「ピカチュウ……仮面……?」
・・・こういうシリアスな場面で考えることじゃないと思うけどさ…。失礼を承知の上で言っていいかな…?
なにその名前…。
………スゥー…
なにその名前!?!?!?
一瞬、『あっ、ヒーローが現れたー』って思っちゃったけど、よくよく見ると普通に不審者だよ!?
なんなの“ピカチュウ仮面”って!?そのまんまにも程ってものがあるでしょ!?
「アッレ〜?おっかしいな…?コレでも一回、
“世界を救った”…?
じゃあ…この人が…?
『そこの坊主に話によれば、100年前の事件は記録が消されてるらしいぜ?大方、“神”がコレ以上“
「ったく…。秘密主義狂信者の神サマらしい発想ダネ〜。記録の抹消はお手のものってワケかい」
…なんだか、“神”だとか“アークポケモン”だとか、一般市民の僕が聞いちゃいけなそうな単語がポンポン出てる…。
・・・って!そ、そうだ!!骸骨のバケモノは…!
「ウロロ…!ウラァァァァ!!!!」
何故かお面の人を警戒して距離を取っていたバケモノだけど、あまりに緊張感がないお面の人に相当イラついたんだろう。
さっきとは別ベクトルで怒り狂いながら、凄まじいスピードで“ピカチュウ仮面”と名乗った不審者へ襲い掛かる。
「危ないッ!!!」
不審者とはいえ、僕の命を救ってくれた恩人だ。
全身の痛みも忘れて僕は叫ぶ。
バケモノの強さはこの中だったら僕が1番よく知ってる。
特別な“舞い”によって更に強化されたステータスじゃ、全世界からチャンピオン級のトレーナーが10人集まっても勝ち目は0に等しいだろう。
もはや、その強さは各地の伝承に残された“伝説のポケモン”クラス。
ただの人間とポケモンがどうこうできる次元の話じゃなくなってる。
しかし……
「BUNG☆」
「ウロゥラァァァァ!!??」
「・・・え?」
一瞬、空のように蒼く優しい閃光が視界を塞いだ。
蒼が視界を支配したのは、文字通り一瞬。
多分、現実時間に換算しても1秒もなかったと思う。
実際、視界はすぐに他の色を取り戻した。
けど…
だって……
ついさっきまで目の前に居たバケモノは10m以上後ろへ吹き飛ばされていたのだから。
「なにが……起こったの……?」
「さてと…。
無傷で立っていたピカチュウ仮面は、テクテクと僕の判断ミスで死にかけているガラガラとポリゴン2の元へ向かう。
(ヤバい…!早くボールに戻して生命維持装置を起動しないと、本当に死んじゃう…!)
小さな身体で怪力無双のバケモノの一撃をまともに喰らったんだ。コレまで特訓の甲斐あって、辛うじて原型を留めているけど、後遺症は一生残るだろう。
ごめんね…。不甲斐ない僕のせいで…!
「……」
ガラガラたちの前に着いたピカチュウ仮面は、さっきまでの饒舌さが嘘のように黙りこくる。
仮面の下の素顔は一体、どんな顔をしているんだろう。
できれば…怒ってて欲しい。
こんな、初めから勝算のない殺し合いに尊い生命を巻き込んでしまった僕を罰して欲しい。
「…ボクは
「・・・え?」
またしても腑抜けた声が出てしまう。
目の前のピカチュウ仮面の名乗る不審者は、男の人にしては高すぎる、女の人にしては低いすぎる声で僕の判断ミスを肯定した。
判断ミスの結果が成功に至った例は多くある。
けど、失敗で終わったミスを肯定された経験は初めてだったから。
「確かに、“
…そうだ。確かにあの時の僕の選択肢には『討伐』の択があった。
でも、あまりにもバカだよね…。あんなバケモノを倒せる筈がないのに…。
「そう自分を下げないほうがいいよ?確かにキミの迷いは失敗を産んだ。それでも、あんな極限状況で“逃げ一択”じゃなくてウンウン迷える人間はそうそういない。ボクはキミを尊敬する。言い換えると……“エモい”かな?」
「尊敬…か。嬉しいけど、僕はそんなできた人間なんかじゃない。現に僕のせいでポケモンが死にかけてる…。どれだけ肯定されても、不甲斐ない自分自身を許せるもんか…!」
「そっか…。んじゃ!心にできた大きなシコリを取っ払ってあげましょうかね!」
パチンッ!
ピカチュウ仮面は右手の指で軽い音を鳴らす。
それがシコリを取っ払う手段?冗談はそのコスチュームだけにして欲しい。
そう呆気に取られた瞬間だった…。
ピカチュウ仮面の手から…
「蒼い……炎……?」
旅の途中、サイコパワーを持った大道芸人が手を使わずに物体を浮かせているのを見たことがある。
エスパータイプを専門とするジムリーダーにも、千里眼や未来予知などができる人間がいると聞いたことがある。
でも、ピカチュウ仮面の
別世界の住人から、この世界の人間は手足から火を出せるかと聞かれれば、僕はマッハで首を横に張って否定するだろう。
それだけ目の前の光景は非日常に足をガッツリ踏み入れているんだ。
「デス・ビヨンドフレア!!!」
「ちょっと待って!?なんかヤケに不吉な技名じゃない!?」
ピカチュウ仮面の手から蒼炎の塊が放出されると、ガラガラとポリゴン2の身体を包み込む。
「なにやってんだよォォォォ!!!?君ってヒーローなんだろ!!?なに人様のポケモンにトドメを刺してるんだよォォォォ!!!?」
「あっ、キミにかけるのも忘れてた。ハイ、デスフレ」
「みぎゃァァァァ!!!!僕の身体が燃えてるゥゥゥゥ!!!?・・・ってアレ?熱くない…?それどころか…バケモノから負わされた傷が治っていく…!?」
炎の色が蒼ってことは相当火力が高いってこと。それは義務教育を終えた者なら誰だって知ってることだ。
だけど、僕の身体を包んだ蒼い炎は全然熱くない。いや、まったく熱くないって訳じゃないけど、羽毛がタップリ入った上着を着ているかのように心地よい暖かさだ。
「ガラ…?」
「ポリィ…?」
僕の怪我が治ったように、炎に包まれたガラガラもポリゴン2も、目を覚まして起き上がる。
『あ〜あ、だからいつも言ってるだろ相棒〜?その逆張り同然のネーミングセンスだけはなんとかしろって』
「別によくない?そもそも、ボクは技名は設定上だけに留めておくタイプだってピカさんも知ってるでしょ?だって、そっちの方がなんかエモいし」
『ヘヘッ!やっぱりオマエは100年経っても変わんねーな!!!』
100年ぶりの再会を果たした1人のピカチュウもどきと1匹の薄いピカチュウとの会話を、僕はただ見ていた。
本当だったら、僕はもうお役にゴメンなんだろうね。でも、どうしても逃げる気にはなれなかった。
ココまできたら見届けたかった。かつて世界の滅亡を救った本物の“
「ルロロロッ!!!」
「また来たッ!」
ピカチュウ仮面の拘束から抜け出したってことは、1分経ったってことか…。
さっきから時間の感覚がバカになってる気がする…。それもこれも今日1日であり得ないことが連続で起きたせいかな…?
「…ピンクのキミ!そのバックに“ボルテックスパーク”と“ピカさんの
「“ボルテックスパーク”…?」
「祠に安置されてた機械だよ!アレはボクのなの!」
…なるほど、合点がいった。ピカさんは僕ならその“ボルテックスパーク”を使えると確信してたみたいだけど。
多分、アレはピカチュウ仮面専用のデバイスなんだろうね。僕には特別な資質があるみたいだけど、どう頑張っても手から炎なんて出せないし。
「…頼んだよピカチュウ仮面。僕に代わって、アイツに殺された人たちの仇を討ってくれ」
僕はこの町を偶然訪れただけの旅人だ。
住人たちとの間にあった“繋がり”は精々、ジョウト出身だという事実だけ。
大半の人間は名前はおろか、顔すら知らない人ばかりだ。
それでも……
間違いなく彼らは殺される程の罪人ではなかった。
僕は“ボルテックスパーク”と“ピカさんの
死んだいった者たちの“無念”を。
絶対に目の前のバケモノを野放しなしちゃいけないという“義憤”を。
「キミの想い…確かに受け取ったよ。あとは……“
ピカチュウ仮面は僕の“想い”を受け継いでくれた。
「…久しぶり」
英雄を英雄たらしめる宝具が、本来の持ち主の手に渡る。
主人の手に戻った宝具は、本当の使命を思い出したかのように、全身に走ったラインから
「ルゥ…!ロオォォォォォ!!!!!」
バケモノの渾身の怒りを込めた一撃が、ピカチュウ仮面に向かって振り下ろされる。
常人なら足が震えて動けなくなる程の“怒り”…。
実際、僕も生まれたてのシキジカのように足が震えて動けない。
それでも……
「…行くよ。ピカさん…!」
“ヒーロー”には通じない。
『モンスリンク!feat “ピカチュウ”!!!』
どこからともなく陽気な電子音が周囲に鳴り響く。
直感で確信する。きっとヒーローは“成功”したのだと。
「彼の電流…シビれすぎ注意ッ!おいでませッ!!!ボクのマイフェイバリットヒーロー!!!」
僕らが住む青い青い
“絶望”の闇に世界が覆われた時。
一筋の“希望”が光り輝き。
黄色い花が咲く。
「ピィーー…!!カァァァァァーーーッ!!!!!」
脳に直接に流れ込むロック調の激しいメロディは、まさに英雄の復活を知らせる
黄金に煌めく光は徐々に形を形成し、英雄を降臨させる。
まるで生気を感じられなかった薄色の肌は、世界の人々が見慣れた明るい黄色へ戻り
弱々しく垂れ下がっていた2本の耳は、天を貫かんばかりにピンと張っている。
加えて…だ。
その人気を支えるつぶらな眼は、白の比率が大半を占め中央の瞳は相棒の髪色と同色の綺麗な
「ピカカカッ!!!やっっっっと元の姿に戻れたぜッ!!!」
遂に現世へ顕現したもう1匹の“
だけど、悲願達成の喜びとは裏腹に、その表情には明確にバケモノに対する“怒り”に染まっている。
「先ずは…!シュロの親父の分ッ!!!」
「ウグロォッ!!?」
「は、速い…!」
まるで見えなかった。
脳がピカさんの姿の消失を認識した次の瞬間には、ピカさんの拳がバケモノの鳩尾にクリーンヒットしていた。
「まだまだァ!!!コイツはミライの分ッ!!!」
スゴい。僕たちでさえ小細工を要してようやく勝負の土俵へ上がれた、正体不明のバケモノを、ピカさん純粋なスピードとパワーだけで圧倒している。
「ジャパラァ…!!!ロロロロロッ!!!」
「なに言ってるか分かんねェよッ!!!けどなァ…!オイラの怒りはコレっぽっちじゃ収まらねェ!!!」
ピカさんの怒りがそのまま現れたかのように、膨大な量の雷が小さな右手に纏わされた。
「そしてコイツはァ…!!!アル坊の分だァァァァ!!!!」
「ウロ…!ルンッ!!!」
コレまで経験からピカさんは鳩尾に拳を喰らわせると判断したのだろう。バケモノは2本の腕で腹部をガードするけど、その中途半端な知能が裏目に出る。
「ボルテッ拳ッッッ!!!!!」
「ウロォラァァァ!!!?」
ピカさんが狙いに定めていたのは腹部ではなく頭部。
ピカチュウとは思えない物理攻撃力は、片方の骸骨に亀裂を入れ、そこからドス黒い血液…のような液体を噴き出させる。
「ナイスピカさん!んじゃ、次はボクのターンだね」
そうだった。鬼神のようなピカさんの猛攻を前にしてすっかり忘れたけど、コレは
どちらが“生きる”を“死ぬ”かを賭けた純粋な殺し合いなんだ。
「最初に言っとくけど…コレはメチャクチャ痛いよ?」
いつの間にかバケモノの懐に接近していたピカチュウ仮面は、無防備となった腹部に右手をポンと置く。
「
ズガガガガッ!!!
聞いたことのない轟音と共に、小さな蒼炎の弾丸がバケモノの腹部を貫通する。
1つ1つは大して大きくない弾も、強烈な圧力と数の暴力により凶悪な兵器と化し、バケモノの腹部に大きな穴を開けた。
「うっわ…!」
自業自得とはいえ、その痛々しさのあまり無意識のうちに自分のお腹を触ってしまう。
「ルロ…!」
だけど、まだバケモノは生きている。決してダメージが無い訳じゃない。
それでも、普通のポケモンならば間違いなく致命傷となるであろう負傷をしても、まだ戦闘を続けられる様子だ。
「ウゥロォォォォォォッ!!!!!」
「お腹の穴が塞がった…!?」
ごめん。戦闘続行だとかいう次元じゃなかった。
バケモノが咆哮を上げた瞬間、せっかく開いた穴が黒い瘴気のような物質で覆われて綺麗に塞がってしまった。
「やっぱり、チマチマ削ってもすぐに回復しちゃうか…」
「ウゥラァァァァァァ!!!!!!」
バケモノは右手の骨を振り上げると、その先端から黒く染まったエネルギーの球体が生成される。
「おっと…?コレは何か嫌〜な予感がするかも…!」
「ルオォォォリャァァァァ!!!!」
骨が振り下ろされると、先端の球体もピカチュウ仮面に向かって射出された。
「そっちがその気なら、コッチだって!!」
「オイラたちをあんま舐めるんじゃねェ!!!」
恐らく少しでも触れれば即死してしまう“何か”が起こるであろう黒球を前にしても、ヒーローは恐れることなく立ち向かう。
「
「100万…!ボォルトォォォ!!!」
ピカチュウ仮面の人差し指と小指の間から発射された蒼炎の砲撃と、ピカさんの全身から飛び出た100万ボルトの雷は、互いに混ざり合うと蒼黄の閃光となって黒球と衝突した。
耳をつんざくような轟音が轟き、コンクリートや木材の破片が混じった砂煙が僕に襲い掛かる。
「ケホッ!ケホッ…!ピ、ピカさんとピカチュウ仮面は…!?」
さっきのエネルギーとエネルギーの衝突は、数十階建の高層ビル1棟ですらも容易く粉砕しただろう。
そんな爆発の爆心地に2人は居たんだ。下手すると大きなダメージを受けてるかもしれない。
…だからといって、僕がどうこうできる話じゃないけど。
「ったく…。派手な砂煙を撒き散らしたなぁ…。おかげでお気に入りのコスチュームが台無しじゃん…。ってか、100年前に使ってたクリーニング屋ってまだ続いてんのかな?」
「知〜らね。アソコの親父に息子が居たから、まだ潰れてないんじゃねェの?」
生きてた…!それも割とピンピンしてる!確かにコスチュームは所々破れちゃってるけど…!
「ルゥロォォォォォォォォイッ!!!」
2人の無事を安心したのも束の間。悪魔の咆哮が木霊する。
それも今度は天に向かってからじゃない…。
「デ…デカい…!!」
原理は不明だけど、翼を使わずに宙に浮いたバケモノは、再度に天に骨を掲げて漆黒の真球を作り始めていた。
けど、今度のサイズはさっきの比じゃない。
目測だけど、直径50mくらいはあるであろう巨大な真球だった。
「まさか…!」
僕は周囲を見渡す。
何か確証があった訳じゃない。
本当の本当に直感めいた感覚が僕の視線を動かしたんだ。
「森が…!木々が
周囲の異変を見た僕は、黒球を構成するエネルギーの正体を察する。
アレは、森の木々が持つ“生命エネルギー”だ。
自力じゃピカチュウ仮面に勝てないと本能で悟ったバケモノは、強制的に木々の生命エネルギーを吸収することで英雄を殺そうとしてるんだ。
「嘘だろ…!?ココら一帯だけじゃない…!遠くの山付近まで枯れている…!」
ピカチュウ仮面たちから離れて高い所へ登った僕は絶句する。
マシロタウン…の跡地は森林が広がっている。だが、先ほどまで青々と生い茂っていた木々は、漆黒に染まるという異常な形でその命を終えていた。
ココから山奥までは車を使っても1〜2時間はかかる…。
つまり、生命エネルギーを徴収する範囲は“メートル”で収まらない所まで来ているに他ならない。
「あんな巨大なエネルギーが衝突すれば…!町どころがココら一帯が吹き飛ぶぞ…!」
今の台詞はあくまで勘だけが根拠の仮説でしかない。
でも、小太陽と化した漆黒の真球から発せられる圧力は、それ以上の被害を出してもおかしくないと確信させた。
「……」
ピカチュウ仮面は50mを超えても膨張を止めない漆黒の太陽をただ静かに見つめていた。
縁日の屋台で売っていそうな安い素材の仮面からは、その表情を察することはできないけど、一度は世界を救った…らしい“
多分、どうやってこの窮地を切り抜けようか考えているに違いない。きっとそうど。じゃなきゃ、普通に中の人の人格を疑う。
「さ〜てと!ひっさびさに必殺技をぶちかますとしますか!ピーカさん?」
「ピカカカッ!!!まっ、あんな技を使われちゃあ、それしか方法はねーけどな」
やっぱり!この窮地を切り抜ける策があるんだね!アソコまで高密度のエネルギーだ…。きっと、“マイナス”を“プラス”にするようなテクニカルな必殺技があるんだ!
「“ボルテックスパーク”!」
“ボルテックスパーク”を取り出したピカチュウ仮面は慣れた手つきで、黄金の
…あっ、よく見ると
『フィニッシュタイムッ!!!』
下部の模様を三度読み込む…それが必殺技発動の条件だったんだろう。
条件を満たした“ボルテックスパーク”は『フィニッシュタイム』の電子音と共に光り輝くと、ピカチュウ仮面はデバイスを天に掲げ親指でトリガーを押す。
「フィニッシュタイムだよ!ピカさんッ!!!」
「オーケー!相棒ッ!!!100年ぶりにぶちかましてやるとすっか!!!」
必殺技発動の下準備を終えたと同時に、1人と1匹の“
僕はこの現象…いやこの技術に似た物を見たことがある。
彼らに起きた現象はアローラ発の技術“Zワザ”にそっくりなのだから。
…僕は諸事情あって使えないけど。
「ジュピラ…!ルロオォォォォォォォイーーーッ!!!!!!!!」
直径100mに達した漆黒の太陽が
本来ならば星に近づきすぎた惑星はロッシュ限界を迎えて崩壊するらしいけど、生憎、目の前の太陽はあくまで比喩であって実物じゃない。
殺戮者が作ったとは思えない綺麗な真球はその形状を変えることなく、数十キロにも及ぶ土地ごと“英雄”を殺そうとする。
……でも。
目の前の黒球にさっき程の“恐怖”を感じない。
決して、バケモノの技が見掛け倒しな訳じゃない。
この球をどうにかしなければ、間違いなくココら一帯は更地と化してしまうだろう。
ただ……どうしても想像できないんだ。
偽りの“太陽”が本物の“
「……にひっ!」
僕が何気なくピカチュウ仮面を見た時、ヒーローは笑っていた。もちろん、仮面の下って意味でね。
不思議なことに僕はその笑みの意味が理解できた。
2人はもう確信してるんだ。
自分たちの勝利を。
「オイ骸骨野郎ッ!一ついいことを教えてやんぜッ!!そんなやけっぱちの広範囲攻撃はなァ!!!立派な“死亡フラグ”なんだよォ!!!」
『
「「できてるよッ!!!」」
その時…またしても
もう、何度も人生の常識を覆す“不思議なこと”を見てきたんだ。もうコレ以上、驚く余地なんてない……そう思い込んでた。
けど、実際にはまだまだあった。
コレからの1分間…。僕は嫌という程、どれだけ自分が“井の中のニョロトノ”だったのかを思い知らされることとなる。
まず最初は……
「ピカさんが…!“ボルテックスパーク”に吸収されたァァァァ!!??」
アレだけの存在感を放っていたピカさんは、黄金の粒子と化すと相棒が持つ短剣に吸収される。
「コレで…!終わりだァァァァ!!!!」
そして次…。コレがある意味1番の衝撃だった。
「「1000万…!ボォルトォォォ!!!」」
ピカチュウ仮面とピカさんの声が重なったかと思うと、彼らを起点に一筋の光が輝く。
それはただの光ではなかった。
アレは謂わば“
弱者を蹂躙し、命を奪う“理不尽な悪意”を討ち滅ぼすべく、
“理不尽な善意”だけが使うことを許された『裁き』だった。
「「貫けェェェェェ!!!!!」」
「ルロッ……!?」
“英雄”の裁きと“悪者”の殺気が衝突する。
互いの“最強”が衝突し合ったことで発生する衝撃波は、さっきとは比較にならない。
常人ならばすぐに吹き飛ばされてしまうような風圧に襲われながらも、必死に比較的安全そうな瓦礫にしがみついて耐える。
こんなところで脱乱なんてしたくなかったから。
僕はどうしても見届けたかった。
この殺し合いの結末を。
そして……
本物の“ヒーロー”がもたらすハッピーエンドを。
「「まだ耐えるか…!だったら…!!!」」
「ルビィ…!」
「「
勝負は一瞬だった。
「ルロッ…!!?ルロオォォォォォォォイ!!!?」
限界を超えた力を発揮したピカチュウ仮面の“1000万ボルト”は、あっという間に偽りの“太陽”を掻き消すと、これまで暴虐非道を繰り広げたバケモノに直撃する。
蒼黄の柱と化した裁きをまともに喰らったバケモノは断末魔を上げ、跡形もなく消し飛んだ。
「アググ…!あっ!離しちゃった…!ウワァァァァァァ!!!」
“1000万ボルト”の衝撃に耐え切れなくなった僕は、遂に命綱の持ち手を離してしまい、遥か遠くへ飛ばされる。
けど……
「よっと!“勝って兜の緒をしめよ”…だよ!ピンク君!」
「ピ…ピカチュウ仮面…!」
急死に一生を得た僕は、お姫様抱っこで僕を地上まで運んでくれる。
(アレ…?)
その時…。僕は“あるもの”を見た。
それが現実なのか、幻なのかは分からない。
それでも確かに見たんだ。
バケモノに殺された人々の魂が天に
多分、この中に“シュロの親父”や“ミライ”がいるんだろう。
でも、僕には誰が誰だか分からない。
それでも…。
死んでいった者たちが顔も知らない赤の他人でも。
今はただ祈っておこう。
彼らが来世で幸福な人生を掴めるように。
「…キミは本当に“良い人”なんだね」
ピカチュウ仮面の優しい声が聞こえると、僕の意識は深淵へ沈んでいった。
これまでの冒険を日記に記録しますか?
はい
いいえ◀︎
「……」
はい◀︎
いいえ
アルカはヒーローの復活を日記に記録した!
♦︎♦︎♦︎
「まず一枚…か」
全てが終わり、更地となったマシロタウン跡。
そこに“奴”は再び現れた。
“奴”こそがこの悲劇の全ての元凶。
“奴”がこの世に存在していなければ、あのようなバケモノの復活は数十年は遅れていたに違いない。
しかし、“奴”は表情一つ変える事は無い。
まるで己がしでかした事により発生した犠牲は、大義に比べれば些細な事と言わんばかりに。
「この世界には“正義”などありやしない。あるのは醜い
すると……
“ゾロアークの怪物”としか形容出来なかった“奴”の姿が、漆黒のスーツを身に包んだ黒髪の青年の姿へと変わる。
何処からともなく取り出した帽子を深く被った“奴”は、用済みとなった土地から離れ、次の目的地へと向かう。
「全ては“英雄”の復活の為に」
第1話『ユベル・リズガ編』はここで終了です。
今回は読み切りのようなものなので、連載するかは反響を見てから決めようと思います。
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【オリキャラプロフィール】
■ピカチュウ仮面
性別:ひ・み・つ☆
年齢:??+100
身長:160cm後半(アルカくんよりかは少し高いかな)
出身:不明
職業:無職(現在)