よう実 短編集   作:カチューシャ

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どうも初めまして。
まず一作目。主人公の属性は
『芸術特化で生活能力皆無な男装少女』です。

ちょっとDクラスが良くない目に合うかも。
それが好きでない方はブラウザバックを。


後半も8割くらい出来てるので、もう少しだけお待ちください。
それでは、どうぞ。


『誰が白鳩(パロマ)を殺したか』
1-1


 

4月×日

 

今日からこの高度育成高等学校に通う事になった。せっかくだから日記を書くことにした。

でもあんまり文字を書く習慣がないから、何かあった日だけ書くことにする。

 

絵を描くことが好きだった私が、こんな国立の学校に入学をした理由は、親孝行だ。

義務教育の大半をサボった(ちゃんとプリントとかは提出してたし良いよね)私だけど、

好きに絵を描いて良いよ、水音(みお)の好きにして良いよってって言ってくれた二人には頭が上がらない。

 

そんな両親が高校くらい出た方が良いって言うから入学したけど、思ったよりやさしい学校なのかもしれない。

10万ポイントをいきなり配ってくれて、好きな事に使って良いらしい。それも毎月ポイントが貰えるって聞いて、

クラスの人たちも何を買おうか~なんて話していた。

 

私も帰りに良い感じの画材を見に行こうと思ったけど、担任の先生に呼び出された。

制服についてなんとか?を色々聞かれたから頷いておいたら勝手に納得されたみたい。

絵の具とかで汚れるし、なんかヒラヒラするのが嫌で男子用の制服を希望したけど最近はこういうのに学校も寛容なのかも。

 

書類とか色々説明を聞いて、迷いながらお店に辿り着くと閉まってた。遅かったのかな?

明日こそ、絵を描くための道具を見に行こう。

 

追伸:今日はカ〇リーメイトをいっぱい買った。これでしばらくは大丈夫だ。

 

4月×〇日

 

前の日記から少し経った。でも忘れずに日記を書く私ってエラい。

教室での出来事は…まあ、あんまりないかな?自己紹介したり、く…くし?なんとかさんと連絡先を交換したりくらい?

 

それ以外に変わった事と言えば、私、美術部に入りました。

部活の案内で美術部があったから入部するとすごい歓迎された。なんで?って思ったら、顧問の先生が私の描いた絵を観た事があるって。(どこで?)

 

変に注目されちゃって緊張したけど、絵を描き始めれば気にならない。

 

 

入学する日にちょうど、目の前に止まった鳥を脳裏に浮かべて、きりのいいところまで描く。

 

羽根は細かくて、たくさんあった。

なんだか、ふわっとして見えるところと、つるっとして見えるところがあったから、そのまま描いた。

足は細くて、枝をつかむための小さい爪がついていた。

嘴は少し尖っていて、先の方がちょっとだけ濃い色だった。

 

目は丸くて、つやっとしていて、こっちを見ているみたい。…こんな鳥だっけ?

…まあ良いか。描いているうちに鳥らしく見えてきたから。うん、よし。

 

絵を描いている時はしっかり考えてた(思い出してた)と思うけど、日記を書いている今は思い出せない。

あ、そういえば帰りに先輩がご飯を奢ってくれた。なんでだろ?でも美味しかったから良いや。

 

 

4月×△日

 

最近クラスがとても騒がしい。

先生もあまり止めないから、前の席の男子と隣の席の人の声で、授業がよく聞こえない。

聞こえなくても、板書を見ればだいたい分かるけれど、あんまり落ち着かない。

 

担任の先生に相談しても、この学校は生徒の自主性がどうとかで、結局は何も変わらなかった。

たぶん、そういうものなのだと思うけど、少なくとも私には少し合わない。

だったら、絵を描いていた方がずっといい。

 

それを部活で先輩たちに話したら、ポイントで授業まわりも変えられるらしい。

さっそく先生に、授業を受けない権利はいくらか聞いてみたら驚かれたけど、1万ポイントだと言われた。

全然足りなくてどうしようかと思っていたら、顧問の先生が助けてくれた。

 

授業を受けないんじゃなくて、プリントや別課題にするなら、もっと安くなるらしい。

最初は5000ポイントだったけど、3000ポイントになった。

全部の授業分をその形にしてもらったので、私が美術部の部室にいる時間が増えた。やったね。

そっちの方が、たぶん私には向いている。

 

顧問の先生、ありがとう。

 

 

4月□〇日

 

美術部に通い詰めるようになって、いろんな絵を描き上げた。

部活のみんなは褒めてくれたし、感想を手紙でくれる子もいた。

全部読んでる。すごく嬉しい。

 

顧問の先生は、えらく興奮していた。

なんとかって賞も狙えるかもしれない、みたいなことを言っていたから、任せることにした。

お世話になっているし、大丈夫だと思う。

 

それに、褒められるのはやっぱり嬉しい。

次はもっと上手く描ける気がした。

 

カ〇リーメイトがなくなっちゃったから、また買いに行かなきゃ。

 

4月□×日

 

なんかテストを受けろって言われて、久しぶりに教室へ行った。

あまり教室にいることがないから、少し落ち着かなかった。

 

優しそうな男子が声をかけてきたけど、後ろにいた女子の視線が少し怖かったので、適当に返しておいた。

たぶん、気にかけてくれたんだと思う。

でも、どう返せばいいのかはよく分からなかった。

 

テストはそんなに難しくなかった。

中学の復習みたいな問題ばかりで、最後の方だけ少し分からなかったから、そこは適当に埋めた。

 

その後は美術室にいたのだけど、顧問の先生が興奮した様子で来た。

なんかすごい賞の最終選考まで残ったらしい。

ボーナスでポイントも貰えるとか言っていて、よく分からないけど、やったね、という感じだった。

 

お祝いだと言って、また先輩がご飯を奢ってくれた。

今日は先輩の友達らしい人も一緒で、私の絵を褒めてくれた。

嬉しかった。

 


 

5月1日

 

今日は朝から登校した。

授業を免除するためのポイントを払う日だったけど、担任の先生に、教室でHRをしたあとに受け取ると言われた。

 

面倒だと思っていたけど、教室に入ると、みんな学生証を持ってあわあわしていた。

ポイントがあまり入っていないらしい。

でも、自分の学生証を見ると、ちゃんと入っていた。

10万どころか、何か月かは授業を受けなくてもいいくらいのポイントが入っていた。

 

あまりの金額に固まっていると、担任の先生が入ってきて、学校のルールをもう一度説明し始めた。

ポイントはクラスごとに評価されること。

Aクラスにならないと進路がどうこうなること。

それから、赤点を取ると退学になること。

眼鏡をかけた男子とか、近くの席の男子が騒いでいて、少しうるさかった。

……大変だな、と思う。

 

そのあと先生が、思い出したみたいに私の絵が入賞したことを教えてくれた。

だからポイントが入ったらしい。

クラスのみんながすごく見てきたけど、ちょうどよかったので、今月分の課題もお願いしておいた。

 

すると、黒髪の女の子の、ほ……ほり……なんとかさんが質問してきた。

でも、よく分からなかったので、適当に答えておいた。

 

そのあと、あまり話したことのない人たちに囲まれて、ズルいとか、どうやったのとか聞かれた。

ちょっと面倒だったので、逃げるみたいに美術室へ駆け込んだ。

 

昨日までのびのび絵を描けていたのに、今日はあんまり筆が進まなかったなあ。

あ、またカ〇リーメイト買わないと。…明日でいっか。

 

5月〇日

 

今日はあまり良くない日だった……。

登校したら、朝からたぶん同じクラスの男子に腕を掴まれて、ゲーム機を買わないかって言われた。

 

要らないって断ったら、今度はポイントを貸せって言われた。

面倒だったし、少しくらいならいいかなって思って端末を出したら、なぜか「自分も」「私も」って、クラスの人たちがたくさん集まってきた。

 

ちょっと怖くなって、端末を手放して、すぐに美術室に駆け込んだ。

 

放課後になって、いつもより少ないけど、部員の人たちが来た。

たぶん先輩の人が、テストの心配をしてくれた。

でも、テスト範囲は聞いたし、授業のプリントもやっているから平気だって伝えたら、過去問をくれた。

 

お礼は言っておいた。

でも、見たら全然テストの範囲が違った。

……うっかりさんなのかな?

せっかくだから、何回か解いておくことにする。

 

 

5月×日

 

少し暖かくなってきたから、今日は外でスケッチブックに絵を描いてみることにした。

普段の筆じゃなくて色鉛筆を走らせて、木々の緑や街灯の黒、雲の白や空の蒼を、あまり深く考えずに描いていく。

 

走り書きみたいになったけど、一応完成した。

そう思ったところで、ひょいっとスケッチブックが上に持ち上げられた。

 

びっくりして振り返ると、以前ご飯を奢ってくれたときにいた先輩がいた。

何をするのかと少し不満を言うと、食堂で売っているパンを口に押し込まれた。

お腹が空いていたのを思い出して、もぐもぐ食べていたら、今度は缶コーヒーもくれた。

ブラックが飲めないと言うと、飲みかけのミルクティーと交換してくれた。

……実は優しいのかもしれない。

 

そのあと、人は描かないのかと聞かれた。

あまり上手じゃないと答えたら、自分を描いてほしいとお願いされた。

一食一飯?*1の恩があるし、うなずいてしまったけど、大丈夫かな。

 

それはそうとして、スケッチブックを持って行かれた。

がーん。今度かえしてもらわなきゃ。

 

 

5月×〇日

 

その日は、いつもとはちょっと違う天井を見て目が覚めた。

そこは保健室で、なんでも私は絵を描いている途中で気を失ったらしい。

 

貧血じゃないかって言われて、保健室の先生にぷんぷん叱られた。

絵を描くのもいいけど、ちゃんと食べるようにって。

そういえば最近、カロリーメイトを買っていなかった気がする。

でも、買おうにも学生証がない。

この前、クラスの人たちに渡したままだったのを思い出して、教室に向かった。

 

珍しく教室に来た私を、何人かが見ていた。

前にゲーム機を売ろうとしてきた男子に端末を返してもらうと、ポイントがすごく減っていた。

ジッと見ていたら、「俺だけじゃない、他の奴だって」とか慌てて言っていたけど、誰も目を合わせなかった。

少し面倒になって、そのまま食堂に行こうとすると、この前の堀なんとかさんと、もう一人男子生徒がついてきた。

 

もそもそ昼ご飯を食べていると、なんでも堀なんとかさんはAクラスを目指しているらしい。

そのためにも、私には協力してほしいみたいだったけど、食べるのに夢中でよく分からなかった。

……久しぶりに飲んだ味噌汁が胃に染みわたる。(美味しい)

 

とりあえず、うんうん頷いて定食を食べ終えると、本当に分かったのかと聞かれた。

でも、まあ今まで通り絵を描いていればいいんだよね。

その、堀……さんも何も言ってこなかったし。

 

5月×〇日

 

テストまであと1週間くらいになって、だんだんと美術室に来る部員も減ってきた。

顧問の先生も、担当しているクラスがあるのかな。

ちらっと顔を出して、すぐいなくなってしまった。

 

でも、テストの心配はみんなしてくれる。

小テストの点数は70点くらいだったから、たぶん赤点は取らないと思う。

静かな空間で描く時が、一番集中できている気がする。

気がつくとお昼だったり、夕方だったりするし。

 

最近は、同級生らしい女子の子たちがご飯を誘ってくれたり、差し入れをくれたりする。

……うん、優しい。

 

ただ、夕方にクラスの、えっと、さわやかな男子くんが来て、テスト範囲が変わったことを教えてくれた。

貰った範囲を見たら、前に先輩がくれた過去問と同じだった。

……ん?

 

 


 

 

6月×日

 

結構久しぶりに日記を書く。

 

テストが終わって、美術室に行きたかった。

でもこの前と同じで、また教室に呼ばれた。

テストの結果が出るらしい。

 

クラスのみんなは緊張しているみたいだったけど、個人的には少し自信があった。

というか、過去問と同じ問題が出たから、だいたい解けたんだけど。

 

担任の先生が紙を黒板に広げると、上から順番に名前と点数が並んでる。私も結構上の方にいて一安心。

これで終わりかと思ったら、赤髪の男子が赤点だったみたい。

赤髪だけに

 

茶柱先生が教室を出ていくのを慌てて追いかけて、課題のポイントを支払う。それで終わりかと思ってたけど、同じように教室を出た人に呼び止められる。

 

なんの用事かと思ったら、どうやら赤髪くんの赤点分の点数を買うつもりらしい。

そのためのポイントが足りないから、出してほしいって言われた。

正直、私にはあまり関係ないと思ったけど、嫌な顔をしたら協力がどうとか言われて、少し面倒になった。

それで、端末を投げ渡した。…なんかこういうこと多いなあ。なんで?

 

でもこの前も顧問の先生にお願いして作品を提出したから、入賞したらポイントが貰えると思うし、大丈夫だよね。

 

 

6月□×日

 

テストが終わってから、美術部でも同級生の人たちと話すことが増えた。

眼鏡をかけた丁寧な口調の男の子と、女子では淡い髪色の大人しそうな子。

それから、目つきが鋭い長髪の子もいる。髪留めとか、サイドに結わえた髪とか、そういうのにこだわりがありそうだった。

(ヘアピン貰った。嬉しい)

 

みんな差し入れをくれたり、絵を描いている時に静かに見ていてくれたりする。

優しい人たち……だと思う。

 

あまり気にしていなかったけど、多分先輩たちでもクラスが違う人たちはどこかギクシャクしている。

でも、この三人はそういう感じがあまりしない。

同じ部室にいるのに、空気が少しだけ違って見える。

声の大きさも、視線の置き方も、立っている距離も、全部がばらばらなのに、なぜか不思議と崩れていない。

そこだけ、ちゃんと一枚の絵みたいだった。

 

今までは興味もなかったはずなのに、なんでかこの美術部の雰囲気を、額縁に納めたくなった。

言葉にすると変だけど、机や椅子や、置きっぱなしの画材まで含めて、今この部室にあるもの全部を、ひとつの画面に閉じ込めてみたくなった。

今日は珍しく、というか初めて、抽象画……っていうのかな。

形をはっきり描くんじゃなくて、違和感とか、静けさとか、誰かが差し出してくれた優しさの温度を、そのまま色にしたくて筆を手繰ってみる。

 

白はただの白じゃなくて、少しだけ眩しい。

淡い色はやわらかいのに、触ると逃げそうで、黒は輪郭を作るためじゃなくて、置かれた場所の静けさを深くするみたいだった。

赤は声の大きさではなく、ふとした瞬間の熱として。

青は距離のある安心として。

緑は、何も言わなくてもそこにいてくれる感じ。

それをうまく線にできたのかは分からないけど、描いているうちに、さっきまで何となく曖昧だったものが、少しずつ形を持っていく気がした。

 

……どうしてだろう。とってもいい作品が描けそうな気がする。

それに、こんなにいっぱい日記に書いたのは初めてかもしれない。新記録。

 

 

6月〇×日

 

息抜きにスケッチブックで部活の人たちの絵を描いてみた。喜んでくれた。

(嬉しい)

 

いつもお菓子とかパンをくれたから、そのお礼にって渡したらとってもお礼を言われた。

→顧問の先生も描いて欲しいって言ってた(なんかピンと来ないんだけどなあ…)

 

前の先輩がスケッチブックを返してくれたけど、生徒会に誘われた。なんで?

 

美術部にいて良いって。なんか学校用の大きい絵を描いてって言われた。

今の絵が完成したら良いよって言ったら、大丈夫だって。(頭くしゃくしゃ撫でられた。子ども扱い?)

 

よし、頑張ろうっ。

 

6月△〇日

 

今回の作品は今までで一番、時間がかかっているかもしれない。

漠然とした想像を形に残していたこれまでと違って、今描いているのはこの美術部のみんなを少しずつ()んで描いている集大成だ。

 

この色かとな?って思った色が、次の日には褪せたり濃くなってたり変化に堪えない。

でもそれは修正なんかじゃなく、成長とか過程を結果にしたみたいな下書きにも色を変える意味があったんだと思わせるそんな作品。

 

気がついたら外が真っ暗になってて、巡回の先生に怒られちゃった。

(みんな一緒に帰ってくれる。ありがとう)

 

日ごとに出来上がっていく作品を見て、美術部のみんなも楽しみにしてくれている。

今まではいなかった、喜んだり感想をくれたりする相手がいる。

それを心にくべながら、今日も私は一筆ずつ作品を仕上げていく。

 

……あと少し。もう少しで完成する。そんな予感がする。

最近は寝ても覚めてもこの絵の事を考えている気がする。もうちょっとだけだから。

 

そんな私を心配してか、同級生の三人は今日もご飯を食べたか気にしてくれる。

ちょっと恥ずかしいから直接は言えないけど、ありがとうね。

 

 


 

7月〇日

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さいてい

 

 

 

 


 

 

 

 月  日

 

絵、描き直したよ。完成。

 

 

 

 

いろいろあった。なんかクラスでも、美術部でも色々あったけど、

迷惑をかけたみんな金田君、白波さん、神室さん、ごめんなさい。

…ありがとうね。

 

追伸:でも神室さん、これすごーくヒラヒラして、恥ずかしいんだけれど。

 

 

*1
正:一宿一飯




読了ありがとうございます。
以下、彼女の情報になります。
(こういうデータ考えるの好き)

氏名:朝霧 水音(あさぎり みお)
所属クラス:1年Dクラス
学籍番号:S01T004682
所属部活動:美術部

・総合評価:C+
・学力:C+(62)
・身体能力:E(21)
・機転・思考力:A+(96)
・社会貢献度:D-(18)

■ 特記事項・学校側コメント
・芸術肌の天才というひとことに尽きます。芸術へ特化した才能と、それに伴う社会性の欠如。授業を課題での提出へ変更を求めたり、プライベートポイントへの無関心さも実社会においては非常に危機感を覚えています。
・普段、日中の大半を過ごしている美術部での友達は居るようですが、学校生活を通してクラスメイトとの関係を深めることを期待します。

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