限界社畜おじさんが、猫耳Vtuberになって世界をかわいく征服する 作:双葉鳴
「はい、では三回戦と行きましょう。次の相手はー」
「企画の都合上、頂上決戦となります」
「あー、コアパパとかもう我慢できない感じ?」
「ですねー。待合室が2個ほど破壊されてます」
「え、あのスペックで破壊できない仕組みだったけど」
「なので、気持ち広めの会場を用意しました」
「どんなの?」
「マグマルームです」
「コアパパ贔屓だね」
「先輩も卵を産むなら産み慣れた相手がいいでしょうし」
「うーん、そこはどちらとも言えないな」
<コメント>
:つまり?
:他のドラゴンの卵も産む気はあると
:産む気云々以外に強制的に散乱させられるの間違いでは?
:そうじゃん
:体張ってんなー
:でもあれ? 毒霧の方ではまで産んでないって話でしょ?
:そうやん
:どうして?
「それはオービルお姉ちゃんがコアパパより理解があるからだよ。特に同類が少なくて困ってるとかもないしね。どっちかと言えば巫女バトルで負けた腹いせで僕を誘拐したのがことの発端だし」
「オービルさんは話がわかる感じなんですか?」
「話がわかるというよりもっと悪どくて狡猾な感じ? 神経毒で体の自由を奪った上でお話ししてくるんだ」
「脅しですか」
「本人にその自覚はなくてね。麻痺耐性がない僕が悪いみたいな」
「なるほど、その匂いが神経毒なんですか。二回戦でも不可解な場所で行動停止を喰らってましたが、原因はそれなんですね。しかもそれは眷属達は当たり前のように耐性を持ってるので麻痺して動けない先輩を可愛がっていると」
「そんなとこ。あとナチュラルに口が悪くて。京言葉っていうの? それで遠回しにバカにしてくるみたいな人だね」
「毒吐き竜は口も悪い、と」
「あと非常に地獄耳」
「それ、早く言ってくださいよ」
「今言ったもーん」
<コメント>
:可愛い
:かわいい
:陳述トリックすな
:あと出しで情報出してピンチに陥らせんなよ
:ちなみにこれも聞かれてる可能性が高いと?
「それはないよ。所詮ドラゴン族。機械には詳しくない。なんで京言葉なのかは知らないけど、多分捕まえた人間に京都出身の人がいたんだろうねぇ。それで気に入って使ってるとか」
「なるほどぉ」
<コメント>
:それはつまり
:近い将来人類の文明にも詳しいドラゴンが出てくる可能性も?
:なきにしもあらずか
:だったら地上侵略も遠い未来じゃないな
「と、いうことで今回は新たに解説を用意しましたー」
「わーパチパチ」
「そんな理由で俺を呼んだのか」
<コメント>
:誰?
:イケドラやん!
:大塚秋生のお父さんやぞ
:バトルウェーブバーサスのやり遂げた人
:RTAモードの偉人
:インド救済RTAの人だな
:あれ成し遂げられたのこの人か先輩ぐらいしかいないのよな
「なんか変な注釈入ったな。俺は人類がりゅう族に滅ぼされるくらいなら、この命一つ失うぐらいどうってことないという気概で挑んだだけだ。バックには槍込がついてたしな。俺がどうにかなっても、素材さえ送ればあいつがなんとかしてくれるという信頼があったんだ」
「ちなみに彼が間に合わなかった場合はインドが壊滅してたからね」
「RTA企画で俺たちより早く着いたプレイヤーはお前しかいないのか? 槍込」
招待した大塚くんが解説席について資料を読み込んだ上で話を振ってくる。
「君ほど秋生を使いこなせる人がいなかったんだね」
「実の息子かそうじゃないかだけの差だな。錬金術師が一緒に戦場に赴くなんてバカのやることだってずっと思い込んでいたが、行ってみてわかる。今まで会社の企画通りに作ってた過去の俺が嫌になってきた。一度現場にいかなきゃ、現実ってのは更新されないらしい」
「そんな君から、リスナーに向けてアドバイスをしてほしいんだよね」
「急に話を変えるな。リスナーが困惑するだろ?」
<コメント>
:スッゲー可愛いのにいちいちイケメンな仕草するな、この子
:先輩の同期なのに生き様が違いすぎる
:まさにイケドラ
:イケメンドラゴン娘
:できる上司って気がする
:本質は先輩をイビって搾取する守銭奴だけどな
「昔の話だ。もうそんなことはしないぞ。助けてもらった恩もあるしな。その上でにゃんにゃん王国民だったか? こんな姿になってまで、矯正できる道を示してくれたんだ。感謝しても足りないくらいだ」
「大塚くんも立派になったよねぇ」
「初対面の印象はクズのろくでなしだったのに、変われば変わるもんですね!」
「お前ら、そんなに言うんなら解説やらないからな?」
<コメント>
:気安い関係ってことね
:王命を突っぱねられる権力があると?
:ないだろ
:にゃんにゃん王国以外に保護されたら解剖まっしぐらや
:うちにおいで(インド)
:うちに来る栄誉を与えようじゃないか(北朝鮮)
:いいや、うちに来るべきだ(中国)
:ぜひうちに来るべきだ、歓迎しよう(ロシア)
:名だたる拉致国家が名を連ねてきたな
「誰が行くか、バカめ」
<コメント>
:おーっと、ここでイケドラ勧誘を一蹴!
:早く試合の解説しろ
:そう言えば三回戦は?
「まだ試合準備中でーす」
「マグマフィールドであることにオービルお姉ちゃんがご立腹のようで建物を侵食しちゃったんだねぇ」
<コメント>
:とんだわがままドラゴン達だな
:ドラゴンなんて意思のある災害と同じだろ
:目をつけられる前に逃げろ、これが鉄則だから
:ところでそんなのに挑ませるゲームが流行っているらしいですよ?
:命大事に!
:スペアボディも使用回数、あれで大幅に減らして国は保証してくれるのか
:ゲームでスペアの使用回数って減るの?
「減るよ。あくまで現実にゲーム要素を入れてるだけだから」
「にゃんにゃん王国のVR空間へのログインも一回ごとに使用回数がありますからね」
「そんなのあったんだ?」
「流石に一度支払ったあと何回でも入り放題は国防としてどうかと思いますし。でも、自国でスペアボディを作れるようになれば近い将来可能ですね」
「それまで僕たちからにゃんで買い付けろと?」
「そんな感じです」
悪どさでは後輩もオービルお姉ちゃんに負けないな。
内心でそんなことを考えつつ、ようやくフィールド内容に納得したか、二匹のドラゴンがフィールドに放たれた。
『随分と待たされたが、いよいよ年貢の納め時だな、オービル』
『あらあら、口だけは達者ですなぁ。誰に言葉を教わったんです?』
『? 何言ってんだお前ぇ!』
<コメント>
:辛辣ぅ!
:いや、口が悪いってこういうことか
:言葉にも毒属性あるのかよ
:だがしかし、爆炎竜は知能の低さでこれをパス!
:これが知性の差が20もひらけば会話が通じない状況かー
『全力で行く。くたばれ』
コアパパはダッシュ。
そして拳を握りしめると、腕だけが爆発的に肥大化する。
<コメント>
:まさかのギアセカンド!?
:いや、それだけじゃないぞ
:なんか真っ赤な空気帯びてる
「正体は匂いですね」
「知ってるのか、後輩!」
「おい、俺の仕事奪うな。あれはコアの血が霧状になって周囲に散布されてるんだ。お前らが臭いとして知覚しているのがあいつの血な訳だな。あれを他の生物が体内に取り込むと、コアに気に入られたくて仕方なくなる。その状態がマックスになると肉体が変化していくわけだ」
<コメント>
:ニオイの正体は霧のように薄められた血?
:じゃあ常に流血状態ってこと?
「違う。あいつの血は汗やフェロモンとして空中散布される。ナワバリへの巡回はその匂い付けがメインだ」
「つまり運動後にたっぷり汗をかくだけで?」
「その匂いはより強固になる。メスを前にした時もフェロモンが出てより匂いは強力になるってことだ」
「りゅう族はその血を周囲から集めて強くなると?」
「本人に自覚はないが、そういうことだと思う。多分あの小さな体に力を溜めておくことができないんだろう。肉を食ってもよく汗をかいているから、きっとそういうことだと思う」
そういう理由か。
その小さな体のどこにそんなパワーがあるかと思っていた。
一度パワーを体外に放出したあと、再度取り込んで自分の力にしてるのか。
あれ、じゃあ。
「これ、その匂いがたくさんついてる眷属や嫁、巫女が近くにいる方が強いってことか?」
「そうなるな。だがそれは撒いた血を回収できるってだけだ」
「ならそんなに頂上決戦にはなりませんか?」
「バカだな。そんなの仲間に匂いを分け与えなくて言い分、全部自分のものにできる今の状態の方が強いに決まってるじゃないか」
大塚くんの言葉を聞き終わるや否や。
試合会場に爆弾が投下されたような破砕音が鳴り響く。
『チッ、防いだか』
『嫌やわぁ、体の動かし方を知らん人は。誰に教わったんやろか』
『我流だ!』
再度拳が振るわれる。
しかし至近距離で、スロー再生にしてよくわかる。
コアパパの拳がオービルに到達する直前。
まるで匂いが分散するような気流が渦巻いていることに。
相手の力のトリックがわかっているからこその自衛手段。
オービルは周囲に風の陣を巻いて相手の力を物理的に削いだのだ。爆発は、分散した力がフィールドに拡散して暴発したもののようだった。
うーん、これパパに勝ち目ないか?