてくる。
いよいよ最悪の戦法を取り始めたか、まぁいずれやってくるだろうとは思っていた、あーだこーだ理屈を並べてもアイツは自分が勝てればそれでいいって言うタイプだ。
虎の子の多目的ミサイルを惜しみなく吐き出しつつイーゲルシュテルンも雑にばら撒いて牽制しながら機体重量を軽くして逃げ足を速くする、なお逃げ切れん模様。
容赦ない斬りつけを片手では凌ぎきれるはずもない、がむしゃらに抵抗するが指数的に不利な状況が進行する。
シヴァのワイヤーアンカーがスキュラに突き刺さりヒートソードが頭部メインカメラを両断、コックピットに向けられたビームソードを腕を犠牲に防いだらもう丸裸だ。
『ここまでのようだな。潔く負けを認めるがいい』
「そういうのは実際に負かせてから言いなよ!」
なんて口では勇ましく言ってるけどもうダメそう、やっぱデストロイじゃ無理だよぉ。
既に満身創痍、武装の大半は損壊したか弾切れ。
使えるリソースを使い切って延命したがそれもここまでらしい、戦闘力を失った私にシュラがトドメを刺そうとする。
せめてもの抵抗でシヴァに背を向けウェポンユニットを盾にすると推進剤が爆発し月面に墜落することに、兄妹揃って月に落っこちる羽目になるとは……。
『終わりだマユ・アスカ』
シヴァが胸部装甲を展開した、近接短針投射システムか。
デストロイもそれなりに硬さ自慢だけどPS装甲を撃ち抜くのに特化した武装相手だと分が悪い、とっさに腕のリフレクターを使おうとするが既にそれは失われてる、ならばMA形態になればと変形しようとするも体勢が悪く不愉快な音を立てて動かない、万事休すだ。
ノタクタやってるうちに発射された針がコックピットに迫る。
「やめろぉおおお!!!」
声と共に私とシュラの間に挟まる赤いヤツ。
よし来た! アスランだ! 流石ザフトを裏切っても期待は裏切らない男! やはり頼りになる。
私の盾となったズゴックがハリネズミになり爆散するが問題なし、内部に格納されていたジャスティスが現れシヴァと向かい合う。
「大丈夫か!?」
「はい、おかげさまで助かりました」
「そうか……! そんな機体で、ずいぶんと無茶したもんだ」
いやはやアスランの言うとおりだ。
それなりに抵抗してみたものの戦闘時間を考えると順調に解体されてたし。
『アスラン・ザラか……面白い……!』
シュラはもうこっちに興味なさそう、移り気なやつ。
「君は一旦下がるんだ! 安心しろ、アイツは俺が必ず倒す」
はい逃げまーす、アスランが言い切るやいなや、残ったスラスターをさっさと吹かして戦線離脱する私。
こんなオンボロじゃどうにもならないからね、残れって言われても理由をつけて逃げ出すレベルだ。
フリーダムもプラウドディフェンダーとドッキングしてるし一安心、心置きなく去ることができるよ。
右へ左へふらつきながら機体を持ち上げひとまず安全圏へ、さてアコードと遊んでる間に戦場はどうなったかなと確認。
見れば既にインパルスたちを引き連れたデスティニーがレクイエムに飛んでいく姿が、なんか……早くない? 思った以上に余裕を持ってレクイエムを陥落させられそうなんだけど、一応敵の艦隊もちらほらと残ってるけどいくらなんでも止められるとは考えられないし。
まぁでもとりあえずは味方と合流しよう、こんなコンディションじゃ自衛だってままならない。
そう考えて移動しようとしたけどデストロイは体調不良のようで全然思い通りに動けない、武装の喪失によって崩れた機体バランスと不安定なスラスターのせいでぐるぐるとその場で回ってしまう。
にょわあああだめだー! と漂流していたらレクイエムから火の柱が立ち昇りそのあと少ししたらジャスティスを乗せたキャバリアーが迎えに来てくれた、やさしい。
アスランも無事にシュラを仕留めてくれたようだ、ジャスティスも大した損傷が見られないしよきかなよきかな。
防衛目標を失ってザフトとファウンデーション軍も戦う理由がなくなったのか既に戦闘は収束しつつある、これまでだね。
私はデストロイを乗り捨ててキャバリアーに便乗させてもらおうか、こんなもん置いていくなって感じだけどこれに関しては最初から決まっていた流れだ。
打ち上げたはいいけど降ろす方法がないからこの戦いで使い潰す手筈になってたってワケ。
機体からブラックボックスだけ回収したあと自爆装置を起動したらコックピットから出て乗り換えだ、コイツも最後に一仕事ができて本望だろう。
キャバリアーの席に着いた私は巨大な火の玉と化し消えていく相棒を眺める。
「お疲れ様……デストロイ」
労わりの言葉がふと漏れる、あの機体のこういう言葉を掛けるのは不謹慎なのかもしれない。
でもデストロイと言う機体はこれまで私をよく守ってくれていた、分厚い装甲もそうだけど敵を倒すための大量の火器だってこっちにとっては身を守るための武器だったわけで、悪評も凄ければ業も深い機体ではあるけど……私にとっては命の恩人もとい恩機でもあるから。
今回もボロボロになるまでやられちゃったけど少なくとも私は無事だ、普通のMSじゃ爆散してただろうによく耐えてくれたよ。
だからありがとう、そしてさようならデストロイ。
こうして私の戦いは終わった。