魔法少女世界で俺のエンカテーブルがクール系に偏り過ぎてるんだが   作:TSから逃げるなぁぁ!!卑怯者おぉ!!

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 第2話目記念という事で一万文字超えSPです。
 はい。短く纏める能力が無いだけです。



魔法少女のクールな夜

 

 5度目の封印式フォーミュラシールの刻印を終えた俺はフラフラになりながら学校に着いた。

 通告通り、学校のじんに割れた窓ガラスは中央魔法少女管轄機関本部から修復魔法を持った魔法少女が派遣されて既に元通りになっていた。

 

 基本、魔物により損壊した公共施設は魔法少女により速やかに修復される。

 なお魔法少女は高速修復は出来ても、それは簡易的な修復に留まる。学校ではガラスのみが壊れて建物自体が破壊された訳じゃないので派遣条件に当てはまったみたいだが、全壊となると一筋縄ひとすじなわではいかず工事業者などの人の手で再建するのに落ち着く…………とさっき緊急全校集会が行われた時に、校長が経緯を説明してくれた。

 

 そんなこんなで校舎は元通りでも俺の身と心は元通りとはいかなかった故、今日1日ナーバスな気分で学校生活を送るものかと思っていたが、昨日の蛾の魔物の件でクラスメイト達は俺の周りを囲って質問攻め。

 落ち込む間もなく対応していると、段々と調子が戻ってきた。

 

 「むつみ…改めてお前よく生きて帰ってこれたな…」

 

 「ホントにね」

 

 「あのデカい蛾にお前が連れ去られた時はどうなる事かと……機関の魔法少女が撃退してくれたみたいだが、お前自身は生きた心地がしなかっただろう。」

 

 「………ホントにね」

 

 違う。問題はその後なんだ。

 俺は自分の机をカリカリと爪を立てながら擦る。委員長の清介せいすけにも本当の事を伝えて事態の共有をしたい気持ちではあるが、流石に危険が過ぎる。

 

 「睦くん!守屋みゆりに助けて貰ったってホントですか!?」

 

 一方でオタク少女美咲みさきは脚の傷もまだ癒えていないのに、目をきらびかせながら俺に迫って来た。紺太こんたは病院行きだったが、この娘は幸い浅い傷らしく痛みはすぐに引いたらしい。

 元気を与えられるのなら話しておくに越したことは無いだろう。

 

 「うん。爆発魔法を間近でブワァーッて披露してくれたよ。あと剣に形状が変わって光の剣ぃーみたいな。」

 

 「おおおお!!『正義の道標ビーコン・オブ・ジャスティス』と『鉄の意志ウィル・オブ・スティール』ではないですか!!」

 

 随分と情報バレしてるんだな機関の魔法少女って……悪の組織とかに対策練られる可能性とか無いのか?

 

 「1つ聞いて良い…?魔法少女ってそういう情報で不利になる事は無いの?」

 

 「基本上位ランクに上り詰めるほど魔物討伐を任せられ、公共の場で披露する機会が増えるので、非知性体寄りの魔物には問題無いですが人間や知的生命体で構成された悪の組織等には既に情報は行き渡っていますね……」

 「ならいっそ上位ランクの魔法少女はアイドルみたいにメディア展開して、情報開示する事で市民から理解を得ようという姿勢を取っている訳です!」

 

 悪の組織として魔法少女を相手取ったり、防衛省として市井しせいを味方につけたりするには、情報戦として並のオタクよりも魔法少女に博識でなきゃいけないって事か。

 

 「じゃあ悪の組織に相対して上位ランク魔法少女が対策されてるなら、他の魔法少女と協力して対応されないように多岐に作戦を展開するって訳だ。」

 

 「あー…ええっと……でも確かに悪の組織と闘う時はチームを組んでますね……もしかしてそういう意味があったのか……!?」

 

 「はは。美咲はアイドルとして魔法少女が好きだもんな。まさに『守屋みゆり』なんかは最近滅茶苦茶推してたから、睦もなるべく当時の彼女の状況を詳細に語ってあげると良いぞ。」

 

 「おけ」

 

 だが。

 

 「『守屋みゆり』活動停止!?」

 

 1限目の授業を終えると、クラス内の雰囲気が一変する。

 みゆりさんは俺が思っていたよりも大変人気を博しており、2限目からはクラス内どころか学校中がその話題で持ち切りになっていた。

 更に体育祭の打ち合わせを行おうと清介と柔道の顧問の所に行ったら真っ白に燃え尽きていた、ファンだったか。

 

 みゆりさんが活動停止を決めた理由はまあ推測出来るが……

 封印式が刻まれていても、いなくても彼女の名誉の為に絶対に口外こうがい出来ないな。恐怖のあまりジョボジョボおもらししてましたって事は……

 

 

 午後7時、剣道の部活動を終えて帰宅。

 辺りは既に夜のとばりが下りて空には星が数多に浮かぶ。

 学校では魔物が襲来する事も無く、帰りに魔法少女と鉢合わせる事も無かった。

 

 「今夜は早めに雨戸閉めとこ…窓ガラス割られても困るし」

 

 昨日そこで起きた魔法少女と魔物との戦闘を思い出し、家の損壊を警戒して窓に手を掛ける。

 

 バタンッ

 

 すると突然窓がひとりでに開き、刀を片手に昨日の花子とかいう魔法少女が軽やかに降り立って来た。

 ザ・優等生的な黒髪ロングストレートがたなびく。毛先に掛けてふわっと広がるのではなく、まっすぐシャッキリ整っている。

 改めて見ると目つきはキリッとしているが瞳自体は純朴そうで、顔の造りにはあどけなさが残っており、体型は細身でスリム。クラスの委員長でも務めていそうな可憐さと可愛さが混合した塩梅あんばいだ。

 他の4人は肌が白磁みたいに色白いろじろだが、この娘は少し小麦色が混じっており血の気があるだろうか。アイツらが白過ぎるんだ。

 

 「すまない、最初はチャイムを押して玄関から訪ねようと思ったが…急を要する。」

 「貴様、魔物に狙われているぞ」

 

 薄紅に灯る刀の先端には小型魔物と思われる首が3つお団子みたいに串刺しにされていた。

 花子はピッと刀を振るい、魔物の首3個を俺の部屋の中で払い落とした。おい人の部屋でやめろ、すぐに塵になって消えたが。

 

 「どういう事情なのこれは…」

 

 「『残滓ざんし』が原因だ。一体どれほどの魔物と邂逅し生き延びたのだ貴様は……呪いを掛けられた訳でも無いのに1日も残滓ざんしとして邪気が残るなどと。」

 

 「残滓は弱い魔物じゃ殆ど発生しないんだりゅ、基本強い魔物を倒した際に発生するんだりゅ。魔物の意図しないマーキングみたいなものなんだりゅ。掛かると別の魔物が寄って来て危険なんだりゅ。」

 「でもそれでも、基本は数分で消えるんだりゅ。それが1日なんてちょっとありえないんだりゅ〜……!」

 

 確かリュリュと言った精霊は今の俺の状態について説明してくれたが、なんか特大のションベンかけられたみたいで複雑な受け取り方になってしまうんですが。

 

 「……でも魔物は昼間に出て来なかったぞ?」

 

 「この周辺は昨日、レベル大河エクストリームが出現した事もあって厳重警戒態勢が敷かれている。多くの魔物が貴様に引き寄せられてもいたが、万全の警備を敷いていた魔法少女達が討伐もした筈だ。」

 

 すぐさま携帯を取り出し、本日の魔物出現速報サイトを閲覧する。

 本当だ。1日あたりの魔物出現報告がここ数日より5倍近くなっている……ただ殆どがレベルアーリィかつ討伐済な事に胸を撫で下ろした。

 

 が。緊急速報メールが突如防衛省から送信されて来た。

 

 「レベルハイ・クラス出現……!?」

 

 「安心していたようだが、私もその存在は今さっき察知した、だからここに来た。」

 

 「でも、夜間でも魔法少女は出動するにはするんでしょ?労基が定期的にブチ切れて問題になってるの耳にしたし…」

 

 「確かに討伐は出来るかもしれないけれどりゅ、高レベル魔物討伐の分、低レベル魔物の被害を防ぎ切れない可能性はあるんだりゅ!」

 

 「手数が足りず、貴様は残滓で魔物をおびき寄せる……低レベル魔物だろうと貴様の家ぐらい破壊するのは容易だ。」

 

 「ひょえー……なんてこと……」

 

 「ここから移動するぞ。貴様を私が護衛してやる。」

 「その代わり、その封印式重複の経緯について話せ。」

 

 

 家を出て、取り敢えずあてもなく広い場所を探す。その過程で花子には昨日の経緯を話した。

 

 「その4人が貴様に封印式を施し、内1人が高レベルと思われる魔物を瞬殺したと……」

 

 「有名人じゃないの?その4人って。」

 

 花子の反応はどうも歯切れが悪く見当のついていない様子だった。

 

 「恐らく強力な忘却魔法のたぐいで記憶を消し、痕跡を残さないようにしている……それか目立たないよう野良で活動しているか……」

 

 「リュリュに心当たりがあるんだりゅ……けど、知ってるのは1人だけだりゅ……」

 

 「本当か、リュリュ。」

 

 「誰なのソイツは?もしかしたら4人の中に居るかもしれん。」

 

 リュリュは話すかどうか躊躇ためらっているのか「りゅ〜」と鳴きながらその場でくるくる回ると、やがてピタッと止まって話し出した。

 

 「ごめんなんだけどりゅ……6年も経って今はもう身体的特徴は変わってるかもしれないんだりゅ、白髪の『刀禰とね』という魔法少女なんだりゅ。」

 

 確かにあの4人の中の面子に白髪の魔法少女はいなかった。単に髪を染めているかもしれないが、もしかするとリュリュの見当違いの可能性もある。もっと根拠を知りたい。

 

 「……その魔法少女を候補に挙げた理由は?」

 

 「まず機関に封印式を施せる魔法少女は限られてるんだりゅ。機関の許可も必要なはずだったんだりゅ。そうなると野良の魔法少女なんだりゅ。」

 

 「刀禰なら私も知っている、過去に反魔法少女機関勢力による強化実験を受けた者だろう。機関に一時的に保護されたが脱走して緊急保護指令が出されるも見つからず現在は生死不明。」

 「だが精霊との契約が途切れていないのであれば野良でも生き延びている可能性あり得る。」

 

 「そうなんだりゅ。その野良の魔法少女の中でリュリュが挙げるとしたら刀禰という訳なんだりゅ。彼女は底しれないんだりゅ…」

 「6年前の事なんだりゅ、保護下にあった刀禰をリュリュはひと目見たんだけど、その時震え上がったんだりゅ……他の精霊の皆は何も感じていなかったみたいなんだけど、リュリュの勘が刀禰の中の闇を感じ取ったんだりゅ………もし今も力を蓄え続けているとしたら封印式を施せる位になっててもおかしくないんだりゅ。」

 

 とんちき語尾なのにリュリュは情報と経験則が割と備わっているらしい。少し気になって花子に聞いてみる。

 

 「この精霊ってもしかして結構ベテラン?」

 

 「ああ。リュリュは過去にも何人か担当していた。私の信頼における精霊だ。」

 

 「随分と便利な精霊がついているみたい…」

 

 「「「!!」」」

 

 リュリュに感心していたところ、聞き覚えのある声が上から投げ掛けられる。

 顔を上げると月夜をバックに歩道橋から、ぬいぐるみを抱える少女が此方に冷めた眼差しを向け見下ろしていた。

 

 「4人の内の1人と特徴が一致するぞ…白に近い水色のツインテールだ。」

 

 「うん、あの娘だよ。手を繋いだ時に不意打ちで刻まれた。」

 

 「私の封印式が緩和されている。その娘がやった訳ではないみたいね、確実に私の方が格上だから…」

 

 彼女は早速上から目線で煽り立ててくるもので、花子は歯軋はぎしりしながら帯刀たいとうした刀のつかに手を置き、臨戦態勢に入る。

 

 「花子〜、待つんだりゅ!彼女はまだ魔法少女に変身してないんだりゅ!こっちから仕掛けるのは不必要な戦闘を生むんだりゅ〜!」

 

 「だがこうも好きに言われては……!」

 

 「戦う必要が無いと判断したの。だって結果は見えてるから……」

 

 「何を!」

 

 俺はたかぶる花子の前に出る、いさめるついでにあの娘には聞きたい事があるから。

 花子は少し前のめりに態勢を低くするが、俺が退く気が無い事を理解したのか姿勢を正して大人しく引き下がる。

 それから歩道橋の上に悠々とたたずむ彼女に問いを掛けた。

 

 「お前が刀禰なの?」

 

 「『刀禰』、それはあの娘の事。私じゃない……」

 「私は『矢鋪やしきエルヴィーヌ』。世の平定を目指す魔法少女……」

 

 どうやら見当違いだったみたいだが、名前を聞けたのは想像以上の収穫だし、刀禰の事を知っている風だ。言動は仰々しいけど

 

 「今日は貴方の封印式の様子を見に来ただけ。無効化されている辺り私の情報を口外出来る貴方は運が良い。もしもの事があったら迅速に対処するけど…」

 

 「いや好き好んで入れた訳じゃないからね、他のヤツらが寄ってたかってタトゥー入れるみたいに施術してっただけだから」

 

 「やはり私に楯突こうとする輩がいる訳ね。その内、格の違いを分からせてあげる……」

 「あと他の家にも被害が出るのをわずらわしく感じるなら、河川敷に避難する事。そこでならこの後出現するレベル松とも存分に闘える筈……」

 

 「!」

 

 レベル松がもう一体出て来る…!?俺の纏ってる残滓はそこまで厄介な代物なのか……

 

 「貴様、私達に情報を渡して…一体何が狙いだ。」

 

 「言ったでしょ、世の平定って。魔物に無闇矢鱈に街を壊されると、私が安眠できないから…」

 「後はやっておいて。さようなら…」

 

 歩道橋の欄干らんかんから手を離して奥の方にスッと下がるエルヴィーヌ。すぐに歩道橋を登って姿を確認しようとしたけど、そこには誰もいなかった。

 

 

 「魔力の反応が突然消えたんだりゅ……未知数の能力だったりゅ……」

 

 「追いつけない超スピードで退散したんじゃないの?」

 

 「いや、その場で消えたという事はワープに属する能力かもしれん。機関にも遠方へ魔法少女を送る固有能力を持つ魔法少女がいたはずだ。」

 

 河川敷に向かいながら先程のエルヴィーヌなる魔法少女について話すが、魔法少女の魔法とか固有能力とかの違いが分からないので話についていけない。

 しかし花子もリュリュも、エルヴィーヌに関してその実力を掴みあぐねているのは確かだった。

 

 「どうやら1日で魔法少女を護衛に引き入れたらしいわね。及第点の判断力かしら。」

 

 「「「!!」」」

 

 真上から声を投げられ顔を上げると、月夜をバックに電灯上部で黒髪ロングストレートの少女が立っており、此方に冷酷な眼差しを投げ掛けていた。

 

 なんかデジャヴな気がする。

 

 「あれも4人の内の1人か!」

 

 「既に魔法少女の姿なんだりゅ!魔力は抑えてあるみたいだから分からないけどピリピリするこの感覚……リュリュの危険信号が赤になってるんだりゅ!気をつけるんだりゅ!!」

 

 「どうやら私の刻んだ封印式の上に新たな封印式が乱雑に重ねられて最終的には緩和されたみたいね。人気者なのかしら、貴方は。」

 

 この流れさっきも見たような気がするが…一応聞いておこう。

 

 「お前が刀禰ってヤツなのか!?」

 

 「貴方もその名を知っているのね、でも残念。」

 「淑女レディーのように静かにおごそかに…しかし闇に佇む魔法少女。私の名は『宇賀神うががみやみ』よ。」

 

 「……」

 

 ま、まぁ見当違いだったが、名前を引き出せた事に関しては良かったかな…それに刀禰について知ってるみたいだし、もう候補残り2人に絞られたけど。

 

 「私の封印式に反応があったから来てみれば、上から3つも重ねられているなんて。身の程知らずがこの街には多く居たものね」

 

 あっデジャヴ

 

 「………」

 

 「何かしら、不服なの?」

 

 不服では無いが複雑な胸中がつい顔に出てしまっていた。この後、やみとやらのこれから言いそうな事が分かる気がする…

 

 「まあ良いわ。早急に自分の身を守る環境を作ったその手腕には光るものがあるし、封印式も無効化されてしまった以上、貴方は私の存在も口外出来る。今回はおあいことして見逃してあげるわ。」

 「それから付け加えて忠告するけど、レベル松の魔物がもう一体出現する気配があるわ。この街を守りたいのなら河川敷辺りにでも移動して迎え撃つ事ね。」

 

 「それは既に忠告を受けたぞ」

 

 「あっ……」

 

 花子が遂に指摘を飛ばしてしまった。

 おいやめろ、さっきのガチで厨二そうなエルヴィーヌとやらと違って、多分あの娘キャラ作ってここに来てるぞ無為にするような事は悪気があっても傷付くぞ

 

 「……」

 「誰よ先に忠告したの…」

 

 案の定、やみは今までお面を貼り付けていたようなポーカーフェイスから大層不機嫌そうだと分かるぐらいに顔をしかめて、フンと鼻を鳴らしそのまま驚異的な跳躍力で飛び去ってしまった。ちょっとかわうそ…

 

 

 「今の魔法少女……見た目に反して基礎身体能力が半端ないんだりゅ…!!あのまま闘いに突入してたら…考えたくないんだりゅ……」

 

 「リュリュ、お前が震え上がる程の魔法少女とはな……そう考えると貴様も災難だな、あのレベルの魔法少女にあと二人も目をつけられているのだろう?」

 

 「……」

 

 「どうした?」

 

 河川敷に繋がる公園の入り口。俺はその右脇に植えられた木のてっぺんをそっと指さした。

 

 目に入ってしまったからだ。

 月夜をバックに直立不動、此方を冷たくジト目で捉えてくる黒髪ショートヘアーの少女を。

 

 「…………」

 

 コイツらどんだけ月の下で話したいんだよ、月見の時期じゃないぞ今

 シリアスな雰囲気出したいんだろう。でも今日に限って擦り過ぎてどっちかと言うとセーラー◯ーンに片足突っ込んでるんよ

 

 「……………!」

 

 すると、無口を貫いたまま彼女から紫色の光がふわりと発される。次の瞬間には、腕のサイズに合っていない灰色のダボ袖パーカーに首周りをマフラーみたいに囲う極厚フード、そのパーカーの腰辺りにはサイバーパンクの如くLED風に光る謎ベルトを複数装着している。

 反面、下半身は黒のショートパンツと太ももまで伸びたタイツを併せてスタイリッシュになっていた。

 

 「あの娘も4人の中の特徴と一致するんだりゅ!」

 

 「魔法少女に変身した…戦闘態勢に入ったと見て良いか…!!」

 

 ただ単に映えるから変身したんじゃないかな

 

 それはさておき、もうこの流れなら確認しておきたい事がある。

 

 「アレか?お前が刀禰か!!」

 

 「………………」

 

 「それとも刀禰じゃないのか!!」

 

 「……………貴方……」

 

 「「「!!」」」

 

 おお、遂に喋った。一体何が飛び出すんだ…!?

 

 「……残念……………………私……知ってる……それ……」

 「……私…………封印式………重ねた理由は…………挑戦状………」

 「レベル松………出る…まち……いえ………守る………………河川敷………に……」

 

 おいまて文脈飛ばしてんのにワードだけでデジャヴ感じるぞ、わざとやってるとは限らないがどんだけ同じポジション確保したいんだ

 

 「なんて言っているんだ貴様は?」

 

 「あと………頼むから………まち…」

 

 「街を頼む?貴様に言われなくともそうする!」

 

 「……そう……じゃない…とね。」

 

 そのまま去ってしまった。

 

 まあ…うん……そうだね。河川敷に行くね、俺達

 

 

 「さっきの娘が刀禰に一番近かったんだりゅ。顔つきも魔力も……でも確信が持てないんだりゅ……黒髪だったしりゅ……」

 

 「成長期に6年も経てば、大抵は見分けがつきにくくなるからしゃーないね。でもあの娘は刀禰の事知ってそうだったし、その件はまた今度にしようか。」

 

 「あともう1人貴様に封印式を刻んだ者がいるのだろう?そいつが消去法でいけば刀禰になるんじゃないのか?」

 

 そうなんだよな、あと『アイツ』しかいないもんな……でも質問しても絶対ろくに答えてくれないだろう、答えの代わりに罵倒飛んでくるぞ。

 

 そうこう悩んでいる内に、階段を登り河川敷が見えて来る。

 

 ビュウゥゥ……

 

 「んうぅ…」

 

 風速がやけに高い。周りに遮蔽しゃへい物も何も無い吹きさらしというのもあるが、目を細めなければ砂や埃が入って来てしまう位に今夜の風は強い。

 さっさと階段を降りて川岸まで行き風を防ぎたいが、見晴らしの良いこの土手の方が魔物へ即座に対応するのに適しているだろうか。でも風強くて索敵には向いてなさそうだし…

 

 花子に相談しようと思い立って振り向く。

 

 鋭く刺す眼光、アイシャドウかと思える程に整ったまつ毛とくっきりした目元、強調しなくても目立つバストを更に際立たせるダークな魔法少女服。

 

 「ストーカーなの?毎回毎回、心底軽蔑させてくれるわね」

 

 そして今まで会った誰よりも性格と言動の冷たい女。

 この場合もう絶好調とでも思っとくしかないか

 

 しかし昨日魔法少女として会った時と違う所がある。

 前回の強そうな異形の魔物は素手で撃破していたハズが、今回は漆黒の剣を持っているのだ。

 

 「いつもはそれで戦ってるの?」

 

 「関係ないでしょ」

 

 これなので、刀禰がどうとかについてもやはり答えてくれないだろう。彼女が漆黒の剣を振るうと、それは黒い炎を発しながら塵になって消えてしまった。ちょっとカッコいいから欲しいかも

 

 しかし花子が見当たらない。さっきまで俺の前を率先して歩いていたが……土手に出て目を細めていた時にリュリュごと消えてしまった。

 

 「階段の下。震えて刀持ってる」

 

 いつの間に花子の存在を察知していたのか、今登って来た階段に向けて睨み顔をクイッと動かしジェスチャーを送って来た。

 なんだかんだで俺が辺りを見渡しているのを見て状況を察してくれたみたいだ。

 

 駆け寄って階段下を見ると………冷汗かきながら瞳孔を開いた花子が臨戦態勢に入っているのだが、それにしても病院を過度に嫌がる犬みたいにブルブルと震えている。声すら出せない様子だった。

 

 「りゅーッ!りゅーッ!!」

 

 すると階段脇の少し伸びた草むらの中からリュリュが俺の腕に飛びついて、理性の欠片もなく必死に引っ張って来る。まあこの女怖いし分かるよ……

 

 「睨みをきかせるの一旦やめにしてもらえると助かるんだけど……」

 

 「あの娘とその精霊が勝手に私の魔力を怖がっただけ。あと愛想が悪いのは1人で活動したいから。悪い?」

 

 コイツ堂々とぼっち宣言しやがったぞ……敢えてこの悪態を貫くスタイルならもうしゃーない

 

 「うん…分かった……」

 「それでさ、俺達この後残滓とやらに引き寄せられたレベル松とかの魔物を迎え撃つ予定だから、ここに居ると後々面倒な事になるよ。」

 

 「もう終わった。遅過ぎるのよ」

 

 「……?」

 「もうレベル松の討伐終わったの?もう一体出るとかなんとかで…」

 

 「今さっき丁度現れた所を狩ったって言ってんのよ。もう帰るから」

 

 あれか?この女ってもしかしてスポーンキルの魔法少女なのか?

 花子の怯えようといい、みゆりさんが漏らした強そうな魔物の討伐といい、実際それだけの事を成し得る実力を備えているのは確かだ。

 

 トンッ

 

 「痛っ」

 

 「やっぱりもう忘却魔法が効かないのね。アンタの中の残滓は暫く消えそうにも無いし」

 

 やりたい放題やるなぁ……しかしこの残滓って消えそうにないのか。

 忘却魔法に失敗した彼女は早速言葉通りに帰ろうときびすを返す。帰宅される前に俺は彼女へ向けて最後の質問を掛けた。

 

 「名前、俺は小野睦。おま…じゃなくて君は?」

 

 「帰る」

 

 「ちょっ」

 「今、刀禰ってのが封印式を刻んだ魔法少女の候補に挙がってて少しでも情報を知りたいんだ。名前さえ教えてくれたら疑う必要も無くなるし。」

 

 「私は刀禰じゃないし、名前はアンタに教えたくない」

 

 コイツ予想通りなんてかたくなな女なんだ。こうなったら…

 

 「じゃあ花子やリュリュと相談する時、今度からお前が『刀禰(仮第二候補)』って扱いになるけど良いのかよ、それでいいのかよですか」

 

 「チッ」

 

 小さく舌打ちした彼女がスマホを取り出し、数秒もかけずに素早くタップした画面を此方に見せてきた。

 

 メモ帳アプリの上段には『渭東いとう冷香れいか』と記されていた。

 

 「ありがと。」

 

 「本当に最悪…」

 

 冷香は最後まで悪態をつきながら、土手のアスファルトを軽い風を起こす勢いで蹴り上げてその場から消え去った。

 スマホの文字で伝えてくれた理由は声を出して名乗るのを嫌がったか、中々見ない『渭東』を『伊藤』と間違えない為もあるだろうか、性格は別として意外と気を利かせるタイプなのか?

 

 「睦!!…話には聞いていたが、改めて貴様はなんて魔法少女に目をつけられたんだ…!?」

 

 冷香が去ると、直ぐに花子が階段を駆け登り寄って、息を切らしながら動転気味に冷香について聞いてくる。その様子を見る限りやはり彼女がかなりの実力者である事が垣間見えた。

 

 

 「冷香か………野良の魔法少女にあれだけの化け物がいるなどと……」

 

 「睦が知り合いだったから助かったんだりゅ〜…」

 

 冷香は案の定、花子とリュリュにも怖がられていた。アイツ、私生活での人間関係は大丈夫なのか…?

 

 「出かける前に説明した通り、一応俺の事を助けてくれたから、性格は悪いけど悪人じゃないとは思う。」

 「あと、残滓の事についても口にしてた。これから暫くは残るって。俺、これからどうすれば良い?魔物引き寄せるなら引っ越した方が良い?」

 

 「……?」

 

 「それって残滓が1日数日どころじゃなくて、期間未定で残留するって事なんだりゅ!?!?」

 

 「うん。冷香の発言から恐らく。」

 

 「あ、あり得ないんだりゅ…………そもそもリュリュの目に見える睦が今纏っている残滓はもう時間が経って持たないハズなんだり……」

 「はっ待てよりゅ!!流石に封印式の中身までリュリュには分からないけど、恐らく睦の中にもまだ残滓が残ってる可能性の事をさっきの冷香って魔法少女は言ってたんだりゅ!!仮定だけどりゅ……」

 

 「なれば、貴様に付いた残滓に魔物が引き寄せられたのは表面上だけのものという事か…!?それだけでも1日丸々残っていたというのか……」

 

 「恐らく封印式は睦の中の残滓が漏れ出ないよう施されたんだりゅ!!まだ底の見えない深い残滓が残っているんだりゅ!」

 

 冷香のヤツ…そこまでやってくれていたのか。

 でも誰の封印式がどんな効果発揮してるのか分からないから、4人の中の誰かという可能性もあるか

 

 いや待て、俺の中にそれだけの残滓が有るって事は……

 

 「それってまさか俺が死んだら大量の残滓が溢れ出るって事?」

 

 「ううんだりゅ、残滓は魔物を倒した時には広がるけれどりゅ、一度移ったら肉体に染み渡る性質のはずだりゅ。」

 「でも普通、それだけ残滓の残る魔物を倒したら街一帯に広がっててもおかしくないんだりゅ…何故なのかりゅ…?」

 

 確かあの時、俺はナニカ特有のドロドロとした別空間に連れてかれた。あの場に居たのは冷香と俺の2人だけ。

 魔法少女として色々と突出した冷香なら自身の残滓を取り払ってるかもしれんが、魔力も対抗策も無い俺はじかに取り憑かれた筈だ。

 

 「確か、あの魔物は手印を組んで異空間に移動してた。だから冷香はまだしも俺だけのハズ。」

 

 「自分の結界まで用意してる魔物なんだりゅ!?ちょっと、もうちょっと説明を!詳細に説明して欲しいりゅ〜〜ッ!!」

 

 興奮して俺の眼前で前のめりに詰め寄るリュリュの首根っこを花子は掴んで引っ込めてくれた。

 

 「リュリュの悪い癖が出てしまったな。それより、今回の事で貴様が魔人の類をその身に封じている訳では無い事が分かった。」

 

 「じゃあ街も平和になって、俺の表の残滓も消えた事だし、また今度に…」

 

 「いや、あの魔法少女4人は流石に捨て置けん、貴様の事もな。この後時間はあるか?」

 

 ………

 

 もう9時を回るのに、これ以上女の子と一緒にいたらマズイのではなかろうか。

 そもそも花子は身なりが整ってて、姿勢や振る舞いが上品だから良いトコ出身って感じだけど門限とか無いのか?

 

 「流石になぁ…」

 

 退く気の無い花子とリュリュのコンビに対して、上手く折り合いをつけさせる言い訳を思いつかない状況。このままだと押し切られてしまう。

 

 しかし冷香が去ったのを皮切りに風も穏やかになった頃、スマホの着信音が鳴っている事に気付く。

 

 「ごめん、ちょっと出るね」

 

 『タイミング良過ぎだろ』とあからさまに顔に書いた如く、眉間に皺を寄せる花子とリュリュ。

 此方としては助け舟を出されているので、相手が誰かは分からないが嬉しい限りだ。

 

 うわ姉からだ、前言撤回

 

 【あっ、睦?ウチなん……もしかして人いる?】

 

 「いつ帰って来たの…?」

 

 【あらあら久し振りなのに随分な言い方ね?とにかく帰って来てくれる?お姉ちゃん待ってるからね〜。】

 

 通話を終え、履歴には既に6件の不在着信を確認。魔物が来るものだと焦っていたのと、アレな人達4人と鉢合わせたので、姉からの着信に全く気付かなかった。

 

 「ねーちゃん帰って来たから、ちょっと帰るね…」

 

 「残念だりゅ…」

 

 「貴様の家にも行けなさそうだ…断るには丁度良い理由が出来たな。また来る。」

 

 月に照らされながら土手道をそのまま歩いて行く花子とリュリュに軽く手を振って見送る。

 

 「いや、ねーちゃんはマズイんだよな……」

 

 そして家で待つ実姉の存在に気の進まなさと焦りを覚える。

 だが今回は花子が連れ出してくれなければ俺の残滓次第で姉を魔物の被害に巻き込んでいたかもしれない。

 

 「まずはちゃんと顔合わせなきゃな…」

 

 そう考えると、申し訳ないという罪悪感が湧いてきて家路につく決意が出来た。

 

 

 その帰路の途中。

 

 「……………」

 

 ついさっき出会った無口キャラで通してるっぽいショートヘアのダボ袖魔法少女が突然電信柱から降り立ち現れ、立ち塞がって来た。

 

 「……………」

 

 闇夜に黄金色のジト目が薄く光って何とも言えぬ威圧感を出している。一体何を伝えたいんだお前は……

 そういや本日一連の流れの中で唯一この娘だけ名前を聞いていなかったな。

 

 「何も言い出さないならこっちから聞いても良い?」

 「今度ももしまた会いに来るんだったらお前の事なんて呼べば良い?俺は小野睦って言うんだ。」

 

 「…………」

 「…………………刀禰」

 

 「ん?」

 

 「刀禰……………私……………刀禰………」

 

 聴き間違いじゃない。

 コイツ今、自分の事『刀禰』って名乗ったぞ。さっきは刀禰の事を知っている第三者風に答えていたが、どういう風の吹き回しだこれ

 

 「さっき刀禰って名乗らなかったよな…?俺以外には名乗れない理由があるのか?」

 

 彼女は静かに首を横に振る、どうやらあの辿々しい発言で紹介していたつもりらしい。

 

 「いや、え〜…?」

 

 「………」フルフル

 

 どうしても首を横に振るのを止めず否を認めない為、俺は顎に手を当てて先程の発言を思い返してみた。

 

 『……残念……………………私……知ってる……それ……』

 『……私…………封印式………重ねた理由は…………挑戦状………』

 『レベル松………出る…まち……いえ………守る………………河川敷………に……』

 

 『あと………頼むから………まち…』

 

 『……そう……じゃない…とね。』

 

 ……………

 

 『……残念……………………私……知ってる……それ…………私…………封印式………重ねた理由は…………挑戦状………レベル松………出る…まち……いえ………守る………………河川敷………に……』

 

 『あと………頼むから………まち…』

 『街を頼む?貴様に言われなくともそうする!』

 『……そう……じゃない…とね。』

 

 まさか………

 

 『残念……私の事を知ってるのね、それは、私。封印式を重ねた理由は挑戦状。レベル松出るから街と家守るなら河川敷に行って』

 

 『あと、頼むから、間違えないで』

 『街を頼む?貴様に言われなくともそうする!』

 『そうじゃないの、刀禰。』

 

 「もしかして、こんな感じ?」

 

 「!…………」コクコク

 

 俺の回答に、刀禰は少しだけ目を開いてやっと首を縦に振り肯定してくれた。

 

 「はは。よかった。」

 「分かるか」

 

 





 ここまで内容的に切る事が出来ず長文垂れ流して申し訳ございませんでした、次回からはもう少し短くします。反省。

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