魔法少女世界で俺のエンカテーブルがクール系に偏り過ぎてるんだが   作:TSから逃げるなぁぁ!!卑怯者おぉ!!

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魔法少女のクールな遂行

 

 『アンタに言われなくても分かってる』、冷香のその言葉を聞いて、やみ、エルヴィーヌ、刀禰とねが度合いはあれど互いへの警戒を幾らか解いたようだ。

 魔法少女としての立場を一旦再認識し、冷静になってくれたのなら良い限りだが…

 

 そして今度はやみが此方にツカツカと歩み寄り話し掛けてくる。

 

 「貴方の言う事は一理あるけど、それで魔法少女の世界を完璧に理解した気になって貰っては困るわ。」

 「現状、辺り一帯の住民達は既に昏倒状態にある…魔の手は東京の喉元にまで届いているの。緊急速報を受信したり放送する頃には後手に回っているでしょうね、貴方は所詮一般人で魔法少女よりは危機管理能力が低いのよ」

 

 気付いてみれば、先程構成員が叫んだ時も、現在魔法少女がこれだけ集まっているのにも、誰一人として周辺住民が反応を見せたりする気配は無い。家の窓から顔を出したりしていないのだ。

 

 「分かったでしょう……さて小野むつみと言ったかしら、私についてきなさい。『淑女レディーの誘いに乗る』それが貴方が今取れる最も賢い選択よ」

 

 なんとここに来てやみの方から誘われてしまった。逐一誘われる事を淑女レディーの振る舞いがなんだかで忌避していた彼女のイメージからすると新鮮だ。

 

 「ま、待て!素性の知れぬ貴様に睦を…ではなくだな、一般人を預けろと言うのか!」

 

 意外にもここで花子が食いついてくる。確かに花子にとっては強大らしい彼女達の魔力を感じてしまう故に、威圧感ばかり出して一方的なコンタクトを取ってくるめんどい連中の1人に思えているだろう。俺のような一般人をどうするか不安になってしまう気持ちも分かる。

 

 「なら丁度良かったわ。薬師院花子、貴女もついてきなさい。少し実力を見せて貰いたいし」

 

 花子は一瞬立ち止まるものの、望む所だと言わんばかりにやっと此方の輪に加わった。

 あとやっぱ苗字から名家育ちそうだ。

 

 「『東の魔法少女』、『総国の魔法少女』、刀禰………ここからは競争よ。誰が最もスマートに悪の組織を処して、クールな魔法少女かを証明する為のね。」

 

 「くだらない、ホントに」

 

 「じゃあ…冷香は『この問答自体がくだらない』って事を証明するって事か」

 

 「アンタってホントにウザい…!」

 

 とうとう冷香から軽い蹴りを貰ってしまい、そのまま彼女は飛び去って行く。ああは言っても悪を砕く事に対して最初に反応したあたり、魔法少女の立場としての意識は冷香にもちゃんとあるはずだ。

 

 「私は動かない…」

 

 一方、エルヴィーヌはこの流れで尚も動かないようだ。

 魔法少女姿でないところも見ると、戦闘態勢に入る訳でも無さそうだが……

 俺は一度も彼女の変身を見た事が無い。人前で見せたくないのか、調子が悪いのか…?でも、そうだとしたらわざわざ人前に出て来なくてもいい筈。

 まさか…ガチ厨二だから周りとは違う事をしたくなるさがとかか!?

 

 「顔に出てる…」

 

 「えっ嘘」

 

 「あまり変な事を考えてると、その脳みそをレッツ・ラ・まぜまぜするから…」

 

 珍しく感情の籠ったアメジスト色に妖しく光る瞳で此方を刺すように見るエルヴィーヌ、脳味噌を混ぜるなどと怖い脅しを使っているが『レッツ・ラ』付ける必要ってなんだ…?共通言語…?

 

 「私は単に別でやる事があるから…」

 

 こう言われてしまうと変に詮索は出来ない。

 そろそろ悠長にしてる暇も無くなってきたので、まあこれからエルヴィーヌが何をするにしろ悪事の類を働かないのであればそれで良いと思う事にした。

 

 だがその前にもう1人。

 

 「…………」

 

 刀禰は黙ったままであるが、行動を起こすのか起こさないのか位は聞いておきたい。

 

 「刀禰はこれからどうするの?」

 

 「……………」

 「……誰の………指図………受けない………」

 

 どうやら意固地になってしまったのか、先程と同じように一匹狼モードに入っている。

 

 「刀禰は元々精神的に不安定さが見られる。それは仕方の無い事……」

 

 エルヴィーヌが彼女の情報についてそれらしい事を言うが、刀禰をまだ完璧な狂人のようにまでは思えない。

 無敵さ加減だったら他の面子も結構同じ程度なので…

 

 刀禰に歩み寄って彼女に視線を合わせる。

 

 「指示じゃないよ、提案。ただ飲んでくれるかどうかだけ聞きたいんだ。自分の身が最優先ならそれで良い。」

 「まあ時間無いし、答えたくないならこっちは勝手に『動かないんだ』って思っとくけどさ。」

 

 「……………」

 

 表情を微動だにさせない刀禰。やはり答えは得られないかと思えたが…

 

 「………じゃあ…………帰ったら………褒めて………」

 

 彼女が目を逸らしつつ放った言葉は意外なものだった。

 刀禰の見た目は、ウチの学校の生徒を参考にした時に同学年かそれより先輩にも見える。160cm代半ばほど。

 見た目より幼い説もあるが、高校生ぐらいと想定すると『褒めて欲しい』って要求は珍しいように思える。勝利にこだわるのにも何か関係しているかもしれない。

 

 「分かった。けど、無理に頑張り過ぎて危険に身を晒すのはやめるんだぞ。生き残って帰って来てくれれば良いんだ。」

 

 「………舐め………ないで…………必勝………」

 

 コイツマジで相当自信あるんだな『必勝』て

 

 刀禰は冷香同様にその脚力で地面を蹴り上げ飛び去って行った。

 

 それからやみ、花子と話し合い、冷香や刀禰が消えて行った方向とは別の場所にある『反魔法少女革命軍』へ向かう事に。

 

 「霧時雨、旅人の脚を掬い上げ雨風凌ぐ場所へ運び給え『雨脚前兆レイン・サイン』。」

 

 花子が掛けてくれたのは運搬キャリー魔法らしく、彼女の傍で俺の身体が浮き始めて、彼女達の驚異的な身体能力で飛び上がろうともその動きにピッタリとくっついて行く。

 

 結局エルヴィーヌは俺達を見つめたまま、その場から動かず数秒もしない内に見えなくなってしまった。

 

 

 「その者の首を落とすのだ。これは神よりお前に与えられた試練。」

 

 「あぐっ…うっ……!!」

 

 『魔教団ダークネメシス』、その祭壇上では儀式という名の公開処刑が行われていた。

 

 洗脳と制御の技術に長けた構成員を集め、魔法少女の望まぬ記憶と人格の書き換え、それを教団は『闇落ち』と呼び、より強力な手駒として魔法少女達を配下に置いていた。

 

 しかしある日、洗脳魔法少女の内1人の意識が正常へと戻りつつある事が発覚した。

 原因はその魔法少女の管理担当を務めていた教団科学者が良心を捨て切れず、その魔法少女と日頃からコミュニケーションを取っていたところ、彼女は洗脳される前の記憶を徐々に思い出していったのだ。

 それを教祖ジーニアスは見逃さなかった。

 

 こうして、再び魔法少女を闇へ落とす為の公開処刑が開かれる。

 己の固有武器である剣を構えながら涙を浮かべて拒否の意を示す魔法少女。しかし教祖ジーニアスを始めとした教団幹部達には逆らえぬようプログラミングされた身体では、今はその手元の剣を振り下ろす為の動作しか許されず自分の心を取り戻させてくれた科学者へ死へのカウントダウンを一歩また一歩と響かせる。

 

 「目を瞑るんだ…!」

 

 「させぬわ。本格活動直前という岐路において規律破りのタブーを犯しおって。目を開いたままその死に様を見届けい!」

 

 「いやぁあっ!!」

 

 泣き叫ぶ魔法少女だが抵抗叶わず、寸分も違わない確実に仕留められる位置で、科学者の首にその剣が振るわれた。

 

 が、剣は手応えを得ずに宙を切る。

 

 剣を振り終えた魔法少女の横には、科学者を抱えた冷香が軽蔑を含めた睥睨へいげいの眼差しをジーニアスに向けていた。

 

 「貴様、何者かは分からんが機関にはいない顔だな……野良風情め、単独で乗り込んで来たという訳か…」

 

 ジーニアスが腕輪にもう片方の手をかざすと、祭壇の周りを十数人の洗脳された魔法少女達が生気の無い瞳を携えて囲む。

 

 「神聖なる儀式を阻んだその愚行、神への冒涜に値する!」

 「どうせ魔法少女、どれだけ傷つこうともすぐに元通りになる!なれば生き地獄を味あわせてやる……四肢を砕き、絶叫すら足りぬ屈辱と痛みを与え、最後には貴様の構成する全ての過去を洗脳で消し去って我が軍門に下らせてや」

 

 

 教団本拠地の外壁が内側から破壊されると同時に、ジーニアスは外へ投げ出された。

 四肢はあらぬ方向へ捻じ曲がり破壊され、絶叫すら許されずパクパクと口だけが動き、全身血まみれになりながら白目を剥いていた。

 死にはしていないが、内臓も神経系も深刻なダメージを負っており、通常の生活を送るのはまず不可能。立ったり話す事すらもはや永遠にままならない。

 

 「倫理観の割には弱過ぎる…早めに片付くのは楽だけど。」

 

 既に教団幹部達も冷香の手によってくまなく再起不能にさせられ、連動していた洗脳装置が停止した為に少しずつ正気に戻っていく魔法少女達。

 

 その中から先程の魔法少女と科学者がお互い肩を貸し合いながら冷香の元に駆け寄って来る。

 

 「すまなかった…!」

 

 「あっ…あのっ!助けてくれてありが」

 

 トトンッ

 

 次の瞬間には魔法少女と科学者の額に冷香の指が当てられ、記憶消去魔法が掛けられた。

 

 「次」

 

 

 凄まじい勢いで風を切り移動する中、やみが俺に向かって手を横に振り払うと、紫のもやが掛かる。

 

 「私のステルス魔法よ。それで猛者魔法少女なんかの一部を除いた第三者は貴方を正しく認識出来なくなる。」

 

 「身バレ防止ありがとう。」

 

 「他者への高度なステルス魔法は魔力の消費が激しいだろう。よくそこまで続くものだ…」

 

 「御託はいいわ、さあ行きましょう」

 

 そして俺達は『反魔法少女革命軍』の本拠地とされる場所の近くまでやって来る。

 ここはお台場の埠頭ふとう、倉庫や工場が立ち並ぶ工業地帯。

 来るまでに街が警報まみれで騒がしくなっており悪の組織による惹起じゃっきの影響だと窺えたが、やみと花子は交通機関も使わず脚力のみで速やかに約25kmの距離を15分ほどで移動……魔法少女恐るべし。

 

 やみによればその埠頭エリアの一角にある倉庫が反魔法少女革命軍の根城となっているらしい。

 

 「……」 チラ…

 

 「!」

 

 アイコンタクトを取るやみ。花子も何やら勘づき刀を手に取ると、銃声が鳴り響く。

 

 キィンッカンッ

 

 花子の目にも止まらぬ剣戟が全ての銃弾を弾き返す。

 

 「薄花桜の漂いが闇を静謐に裂く、『桜花円咲ブロッサム・ブルーム』。」

 

 花子は詠唱を終えると共に銃弾が飛んで来た倉庫屋根辺りへ薄紅のオーラが纏われた刀を振るう。更に振り返って後方の倉庫屋根にも幾度か軽く振るい、屋根の一部にパクッと斬撃痕が刻まれる。

 すると間を置かずにあちこちから呻き声が響いて来た。

 

 「『5人』だったな」

 

 「え、何、もう5人倒したって意味…?もしかして斬撃飛ばすってやつ?」

 

 「ああ、察しが良いな。」

 

 飛ぶ斬撃は漫画、格闘ゲームのバトルものの定石。

 冷香の消える黒剣とか、花子の今の技なんかを目の前で実際に見せられたら正直自分でもやってみたい気持ちはある。

 

 「まあ及第点よ。まだ私が手を貸す段階ではないけど……」

 

 「ふっ…ならそのまま指をくわえて見ているが良い。全て私が終わらせてやる。」

 

 やみのマウントは相変わらず、花子もそれに対して負けじと意気がっている。

 

 そして特に問題も無く所定の倉庫へ着き、花子が重苦しい錆びた扉の前で刀を構える。

 斬撃の後、ひとりでに扉がバラバラになって通れるようになりましたー……ってのをやるんだろう。これも個人的に結構見てみたかったやつ

 

 「ここからは気を引き締めなさい。」

 

 「言われずとも分かっている。開けるぞ。」

 

 開通した瞬間が本格開戦の合図にもなり、2人が強者である事は分かっていても一般人としては息を飲まざるを得ない。

 

 そして花子が斬撃を放った。

 

 ドガアアァァアアアッッ!!!

 

 鋼鉄の扉が吹っ飛ぶ程の爆発。恐らく強い作用を加えた瞬間に起爆する仕様で爆弾が仕込まれていた。

 此方が開戦だと思っている前に敵はとっくに準備をしていたのだ。

 

 呆気にとられていたが俺自体は何ともなく、聴覚も視覚も失われていない。纏っていた紫色の靄が再び妖しく発光している事から、やみのステルス魔法はバリアとしても機能し、あらゆる衝撃から身を守ってくれたのだろう。

 だがやみと、モロに巻き込まれた花子は……?

 

 すると爆発の硝煙に包まれながら、すぐ傍に居たやみが俺の腕を掴むとグッと引き寄せて煙の中でも顔が見えるぐらい近い位置にまで迫って来た。

 

 「腰は抜けていないようね。」

 

 「うん……けど花子は死んでないよな…!?」

 

 「ええ。彼女の魔力は感じているわ。爆発を捌いて敵陣へ突入したようね。」

 

 逞しいものだなんて感心していると、やみは俺の眼前に鉄の鉛のような物を差し出す。それは花子がさっき弾いた弾丸だった。

 

 「この弾丸は普通とは違うの。」

 

 やみはそれをクッと強く摘む。すると光の粒子になって消えていってしまった。

 

 「これは魔力を込めた弾丸。あの娘がわざわざ刀で弾いたのもその性質を見る為。」

 

 無闇に食らうのを警戒したという事か。

 そういや普通の銃弾かと思って安易にガードしたら相手の能力をズタズタにしたり封印したりするシチュエーションを見た事がある。

 

 「魔法少女を致命傷にする程のものでは無いけれど、これは構築魔法で生成された弾丸。」

 「構築魔法は高等技術。構造把握又はイメージセンスに突出していなければ武器の複製なんて出来ないわ。しかもそれを構成員に配れる余裕がある辺り、この組織に相当手練れの魔法少女か知的魔物がいるのは確かよ。それか魔人かもしれないわね」

 

 『反魔法少女』なんて名乗ってる辺り、魔物が与していそうだが知的魔物なんて本当はそう居るもんじゃない。前にみゆりさんがお漏らしした魔物との邂逅が初めてだったぐらいだ。

 

 「扉に爆弾も仕掛けていたし、迎え撃つには入念な準備をしているわ。」

 「さて…彼女だけでは手に余るかもしれないし、ここからは私も参戦しようかしら。」

 

 硝煙が未だ漂う中、やみが颯爽と踵を返してやっと戦場に赴こうとする。

 その実力は如何に。

 

 …のところ突如気流が発生。煙が急速的に巻かれ始め、その元には見覚えのある薄紅の切っ先が。

 

 全ての煙が払われ花子が現れる。

 後ろの倉庫内にはボロボロになって気絶した大量の構成員達が積まれていた。

 

 「相手は武器を持っただけの一般人だ。すぐに終わったぞ。」

 

 「え、ちょ」

 

 やみは結構な慌てふためきようだ。力量を見誤ったか…

 いや違うか。多分コイツ「手を貸すわ」なんて風に先輩ぶろうとしてたな、花子が手際良過ぎて面食らってるんだ

 自転車に上手く乗れないだろう幼い我が子の姿を思い出に残す為に嬉々としてホームビデオ構えたら、すげーなんともなく乗れちゃってて複雑な父親の胸中だ。

 

 「……ふぅ」

 「及第点、と言った所かしら」

 

 「及第点の範囲広過ぎやろ」

 

 





 ここまで目を通してくださりありがとうございました!
 悪の組織については次で話をつけます。良かったら宜しくお願いします。
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