魔法少女世界で俺のエンカテーブルがクール系に偏り過ぎてるんだが   作:TSから逃げるなぁぁ!!卑怯者おぉ!!

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魔法少女のクールな解決

 

 「あっれれ〜〜♡もう終わり〜〜?魔力スカスカのザコザコ魔法少女さ〜〜ん♡」

 「でも最後まで搾り取ってあげちゃうから♡魔力が果てるまでイッちゃえ♡」

 

 「があぁ……!」

 

 『メスガキザコザコ王国』女王、フィメール・ブラット。

 金髪ツインテールに、常に悪戯な笑みを浮かべ、小悪魔的な印象の八重歯が見え隠れする魔法少女。

 小柄でもある故に一見ただのからかい好きの意地悪な子供に見えるが、彼女の固有能力『エネルギー吸収』により相対しただけで相手の魔力を文字通りスカスカになるまでに吸い尽くす。更に魔力だけでなく力の類であれば吸い取れる為、魔物の魔力、一般人の体力すら見境無く吸収出来る。

 更に束縛魔法や防御魔法に長け、彼女を攻めあぐねている内にいつの間にか力を吸収され疲弊、最終的には必ず形勢を逆転されてしまうのだ。

 

 「Aランク位の実力なのに私には弱過ぎ♡もう私の細い腕で弱パンチしても死んじゃいそ♡打ち上げられたお魚さんみたいにピクピクしか出来ないなんて笑あなたより小さい女の子に人間の尊厳取り上げられちゃって恥ずかしくないの〜?笑♡ざぁこ♡ざぁこ♡」

 

 一頻ひとしきり罵倒を終えると、くたびれた魔法少女は配下達によって担架で担がれて行った。

 フィメールにとって、この舐め腐った罵倒煽りに始まり形勢逆転を経て最終的に抵抗出来なくなった相手にまた罵倒を掛けるという一連の流れこそが至福の時なのだ。

 

 「気持ちい♡優越感で浸っちゃって全身もうビショビショ笑ダブルピースの気分♡」

 

 コンサート会場程あるホール空間内の彼女の為だけにあしらえられた小さめの玉座に着き、頬杖をつきながら満足気に天井を仰ぐ。

 この組織自体が彼女一強で成り立っている。それ程にフィメールの力は絶大だ。

 彼女の力に魅せられ、多くの部下を自然と獲得し、他の組織とのコネクションが出来上がって台頭し始めたのが1年前。

 機関から遂に危険人物とみなされ対フィメール魔法少女が幾度と派遣されるも今現在に至るまで全て返り討ちにしている。

 魔物のレベルに例えるならば大河上位に匹敵するとも言われ市井しせいは畏怖し、機関にとって悩みのタネになっているのだ。

 

 「革命が成功したら〜、お城を立てて毎朝号令代わりに皆をざぁこ♡扱いして♡それからそれから…♡」

 

 「くだらない」

 

 「?…おねーさんだぁれ?」

 

 ホール空間内隅っこの物陰から冷ややかにフィメールを睨みつける冷香。両脇に抱えた彼女の部下を乱雑に放り投げる。

 

 「えー♡道場破りのつもり笑おねーさんちょっと噛みつく相手間違え過ぎー♡」

 

 「……」

 

 「そんなに睨まないで♡友達少なそうなの分かったから笑トイレでご飯いつも食べてそうなの分かったから笑それにしてもおねーさんホントに目つき怖いね♡他にも…」

 「!!」

 

 フィメールは暗がりから出て姿を晒した冷香に対し目を丸くした。

 

 「おねーさん!!おっぱいでっかぁ♡♡!?」

 

 「……」

 

 胸辺りが菱形に空いた冷香の魔法少女服。

 フィメールは口角を上げいやらしそうにニヤつきながら、冷香のみっちりと詰まって深い谷間を作るその豊かな胸を舐め回すように見遣る。

 

 「し、しかもホクロ付き!おねーさんもしかしてもう経産婦〜笑?谷間に私の手を突っ込んだら乳圧で潰れちゃいそ笑」

 「でも私おっぱい大好きだよ〜♡『お姉さん』の特大おっぱいから〜、100%魔法少女産生搾り特濃母乳ミルクた〜ぷっり搾って『お゙っ!?♡姉さん』にしてあげる♡♡♡それで保存した母乳冷やして毎朝飲む笑健康的笑」

 

 冷香がズカズカとフィメールに向かって距離を詰め始める。

 フィメールも瞬時に戦闘態勢に入り、両手を冷香に向けて広げると金属がかち合う音がホール内に響き渡る。

 目には見えないが冷香の身体には既にフィメールの魔法が仕掛けられたのだ。

 

 「束縛魔法♡しかもおねーさん強そうだから私の中で最上級のやつ♡鋼属性魔法に闇属性の上乗せでステルスと硬度アップでもう抜け出せないやつ♡」

 「しかも私のエネルギー吸収はもう始まってるんだよね〜♡おねーさんあと数秒もしたら………」

 「…………?」

 

 確かに拘束したはずの冷香は未だ問題無く変わらぬ歩調で歩み寄る事が出来ていた。

 冷香が想定外の実力を秘めている事をフィメールは理解したが、それでも彼女のニヤけ面が崩れる事は無い。

 

 遂に目の前に相対する両者。

 

 「お゙っ♡?動き止めたね♡理解した笑?」

 「私、今バリア張ってまーす♡誰も突破出来た事の無いふっとぉ♡な結界魔法なんだよね笑これも闇属性纏ってるからすっごくかったぁ♡でもあるんだよ♡」

 「私のエネルギー吸収にここまで粘った魔法少女もひさしぶりぃ♡今ならおねーさん私の部下にしてあげても」

 

 パァン

 

 ビンタの乾いた音がホール内に響いた。

 フィメールは脳震盪に見舞われ、数秒経ってから意識を取り戻すが何が起きたのかを理解するのにはまだ時間を要した故に、鼻血を垂らしながら呆けてばかりいた。

 

 「は、はえ…?」ポタポタ

 

 パァン

 

 往復して手の甲でのビンタが再度フィメールの頬を打つ。今度は切れてしまった口内で血の味が一杯に広がる。

 結界はプリンでも掬われたようにそっと音も立てず穴が空いていた。

 

 「ど、どうして…!?結界もエネルギー吸収も効かない…!?」

 

 「私相手にそんなの無意味なのよ、それだけ。」

 

 ヘタリと力無く座り込もうとするフィメールの左胸を冷香はガッと掴みにかかる。

 

 「いだっいだだっ!?お゙ねーざんっ!!胸潰れるッッ!!」

 

 「あれだけからかっておいて?母乳ならアンタのから捻り出しなさいよ」

 

 「いやっ!?まだ14歳だがらッ!!バスト70だがらッッ!!出るわけないょ゙お゙!!」

 

 「じゃあ母乳じゃなくて血を撒き散らせば?」

 

 「ひっ、ひぃャ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙ぁ゙ッッ!!」

 「……」カクン……

 

 「ここまでやってやっと静かになった…最近のガキはこれだから……」

 

 左胸からそっと手を離し気絶したフィメールを抱えると、その胸に指を当ててなぞり始める冷香。

 跡にはジュウウと溶接するような音を立て、フィメールの服の下には黒いラインが刻まれていく。

 

 「お゙っ!?お゙お゙ッッ!!おねーざん何してるのぉおお゙!?」

 

 フィメールは痛みからか再度目覚めてバタバタと暴れるが、冷香の膂力には敵わず作業は最後まで行われた。

 

 「アンタのレベルになると忘却魔法が効かないから封印式フォーミュラ・シールを刻んだ。それで私の事は口に出来ないから。」

 「あと今日中にこの組織の解散を宣言しないと今度こそ息の根を止めに行くから。良い?分かった?」

 

 「はい……ぐすっ………」

 

 「次」

 

 

 「我々『全国民性癖開示請求運動団体』は!!未成年がいつでも性教育を恥ずかしがる事無く受けれるような性に寛容的な社会づくりを目指し!!まずはその切っ掛けとして全国民の性癖開示を求めるッ!!」

 

 「「「おおおおおっ!!!」」」

 

 『全国民性癖開示請求運動団体』団長、鉾田礼二。

 彼は議会議員の息子であり、抑圧された青春を送っていた為に溜まりに溜まっていた性への興味関心が成人になるにつれて発露の傾向に。

 彼は元よりその手に持っていたコネを上手く利用して現団体を築き上げた。全国各地から同じような環境に置かれていた同志達を集め、更にプロモーションの手腕も光って現在団員数が伸びに伸びを見せている。

 

 鉾田は威勢の良さを潜めて、既に占拠した公立中学校施設の屋上から団員達へ慎ましく告げる。

 

 「今日は本格的な発起に際し…そのさきがけとも言うべき期待の新人が入った。もしかするとこれからの活動を率いる逸材になるかもしれん。」

 

 ザワザワ…

 

 鉾田の口から引退を仄めかす言葉が出て動揺する団員達。しかし鉾田はその不安を払拭するように再度力強く言葉を続ける。

 

 「何故この転機で不安を煽るような言葉を送ったのか!諸君らは疑問に思うかもしれないが、それは今から見せる『革新』に比べれば瑣末さまつ事だからである!!」

 「佐藤!!来てくれ!!」

 

 鉾田はその場から一歩引き下がると、今度は眼鏡を掛けた青年が後方から現れた。

 

 「君の主張を聞かせてくれ!!」

 

 「はっ!!諸君、私は佐藤流転であります!!性科学研究にて鉾田団長と知り合い、資金援助によりその研究が成果を出すに至りましたっ!!」

 

 鉾田と佐藤、両者が左右に分かれると、後ろからパラボラアンテナ的な皿状の装置が運ばれ団員達にお披露目される。

 

 「私の性癖は『TS』でありますっ!!特に男性が女性に変わり、一時はその身体的特徴を始めとした特異な状況に困惑するものの、自然と馴染んでいきながら当初の男性的ノリを失わないシチュが大好きなのでありますっ!!」

 

 「よーーしッ!!よく言った佐藤!!」

 「今の性癖を聞いてくれた諸君ならみなまで言わずとも分かると思うっ!!これは佐藤の見つけた特殊電波によりホルモンを逆転させて安全にTS化させる…超大発明である!!」

 

 「「「おおおおおーーーッ!!!」」」

 

 「勿論TSが趣向でない者もいるかもしれん、だが安心して欲しい!!これは元の性別に戻す事も可能だ!!先ずは『全国民性癖開示請求運動団体』の歴史に刻まれる研究結果を示してくれッ!!男性に限った周辺住民達をTS化させるぞッ!!」

 

 「はっ!!よし…TS怪電波発信!!」

 

 夢を叶えるその瞬間に震える佐藤と、これからの団体の方針を大きく変えるだろうターニングポイントに立ち会い満悦そうな鉾田。

 遂に装置がピンク色の光を纏い怪電波が発信された。

 

 瞬間に。

 

 パッ

 

 中学校の周囲の空間が黒く塗り潰される。

 

 「なんだこれは…?」

 

 「!!……鉾田団長!!我々がTSしているのでありますっ!?」

 

 「むっ!?なんと……佐藤、方向調整はまだ万全で無かったという事か!?」

 

 女性になってもむさ苦しいノリと太眉毛を携えて女体化してしまった鉾田と佐藤。

 だがそれとはまた別のある違和感に気付く。

 

 「……グラウンドの団員達が静かだな……」

 

 「!!……グラウンドが全て黒く塗り潰されているのであります!!全員が気絶している模様!!」

 

 「何っ!!」

 

 グラウンドを覗き込む鉾田の目には一面黒い靄が立ち昇り倒れ込んでいく団員達の姿が映った。

 

 「我々……も……意識が………」

 

 「さ、佐藤……ぐっ………」

 

 遂に残された2人が屈して倒れ込む。

 

 その瞬間に黒い空間がスーッとスポイトに吸い取られる水のように引いていき、数秒もしない内に元の空間に戻った。

 

 「………………集まってくれるのは………………楽……………」

 

 黄金色の瞳を携えた少女は手印を解くとそのまま中学校を見渡せる高さの木から降り、自らの展開した闇に消えて行った。

 

 後に駆けつけた機関魔法少女と警察により『全国民性癖開示請求運動団体』の構成員ほぼ全てが意識を失ったまま無抵抗で拘束されるという不可解な事件となるものの、佐藤の開発したTS怪電波の方に世間の目が向いて当時の事件内容に関しては相対的に語られる機会は無くなっていく事になる。

 

 

 「構築魔法の使い手がこの構成員達の中には居ない?」

 

 「ええ。」

 

 気絶し拘束した構成員達を並べ終えるとその中に組織の代表もいた為に一段落かと思われたが、やみは魔法少女に対抗する為の魔力武器供給を行っていたかなめと思われるまた別の元凶の存在を唱え、再び緊張が走る。

 

 「そうなると予め武器を供給しておいて、現場からは既にトンズラこいているとかそういう事?」

 

 「いえ。構築魔法は施行者の距離が離れれば、構築物の強度も精密性も低くなるわ。」

 

 やみは倉庫内の魔力銃弾を1つ取り出し親指でピンと弾く。

 弾かれた銃弾は跳ね返るどころか倉庫の壁すら撃ち抜いて外へ。威力抜群だ。

 

 「跳弾ちょうだんは無く、貫通力は寧ろ損なわれていない。きっと近くに居る。探知魔法を使うわ」

 

 「であれば私も…」

 

 2人が手印を組み探知魔法とやらを実行。

 この後に第2ラウンドが待ち構えているのでは、と嫌な気配を感じていたその時だった。

 

 ビシュウウゥゥゥン!!

 

 眩い閃光が突如俺達の倉庫の天井から伸び、倉庫の屋根から地面にかけて貫く。オレンジに発光する飛散物スパッタから溶断されている事が窺えた。

 

 「熱属性魔法に光属性が乗っている!ビームだ!!」

 

 此方に叫びかける花子、ところが収束した光は彼女に向け溶断による火花をあげて迫り来る。そのまま埠頭を切り裂きながら岸まで追いやられた。

 すると倉庫屋根から何かが花子の背後へ飛び降りる。そのまま海面に飛沫を立てながら魔法か何かか沈むこと無く着水。『ビームの発生源』が姿を現した。

 

 「薬師院花子……サタニクルしんに仇なす痴れ者め!」

 

 「貴様は…!!」

 

 「まさか意図せずして我が蓑として使っていたこの組織にも手を出して来ようとは……」

 

 「瓢箪ひょうたんから駒が出て来たな…!!」

 

 誰が何の何だか分からないが、歯軋りし明らかに先程とは違う刺すような殺気を放つ花子の様子から因縁のある相手だという事が分かる。

 

 しかし、身なりは戦国武将みたいな甲冑風の鎧なのに武器はライ◯セーバーとかビー◯サーベルみたいな光線剣である、ゲーミング武将かな

 

 「待ちなさい、選手交代よ」

 

 ここでやみが総毛立つ花子へ歩み寄って自分の番を主張する。

 

 「サタニクルの配下を相手に棒立ちで見てはいられん…!私の手で奴を無力化させて母の『解呪』について聞き出す!」

 

 「サタニクル、現東京復旧第2区画をかつて焦土に変えた魔神。かつては私も魔神の類には痛い目を見せられたわ」

 

 「貴様が…?」

 

 「ええ。」

 

 花子もやみも何やら『魔神』とやらについて事情があるようで、どちらがあの武将風信者とやるかを議論しているようだ。

 

 「だが私の倒すべき魔神サタニクルとは関係の無い魔神だろうそれは!」

 

 「確かに直接は関係無いわ。でも………」

 「流石にそうこじつけないと今日はホントに傍観者で終わってしまうわ」

 

 「貴様!?なんだその理由は!?」

 

 ホントになんだその理由は。全然隠そうとしないじゃねーか。

 あーほらサタニクル信者さんとやら兜の下よく見えないけど小刻みに足踏みしてて絶対苛立ってるよアレ

 

 「もう我慢ならぬ!!サタニクル神に対する供物として薬師院花子ごとうぬらを掻っ捌いて臓物を引き抜いてやろうぞッ!!」

 

 遂に痺れを切らしたのか海面を蹴り上げ光線剣を抜刀の如く展開。鬼気迫る勢いで突進して来た。

 

 「うおっ!来た来た!?」

 

 「私がやる!」

 

 「いや私が」

 

 未だ張り合う花子とやみ。

 

 だが。

 

 バヒュウゥゥン

 

 彼女達のくちやかましさを黙らせる如く、2人の間を裂くように黒剣が投擲され…

 

 ガスンッッ!!

 

 「がはぁッ!?」

 

 サタニクル信者の胸に命中し、甲冑を貫いて背中まで貫通。

 やはり普通の人間では無かったのか、胸を貫かれた状態で尚もその黒剣を引き抜こうとするサタニクル信者。

 

 だが見覚えのある可憐なシルエットが俺達の間を縫うように走り抜け、刺さった黒剣の柄へ足を掛けるようにドロップキック。

 

 ボボオォォンッ!!

 

 黒剣を押し込むと同時に、サタニクル信者の背中から黒い稲妻と爆炎が炸裂。

 恐らく黒剣から勢い良く魔法を伝わらせ内部爆破攻撃を仕掛けたのだろう。

 

 甲冑装甲の隙間からプスプスと白煙が立ち上り、ヨロヨロと後退しながら海へ倒れる。サタニクル信者はそのまま塵となりながら海の藻屑となった。

 

 「これで全部」

 

 一回転して着地した冷香は立ち上がりざまに戦いの終わりを告げる。

 

 今回は彼女が全て持って行ってしまった。

 

 

 『中央魔法少女管轄機関』本部施設。

 千を超える部屋数、その中でも有数の広さを誇る一室が本日から『反体制組織緊急対策チーム』室として稼働する事に。

 

 犯行声明を出した4つの反体制組織に対して、結成された4チームが其々対応。

 1チームにつき10名。なおそのうちの1つ『メスガキザコザコ王国』は首領のフィメール・ブラット攻略に際し彼女の危険度の高さも相俟って、戦力を多く見積もり15名。

 

 ミーティング中に各組織が先手を打ち始め予想外の混乱がもたらされるものの、各リーダーは慌てる事無く急遽巻きで進行する羽目になったミーティング内容を理解しチームを取り纏め、迅速に出撃した。

 

 責任者である長身の男性職員も彼女達に今回の件を任せる選択に間違いは無かったと自信を得て、彼女達への尊敬も抱きながら健闘を祈り戦士達の背中を見送った。

 

 「………」

 

 「まあ……こういう日もある。」

 

 初老の男性職員が、長身の男性職員の肩にそっと手を置く。

 

 大型映画館顔負けの広大なスペースが取られた通信司令室内、その正面に設けられたマルチディスプレイ。本来なら職員の怒号やら警告音やらが飛び交って、モニターや照明が真っ赤に染まり予断を許さない状況になっていた筈であった。

 

 「たったの数時間で全部解決って……」

 

 機関が目星をつけていた悪の組織は緊急対策チームの手を煩わせる事すら全く無く不自然な瓦解状態となっており、司令室は消化試合じみた静けさに包まれていた。

 

 

 機関魔法少女達が駆けつける前に冷香と合流していた刀禰と一緒に俺達は場所を移動。

 今は皆で朝出くわした路地近くの公園に集まっていた。

 

 「皆、お疲れ様」

 「刀禰も改めてお疲れ様。よく頑張ったな」

 

 「…………」

 

 刀禰との約束を思い出し、彼女には改めて労いの言葉を掛ける。上目遣いでジッと此方を見つめる彼女だが、そこの自販機で買ってきたジュースをすぐに口につけてくれた辺り多分悪い気はしていないと思う。

 花子なんかはすげー上品に脚を並べてベンチに座り出された茶を作法でもなぞるみたいに丁寧に飲む。一応ペットボトルなんすけどそれ

 

 「帰りたいんだけど、アンタと居るより1人になりたい。」

 

 一方で冷香コイツはどこに腰を掛ける事も無く立ちっぱなしで、買ってきた飲み物に手もつけず、代わりに悪態をついてくる。

 だが聞いたところ、先程のサタニクル信者を含めて3つの悪の組織…それら各頭領を短時間で潰して来た今回ぶっちぎりのMVP。

 周りを顧みずに目標を定めて突っ走る様は正に猪突猛進、もう猪だろと言いたいが流石に殺される

 

 「アンタ今変な事考えてたでしょ」

 

 ホント少し思っただけでも刺してくるなコイツ

 だがまあ常にこうした緊張感を持っているから、そこは良い意味で行動も早いのだろう。

 

 SNSは早速事件の沈静化についてのワードがトレンドを独占しているが、機関から正確な情報が出ていないからかどの発信も推測の域を出ないように見える。

 だってこの公園にいる者達で全て片付け終えているのでしゃーない、機関魔法少女が駆けつけた時には全部解決してるんだもの。

 

 「…………」ポカー……

 

 そして現場に居たのに全て目の前で解決させられてしまった魔法少女もここに1人。

 やみは冷香のように居心地が悪く立っているのでは無く、呆然と立ち尽くしているという表現が正しい。

 

 「な、何を見ているの。別に動揺している訳じゃないわ」

 「今日は皆よく働いてくれたわ。この調子で精進する事ね」

 

 なんか急に現場監督ポジションで仕切り始めたぞ

 流石に自分だけ手柄が無いという状況はマウント癖のあるやみにとって息苦しかったか…

 

 すると公園の入り口にいつの間にか『最後の一人』が静かに立っていた。

 

 「貴方達、まだ帰っていなかったみたいね……」

 

 「うん。エルヴィーヌ、お疲れ様。ジュースとかあるよ。」

 

 想定はしていたがやはり彼女も受け取らない様子で3本余ってしまった。

 だが彼女の姿を見た瞬間やみが麦茶に口をつけて切り替えたように喋り始める。

 

 「『総国の魔法少女』。貴女は私と同じく今回無力だった。私と同じく悔しさを噛み締め、私と同じくこの反省を次に活かす事ね。」

 

 おい手柄立ててないだけで同種認定してこれみよがしに沼へ引き摺り込み始めたぞコイツ

 

 「私はまだ貴女達に力を見せていない…」

 

 「お生憎様ね、今回は私も力を見せなかったの。まあ正確には見せる事が出来なかったという形になるかしら」

 

 じゃあだいぶ意味合いが違うだろ

 ここまで同列みたいに語れるのもうある種の才能だろこれ

 

 「本当にどこまでも噛みついてくる人…」

 「私の力に掛かれば貴女を大人数の1人みたいに画面外に吹っ飛ばす事が出来るのに…」

 

 「私を増え過ぎた魔法少女の1人とでも言いたいのかしら。いいわ。そこまで私をモブ扱いするなら力を今ここで見せてあげ」

 

 「やみ、ちょっとちょっと」

 

 「小野睦、今は取り込み中よ」

 

 「こっち来て」

 

 俺はやみに手招きして、渋々寄って来た彼女に『今日のエルヴィーヌの事について』耳打ちする。

 

 「えっ」

 

 耳打ちを終えるとやみが冷や汗をかきながら挙動不審になり始めた。

 

 ここへ戻って来る途中、SNSでは『事件の沈静化』の他にもう1つ『現状死傷者・行方不明ゼロ』がトレンドに上がっていた。

 当事者の俺からすると一連の流れから未然に防いだように感じるので当然だと思っていたが、先程討伐された4つの組織は既に末端の構成員達を寄越しており各地で目撃情報が相次いでいた。

 当時、機関は完全に先手を打たれ後手に回り対応が遅れた中でほぼ被害が出ずに済んだというのは眉唾ものと捉えられても可笑しくは無い。

 

 だが『本当の意味で未然に防ぐ』事が出来る魔法少女がいたとしたら。

 今回はエルヴィーヌが恐らく裏で動いていたのでは……そんな考察をリュリュから聞いていた。

 

 「って事で良いんだよな?リュリュ?」

 

 「もしそんな芸当が出来るって仮定なんだりゅ……でもそう仮定すると参加していなかった事にも辻褄が合うんだりゅ!」

 

 肩からひょっこりと出て来たリュリュ。

 エルヴィーヌは自分が言及されている事に気付いたのか少し怪訝けげんそうに俺達を暫く見つめる。

 

 「あくまで私がこの世を治める存在だという事を忘れないで……」

 

 そう言い残して彼女は去ってしまった。

 否定しなかった辺り、リュリュの見解もあながち間違ってはいないのだろう。

 

 俺は悪を砕いて来いと偉そうに言ったものの、彼女はまた別の方法で魔法少女である事を証明しているのかもしれない。

 

 「全員確認するまで律儀に待ってたの?私もう帰るから。」

 

 冷香の事もこれ以上引き止める必要は無かったので、今日はこれで解散する事になった。

 

 冷香が去った後、花子がさっきのサタニクル信者との事もあってか少し神妙な面持ちで後に続く。

 『サタニクル』とやらの存在と彼女の関係、花子が野良魔法少女活動に勤しむのもそこに理由があるのだろうか。

 

 「………」ジーッ…

 

 「欲しいの?」

 

 刀禰は残ったペットボトル飲料3本を欲しそうにしてたのであげた。助かる

 

 そして最後に残ったのは……

 

 「レディーファーストとは言うけれど、真の淑女レディーは後続にも道を譲るものよ。」

 

 ここまで何度も開き直られると寧ろ逞しいとさえ思えてきてしまう。

 だがやみは1つ勘違いしている。

 

 「別に今日やみは何もしてないって訳じゃないぞ。実際俺を守ってくれたじゃないか。」

 「確かにカッコいいとこは見せられなかったかもしれないけど、俺からしたらお前だって立派な魔法少女に見えたさ。」

 

 「えっ………」

 「………ぐすっ」

 

 「?」

 

 

 渭東冷香のいる空間は常に少しだけ世界から切り離されている。彼女の冷徹さ故に、周囲からは薄い膜を一枚隔てたように遠くなるのだ。

 

 『主張があるんなら悪を砕いて証明してきてよ、お前ら魔法少女だろ?』

 

 その膜をすり抜けて、ある男の言葉が彼女に届いていた。

 

 「その程度の事……分かってんのよ……」

 

 効率だけを求めて魔物を狩る孤独な戦い。それが自分のスタイルであり、間違いは無いと今も思っている。

 だが小野睦の言葉がチクリと彼女の心の片隅を刺す。

 

 彼女に『目的はある』。しかしその目的を果たす事以外に自分の主張は特に無く『空っぽな人間』である事を、改めて彼の言葉で痛感させられる。

 

 「アイツの言葉に惑わされる事自体がくだらないのよ…!」

 

 それを飲み下そうと、先程は睦の買って来たジュースを拒否したのに結局冷香は自販機からジュースを購入。

 

 「アイツからの施しなんて受けない……」

 

 そう自分に言い聞かせるように口に出してから、自販機から出て来たジュースを取り出そうとすると

 

 ピコーンピコーン

 

 突然の効果音と共に自販機のボタンが全て赤く点滅し始めた。

 もう1本オマケの当たりだった。

 

 「………」

 「……アイツは私に施す義理なんて無い。けどアイツには私が施す側だって立場を分からせる事は必要……なハズ。」

 

 オマケは同じジュースを選択し受け取ると、気付けば冷香の足は先程の公園へ向っていた。

 決して彼の為では無く、自分のこれからの立ち位置を再確認する為にだ。

 

 公園に着くと、彼女は意外な場面に出くわした。

 

 「…っ……」グス

 

 「ほら、泣くなって……」

 

 啜り泣くやみに対してその肩に手を置き宥める睦の姿があった。

 

 「……趣味が悪いのよ、女ばっかり連れ歩いて良い感じに気を遣って……」

 

 コンクリート壁で身を隠しながら、そう呟く冷香。

 だが彼に対してのイラつきよりも、自分がこの程度の事で動揺している事実に怒りを感じており、彼女のどこか胸の奥がヤスリでも掛けられたようにざらついていた。

 





 ここまで目を通してくださりありがとうございました!
 魔法少女、魔物、機関の世界観設定とかここまで全然明かしてないので次回からちょっと番外編になります、良かったら宜しくお願いします。
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▼とある男、ライア・リーベルには愛する親友達が居た。▼個性的で、才能があって。▼そんな親友に囲まれた幸せな人生は、大人になるにつれ転機を迎える。▼親友達との才能の差、立場の差。▼そんな物がライアと、親友達さえ苦しめる。▼そんな些細な事から始まり、終わった『バッドエンド』達。▼ライアは過去に戻り、親友達を救う……。▼「えっ、別々の世界が過去に逆流した事によって…


総合評価:589/評価:7.91/連載:11話/更新日時:2026年05月31日(日) 20:49 小説情報

我、悪の科学者。ヒロイン魔法少女のコピーがやたら慕ってくるんだが(作者:ともとーも)(オリジナル現代/冒険・バトル)

悪の組織の悪の科学者の仕事と言ったら、主人公の魔法少女のコピーを作ることと決まってますからね。


総合評価:1756/評価:8.17/連載:4話/更新日時:2026年01月27日(火) 09:09 小説情報


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