はーい、マユで~す! でもごめんなさい、いまマユは生体CPUになってるのでお話しできません   作:何を書けばいいんだ

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ブロックワード

 はーい、メリーで~す! でもごめんなさい、いまメリーはお話できません。

 うっかりブロックワードを考えたせいで発作を起こしちゃったからね、今は監視員に取り押さえられてベッドに括りつけられてる状態だ、またこれか~。

 全く面倒なものである、こんなものを考えた人間には厳重に抗議したいところだよ。

 

 もう監視役も私がいきなりこうなるのに慣れてるのか、態度も平然としたもんである。

 傍から見たらボーっと座ってたらいきなり発狂しだす生体CPUでしかないからね、私が旧式だから安定性に欠けてるぐらいの認識なのだろう。

 流石に頭CEの科学者連中もまさか私が妙な電波を受信してあれこれ考えているとは思い至るまい。

 

 しっかしブロックワードかぁ、これは生体CPU自身が持つトラウマや思い入れが密接に関係している。

 生体CPUっていうのは精神的に幼い……というより歪な成長を人為的に遂げさせられる、部分的には熟達した兵士であり部分的には物心ついた程度の幼子みたく精神的な強度や感受性に深い谷のような差を作られるってわけだ。

 人間の精神は記憶と経験の蓄積で磨き上げられ固められる、それをゆりかごで不要な部分を削り取ることによって心の鎧といったものを引きはがされた生の精神を露出させるらしい。

 

 エクステンデッドたちはその封じられた記憶の中で強い情動を生み出す部分をブロックワードとして設定される、そうすることでブロックワードを聞いた対象者は自身の中で生まれる激情や焦燥感に晒され混乱し、恐慌状態に陥る。

 大事なのは心を揺さぶるということ、別に単語として聞くのではなく頭の中で勝手に辿って刺激してもブロックワードは発動しちゃうってわけね。

 

 じゃないとステラとか死ぬって言葉がアウトなわけだけど、シン・アスカの「シンだよ!!!!」とかでも死んだって判断しておかしくなっちゃうじゃんね。

 逆に死ぬって聞いてなくてもネオが撃墜されて死んだと判断した彼女はそこから死を連想して発狂したわけで。

 とにかく頭であれこれ考えると自分でブロックワードを発動させておかしくなってしまうのがエクステンデッドって奴なのだ、世知辛い……私エクステンデッドじゃない旧式なのに。

 

 心の中で愚痴りながら傍で検査してる科学者を見やる。

 一見普通のおじさんだ、でもこんなおじさんが人体弄って虐殺に加担してる、寒い時代だよ。

 脳波か何かを測定する機械を外されてお部屋に返された。

 そこでは名前も知らぬエクステンデッド君が寝転がって本を読んでいた、向こうはこちらを見ようともしないしこっちもわざわざ絡みに行ったりはしない。

 

 お互い明日も知れぬ身だ。

 わざわざ関わりを持って心の重りを増やす必要もないだろうね、もし仲が良くなったところでそれで不都合が出かねないなら記憶処理だ。

 沈黙が部屋に充満し時折彼が本のページをめくる音だけが空しく響く。

 

 気まずいっちゃ気まずいが基地の様子、兵士たちの動きをみるとそろそろなんだと思うんだよね。

 私とエクステンデッド君、二人の生体CPUが稼働可能状態で待機させられてるわけだし。

 そう思って待っていたら案の定兵士を伴った科学者が来た、出撃の時間だ。

 

 

 

 

 

 パイロットスーツよし、機体の起動シーケンス完了、弾もエネルギーも満タン。

 今回の任務は海辺の都市を破壊してこいとのことだ、この場所私が潜水母艦沈めた場所の近くっぽくない? これ海中の警備が手薄になったから攻め込む感じか、意外と考えてるなぁ。

 ただ今度の相手はちょっとした曲者である、地理的にジブラルタル基地が近いのでザフトの駐留軍もそれに応じるように精強、ザクやグフ、バビといったニューミレニアムシリーズの機体を始めとした新型が多数配備されているみたい、勘弁してください。

 

 連合系の最新MSはウィンダムなわけだが、ジェットストライカーの優位性を以てしてもザフトの最新鋭機体を相手取るとなると中々難しいものがある。

 グゥルなしのザクならまだしも単独で飛行できるグフに高火力の空戦MSであるバビ相手だと正直性能面でも劣っていると認めざるを得ない。

 これが正規戦なら物量攻めもできるのだろうが生憎とこっちは空き巣野郎のテロ屋である、これはもうパイロットの皆様に頑張ってもらうしかない。

 

 生体CPUを二機出すのも頷ける戦力差にげんなりだよまったく……エクステンデッド君がどれだけ頑張ってくれるかで私の負担決まるので気張って欲しいもんだね。

 

「MS隊発進してください」

 

 アナウンスと共にウィンダム主体の二個中隊が飛び立つ、ちらほら105ダガーが混じってるのは見ないふりをしよう。

 とはいえ今回は大物攻めということでかなりの戦力を投入してるね、機体の数といいウィンダムの割合といいミケール大佐はこの作戦にかなりの力を入れているようだ。

 まあザフトの重要基地の近くで事を起こすわけだしこれが成功すればザフト、並びにプラントに対する衝撃は大きなものになるだろう。

 

 ブルーコスモス……ひいてはナチュナルに対する危機感を煽るには絶好のやり口だ、ここ最近のテロで私たちの注目度が上がってるのも拍車をかける。

 

「続いてX1デストロイ、発進せよ」

 

 その声と共にお隣のスペングラー級で待機してたデストロイが発進した、スペングラー級じゃわかりづらいかもしれないけどこれザムザザーが発進してたやつだね、サイズや重量的には大差ないとはいえデストロイも運べるんすねえ~。

 というか私がデストロイじゃないんだって思うかもしれないけどそりゃそうでしょ、いつ発狂するかわからん旧式より正規のエクステンデッドの方を優先させるのは残念ながら当然の判断じゃん? こんな一方面軍に二機もデストロイが配備されてるわけでもなしに。

 

 それにちょっと前に私がデストロイ乗ったからね、あの機体はパイロットの負荷がデカいから連続搭乗させて使い潰すわけにもいかないというブルコスの懐事情が垣間見える采配だ。

 さてデストロイも行ったしあとは私か、そろそろ出発しますかねえ。

 

「ユークリッド、発進せよ」

「了解」

 

 スロットルを押し上げ、ユークリッドのエンジンユニットを吹かす。

 強い重力が掛かると同時に浮遊感が体に襲い掛かりむず痒い感覚に背筋を正した。

 

 今回私が乗せられたのは単座式に改造された連合の主力MAユークリッドだ。

 旧主力機メビウスの流れを汲むこの機体はデストロイとかに乗ってる私から見ても悪くない機体だと思う、うん悪くはないんだよね、なんか地味ってだけで。

 大出力かつ可動域の広いスラスターはデストロイ並みのサイズである本機に最新鋭MS並みの機動力とそれらを置き去りにするだけの推進力を与えてくれる、重力圏だと重すぎてそこまでかっ飛ばせないけどね。

 

 武装も至ってシンプル、高出力の大口径ビーム砲とショートレンジで猛威を振るうガトリング砲がそれぞれ二門ずつ、それとみんな大好き陽電子リフレクターだね。

 ガトリングの口径はイーゲルシュテルンには及ばないものの弾頭の改良で通常のMSなら余裕でバラバラにできるし、口径が小さいのとシンプルな機体設計故ペイロードに余裕があるから装弾数もたっぷり、無論バッテリーもサイズに見合った大容量仕様なのでビームもリフレクターもエネルギー残量を気にせず使いまくれるというとにかく扱いやすくユーザーフレンドリーな設計をしている。

 

 もし不満があるとしたら……シンプルだからこその手札の少なさかな、良くも悪くも変な使い方をできない機体なので平均値が高いけど限界値は低いって感じだ。

 いくら機動力があるって言ってもデカさがデカさだからあんまり回避力にも期待できないしね。

 

 個人的には怖いもの見たさとあのゲテモノな見た目でザムザザーとかにも乗ってみたいけどあっちは機体の構成上どうあがいても三人乗りだ。

 まあユークリッドも質実剛健って感じで優秀なんだから贅沢は言ってられないよね。

 

 さーて、スラスターを吹かしてウィンダムたちに追いついた。

 先鋒はデストロイに任せていっちょやりますかぁ。

 

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