魔法少女世界で俺のエンカテーブルがクール系に偏り過ぎてるんだが   作:TSから逃げるなぁぁ!!卑怯者おぉ!!

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 本日は朝アップになります。



魔法少女のクールな休日

 

 家の玄関扉ドアノブに手を掛けそっと開くと消して行ったハズのLED灯の光が射し込む。

 

 「むつみ、おかえりなさい。遅かったわね〜。」

 

 玄関では、姉が嵐の前ぶりの如くにこやかに待ち構えていた。

 背丈は俺とほぼ同じ170cm位、平均女性よりも背が高いのに加えて威圧感たっぷりの不気味な笑顔が姉の身長を何倍にも伸ばしているように思えてしまう。ビグ・◯ムから降りてアム◯にトラウマを与えたドズ◯の最期のオーラさながらである。

 

 「うん、ただいまー。ねーちゃんこそ群馬からお疲れ様。」

 

 姉は近年急速な発展を遂げている高崎&前橋市、その新しく設立された私立大学の生徒だ。元々前橋市には親戚が住んでいるので空いた一室を借りて住まわせて貰っている。

 

 「どう?あっちでの生活」

 

 「もうねぇ凄く便利よ。小型デバイスで空間ディスプレイを展開してるのも当たり前。超高層ビル群も次々建ってテナントの種類はほぼ揃ってるし、規模は東京より小さいけれど技術なら抜いてるわね。」

 

 「周囲の山の魔力龍脈まりょくりゅうみゃくが高崎や前橋の都市部に集約してるから発展したんでしょ。東京は龍脈に恵まれなかったからね…」

 

 「龍脈ねぇ…その辺りはすっごく警備厳重よ。専用の施設の近くに寄るだけで職質されるしねぇ。発展した分、地価も急上昇してるから住まわせて貰えるのは有りがたい限りねぇ。」

 

 「へーいつか行ってみたいな。ねーちゃんが苦労してないなら良かった。おやすみ。」

 

 取り敢えず世間話を終えれたので何事も無くやり過ごせると思っていたが、そうは行かないのがこの姉だった。

 

 「待ちぃや」

 

 姉の声とトーンが低くなるが、決してボソボソと陰気では無く、寧ろ力強く引き留める圧を含んでいる。

 

 「どしたん?」

 

 「いやいや『どしたん?』やないて。ウチ、睦が魔物マヴィランに連れ去られたゆーて急いで帰って来たんよ?蛾みたいな魔物にピューと糸巻かれてしもうて、スカイダイビングしたんやろ?そんなん睦も生きた心地がせえへんやろ」

 

 確か姉には連絡してなかったハズだ、ニュースにはなったが当時の映像は無いし、こうして怪我もせず帰って来たので表立って取り沙汰される事も無く、俺が被害にあったと確認するすべは無いはず、となれば父と母が言ってしまったか……

 母譲りの関西弁になるともう姉は止まらない。

 

 「なのにあんた翌日にはピンピンしとるどころか夜までガールフレンドと会ってるってどないなバイタリティーやねん!?」

 

 「えっ」

 

 姉からの電話に出た時そういえば花子とリュリュが談義していたが、その声を拾われてしまったのか。

 

 「いや女の子心配させてしもうたなら、一介の漢として呼び出して安心させるっちゅー心理は分かるんやけども!!いつ作ったんねん!?ウチ、弟に先越されてもうてるがな!?ウチのいない間に色々と起き過ぎやろ!!」

 

 姉はこんな感じで俺が心配事を作ると、前のめりに首を突っ込んで来る。あらぬ被害妄想付きで。

 だが今回女の子と会っていたのは事実なんだよな…

 

 「ねーちゃん、ごめんよ。確かに女の子と会ってたけどガールフレンドでもないし……場所も河川敷だからやましい関係とかじゃないんだ。偶々その日だけ居合わせただけなの。」

 

 「おお…?ど、どしたん急に改まりよってからに……まあな、一言そう言ってくれたらウチも安心するで。」

 

 姉はリビングに移動しソファに座ると、空いたソファのスペースをポンポンと軽く叩く。俺は大人しく従って姉の隣に座した。

 

 「ウチの方もせわしなくしてもうてわるう思っとるんや………でもなぁ、睦の身に何かあったと聞いた時にな、居ても立ってもいられのうなってしもうて……」

 

 姉は腰まで伸ばした巨大な三つ編み長髪を揺らせて、俺の肩に頭を寄せて来た。

 俺はあまり姉に面倒事を知られたくない。こうして余計に心労を掛けさせたくないのが理由だ。

 

 そしてもう1つ……

 

 「ねーちゃん。」

 

 「どしたん…あっ。」

 

 俺は姉の左手をそっと両手で包んで面と向き合う。

 

 「今は心配掛けさせてばかりの弟でごめん。」

 「でもいつかきっと…自慢の弟って呼ばせてみせる位の弟になるからさ。」

 

 「睦…あんたぁ…」

 

 「だからね、ねーちゃんはここでどっしり座ってゆっくり休んでて欲しいんだ。移動の疲れもあるだろうし。」

 「2階まだ汚いから、掃除とか全部俺に任せてね!」

 

 俺はソファから立ち上がり、階段へ歩みを進める。

 

 「おい待ちぃや睦」

 

 そしてドスの効いた声で案の定呼び止められる。

 冷や汗が俺の頬を伝ってリビングの床に滴り落ちる、その機微きびでさえ姉は見逃さない。

 

 「あんたぁ…………ウチの部屋、物置ものおき部屋べやにしとるやろ。」

 

 ……………………

 

 「うおぉおおおおおぉおぉおおおお!!」

 

 「待てやクソガキがああぁあああッ!!」

 

 もう1つの理由、大体俺が油断していて姉が突然帰って来た時に不都合が発覚するケースが非常に多いからだ。

 

 

 姉との激闘から一夜て、今日は休日。

 現在も蛾の魔物の被害により入院を余儀なくされている友人、紺太こんたの様子を見に行く為に道中で見舞いの品を購入して行く事に決めていた。

 紺太は陸上部、軽傷で済んではいるが脚の怪我という事もあり慎重に退院時期を見計らっている。

 

 それを考慮すると、今月はもう夏日が見られたし、今の季節はメロンだけど出始めだから本当に良いフルーツ無いし、体調管理に気を付けるならビタミンも無い高カロリーの菓子は無し………そうなれば無難に日焼け止めを買っておくかな。

 紺太の復帰が意外と早くなっても、1.2ヶ月延びるとしても、どうせ本格的な夏に差し掛かるし日焼け止めはあっても困らない筈だ。

 

 紺太が入院している病院の最寄り駅には徒歩5分位で行けるショッピングモールがある。

 駅に到着し、ロータリー向かい側にあるマ◯ドナルドの左手道路を抜けると早速そのショッピングモールが顔を覗かせる。何度か行ってるがやはり結構デカい。

 

 そして2階フロアへ直通する高架橋にエスカレーターで上がる。高架橋左脇から見下ろせる神社では何やらイベントがやっている様子だった。

 

 「残滓は無くなったらしいけど、今度念の為にお祓いでもやってもらうかな…」

 

 最近はまあ色々な意味で災難続きな事を考えると、厄年関係無くここらで一回厄払いに行った方が良いかもしれない。もしかしたら『不幸の魔物』なんて取り憑いているかも…

 

 ガシャアァァァンッ

 

 「キイィイィーっ!」

 

 神社の境内辺りからボール状の何かが高架橋目掛けて飛んできて、柵ごと破壊し俺の目の前で急ブレーキをかける。

 ぷよぷよした脂肪の塊にギザ歯の口が生えた魔物が奇声を上げながら出現。言霊ことだま発動した…

 

 周囲の人間達は悲鳴を奏でながら一目散に逃亡、神社側からは「次元の裂け目が出た!」と大声で騒ぎ立てる声が耳に入って来た。偶々自然スポーンしたのか。

 俺も同様に逃げ出したいが、既に狙いを定められているので背中を見せればその隙に飛び掛かられるかもしれない。ジリジリと後退しながら睨み合いを続ける。

 

 が。

 

 「キィっ!?」

 

 紫のほんの微かな光が、走行中の車に太陽光が一瞬反射したようにすうっと複数きらめき消え、思わず目を瞑る。

 目を開いた次の瞬間にはボール状の魔物はうめき声を出しながら霧散してしまった。

 

 「何が起こったんだ…?」

 

 事態を理解出来ず狼狽える。少なくとも先程まで俺を襲おうと気概を見せていた魔物が自壊する訳が無い。

 紫の光を発した何者かの手によって瞬時に処されたのだ。

 

 恐る恐る紫の光が発した後方を振り返ると、通常通りの無表情ポーカーフェイスを浮かべるやみがそこに気品良く立っていた。ハーフスリーブジャケットにロングスカート、白いシャツを中に着ているが全体的に黒を基調としており、スラリとした体型が分かる魔法少女変身時よりもゆったりとしたシルエットが思いのほか大人びた雰囲気を出している。

 

 「命拾いしたわね」

 

 「ありが」

 

 「人前で感謝の言葉はよしなさい」

 

 恐らく自分が魔法少女である事を周囲に悟られるのを嫌ったのだろう、俺の言葉を遮ってやみはツカツカとショッピングモール入口へ向かって歩き出す、俺もその後を追った。

 

 早速警察やら機関の魔法少女やらが解決済みの現場に駆けつけて来たのを遠目に見ながら、俺達は出入り口風除室の案内板前で足を止める。

 

 「さっきはありがとう。」

 

 「貴方、余程魔物に好かれやすい体質なのかしら。残滓も漂っていないのに」

 

 「先日の運勢最下位の影響がまだ残ってるのかも…?」

 

 「迷信ね。私は合理的に物事を考える、貴方の言う運だって実は魔力と絡む能力かもしれない。自分の『固有能力』である可能性も考えなさい」

 

 『固有能力』……?魔法少女界隈では一般常識なのだろうか?何れにせよ縁の無い話だけど…

 

 「そういう魔法少女専門用語はよく知らんな……君って色々知っているようだけど」

 

 すると、やみが露骨に目を此方に遣ってきた。今そんなに引っ掛かるような事言ったっけ…

 

 「半端な知識で魔法少女の世界に首を突っ込まない方が良いわ」

 

 「え、なんかごめんなさい」

 

 「今日は魔法少女とは会っていないのかしら?」

 

 「そう…だけど?」

 

 これどういう意図の質問だ…?

 やみは改めて姿勢も視線も俺に向けてその微動だにしない表情から真剣さが垣間見える程に、本格的に話の態勢を取る。

 

 「なら忠告代わりに教えておくわ、頭に入れておく事ね」

 「まず固有能力は一般人〜並の魔法少女では発現しないわ。発現しないだけで、其々潜在能力として眠っているのよ。固有能力の初期段階として魔力の放出…つまり貴方達一般人が俗に言う魔法があるのだけれど、これを説明するには魔力の事も理解しておく必要がある。『魔力』は魔法を抽出する為の力の源であり、魔法少女が常人を逸する戦闘継続能力を持つ根幹で、特に外部からの衝撃に強くそれでいて罹患への耐性機能や、短時間においての傷病と体力の回復、その他諸々を底上げするのだから無くてはならないものだわ。でも魔力が欠かせない一方で魔力の回復手段は限られているの、精霊国から派遣されてくる精霊達が『魔形変換』と『魔力譲渡』で魔力のタンク役となってくれているわ。この2つの技術は高度で基本精霊達しか出来ない、よって魔法少女は精霊がいなければ戦闘継続が困難どころかほぼ不可能になる。一見精霊が剥き出しの弱点になっているけど、戦闘時に精霊は契約した魔法少女の身体に入り込むリンク状態になるから問題無いわね。まあ私は訳あって精霊はいないから、1人で魔形変換も魔力譲渡と出来て完結してるけど。そして魔法少女の役割こそ『魔法』よ。魔法は魔法少女各々の特性や技の事。技を放つイコール魔力の放出なのだけど、人間種の魔法少女はそもそも心身の成長の伸びが著しくなる10歳頃の適正ある肉体に精霊と契約の後に魔力を安定させて魔法少女になっているの。魔力の塊でその形を構成していると言っていい精霊種と違って、魔法少女は攻撃的な魔力の放出をメインとしている訳。別に精霊達は攻撃魔法を使えなくはないけど精霊の体だと大体魔力が暴発して自爆攻撃になってしまうわね、魔力放出攻撃に不安定な身体なの。精霊に魔法は使えないという事だわ。でも魔法少女も無条件で魔法が使える訳じゃない、詠唱って知ってるかしら?動画サイトで魔法少女達が唱えている呪文よ。あれは所謂魔法の出力を調整する過程よ。個人で詠唱の内容は変わるけど、理由は固有能力と関係する所ね。この過程を経ることで魔力を魔法攻撃技…つまり魔力の放出に安定して変換するという事ね。私は省略するのが普通だけど。魔法自体には属性があって火、水、電気、草、土、氷、空、まあ他にもあるわ。基本その魔法少女の魔力の体質みたいなもので他の属性魔法を獲得するには才能が無いと駄目ね、その上で努力よ。ちなみに私は闇属性を」

 

 まてまてまてまて

 

 そもそも忠告に収まってねーだろこれ絶対昨日マウント取れなかったから根に持ってるだけじゃねーかよ

 

 「貴方、何か不満なのかしら。もう飽きたの?」

 「ふぅ…まぁ流石にすっきりしたわ、今回はここまでにしてあげる」

 

 もうストレス発散を隠す気が無いようだ。

 「してやった」と言わんばかりに髪をかき上げてカッコつけている。なんだ…なんなのだ!?クールな魔法少女がヒ◯ヒトの実・害獣種・モデルマウンティング女でも食べてしまったのか!?

 

 でも待てよ、マウント取りたいって事は内心では人との関わり合いを無意識に望んでいるって事じゃ…?

 

 「今から俺日焼け止め買いに行くんだけど一緒に行くか?」

 

 「い、いえ…気安い馴れ合いは無意味よ。淑女レディーは休日を優雅に過ごすもの。ウインドウショッピングを経てから目当ての本を買いに行くわ」

 

 少し目が泳いでいる辺り内心どうするか迷ったのだろうか。しかし、やみにとってクールキャラという設定はどうしても捨てたくないらしい。『ウインドウショッピング』はまあまあ死語な気がするけど

 

 

 だいぶボロが出たのはそれはそれとして、助けてくれた彼女には改めて礼を言ってその場で別れた。

 その後はブランド服をしゅとしたテナントが並ぶ2階通路を歩き一番端まで行き着く。

 本来そこが多種の日焼け止めが置いてある目当てのスポーツ用品店だったのだが、暫く行っていない間に1階にあったはずの本屋がそのスペースに移転してしまっていた。

 

 「やみが説教してる間に案内板見とくべきだったな…」

 

 振り出しに戻った気分だが、折角ならとリニューアルした本屋を見ていく事に決めた。紺太の気に入りそうなスポーツ雑誌があったら買って行ってやろう。

 

 漫画も含めた話題の新書コーナーをざっくりと見て行き、雑誌コーナーにも一通り目を通す。

 その過程で妙にドリンクカップを持ち歩く通行人とすれ違った。突き当たりまで行くとどうやら店内に新しくコーヒー店が併設されたようであり、屋外の外付けテラスなんかも出来て、購入した本をゆったりと読めるようになっていた。混み合っているのか、外付けテラスの入口に人が集まっている。

 

 「ちょっと気になるな…」

 

 遠目に見ても植物の緑と綺麗なタイルの白がバランス良く、雰囲気に魅せられる。

 

 つい興味本位で外のテラスをガラス越しに覗き込んだ。

 

 「!……アイツ……」

 

 腰の細さを際立たせながらも脚にかけて大きく広がり上品さを保つ黒のロリータスカートに、小柄な身体のラインを可愛らしく浮き彫りにする首元と袖にフリフリが付いた純白のフリルトップス。

 

 向かい側の席には白いウサギが置いてあり対面する形になっている。さながら絵本の世界に迷い込んだようだった。

 

 矢鋪やしきエルヴィーヌが無垢な顔に似つかわしくない妖しい眼差まなざしを手元の本に落としていた。

 

 「アイツ、こんな所でお茶してやがったのか…」

 

 それは『魔法属性から読み解く魔力構造の可能性』なる書籍。魔法少女科学か何かだろうか。

 

 脚を組み替えながら読書にふける彼女の姿は非常にさまになっていると認めざるを得ない、幼さを逆手に取ったクールなギャップが妖艶さを醸し出していた。

 

 「本物のお人形さんみたいね、別世界に入ったみたい…」

 

 「ね。無垢なのにすっごく大人びててちょっと怖いくらい…」

 

 エルヴィーヌに向かう羨望の眼差しが更なる人混みを形成していた、悔しいがこれは常人であれば見惚みとれてしまうのは分かる。

 

 そのまま横にスライドするようにテラス沿いを見て行く。

 

 「…」

 

 まだ人だかりは途切れない。

 その隙間から理由が見て取れた。

 

 全体的に丸みがかった黒のブラウスに、膝下までの黒色タイトスカート、シルエットは拾いにくくなっているものの、肩はシースルー素材で出来ており、右顔に垂れ掛かっている前髪と険しいながらも麗しい眼も相俟あいまって、なまめかしさがまるで隠せていない。

 

 渭東いとう冷香が手元の本に突き刺さる鋭い目つきを、魅了されるばかりの観衆に攻撃的に遣る度に、寧ろ黄色い声を押し殺しながら興奮が沸き起こっていた。

 

 「あの人怖い…でも踏んで欲しい……」

 

 「絶対冷たく罵倒してくれるよ、声掛けたいなぁ…でも邪魔をしたくもない…でも罵倒されたい」

 

 ドM集団は冷香の良さみたいなのを分かっているらしい、凹まなさそうなのは俺にとって羨ましい限りだ。

 

 「……」

 

 しかし冷香が持っている本。

 『魔法属性から読み解く魔力構造の可能性』じゃないか、エルヴィーヌと同じ本を読んでいる。同じように脚を組み替えながら読書に耽っていやがる。

 

 まあアイツらって感じも似ているし趣味が似通う事もあるだろうと思いながら、取り敢えず冷香には気付かれたくないので、密かに横にそのままスライドするようにフェードアウトする。

 

 と。

 

 同じくテラス席に座す、黄金色の瞳を持った少女とガラス越しに焦点が合った。

 

 白地の制服、黒のスカート、腰にはチェックシャツを巻いているシンプルなショートヘアの美少女。

 

 彼女は購入したばかりであろう本が入れてある袋を膝の上に乗せて、微動だにせず此方を捉えながら袋から本を取り出して見せてきた。

 

 『魔法属性から読み解く魔力構造の可能性』

 

 なんだ?セットなのかコイツらは……!?

 

 刀禰とねは上機嫌だか不機嫌だか窺えないジト目のまま、本を胸に抱き立ちそのまま出入り口方向から本屋を抜け出して去ってしまった。

 

 おめーに至っては何をしたいんだ

 

 これあれだな、エルヴィーヌや冷香が三番目辺りだったら別にそんなに見惚れねーな食傷気味になるわこれ

 

 しかし、刀禰が席を空けた事で満席だったテラスに1つ余裕が出来た。

 

 早速向こうから入れ替わりで女性がやってく…

 

 無表情ポーカーフェイスを浮かべる気品良い細身の少女。ハーフスリーブジャケットにロングスカート、白いシャツを中に着ているが全体的に黒を基調としており、スラリとした体型が分かる魔法少女変身時の姿を俺は知ってるので、ゆったりとしたシルエットが思いのほか大人びた雰囲気を出し、手元に抱えている本は『魔法属性から読み解く魔力構造の可能性』なる書籍だうおおおおおおお

 

 何なんだ一体何回同じ光景見せるんだ

 確かに本屋さっき行くって言ってたな、でも予定調和にしか見えんのよ、双子でもそこまで趣味被らんだろ

 

 刀禰と入れ替わりでやみが優雅に席につこうとする。

 

 「ママー!ここからまほうしょうじょ『マイカ』のポスター見えるー!!」

 

 すると幼女がガラス越しにでも聞こえる大声でやみのそばの席まで駆け寄って来た。

 追いついた母親は如何にもダメよと言わんばかりに幼女を叱っている様子。

 

 そんなド定番のシチュエーションを見かねてか「あっ…いえ、そのお気になさらずどうぞ」みたいな感じで億劫おっくうそうに、やみは手でジェスチャーを送り、席を譲ってしまった。

 

 先程までツカツカとしっかりした足取りが、若干トボトボと力無いように見え、やみはテラス席から退出。

 

 「………」

 

 「………」

 

 やみは俺を発見、気不味い雰囲気になるかと思いきや何事も無かったかのように髪を掻き上げて姿勢良く近くまで寄って来た。

 

 「何かしら」

 

 「……」

 「ス◯バでも行くか…?」

 

 「愚かね。私は別にこれと言って何も引きずっていないわ。情けをかけて同じ立場になったつもりなら勘違いもはなはだしいわ。それじゃ」

 

 と若干震える上擦うわずった声で言い放つと、やみはきびすを返して本屋から去って行った。

 

 クールを貫くのも大変なんだなとしみじみ思いながら、その日はスポーツ用品店のテナントで日焼け止めを購入し、紺太の居る病院へ向かった。

 

 「睦、滅茶苦茶クールタイプの日焼け止め推してくるじゃん!これから暑くなるし有り難いぜ!」

 

 紺太は日焼け止めを受け取ると、クールとは余程真反対の無邪気な笑顔で俺の頭をくしゃくしゃと撫でる。

 

 最近クールに浸かり切りだった俺の身としては、彼の久し振りの暑苦しさは丁度良かった。

 





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