はーい、マユで~す! でもごめんなさい、いまマユは生体CPUになってるのでお話しできません   作:何を書けばいいんだ

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ターミナルミッション

 その日、国際的情報機関――ターミナル――に所属するエージェント、アスラン・ザラに新たな指示が下った。

 アメイジングズゴックが雲を切り裂きながら空を翔ける。

 操縦を担当していたアスラン・ザラはターミナルからの連絡を思い返していた。

 

「ファウンデーションショックか……」

「ファウンデーション王国の独立に端を発するユーラシア連邦内の群発的離反運動のことですよね。ユーラシアも苦労してますよねえ」

 

 アスランの呟きに答えたのはメイリン・ホーク、アスランと行動を共にするエージェントで情報戦を得意としている。

 

「ずいぶん他人事のような言い方だな」

「あっ、いや、これは言葉の綾みたいなもので」

 

 のほほんとしたメイリンの言い草に何かを感じたのかアスランは彼女に釘を刺した。

 しかし彼女がそういう態度を取るのも無理はない、所詮遠くの他国で起こった動乱、プラントで生まれ育った彼女にとっては対岸の火事でしかない。

 たとえ世界を股に掛けるターミナルの職員だとしても個々人の事情に応じて危機意識に差が生じるのは自然なことだ。

 

 そして同じプラント出身でもアスランの考えは違った、彼はより大局的な視座から物事を見ている。

 

「ファウンデーションはザフトの支援を得て独立を成し遂げた、ユーラシアの立場からしたらこれをどう思う?」

「え~、そりゃあ面白くはないと思いますよ、面子を潰されたようなものですし」

「ああそうだ、それに加えてユーラシア内部は政治的な問題を爆弾を抱えることになった。彼らの首脳部は相当ファウンデーションとそれに協力したザフトに不満を持つだろうな」

 

 ここまで聞くとメイリンも顔も顰めた。

 

「もしかしたら……また戦争って話になっちゃいますかね」

 

 恐る恐るといった様子で尋ねるメイリン、まさかとは思いつつもアスランの深刻な態度に不安を覚えた様子である。

 

「いや、さすがにそれはないだろう」

 

 だがアスランはこれをバッサリと切り捨てる。

 

「さっきも言ったがユーラシアの内部はガタガタだ、往年の力は持ってないと考えてもいい」

「じゃあどうして」

「……」

 

 黙するアスラン、彼の脳裏を駆け巡るのはCE70年2月14日に起こった惨劇――血のバレンタイン――だ。

 プラントへ侵攻した地球連合軍宇宙艦隊とザフトが交戦、その際にブルーコスモスが運び込んだものと思われる核ミサイルが農業プラント「ユニウスセブン」に命中。

 甚大な被害が発生し、アスランも実の母を失うことになった。

 

 この事件は単純に見れば、コーディネーターを憎悪したブルーコスモスの暴走により起こったものである。

 だがここに至るまでに様々な経済的、政治的、イデオロギー的対立があり、それらが長い時間をかけて熟成された結果がコレなのだ。

 今回のファウンデーションショックは端的に言えばユーラシア連邦内の内輪揉めでしかない、だがこれが世界全体に波及する何かに至らない可能性などどこにもない。

 

 デュランダル議長のDP宣言を巡る戦いが終わり、ようやく世界が束の間の平和を享受した今。

 この平和の天秤を揺らすようなことは避けたいとアスランは考えていた。

 いま必要なのは安定なのだ、国際情勢に混乱をもたらすような事態を避けるべく彼らはターミナルで活動している、それを念頭に置いていたからこそアスランはこのファウンデーションショックに纏わる一連の事由に強い注意を払っている。

 

 

 

 

 

 ユーラシア連邦内・某国、キャバリアーによるミラージュコロイドステルスで偽装した彼らはターミナルの指示に従い内偵活動を開始した。

 高精度のスコープを用いて軍施設を覗き見る。

 

「アスランさんこれ見てくださいよ、このジン初期ロット品ですよ、アンティークですねえ~」

 

 物見遊山気分の抜けないメイリンにさしものアスランも呆れ顔を浮かべる。

 

「メイリン……諜報は観光旅行じゃない、好奇心に任せて勝手なことをするな」

「んも~、これだって調査の一環ですってば、やっぱりザフト軍のモビルスーツを払い下げる形で融通してるみたいですね、ここから確認できる範囲でもちょっとした戦力を持ってそうですよ」

「そうか……」

 

 今度は別の意味でアスランの表情が歪んだ。

 ユーラシア内で火種が蒔かれ始めている可能性、それもザフトが主体となってのものだ。

 これを口実にユーラシアはプラントに内政干渉だと行動を起こすかもしれない、逆にザフトから開戦した際に戦力を強化した半ユーラシア勢力が一斉蜂起しユーラシア連邦が二つに割れることも想定される。

 

「気がかりではあるが俺たちに介入する権限はない、ターミナルに報告して経過観察をするしかないか」

「軍施設を一望できそうなポイントを選定したので一応そっちにも行ってもらえますか」

「ああ……」

 

 アスランは憮然とした表情を崩さないままメイリンの指定した地点へ向かった。

 たしかに彼女の言う通り、軍関連の施設を見渡すことのできる場所だ。

 

「も~、この後も色々見て回らないといけないんですから気持ちを切り替えてもらわないと困りますよ」

「……そうだな、君の言う通りだ」

 

 メイリンに諭されたアスランはふうと息を吐いた。

 根が真面目故にあれこれと考えすぎてしまうのは彼の悪い癖だ、アスラン自身もそれは自覚しているのだが中々どうして改善には至らないようである。

 

「軍施設に関してはこんなものでいいだろう、次は――」

 

 ゴンッ!

 

「なっ!?」

「へ?」

 

 何かが機体に衝突した。

 ここで歴戦のアスラン・ザラは切磋に動く。

 

 彼はすぐに操縦桿を動かし機体を飛び退かせつつビームで何かがいたであろう空間に攻撃した。

 

「ちょっ!? アスランさ――」

 

 反応はすぐさま、一見何もない空間からMSが現れながらズゴックめがけてビームを放ってきた。

 

「離れるんだメイリン!」

 

 機体を横に逸らせながらアスランはキャバリア―とのドッキングを解除、ズゴックの姿がその場に現れる。

 予想だにしない遭遇戦に己の油断を戒めるアスラン、彼は思考を戦いのソレに切り替えて眼前の機体を見やり、息を呑んだ。

 

「ブリッツ……!?」

 

 その瞬間、脳裏に駆け巡るはピアノを愛した心優しき少年の姿。

 

「ニコルッ……」

 

 アスランの喉奥から漏れたのは名を呼ぶ声とも、悔恨ともつかぬ呻きだった。

 忘れもしない、ブリッツガンダムのパイロット――ニコル・アマルフィ――彼の死はアスランの心に深い傷を残した。

 

 当然のことながら目の前にいるソレはニコルではない。

 おおよその機体構成はブリッツに酷似しているものの、細部まで目を凝らせばまったく別の機体であることがわかるだろう。

 

 そして謎の機体はアスランが思考する暇を与えまいとばかりに二振りの実体剣を持って挑みかかってきた。

 

「チィ!」

 

 流麗苛烈な斬撃を受けてつど八回、一連の攻防でアスランは敵の強さを推量する。

 その結果、パイロットは手ごわいが機体の方は些か古くズゴックには及ばないと判断した。

 

「メイリン、あの機体は連合のものか?」

 

 連合製のMSであるブリッツに似た機体、ならばそれは連合が関係していると考えるのはごく自然なことである。

 だがその後のメイリンの回答はアスランの想定から少し外れたものであった。

 

「それが……連合が採用している兵器のリストを見たんですけど、どこにもあんな機体の情報がないんですよ」

「何…‥? なら念のためジャンク屋関連の記録も確認してみてくれ」

 

 目の前の機体に一抹の不気味さを感じながらもアスランは攻勢に打って出る。

 正体不明ではあれど性能で優れているのはまず間違いない以上、先手を取って相手の動きを封じるのが得策である。

 

 しかし謎の機体はアスランの猛攻にスラスターと移動用と思わしきアンカーを用いた不規則にもほどがある軌道で対処する。

 

「クッ、無茶な操縦をっ!」

 

 敵パイロットの型破りな操縦にアスランは内心舌を巻く。けれど彼の態度に焦りは見られない。

 そもそもの話、セオリーから外れた操縦はパイロットと機体に大きな負荷がかかる。

 今でこそ拮抗できているがそれは未来の前借り、いずれ破綻が訪れることをアスランは経験と知識から知っていた。

 

「アスランさん」

「なんだ!」

 

 ここでメイリンからの通信、格闘戦に集中しているアスランは手短に続きを促す。

 

「ちょっと気になる情報を見つけました。連合でミラージュコロイドステルスの半永久的な稼働を目的としたモビルスーツの開発計画が立ち上げられていたみたいです。その計画は既に凍結されていて白紙に戻されてますけど、もしかしたらその機体と関係あるかもしれないです」

「半永久……まさか! 核か!?」

 

 途端にアスランの攻めは精彩を欠き、一度仕切り直しとばかりに彼は機体を下がらせた。

 彼の表情は険しい、核動力の機体は下手に撃墜すればそのまま核爆発を起こす危険性を秘めている。

 NJCを的確に破壊できればそれを避けることはできるだろうが……アスランはそこまで己の力量を過信できる男ではなかった。

 

 戦い方を変える必要がある、とアスランが考え機体の重心を移動させようとしたその瞬間――

 

 謎の機体は剣を投げ捨て、クナイのような見た目をした武装を両手で持ちズゴックの周囲に投げつけた。

 それは地面に突き刺さった瞬間に炸裂し、舞い上がった土埃は即席の煙幕となる。

 

「……! 逃げるつもりかッ!」

 

 謎の機体はステルス状態になりそのまま煙に紛れて撤退する。

 スラスターの熱反応を見るにまっすぐ逃げているようだが、その背を撃つ選択はできなかった。

 

「あらら~、行っちゃいましたね……」

「できれば捕らえたかったんだが。俺も焼きが回ったのかもしれないな」

 

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