限界社畜おじさんが、猫耳Vtuberになって世界をかわいく征服する 作:双葉鳴
『パパ、勝つって信じてたよ!』
『まぁ、コアなら油断しなければ負けることはないだろうからな』
『アキラ、マクリ。オレの勝利を信じてくれてたか』
『なんてったって僕のパパだからね』
『そうだぞ、コア。でもちょっと危い所もあったんじゃないか?」
『見てたのか?』
『いや、わかるさ。見送った時より自信が足りてない。これはきっと何かあったのかと思ってな。外れてたか?』
普通であれば無礼。
が、大塚君の信頼があってこそ、今回コアパパは勝利を収められた。むしろ良くぞ見抜いたって感じでちょっと気分良さそうにしている。
いや、気づかない方がおかしいでしょ。
見るからにしょんぼりしてるもん。
ただ、それに気づける眷属が今までいなかった。
それだけなのだ。
『さすがアキラだな、オレの細かい仕草で見抜くか。その通りだ。少し危なかった。いつものオレの拳が全く通用しなかった。オービルの奴め、腕を上げたか? 知らん記述まで扱っていた。オレもウカウカしてられん。更なる修練を積むぞ』
『その意気だ。まだ部族長は二匹残ってるんだからな』
『このままりゅう族統一を目指すか? アキラも案外血の気が多いな』
『確実にお前に感化されたんだろうよ』
『言ってくれる』
どこか皮肉を言い合いながらも、戦友みたいなやり取りで和やかに語り合う。憎まれ口を言い合うまでには仲良くなったか。
やっぱり大塚君に任せて正解だったな。
<コメント>
:嘘です、その人たち見てました!
:いけしゃあしゃあと言いよる
:二枚舌の持ち主か?
:実際に二人ずついるからな
:そう言うことか!
「これでこのままよいしょしとけばなんとかなるかな?」
「いや、コアは意外と勘が鋭い。お前はそれでいいかもしれないが、その分俺が頑張る感じだ」
「じゃ、あとは任せても?」
「それでいい。俺はオービルとやらのご機嫌取りはできないからな。ただ、コアが勝利を収めたんだ。何個か卵を産んでやれよ?」
「むしろ日課じゃん?」
「それもそうだな。じゃあな、俺は流石に二つの体を同時に操れない。精神の行ったり来たりで精一杯だ」
そう言って、大塚君は解説役から降りた。
まぁ向こうがグダグダだと僕の方の計画も成り立たなくなるし。あとは頼んだ。
<コメント>
:勝っても負けても卵を産む日常が待ってるのか
:景品とは?
:相手のやる気を出させると言う意味では該当してたやろ
:それもそう
:イケドラも普通に優秀なんよな
:実際、この人がナワバリでこの子のお世話してなかったらやばかったんよな
:コアちゃんな
「正直、コアパパの意識を逸らし続けるのって油を被って火の輪くぐりをしろってレベルの自殺行為だったんだけど、見事やり遂げてくれた彼には足を向けてねらんないんだよね。インド救出以前に、地上壊滅の方が目算高かったから」
<コメント>
:それを言われると
:インドは先輩を見習ってどうぞ
:それなー
「それは言ったところで仕方なくない? 誰だって大規模侵攻を仕掛けられるなんて思ってないでしょ。僕が助けるかどうかは、まぁあの時は立場が弱かったから従ったけど、もう次はないよ。そう言う意味ではインドは運が良かったよね」
<コメント>
:あれで運が良かった?
:国一つ乗っ取られて戦犯扱いされる未来が待ってたからな
:なんなら全ての責任を負うまで決まってた
:それを紙一重で先輩が助けたんだよ
「感謝の言葉は今まで一言ももらってないよ。やって当然だって感じ。だから次は当然ないよね? 国の代表としては、舐めてくる相手に従う理由はないし。それをしたら子供達に舐められちゃうしね」
「もう受付は締め切ったので今更遅いと言うやつです」
<コメント>
:あーあ
:インド終わった
:国王、あんたやっちまったな
:正直、侵略勃発から数時間でカタがつくとは思わんじゃろ
:強気に出たのが裏目に出たな
:先輩を一般枠でくくっちゃダメって知ってたでしょ
:先輩に常識を期待する方がどうかしてる
:転移陣様々
:ここで感謝するのは先輩の頭脳なんだよな
:その時点で11人いなかったら多分達成されてない定期
:あとイケドラの素材な
:それなー
「偶然が重なったことだよ」
そう、全ては偶然。
偶然僕が11人に分裂していて。
父さんの肉体を解析するのにりゅう族の研究をしてて。
インドの襲撃とは別に大塚君をRTAさせてて。
添い寝杯開催で戦力が集まってた。
僕の権利で動かせる技術とコマが集結してた。
そのどれもが揃わないだけで、インドは地図上から消えててもおかしくない。
だから運が良かったとした。
けどリスナーはそうは取らない。
まぁいつものことさ。
勝手に僕の裏を読んで僕のせいにするまでがセットだからね。
こう言う時こそ秋生のちくわ大明神の出番だと思うんだけど。
今は不在みたいだ、残念。
「さて、だいぶ話が横に逸れたが、問題はここからだよ。地上の利権争いに僕は関与しないし、ダンジョン事業にも関与しないと前もって発表したからね。その代わり、ダンジョンを少しでも安全にするために勢力を掌握する必要があるんだ。ここまではわかるかな?」
<コメント>
:毒霧ドラゴンを丸め込むんですね?
:どうしてダンジョンの縄張りを分けて統治してるんやろな
:それ、どうして?
「僕が知ってるわけないじゃない」
<コメント>
:先輩でも知らないのか
:あまり話してくれない感じなのか
:コアちゃんのことだから何も知らないまである
:野生の勘か
:単純に相性の関係で決着つかなかったとか
:それはありそう
:ドラゴンは生まれた時から闘争本能高そうだもんな
:ムカつくから殺す、で動いてそうなのがドラゴン
:ひでー解釈
:野生動物だいたいそれでは?
:変に会話できる知能があるだけ厄介って意味だよ
「何はともあれ、聞いてみないことにはね」
意識をスペアに宿しつつ、選手控え室に赴く。
『お姉ちゃん』
『巫女はんか。あんなに煽ったあいた相手に負けるんは悔しいなぁ』
『お姉ちゃん、その割にはどこか晴れ晴れとしてるね』
『あんさんには見抜かれてしまうか。正直疲れとったんや。うちらりゅう族と言うの意地の張り合いでここまで勢力を伸ばしてきた。最強の種族という自覚は当然あったが、偉大な創造主様がそういうふうに作りはったのも大きいと思うわ』
<コメント>
:創造主?
:なんだ、何か重要なワードのように思える
:もしかしてダンジョンて、もっと神聖な存在だったりする?
『これで命が継がれていく。ダンジョン種族っていうのは難儀でなぁ。巫女はんにもいずれわかる時がくるわ。弱肉強食というルールの中では負けた相手は喰われるのが定め。あのカスに能力を奪われるのだけは癪やけど、これもルールやしなぁ』
『お姉ちゃん、いなくなっちゃうの?』
『そうや。いや、おかしいな。いつまで経っても意識が薄れん。これはどういうことや? 創造主様が手を抜いたなんてことはありえんはずや。うちらりゅう族は殺し合い、かった方が負けたんを喰らい意志を引き継ぐ。そういうルールや。なんでうちは消えとらんのや?』
<コメント>
:あっ、もしかしてこれ
:血が本体なのってそういう?
:嫌な寄生生物だな
:喰らわせるまでがセットで血の濃い奴が主導権を乗っ取るのか
:それで最強の生物を作り上げると
:ただの蠱毒で草
:全然笑えんやろ
:創造主は害悪で証明完了されたわけですが
:先輩はどうする感じ?
「んー、ちょっと想像してたのと違う感じで引いてるけど。これ、僕が偶然肉体乗っ取ってなかったら血みどろの争いになってたよね?」
<コメント>
:偶然、ね
:先輩その言葉好きだね
:で、その偶然がなかったらどうなってたの?
「確実に弔い合戦が起こるよね。ボスが食われるっていうのはそういうことじゃん? 部下たちが黙って勝者に従うとは思えない。なんなら抵抗されたのちに食われるまでがセット。血を引き継ぐってそういうことじゃない?」
<コメント>
:あっ
:それで時と場合によっちゃ戦場が地上になることも?
「なくはないってだけだよ。でもどうしようかな。僕としてもお姉ちゃんは話し相手として有用だ。ここで失いたくはない。どうにかして丸め込みたいところ。後輩、何か代案ある?」
「いっそ、全て打ち明けてにゃんにゃん王国に来てもらったらどうです?」
「うーん、それをしたら逆上して襲いかかってこない?」
「いえ、それはないですよ。だってオービルさん、この戦いに疲れていて、戦いに赴くのはむしろ仲間を守るためって感じじゃないですか。そこでにゃんにゃん王国の特性を話せば……これからの戦いは死んでも取り込まれないスペアボディでの参戦。相手は満足し、一族は維持できる。オービルさんにとっては願ったり叶ったりでは?」
<コメント>
:ほんまや
:その上でにゃんにゃん王国は国力増強も叶うと
:でもそれでも牙を剥いてくる可能性もあるけどな
:りゅう族の誇りか
:ダンジョン種族、それも誇り高いりゅう族だとな
それでもやるだけやってみよう。
もし後輩の言う通りなら、僕らにとっても都合がいい。
それにダンジョンに詳しいオービルさんが仲間になってくれたら色々動きやすいし。
そしてスペアボディの僕はプラカードを取り出した。
そこにはデカデカと『ドッキリ大成功』と書かれている。
『巫女はん?』
『ごめんね、お姉ちゃん。これは僕がサプライズした試合だったの。コアパパには負けちゃったけど、本体は無事だよ』
『そんなはずあらへん。確かに心臓を食われた感覚があった。肉体を食われて魂が無事なはず……いや、思えばここに来てからおかしなことばかりやった。あんさん、何者なんどすえ? ただのりゅう族ではない。何かわからん力が流れてきよる』
『そうだね、そこから話さなければならないかな。僕は正真正銘コアを父にもつりゅう族の子供だよ』
『にしては、随分とさまざまな気配を宿しとるように見えるなぁ?』
『それも正解。僕は卵として生まれた後、嫁に来ていたにゃん族によって卵のまま地上に運ばれた。僕はそこで人間として育った』
『そうか。いや、でもそれでも答えにはなっとらん。サプライズもそうやけど、この状況に説明がつかん』
『そうだね。それに関しては詳しくは言えないけど、僕はオービルお姉ちゃんの味方になれると思う』
『爆炎竜の巫女なのに、毒霧竜の味方に? 冗談も休み休み言いなんし。生まれが違えば生き様も違う。賢いあんさんやからうちのとこで暮らしていくのは厳しいと、そう理解しとるやろ?』
それは確かに。
寝息や呼吸で神経毒がばら撒かれる環境。
一般人お断りだ。
おかげでダンスにもキレがないと、そう言われてしまった。
だからこそ、僕は毒霧竜の巫女のダンスコーチに就任。
寝転がって口を動かすだけの立場を得たのである。
体は動かなくても、口はよく動いたからね。
『それを厳しくない状態にさせるアイテムがあるんだよ。それで今、お姉ちゃんとコアパパの精神を分裂させて、そっくりなボディに移し替えてる。本来の肉を喰らい、魂を乗っ取るボディはここにはないんだ』
オービルお姉ちゃんはそこで目を丸くする。
そして何やらぶつぶつ言った後、こっちを凝視してくる。
『あんさん……何者や? 創造主の敵対者。他のダンジョンの手のものか? 返答によっちゃ、生きて返せんことになるで?』
『いいや、僕は確かにここのダンジョンで生まれた個体だよ。ただそうだね、突然変異。みんなからはそう言われてる。外の世界、地上において僕の頭脳は一番らしいからね。だから精神を分裂させて同時に動かすこともできるし、お姉ちゃんとコアの方で同時に会話もできる。ここにコアパパがいないように、向こうにとってオービルお姉ちゃんがいないダンジョンを構築することができるんだ』
『なんや、その出鱈目な力。創造主を超えとる』
『僕はその創造主に全く興味はないんだけど、そうだね。僕のやりたいことを邪魔してくるんなら、対策は考えるよ』
『創造主に、逆らうと言うのか?』
そんなことができるのか?
オービルお姉ちゃんの表情が目まぐるしく変わる。
勢力は確かにここのダンジョンの所属だ。
だが創造主に逆らえると言うのはあり得ないことだとどう目している。
永遠に思えるほどの沈黙の後、お姉ちゃんは吹き出すように笑った。
『ぷっ、くくく。あんさん、なかなかの肝っ玉やなぁ。ただの巫女やない。いや、みこに収まる器じゃなかったか。ええやろ。ここはあんさんに従いましょ。うちら毒霧竜は今日からあんさんの客人や』
『そこはしたがってくれない感じなんだ?』
『アホいいなはれ。従えたいんだったら力で証明せんと討ち勝てんと従われんで。長を張ってる身。軽く扱われたら下に示しがつけへん』
『まぁ、それくらいなら全然。じゃあ僕のお城を紹介するね』
パチンと指を弾く。
それだけで景色が、視界の高さっが変わる。
さっきまでのりゅう族のボディから、今はニャン族のボディに置き換わったためだ。
『なんや?』
『今お姉ちゃんには脆弱なにゃん族のボディに入ってもらってる感じだね。そしてこっちが僕の本体のいる場所だよ。僕の名前は槍込聖。槍込真栗を母に持つ、爆炎竜コアの子供なんだよね。でもなぜか、今はにゃん族として暮らしてる』
『脆弱な個体に身を忍ばせて、ずっと復讐の機会を疑ってたんか』
『機会というか。僕たちのような存在は非常に不安定で、りゅう族にとっては取るに足らない存在。けど、僕たちだって生きてるんだよね。でも地上人とは仲が悪い。そこで僕はダンジョン種族が安心して暮らせる国を作った。にゃんにゃん王国という国さ。にゃん族が全面に出てるけど、ゆくゆくはダンジョンそのものを掌握する気でいるよ』
『あっはっは。まいったわ。巫女はん。あんた立派なタマや。付き合いを考えさせてもらいましょか』
『客としての発言を取り消す感じ?』
『いいや、うちも創造主に一発打ち喰らわしたいと思ってたんや。あんさんのところにいればその機会が巡ってくるってことでっしゃろ? なら従う方が近道やわ。それに、うちの子達の安全も確保してくれるんやろ?』
『それはもちろん』
こうして、にゃんにゃん王国では、正式に毒霧竜を配下に加える形になった。
これにて五章は完結。次は10月くらいですかね