限界社畜おじさんが、猫耳Vtuberになって世界をかわいく征服する   作:双葉 鳴

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ギリギリアウト

「こんにちは、初めてお目にかかる。僕は槍込聖と言うものだ。普段からこの子と共に活動を共にさせてもらっている錬金術師だ」

 

「お前がうちの妹を誑かした詐欺師か? よくものこのこ顔を出せたものだな!」

 

 

 詐欺師とか言われた。

 ちょっとショック。

 

 

「兄さん、先輩に向かってなんて口の聞き方! この方は錬金術師界の未来を背負う方なのよ!」

 

「そんな誇大妄想をまだ信じているのか? 落ちこぼれのお前が幸せになるためにはお金を持ってる相手に嫁ぐ以外無い」

 

「お金ってそんなに大事?」

 

「生きていくためには必要さ。それにお前が嫁ぐ事で望月家を救う事になる。光栄な事だろう?」

 

 

 なんと言うか会話が一方的だよね。

 普段後輩がああも一方的なのは、こう言った家庭環境で育ったからなんだろうね。

 それがよくわかる内容だった。

 

 ヒートアップする討論の横で、僕は錬金術師らしく錬金を行う。

 

 さっきから僕のことを詐欺師だの誇大妄想だの言う相手には、実際に作って見せた方がいいと思ったからだ。

 

 まずはポーションから。

 全部品質Sを作るぞー。

 燃えてきた!

 

 時間にして数十分。

 テーブルに積み上げられていく高品質薬品類に目を見張るお兄さんと後輩。

 品質を鑑定して驚きの声を上げる。

 

 

「なんだこれは! これが、こんな事があるのか?!」

 

「ふふん、どう? 先輩は詐欺師でもホラ吹きでも無いわ! ただ要領が悪くて出世とは縁遠いだけの錬金術バカなの!」

 

 

 ねぇ、それ僕のこと暗に(けな)してない?

 作業の手を止めてジロリと後輩を睨む。

 

 いくら鈍感な僕とは言え、なんでもスルー出来るほど鈍くないからね?

 

 

「だから日本では無名だったと言いたいのか?」

 

「先輩は先ほども言ったように出世に全く興味がないの! でもね、遊びで作ったレシピを一度配信で出してみた。世間はどう反応したと思う?」

 

「配信で? あんなの貧乏人が小銭を稼ぐためのものだろう?」

 

「そうね。普通はそうだわ。けどね、先輩のレシピはたった数ヶ月で登録者数1億人を突破し、投げ銭で億を稼ぐほどの人気を博した。むくみ取りポーション。この名前に聞き覚えはある?」

 

「知ってるとも。その薬品を作れないのかって事業部にも何度か要望が来ている。他メーカーでも制作難易度が高くてお手上げと聞くが……まさかそのレシピの出所は、彼か?」

 

「そうよ。それも在学時からすでに完成させていた。この意味が分かる?」

 

「制作難易度50を大学に通っていた時点で達成していた? そんな馬鹿な!」

 

 

 達成していたのは50じゃなくて90だけど、後輩はどうやらまだまだ追い込むつもりらしい。

 僕は下手に口出ししないでおこう。

 

 

「はい、むくみ取りポーション。こんなものが世の中で爆売れするんだから世の中わからないよねぇ」

 

 

 なんてことなく作って品質S。

 テーブルには薬品がところ狭しと置かれている。

 まだまだ作るぞー。

 

 

「お前はこの薬品の価値がわかっているのか!? こんなもの!? なんでそんな言葉が!」

 

 

 激昂するお兄さん。

 いや、僕にとって取るに足らないものだけど?

 大丈夫、カルシウム足りてる?

 

 

「落ち着いて、兄さん。先輩にとって取るに足りないものよ。熟練度330にとって制作難易度50とはそう言うものなの。兄さんだって熟練度30の時、制作難易度1のポーションをどう思った?」

 

「それとこれとは価値が……いや、同じなんだな? 彼にとってむくみ取りポーションとは、私にとってのポーションと同義。そう言うことか?」

 

「そうよ。先輩を兄さんの物差しで測るのはやめてちょうだい!」

 

「それは済まなかった。しかし彼の凄さは分かったが、お前は彼とはどういう関係なんだ? 一緒に同居しているとは聞くが、男女の仲は感じられん。そこのところはどうなんだ? 彼とは今後そういう関係を築く予定はないと?」

 

 

 僕のこの格好を見たら誰でも男女の関係はないって丸わかりだ。

 成人済み男性32歳の姿か、これが?

 

 自分でもよくわからなくなってきた。

 

 

「浅いわね、兄さん。私たちをそこら辺の有象無象と同列に扱わないでくれる? 先輩は一般の男性の枠にとらわれない存在、すなわち神として崇拝すべき対象よ!」

 

「その割には崇拝すると言うよりお前の性癖を押し付けてるように思うが?」

 

 

 正論である。

 後輩に20ポイントのダメージ。

 だが表情には出さずに次の言葉を投げかけた。

 つよい。

 

 

「うっ、だってだって! 先輩ってすごく可愛いのにズボラでガサツなんだもん。私は生まれてくる性別を間違えてきたんじゃないかって、そう思ったの」

 

「だからと言って無理やり趣味を押し付けているんじゃないか? お前は昔から私の私物に独自のアレンジを効かせた服を着させていたな? あれは相当に不快だったぞ?」

 

 

 後輩……君のその押し付けがましさは昔から筋金入りだったのか。

 お兄さんもその身勝手さに懲り懲りといった感じ。

 

 これはどうやら後輩の言葉だけを鵜呑みにするのも危険だぞ。

 そこで僕から提案した。

 

 

「それはそうと、後輩と僕の関係はわかったと思うが、お兄さんは会社を立て直す案とかあるの? ただ融資してもらいました! だけじゃ無駄にお金だけ使いそうで不安なんじゃない?」

 

「痛いところをつく。だが抱えている社員を食べさせる為には上に立つものは盤石でなくてはならん。不安そうな顔をしたら、誰がその元で働きたいと思うのか」

 

「それがたとえ砂上の楼閣でも?」

 

「先祖代々続けている稼業だ。私の代で潰えては家の恥。私に繋いでくれた両親に申し訳が立たない」

 

「だから後輩を融資先に嫁がせて場を繋ごうと?」

 

「私自身、石を投げられるくらいの覚悟は持っている」

 

 

 僕のこと言えないくらい、この人は頑固で不器用だ。

 大塚君に通ずるものがある。

 やはりカリスマ性を持つには多少の尊大さも必要か。

 

 

「それじゃあさ、うちのチャンネルとコラボしてみる?」

 

「コラボというと?」

 

「まだ未公開のレシピがあるんだけど、それの優先販売権を望月グループに提供する。僕のチャンネルは言わずもがな錬金術師の為のもの。規模が大きくなりすぎてコラボする相手も多少選ばせていただいてる。後輩は実家に対して並々ならぬ感情を抱いているけど、これも何かの縁だ。僕としても彼女を奪われると困ってしまうので、これで手を引いてくれたら助かる」

 

「そんな、口約束で決めてしまっていいのか? 何億もの金が動くコラボなのだろう?」

 

「兄さん、先輩はこういう人なの。過去のレシピに興味は持たず、先へ先へ行く。それがどれほどの利益を出すとか、どうでもいいの」

 

「ふふふ、フハハ。私はそんな相手に醜く嫉妬していたというのか?」

 

「ね、相手をしてると馬鹿らしくなるでしょう?」

 

 

 ねぇ、さっきから後輩はどっちの味方なの?

 

 あんなに喧嘩してたのに僕を通じて仲良くなってる。

 家のしがらみもあって不仲だったけど、僕があまりに非常識だったのか小さなことで諍い合うのが不毛だと気づいたようだ。

 

 よかったよかった。

 果たして本当によかったのか?

 結果僕だけ詰られてる気がするんだが……

 

 

「と、言うことで一件落着。僕は帰るね」

 

「この薬品類は置いていくのか?」

 

「そうだね、荷物になるからあげる。何か聞きたい事があるのなら後輩を通じて連絡ちょうだい。あなたとはこの子の苦労話で会話が弾みそうな気がする」

 

「では土産話を持っていくつか議題を持参しよう」

 

「もう! 先輩。私の過去のことはどうでもいいじゃないですか!」

 

 

 いや、大事なことだよ。

 何をして君がそこまで歪んだのか、非常に興味がある。

 

 僕が君と同棲する上で非常に重要なファクターだ。

 正直僕は君のこと何も知らないからね。

 

 

「と、言うわけで日程詰めておいてね。それとこれ」

 

 

 サササッとメモに走り書きしたカリキュラムを手渡す。

 

 

「これは?」

 

「コラボする上でそちら側に上げて欲しい熟練度と、その過程をショートカットするレシピ。今いくつあるのか知らないけど、うちのリスナーを唸らせるにはこれくらい必要だから」

 

「熟練度80!?」

 

 

 ちょっと想定していたものより高かったかな?

 でも頑張って欲しい。

 

 

「ちょうど公開してるレシピと同等くらい、ようやくその域ぐらいでしょうか?」

 

「勉強熱心な人たちはその上くらいかな?」

 

「トールさんのところの錬金術師、ローディック師辺りは既に100に至ってますもんね」

 

「なんでここで各界隈のトップの名前が出てくるんだ?」

 

「うちの視聴者、日本に収まらず海外も含めて1億人なのよ。そもそも錬金術師専門チャンネルで1億人も集められるわけないでしょ?」

 

「それも……そうだが、うむ」

 

 

 何やら先程まで希望に満ちてた顔がどんどん曇っていくね。

 

 

「別に錬金術師だけじゃないよ。Sランク探索者や鍛治師、ゲーマーまで網羅してる。だからこそレシピの開示と同時にコラボする相手はこちらにも選ぶ権利があるんだ」

 

「一回目はSランク探索者のアメリアさん。二回目が各生産界隈のトップ陣営とSランク探索者によるSSランクダンジョンタイムアタック。で、3回目が兄さんの会社と考えればお粗末なものには出来ないのよ」

 

「なんか急に胃が痛くなってきたな」

 

「まぁそう焦らないで。コラボの時期は急ぐものでもないし。うちのチャンネルは閲覧自由だから社員と一緒にお勉強をするでもいい。ちょっとした縁があってコラボすることになったと打ち開ければ皆頑張ってくれるさ。中間レシピに至ってはまだどこにも出してないし、品質が良ければ魔導具技師が欲しがる代物だ。売却すれば一財産築ける。とは言え、数億程度。会社を建て直そうと言う気概を持つあなたがその程度で満足するわけもない」

 

「…………」

 

「これは、それで十分凌げるって顔ですね」

 

「夢がないなぁ。もうちょっと上見ようぜ? 日本でトップになって、僕の見る目があったと自慢させて欲しいな。身内のコネでトップ取ったってなんの自慢にもなりやしないだろ?」

 

「グハッ!」

 

「シッ、先輩。その言葉は兄さんにはダメージが大きすぎます!」

 

 

 まさか今いる地位はコネで着いた? だったら悪いこと言っちゃったな。

 

 仲良くしたいのに早速溝を作ってしまった。これでは後輩の悪意に立ち向かう仲間を得る算段が潰えてしまう。

 

 

「と、まあ僕たちは例のコラボが原因で当分配信できない身の上だ。そっちの熟練度上昇に合わせてコラボしよう。ではまた!」

 

「その時までに熟練度上げておいてくださいねー」

 

「ヒカリは……すでにその域にまで届いていると言うのか?」

 

 

 後輩は勝ち誇った顔でふふんと鼻を鳴らし、僕と一緒に転送陣に入った。

 で、拠点に帰るなり、必死に熟練度上げに勤しむ。

 

 なんて言うか、似たもの兄妹だなぁと思う。

 

 

「そういえばキミ、熟練度80くらいなかったっけ?」

 

 

 熟練度50以上あるのは把握してる。

 狙ってむくみ取りポーションを作り続けてきた子だ。

 それ以下ということもないだろう。

 

 

「82ですね」

 

「じゃあなんで今必死に向き合ってるのさ」

 

「もし兄が80まで上げた時、私の熟練度を聞いてくると思うんです」

 

「うん、それが?」

 

「その時私の熟練度が低かった場合、十中八九煽ってくるのが目に見えます。いえ、あの兄なら必ず煽ってくるでしょう。そうならない為に今のうちに100まで上げたい。そう思いました!」

 

「よくわかんないけど、絶対に負けたくない相手……ライバルみたいなものか」

 

「違います。絶対に討ち倒す邪智暴虐なる王です」

 

 

 熱意に燃える後輩。

 そんなにお兄さんのこと嫌いかー。

 嫌いだからこそ邪険にしているんだろうけど。

 そりゃ仲も悪くなる。報復の仕方が陰湿だ。

 

 

「それはそれとしてさ」

 

「はい」

 

「自分の嫌なことを押し付けられてどう思った?」

 

「えーと、もう二度と顔も見たくないなって」

 

「僕もね、キミに若干近い感情を抱いてるんだ。もちろん、ある程度は妥協してるけど、服を全部作り替えるのはやりすぎじゃない? 僕も僕でキミに頼ってたところはある。というか衣食住はほぼキミに頼りぱなしだった。僕は錬金術さえやれたら良い、そう考えていたがここらで一つ線引きをしようじゃないか」

 

「私と別居したいと!?」

 

 

 途端に取り乱す後輩。

 この世の終わりみたいに瞳から光が消え、膝から崩れ落ちる。

 大袈裟だなぁ。

 

 

「違う違う。お互いに依存しすぎな生活を卒業しようということだ。正直、僕自身のセンスが悪いのは認めるよ。それと僕の顔が女性的なのも、渋々だが認めよう。けど女装の押し付けは勘弁してもらいたい。ただそれだけだ」

 

「今更ですか?」

 

「今更だろうともだよ。特に今回はいい機会だ。キミにとって勝手に婚約者を決められるくらいに、僕に取って女装は避けたい事態だと思ってくれたらいい」

 

「…………………………わかりました」

 

 

 随分と長い沈黙の後、後輩は項垂れるように僕の提案を飲んだ。

 これで私服が捨てられることはなくなった。

 FOO! 今日は宴だ。

 

 

「そして僕は新たにフォースジョブを取得した」

 

「え、いつの間に?」

 

「君が実家に帰ってる間にだね」

 

「え、留守番してくださいねって、了承の返事も聞きましたよ?」

 

「すぐに飽きたんだ」

 

「まったく! それで何を取得したんです?」

 

「戦闘」

 

「え?」

 

「僕、新規に探索者として現場の空気を感じようと思って登録したの。ほら」

 

 

 ライセンスには女装してピースサインをする僕の顔写真が写っている。

 

 

「えっと……探索者ライセンスでは女装されてますが……」

 

「うん」

 

「その、女装はしたくなかったという話じゃ?」

 

「もう登録しちゃったから、探索中は女装するよ? でも大丈夫、一緒に探索してくれる子には僕はおじさんだって告白したから」

 

「それ、ただガードが固い女の子の常套句ですよ? 中身おじさんだから恋人募集してませんみたいな」

 

「いやいや、相手中学生だし」

 

「余計性癖拗らせちゃいますよ! 何やってんですか!」

 

 

 後輩はお怒りモードである。

 おかしいな。

 てっきりフォースジョブに戦闘を取ったことを咎められると思ったのに、全く別のことで咎められてる。

 解せぬ。

 

 

「ほら、新しく配信も始めたんだ。その子のお母さんが病弱で、中学生なのにお小遣い稼がなきゃいけないみたいで、僕もお手伝いしたくなっちゃって」

 

 

 後輩に配信チャンネルを見せる。

 それを見て後輩が怪訝そうに眉を顰めた。

 

 

「あれ、この子?」

 

「ん? 後輩の知り合いの子だった?」

 

 

 顔が広いのは知ってたけど、一体どれだけ網羅してるのか怖くなってくる。

 僕は記憶力最悪だからな。

 ほとんどの記憶領域を錬金術に使ってるので、人の顔を覚えるのがダメなんだよね。

 

 

「大塚さん、居たじゃないですか。大手製薬の先輩のご同僚の」

 

「ああ、大塚君。今も要領よくやってるかなぁ?」

 

 

 ハイポーション部署のエリート研究員だったもんね、彼は。

 

 

「この子、大塚さんの息子さんですよ? 社内のバーベキューの時に奥様と一緒に挨拶回りされていたのを覚えてます」

 

「え?」

 

 

 社内バーベキュー?

 何それ僕知らないよ?

 それよりも同年代の同僚のお子さんがもう中学生?

 

 時の流れの速さを感じながら、認められない事実から目を逸らす。

 

 

「先輩、呼んでもこないから多分自動的に名簿から外されたんだと思います。呼んだところできっと錬金術以外の話をされないだろうし、気持ち悪がられるという意味でも外されたんでしょうね、お可哀想に」

 

「勤務時の僕は錬金バカだったからね」

 

「今もですよね?」

 

「今はどうかな? ちょっと壁に突き当たっている。コラボをすればインスピレーションが湧くと思ったんだけど、そんなにうまくはいかないみたいだ」

 

「あの先輩が錬金術に詰まった!? 明日は世界の終わりですか!?」

 

「何それ。僕だって錬金術以外のことくらい考えるよ?」

 

 

 疑いの視線をかけられた。

 ねぇ、君ってたまに僕にとっても失礼な態度取るよね?

 

 

「そうですか。それで探索者をやられたと」

 

「うん、そこでいくつか思いついた案があってさ」

 

「案ですか?」

 

「うん。制作難易度80以上必要なレシピなんだけど、正直熟練度上げ以外の需要しかなくてね。それで、もし作ってくれるんならそれを低ランク探索者専用アイテムとして組合に掛け合ってくれたら嬉しい」

 

「それが、先輩のためになる?」

 

「うん……君の提案する女装も、僕の戦闘スタイルに合うなら装備するのも吝かではない。いっそそういうブランドでも立ち上げたら? お金の使い所だよ? 稼ぐだけ稼いで使わないとめくじら立てる人っていっぱいいるじゃない? 特に日本の探索者からはヘイト買ってるし。還元しどきだと思えば……どう?」

 

「日常では女装はNGだけど、外出中の女装はOK?」

 

「違う違う。探索以外で女装する気はないよ。あくまで聖夜リコで活動する時に女装する感じ」

 

「その上で、私の熟練度上げ用アイテムを駆け出し探索者用アイテムとして流す……会社はちょうど買収出来そうな物件がいくつかあります。今すぐに生産とは行きませんが。先輩はどれくらいの期間探索者をやられる予定ですか?」

 

「うーん、細かく決めてないかな? 秋生君が立派に独り立ちするくらいまでバックアップはするつもりだけど」

 

「わかりました。アイテムはそこまで急がなくて良さそうですね。問題は先輩の装備品ですが、そっちはコーディさんかドリィちゃんに要相談ですね」

 

 

 よりによってその人達に回すか。

 引き受けてくれるかなぁ?

 

 みんな忙しいから無理じゃね?

 コーディさんは金積んでも仕事引き受けてくれなさそう。

 

 逆にドリィちゃんは金で靡きそう。

 落とすならそこか。

 

 

「しかし先輩、私に内緒で行動したのに女装で探索者登録とはやりますね! すっかり女装を気に入っちゃってるんじゃないですか?」

 

「そんなわけないだろう。まぁ、視線には鈍くなったのはある。それに女装しながら男物の服って買いずらいだろ?」

 

「え、じゃあどうやって男物の私服を買うつもりなんです?」

 

「通販」

 

「まぁ、それが妥当ですね」

 

「だろ?」

 

「先輩に合うサイズがあれば良いですけど。私が用意したのは殆どオーダーメイドですからね」

 

「え?」

 

 

 道理で初めて着るのにぴったりなわけである。

 待って、いつの間に採寸とったの?

 

 僕覚えないんだけど。

 数日寝てない時とかもあったよ?

 寝落ちした時、いつの間にかお風呂に入ってた時?

 

 その可能性はあるか。

 恐るべし、後輩。

 

 まぁ良いか。

 明日着てく服を選ぶとする。

 

 オーダーメイドというだけあって、クローゼットには僕に似合うフリフリのスカートがたくさん並ぶ。

 

 流石に今日の配信で痛感したが動き回る都合上スカートは無し。ちょうど短パンがあるが、トランクスと非常に相性が悪い。

 

 そこで太もも周りをしっかりガードしてくれるスパッツを発見した。

 これは良い!

 

 あとはインナーにシャツ……は流石に無防備すぎるからスポブラ。

 その上にブカブカのブラウスで肌面積をガード。

 

 あとはベルトを巻いてブラウスを補正すればヨシ!

 どこに出しても恥ずかしくない探索者だ!

 

 

「ちょっと先輩、ストォオップ!」

 

 

 姿見の前で前後をチェックしてる時に後輩からお声がかかる。

 

 

「なんだよ? 布面積の多さに問題でも?」

 

 

 魔導銃は腰のベルトにぶら下げ、変えの弾丸は太もものベルトに巻き付けてある。しゃがんだ時に銃弾を入れ替えられるって寸法だ。

 

 

「違います。ブラウスがオーバーサイズすぎて下に何も履いてないように見えます。直接太ももはヤバすぎます!」

 

「短パンは履いてるぞ? スパッツで二重ガードだ! フハハ」

 

 

 ブラウスをたくし上げる。

 ただそれだけなのに後輩は恥ずかしげに顔を赤く染めた。

 

 

「逆にエッチになってるんですよ。男の人って想像力豊かだから、見えないと余計に妄想を掻き立てられるんです。先輩にその気がなくても、もうガン見ですよ」

 

「なんで君がそんなこと知ってるの?」

 

「ネットで調べました」

 

「……そう」

 

 

 余り深く突っ込まないほうが良さそうだ。

 それ以上覗くと、後輩の歪んだ性癖に踏み入るようなもんだからな。

 あまり知りたくない。

 

 

「じゃあどこが問題なんだよ」

 

「腰のベルトに魔導銃括りつけてますよね?」

 

「うん。ホルスターとくっついてるから自ずと」

 

「それ、取り出すたびにスパッツがチラチラ見えるんですよ」

 

「それが?」

 

「わかりませんか? 思春期の男の子は先輩のブラウスの中身が気になりすぎて探索どころじゃなくなってしまうんです!」

 

「それはないでしょ」

 

「ありますよ! 良い加減自分の可愛さに気づいてください!」

 

「顔がいいからもっと気をつけろと?」

 

「そうです」

 

 

 仕方がないのでオーバーサイズのブラウスは辞めた。

 普通に肩の出るタイプのブラウスを着てったら秋生は目を逸らした。

 どうやらこの程度でもアウトらしい。

 

 女装のコーディネートの難しさを痛感しながら、僕達はダンジョンへと向かった。




性自認男なのになんで女装のコーディネートで悩んでいるんですかね(ボブは訝しんだ)
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