はーい、マユで~す! でもごめんなさい、いまマユは生体CPUになってるのでお話しできません 作:何を書けばいいんだ
はーい、メリーで~す! でもごめんなさい、いまメリーはお話できません。
何度も連続出撃してもう喋る気力もないからね、仕方ないね。
Nダガーで調査しに行ってアスラン・ザラにボコられて尻尾巻いて逃げ帰った後、ほとんど休む暇もなく襲撃任務に駆り出されてもうヘトヘトだよぉ。
なんか私悪いことしたかな、いやテロ活動してるんだから悪いことはしてるんだけどさ……予備部品のないNダガーがオーバーホールしないといけなくなって実質廃棄することになっちゃったのがいけなかったんですかねえ?
ただ基地の様子を見るに出撃頻度の増加は私に限ったものではなさそうではあるんだよね。
それを前提として考えるとミケール大佐はコンパスの少数精鋭主義に対抗するためにテロ活動を頻発させてあっちの対応能力を飽和させようとしてるのかもしれないね。
いくら優秀なパイロットといえど人間だから食事だったり睡眠は必要だもんね、それに戦いってのは精神を消耗させるし。
機体が撃墜できないなら中の人を消耗させて弱らせるってのは合理的な戦術ではある、ただそれで使い捨てみたいにされる側としては参るんですよねえ。
幸か不幸か私はまだコンパスとは遭遇していない、同時多発的に攻撃を仕掛けてコンパスが来た地域は諦めてそれ以外の地域を徹底的に破壊するって手法を取っている。
問題があるとすれば戦力を分散せざるを得ないから現場の負荷がどんどん増えていくってことぐらいかな。
ただそういう時のために生体CPUがいるってワケ、ふざけんなよ……。
ホント、出撃ごとに随伴機が減るんだからやってらんないよ。これそのうち分散できるだけの兵站も兵力も維持できなくなるんじゃないかなぁ~。
なんて考えていたのが数週間前のこと、本当に分散する余裕がなくなっちゃったらしい。
今はコンパスとぶつかるのを前提にして可能な限りザフトに損害を与えたうえで、ミケール大佐の存在を示唆しつつゆっくりと撤退して誘い出すよう命令が出されてるらしい。
撤退はいかに素早く被害なくがセオリーなのにそんなことしたらどんどん兵力が減るじゃん……そりゃあサッと逃げたらザフトに領域侵犯とかさせられないとはいえさぁ。
そしていよいよ私のお尻に火が付いた瞬間である、ここ最近は不自然なまでに出撃の頻度が減っていた、まるで私の体を休ませるようにだ。
ブルーコスモスの戦術の変化を考えると、次の出撃で私は恐らくコンパスにぶつけられる。
うーん、正直言って生き残れる気がしない、そろそろ年貢の納め時ってことだろうか。
今の気分はまさに死刑囚、呼び出しを受けたらコックピットという名の断頭台に上らなくちゃいけない、いっそのこと薬でヒャッハーみたいに狂わせてくれたら恐怖を感じなくてもいいのかもしれないけどそれはそれで何か嫌なんだよねえ……。
「メリー・ゴーランド、出撃の準備をしろ」
あ~あ、来たよ。
専用のパイロットスーツに身を包みデストロイの前に立つ、こうしてみるとホントデカい機体だよ、何より悪人面だ。
なぜだかMA形態の赤いカメラアイが私を見つめているように感じた。
手の中にはみんな大好きγ-グリフェプタンのジェットインジェクター、つまり無針注射器がある、それを首筋に押し付けて体に投与した。
すると打ってすぐにカッと体が熱くなり心臓の鼓動が早くなる、この感覚がカリカリに尖っていく感じ、いや~整うわ~。
どうやら今回の薬は長時間の作戦行動に堪える為の改良型らしい、うーんこれは限界まで戦わされる予感がビンビンだ、いっぱい戦わせてもらえて涙がでちゃうね。
いっそのことブロックワードを使って発狂するって手もあるけどそれは気乗りしないんだよなぁ、やっぱり生体CPUは一般常識だの良識だのを理解しても生体CPUってのには変わりないわけで、どうにも戦いというものに惹かれてしまう。
そりゃあ戦うための道具が戦いを前に尻込みしてたら話にならないから、そう作るのは当然っちゃ当然だけどさ……。
で、結局唯々諾々と座りなれたコックピットにどっぷりと腰かけながら作戦概要とかをテキトーに聞き流す私がいるってわけ。
なんか今回はゲルズゲーが味方にいるみたいだね、ただ随伴MSは105ダガーしかいないらしい、ゲルズゲーも普段なら頼りになるんだろうけど今度ばかりはね。
続々と出撃していく味方を見送ったあと渋々デストロイを起動して追いかける、国境沿いから出撃するからちょっと長旅だ。
そしてやってきました攻撃目標、ここ最近のブルーコスモスはもう攻めやすそうな場所しか攻撃してないのでこの街もジンぐらいしか配備されてないみたい。
こんなところにデストロイ放り込むとかオーバーキルにも程があるんだよね、お通しのドライツェーンで前面に展開していたジン部隊を薙ぎ払う。
とりあえずゆったりホバーで移動しているゲルズゲーに追従する形で進撃していこうか、あくまでザフト軍をユーラシア領に引きずり込むのが目的な以上強引に詰めていく必要はない。
コーディネーター憎しで突き進むダガーは知りません。
ゆったりと前進しつつビルを盾にしているジン達をビルごと吹き飛ばせば、歩行形態でトコトコ歩いてるゲルズゲーと共にダガー隊が街中にどんどん浸透していく。
可能な限り友軍からの支援を受けたいこちらとしてはあんまり前に出すぎないで欲しいんだけどなぁ……なんて思ってたら最前線のダガー三機が瞬く間に両手足を破壊され無力化された。
アカン……カメラを上を向けると猛スピードで降下してくる四機のMS。
ついに来たか死神が……だがこっちはこんなとこで死ぬつもりはないんだよ。
『こちらは世界平和監視機構コンパス。攻撃部隊に告ぐ。直ちに――』
問答無用だ! 長射程のドライツェーンをフリーダムに照準、発射する。
まあこんなテレフォンビームが当たるはずもなく、とりあえず雑に撃っていけるミサイルで牽制しつつデストロイをMS形態に変形させる。
ここで一旦コンパスの出方を伺うとしよう、生体CPUっていうのはどうしても冷静さを欠きやすくてそこを突かれてあっさりやられるってのが多いんだ。
とりあえずは守備重視で動きつつ隙を見て大火力で刺すという考えで動こう。
ここで第一に警戒すべきはフリーダムとジャスティスが装備しているフラッシュエッジとかの飛んでくるタイプのビームソードだね、リフレクターで防げない飛び道具は鈍重なデストロイの天敵だ。
特にジャスティス! ビームソード系の武装を積みまくってる上に中身があのシン・アスカだ、准将もやばいがこっちも大概である、フリーダムキラーからデストロイキラーに改名したらいかがでしょうか。
それでコンパスはやはりフリーダムがデストロイを担当するみたいだ、ジャスティスはゲルズゲーの方に向かったしゲルググとギャンはダガーを撃ち減らし始めてる。
この状況で大事なのは欲張らないこと、常に守備の手札を温存しておいて切っていかないと瞬殺確定だからね、これでもこの時の為にあれこれ考えてきてるってわけ。
手隙のダガーがフリーダムを攻撃するのに便乗して、意外とMS形態でも使えるドライツェーンで逃げ場を防ぐように薙ぎ払う……がダメだこりゃ、あっさりと抜けられ――
って危ないなぁ……! ドライツェーンのビームで生まれた死角を通して超高インパルス砲――シュトゥルムスヴァーハ――を撃ち込んできた、リフレクターの出力を最大に固定してるから間に合ったけど予め警戒してなかったら今のでドライツェーンが破壊されてたところだ。
もう今のだけでちょっとビビり気味だけどやるっきゃないのでデストロイを前に進めていくぞー、味方のダガーと協力しながら兵装ユニットに備えられた二十門のビーム――ネフェルテム503――と指先に装着されたスプリットビームガンで雨嵐の如くフリーダムにビームを浴びせる。
……あたんないね。准将はこっちの視界をジャックでもしてるんだろうか、それどころか躱しながら射線が通ったダガーを無力化しながら距離詰めてくるとかちょっと立ち回りが嫌らしすぎる。
にしてもダガーの射撃がへただなぁ、へたっぴだ……あんなに動ける敵を律儀にロックしてから撃っても当たるわけないでしょうが!
いや落ち着くのだ私、とにかく守り! 一度崩されたらそのままズルズルとやられるのは目に見えてるんだ、ビームで物理的にMSが通れないぐらいの壁を作って死神の接近を防いでいく。
ツォーンとドライツェーンで回り込まれないように火線を敷きながらダガーをリフレクターの範囲に入れて守るのも大事だ、戦いは数だからね。
すると痺れを切らしたのかフリーダムは遂にフラッシュエッジを飛ばしてきた、実体型のシールドとしても扱えるこの武装はビームブレイドによる火力と高い耐久力を併せ持つインチキ兵器である。
だがなぁ! コイツが鬼門なのはさっき言った通り重々承知の上だよ、そしてしっかり対策も立ててきたのだ。
ということでフラッシュエッジを引き付けてこちらに突撃する為に直線的な軌道に移った瞬間、今まで温存していたスーパースキュラを浴びせて迎撃する。
さすがに並みの武装は防げるとは言え、至近距離からデストロイ自慢の主砲を浴びればさしものフラッシュエッジも持たないようでそのまま墜落した。
ヘッヘーどうだ見たか、私だってやればでき――接近アラート!?
見ればジャスティスが突っ込んできてる! ネフェルテムとスプリットビームで迎げ、ダメだ抜かれる
「マズッ!?」
切磋にホバースラスターを全開にしてデストロイを下げるがコックピットハッチをビームブーメランで切り付けられて全部持ってかれた。
無茶な動きをしたせいで後ろにひっくり返りそうな機体を支えながらスキュラで目の前のジャスティスを追い払う。
今のは紙一重だった、ちょっとでも遅れたらハッチだけじゃなくて私も蒸発してたよ。
ただモニター類がほとんど全滅したのがキツイな……だいぶガッツリ抉られたから外は見やすいけどそれはそれだ。
ここにジャスティスが来てるってことはゲルズゲーはやられたみたいだね、ダガーが全滅するのも時間の問題か、私がジャスティスに対処してる間にもフリーダムにやられてたみたいだし。
とりあえず性懲りもなく再突入しようとするジャスティスにビームの雨を降らせて進路を塞ぐ、直撃を狙うと回避されるけど移動先に撃って迂回させれば接近は阻めるのだよ。
そして視界の端でしれっとフルバーストモードになっているフリーダムからの砲撃をリフレクターで受ける。
防げるんだから効果がないように思えるけどあのクラスの火力になると、防いだところで機体がかなり揺さぶられるから生体CPUの神経を苛立たせるのには有効だ。
サーベルを抜き突っ込んでくるフリーダムを睨みつける、さあ来いよ、そう簡単に私を殺せると思うな……!
通常のビームで進路を誘導しつつ引き付けスキュラを斉射し正面から浴びせてやると案の定ビームシールドで防がれたけどヴォワチュール・リュミエールのないライジングフリーダムなら押し返せる。
爆炎で敵機が視認できないけど一応ビームで追撃しようとしたらジャスティスが飛び出してきた、こいつフリーダムを盾にしたな!
スキュラはチャージ中、反射的に撃ったツォーンは余裕で避けられた、ならばとスプリットビームを向けたがビーム重斬脚で腕ごと切り落とされ目の前にはこちらにライフルを向けるジャスティス。
ひぃっ……!? やられる――?
「ッ! アァアアア!!!!」
柄にもなく大声を上げながら操縦桿をレバガチャしたら残った片腕でジャスティスを殴りつけて地面に叩き付けることができた。
ただそれを見計らったように飛んできたフルバーストをもろに食らう。
ドライツェーンとスキュラ、ツォーンがオフラインになった上にレールガンの直撃で機体が激しく振動すると同時にコックピットに砕けた装甲片が突っ込んでくる。
シートベルトが千切れ、揺れで頭を打ってヘルメットのバイザーには罅が入り操縦桿を握る左腕に破片が刺さる……うぐぐ、痛い…痛い…痛いぃぃぃ。
震えるような痛みを堪えながらフリーダムに残った武装を指向する……が、ゲルググが突っ込んできてる、アラートシステムが機能停止したみたいだ。
特斬槍という名のビームナギナタで右脚部が切断される。
「あぁっ、もうっ!」
これじゃあ姿勢を制御できない、デストロイを前のめりに倒れこませるように重心を移動した上で背部のスラスター噴射によってかろうじて立たせるけど……。
γ-グリフェプタンによって強化された空間認識能力がすぐ後ろに敵がいることを知らせる、そして裂けたコックピットから見えたアークエンジェルの姿。
不意に体が強い虚脱感に襲われて全身の力が抜けた、まだ薬の効き目は残ってるはずなのにね。
でもなんだか……はぁ……デストロイ、私もう疲れたよ。
凄まじい衝撃と爆発音と共にデストロイが前に倒れこむ。
地面に機体が激突し滑る勢いそのままに、シートに固定されていない私はコックピットからゴミのように吹っ飛ばされ地面に何度かバウンドして転がる、超痛い。
もう指先一本も動かないし意識も朦朧だよ、呼吸も苦しいし。
ちょっと離れたところにヘルメットとパイロットスーツに備え付けられていたプロテクターが転がっている。
あぁくそっ……ダメだ、力が抜けていく……まぁ……生体CPUの最期なんてこんなものか。
突風が吹いて倒れている体が揺すられるけどそれにすら苦しみを感じる……やれやれまったく、ため息が……ため息も出ない……。
……こんなところで死ぬのか……誰にも知られず……誰にもなれず……道具のまま……ひとりぼっちで……終わりか……なんだか涙が出てくる。
寂しいなぁ……。
そうやって感傷に浸っていたのになんだかうるさいから仰向け状態から目だけを動かすと赤い機体が傍にいる。
そして駆け寄ってくる誰か、だれだよ。
霞む視界にはどこか動揺している黒髪の青年。
はぁ……この際……だれでも……いいから……たすけて……まだ、しにた……く……な――――