限界社畜おじさんが、猫耳Vtuberになって世界をかわいく征服する   作:双葉 鳴

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お膳立て

 

 プレオープンは内々に済ませ、ざっと内容を共有。

 今日ここでプレオープンを開いたのは、とある仕掛けのためだったという。

 

 ねぇ、事後報告やめて? 

 僕何も聞いてないんだけど。

 

 

「よくこの日までにこんな仕掛け用意できたね。しかもこれ、全部この系統? 使うのに勇気いるなぁ」

 

 

 いつの間にか用意されてた装備系統。

 制作にコーディさんが関わってる時点でEランクが扱うには早すぎる。

 あの人の商売相手はA〜だろうし。

 

 そのうちの一つ、にゃんにゃんソードを手に取る。

 

 柄の底に肉球。ポップでキュートでラブリーな剣だ。

 ふざけてんのか? と言う感想がまっ先に思い浮かぶ。

 

 

「先輩が使う前提のイメージです」

 

「そう思うと普通に嫌だな」

 

 

 魔導銃も当然その構造だ。

 丸みを帯びてて、ショッキングピンクで、キラキラしてる。

 アメリアさんのデフォルメされた顔がついた武器だ。

 

 ゲームとかで出てくるふざけたタイプの物に近い。

 

 とうもろこしとか、カットされたスイカとか、漫画肉を模した武器とか、そういう系統の。

 これで高性能だというのだからちょっとした罰ゲームだ。

 

 使用者のことなど微塵も考えない傲慢さが窺える。

 後輩が関わってる時点で、分かっちゃいたが改めて酷いな。

 

 

「まぁ、サイズは自動調整されるので、あとは覚悟を決めるだけですね」

 

「これが似合うのは女子中学生くらいまでだろ」

 

『年齢とか関係ある? センパイに似合うっていうのは褒め言葉だよ』

 

 

 アメリアさんは僕が着て似合うなら十分だと笑う。かわいい。

 後輩も可愛いが、彼女の可愛さとはまた別の純粋さがある。

 

 腹黒美少女と無邪気系美少女。

 そこに挟まる女装おじさん。

 言ってて悲しくなってきた。彼女らにとっては僕もまた愛でられる対象なのだ。

 

 男らしくなりたい! という願望はいつか叶えられるのだろうか?

 

 

「一応褒め言葉として受け取っておくよ」

 

『いひひー』

 

 

 アメリアさんが着てもまぁまぁ似合う。

 褒め合いっこは程々にしてサービスの価格表を見ていく。

 

 ここに購入回数に応じて肉球スタンプが押されると聞いた。

 たくさん買わせる寸法だ。

 商売が上手いな。

 

 押された回数によってサービスがついてくるのだ。

 僕が経営者だったらまずそこまでは思いつかない。

 

 さすが元広報課。

 頼りになるね!

 

一般販売購入価格

傷ぐすり(切り傷・毒消し・麻痺消し各10枚入り) 500

★あっちいけ玉(10個入り) 1万

★ あっちいけ矢(30本) 1万

★あっちいけバレット(弾丸:100発セット) 5万

どこでもデリバリー(ご飯セット) 1000〜

どこでもシャワー室(貸し出し券) 1000

どこでもホテル(利用権) 5000〜

 

Fランク購入価格

にゃんにゃんイヤー(貸衣装) 1万

にゃんにゃんメイド一式(貸衣装)5万

にゃんにゃん執事一式(貸衣装) 3万

にゃんにゃん装備なりきりセット(F)スタンプ必要個数

ポーションセット(贈呈)一人一回のみ5個

ネコしっぽ(贈呈)かわいい!10個

 

Eランク購入価格

にゃんにゃんソード(利用権) 5万

にゃんにゃんシールド(利用権) 5万

にゃんにゃんボウ&アロー(利用権) 5万

にゃんにゃんメイス(利用権) 5万

にゃんにゃんワンド(利用権) 5万

にゃんにゃんピストル(利用権) 5万

マジックポーチ貸し出しチケット(E)必要スタンプ数

マジックポーチ(一日貸し出し券)5個

マジックポーチ(七日貸し出し券)10個

 

Dランク購入価格

にゃんにゃんメット(利用権)10万

にゃんにゃん帽(利用権)10万

にゃんにゃんバンダナ(利用権)10万

にゃんにゃんメイル(利用権)10万

にゃんにゃんフルメイル(利用権)10万

にゃんにゃんアーマー(利用権)10万

にゃんにゃんローブ(利用権)10万

にゃんにゃんブーツ(利用権)10万

にゃんにゃんイヤリング(利用権)10万

にゃんにゃんブレスレット(利用権)10万

武具強化無料チケット(D)必要スタンプ数

武具強化+3まで無料券(一人3回まで)5個

武具強化+6まで無料券(一人3回まで)10個

武具強化+9まで無料券(一人3回まで)30個

 

Cランク購入価格

ミスリル製武具(利用権)100万〜

ダマスカス製武具(利用権)200万〜

アダマンタイト製武具(利用権)300万〜

模造オリハルコン製武具(利用権)500万〜

模造ヒヒイロカネ製武具(利用権)1000万〜

Sランク探索者お助けチケット(C)必要スタンプ数

★ガイウス召喚券(一人一回)10個

★キング召喚券(一人一回)50個

★トール召喚券(一人一回)100個

★アメリア召喚券(一人一回:期間限定)300個

 

 

「この★がついてるのは?」

 

 

 召喚とついてるあたり、転送陣を使用するサービスだと思うが、一方的に送りつけるどこでもシリーズにもついててもおかしくないと思うが……そっちにはついてない。

 

 

「国を跨ぐタイプのサービスですね」

 

「ああ、そういう」

 

「シャワー室、宿泊場、ご飯のデリバリーは本社でご用意しますが、Sランク探索者の召喚などは国の行き来を挟むので入国許可をしていただかないことにはサービスできません」

 

 

 なるほどね。

 そりゃそうだ。

 

 僕たちは飛行機に乗らずに日本とハワイを行き来してる。

 これを探索者全員にやったら運送サービスは破綻するか。

 

 

「行政に掛け合う感じか。でもあっちいけシリーズは?」

 

「それは日本がモンスターを海外に送りつけて、同時に資源国としての権利を一時的に放棄する事を意味します。取り敢えずアメリカ、イギリス、オーストラリアで連盟を組みまして、その連盟に参加してもらってからSランクを所有してる国に直送、処理してもらいます」

 

「日本政府が首を縦に振るかなぁ?」

 

 

 まず絶対に振らないだろう。

 なんだかんだダンジョン資源国であることを誇りに思ってるし。

 

 ただ国内の戦力だけだとどうしても始末できないからアメリアさんを歓迎したんだろうし。

 

 

「ちなみにこの連盟国、日本以外は全てSランクを所有してるんですよね。一方的に資源を奪われるのを良しとするか、はたまたSランクを自国でも管理するかが問われます」

 

「あ、そういう」

 

 

 つまり海外に渡ったS〜Bランクを自国に呼び戻すのに同意させるのが目的か。

 

 

「これ、キングやガイウス達は知ってるの?」

 

「全員知った上で協力してくれてます。日本が暮らしやすくなれば、無理に海外で暮らす必要もないと」

 

『アタシは、どっちでもいいぞ★』

 

「アメリアさんもお手伝いありがとうね。よしよし」

 

『エヘヘヘヘへ』

 

 

 撫でたら猫ちゃんみたいにふにゃふにゃになる。

 アメリアさんはかわいいなぁ。

 猫耳がピクピクしてて、本物の猫ちゃんみたいだ。

 

 ちなみに尻尾もついてる。

 Vの時の僕に寄せてるのだろう。

 僕が黒なら、彼女は白い猫耳猫しっぽを自由に動かした。

 

 

「んで、マスコミの皆さんはどうするの?」

 

 

 外では犯罪一歩手前の様な強引な手段でビル内に入り込もうとする人々。

 警察を呼ぼうか。いや、有る事無い事吹聴されるのが想像できる。

 ならばさっさと公開してしまうか。

 

 

「後輩、探索者組合の人と連絡とって」

 

「もうアポイントメントは取り付けてあります」

 

「流石だね。じゃあアメリアさん、ちょっと気分悪い思いすると思うけど我慢してくれる?」

 

『センパイはアタシが守るよ!』

 

「ありがとねー」

 

 

 では配信スタート。

 ビルの外のスクリーンにはいつもの配信画面。

 

 ちょっと待っててね、というコメントと猫がまどろむ画像が映っている。

 そして画面が切り替わり、配信が始まった。

 

 

「どもども、お騒がせVtuberの先輩です。実は僕、本日会社を設立してましてね。見てください、呼んでもない人たちがこんなにたくさん! いやー、人気者は辛いですね」

 

 

 画像の中心には、防犯カメラに映し出される塀を乗り越えようとする者、石を投げ込んで破壊活動をする者、罵詈雑言を投げかける一般人の声を画像に取り込んでお届けした。

 

 勿論配信が始まると同時にリスナーでもない人たちの罵詈雑言が流れる。ここまではパフォーマンスだ。

 

 いかに日本人が僕の所作にキレているかをアーカイブに残すための物。

 いつもならフィルターをかけてるのにわざわざ外したのはこの為だった。

 

 

<コメント>

 :あああああああああああああああああ

 :お前お前お前お前お前お前お前───

 :この! 売国奴が!

 :ダンジョンにドラゴンが出たのよ! なんとかして!

 :日本がどうなってもいいのか!

 :即刻アメリア嬢を解放せよ!

 :ああああああああああああああああ!!!

 

 

「はいはい。なんかよくわかんないコメントは無視しますね。後輩、フィルターオン!」

 

「ラジャーです」

 

 

 あんなに勢いの良かったコメント欄は勢いが衰えゆっくりと流れていく。

 いつもよりまだ多いが、やはりダンジョンにドラゴンが出たことを憂うタイプのコメントが多かった。

 

 まぁ人ごとで済ませるには身近な話題だし、探索者が失敗したら次は自分たちの番だ。

 感情的になるのもわかる。

 

 

<コメント>

 :相変わらず人気者で草

 :売国奴扱いはやめてあげて

 :一応日本のピンチだから

 :せめてアメリアちゃんにドラゴン倒してもらったら落ち着くから

 

 

「政策の失敗を一個人に押し付けるとかwww。まあタイミングは悪かったよね。そこは反省してる。このタイミングでドラゴンが出るとか流石に予想外だし。それとアメリアさんはプライベートで来日してるから討伐の交渉をするなら米国大統領を挟んでね? 僕のお願いで動かすのは少し難しいから。例の三馬鹿を駆り出すのにも一応許可は要るんだよ」

 

 

<コメント>

 :それはそう

 :米国大統領は無理筋だから先輩にお願いしてるんよ

 :虫のいい話は承知で頼めないか?

 :いくらふっかけられるかわからんからな

 :安く済ませたいのは日本の国民性

 :自国にSランク抱えてれば問題なかったもんな

 :それを先輩の責任にするのはお門違い

 :よく考えなくてもわかるだろ常考

 :先輩可燃性強すぎるから

 :多分こいつが悪いって言えば丸く収まる的な?

 :鬱憤晴らしたいだけだよ、そこにちょうど燃やしがいのある相手がいた

 :難儀やなぁ

 

 

「理不尽で草。わざわざ助けに来たのにこの対応よ。僕一応偉い人なの忘れてない? Vtuberの個人勢なら脅せば言うこと聞くと思った? 言っちゃなんだけどうちの後輩はそっち系の対応過激だから注意してね?」

 

 

<コメント>

 :そりゃそうよ

 :先輩日本を見捨てないで

 

 

「まぁ生まれ育った場所だし、日本がモンスターに蹂躙されるのは夢見が悪いので見捨てないよね。世話になった会社もあるし。で、今回僕の立ち上げる会社。実は日本で頑張って残ってくれた探索者に向けたものなんだ。後輩、テロップ出して」

 

「はーい」

 

 

<コメント>

 :Cランクまでしかないのは……

 :実際Cまでしかいねーし

 :装備名は突っ込んだら負けなのか?

 :性能はアホみたいに高いのが悔しい

 

 

「後輩曰く、僕が装備して似合う設定だそうだ。ちなみに利用権というスタイルなのは、ガイウスの装備みたいに呼び出せば出る限定装備扱いになる。武器を持って歩かなくて良くなるので、スタミナを温存できるぞ。ピンチの時にこそ、呼び出せばいいし、逃げる時に鎧は重いだろ?」

 

 

<コメント>

 :優しい

 :果たして優しいか?

 :装備は転送してもらう時代か

 :ゲーム的な要素になりつつあるのか

 :転売は出来なさそうだな

 

 

「犯罪に与することに使われた場合、利用権を即座に失効する。その場合は再び組合か、うちのお店で再契約してくれ」

 

 

<コメント>

 :そんな上手い話はないか

 :最終的に自分のものになんないのか

 :固定資産にならないのは良いな

 :まさかの税金対策

 :探索者は所得に応じて税金取られるからな

 :サラリーマンより利率高いんだっけ?

 :稼ぎがその分多いからな

 :買い取りじゃなくてあくまで借りるというのは新しいか

 :問題は見た目

 :ネーミングから嫌な予感がするぜ

 

 

「ここで一式装備をアメリアさんに装備してもらいました〜」

 

『ドヤッ』

 

 

<コメント>

 :ドヤ顔可愛い

 :これEランクに配って良い装備じゃねーだろ!

 :マジックポーチか、これが……

 :猫ちゃんポーチ、幼稚園児に似合いそうな見た目しとる!

 :問題はこれを人前で着れる勇気か

 :俺は無理

 :私もちょっと厳しいかなぁ

 :猫耳かわいいですねー

 :尻尾も機嫌良さげ

 

 

「続きまして〜、どのランク帯でも買える消耗品になりまぁす」

 

 

<コメント>

 :あっちいけシリーズが気になる

 :ポーションも売ってるんだ

 :バンドエイドwww

 :ポーションがあるのにそれの出番来るのか?

 :どこでもシリーズは欲しかったやつ

 :これはありがたいですねー

 :ふんだんに転送陣使ってるのよ

 :これ他社が絶対真似できないやつだろwww

 :真似できるもんならしてみろって言ってる奴だな

 :実際買えるのはポーションとバンドエイドだけなの草

 :お試し利用させてくれるだけマシ

 :それな。Cのままだと一生触れないまであるから

 

 

「僕は後輩に探索者用の会社作ったら褒められるんじゃないかって提案しただけなんだけどね。知らないうちに大事になってた。僕は悪くない」

 

「熟練度上げ用のレシピもいただきましたし、頑張りました!」

 

「その結果、勝手にいろんな人巻き込んでたんだよね」

 

 

<コメント>

 :参加させてもらった(ローディック)

 :良い勉強になったな(コーディ)

 :俺としても日本の危機は放っておけん(ガイウス)

 :上に同じ。スポット参戦だがその時はよろしくな(キング)

 :俺っちはデリバリー部門の提供っすよ(トール)

 :大手企業揃い踏み!

 :まだ凝りてないのかこの人たち

 :実際、あのコラボはいまだに審議中だから

 :先輩が呼びかけなきゃ集まんないメンツでもあるな

 :そう思うと先輩ってすごい人では?

 :すごい人ではあるが、気さくかつフレンドリーなので距離感が近いんよ

 :社畜の闇を時折見せる可愛い幼女

 :↑言ってることが矛盾してるぞ

 :あれ、このメンツにドリィちゃん入ってなくない?

 :ガンドルフは日本から離れるって発表あったぞ?

 :本部はな。支部は置いとくらしいが

 :先輩がらみか?

 

 

「そうやってすぐ人のせいにしないでください。まぁみんながこぞってドリィちゃん扱いしてるから不貞腐れたんでしょ。根性のない」

 

「先輩は女装の年季が違いますからね」

 

 

<コメント>

 :先輩の性別いつから行方不明なんだっけ?

 :最初から

 :最初から

 :自称おじさんだし

 :性自認おじさんの女子小学生だから

 :中学生なんだよなぁ

 

 

「32歳でぇす。適当言わないでください。こう見えて大学も卒業してるし、製薬会社で10年ポーション作ってたから!」

 

 

<コメント>

 :ほんとぉ?

 :疑われてて草

 :マスコミの書き込みがないだけでこんなに穏やかなの笑う

 :で、あっちいけシリーズの効果は?

 

 

「これはね〜、モンスターに投げつけるとSランク探索者所有国に強制的に送りつける片道チップとなってます」

 

 

<コメント>

 :お?

 :つまりドラゴンに投げつけると?

 :事件も解決か

 :最強の国防で草

 :こういうので良いんだよ、こういうので

 

 

「実はこれ、送った時点で資源の取得権を一時的に放棄する様なもので、日本国が認めない限り利用ができなくてですね」

 

 

<コメント>

 :あっ

 :ふーん(察し)

 :これはダメかも分からんね

 :資源国の権利を一時放棄かー

 :今の総理が手放すか?

 :その資源を切り札に外交してるからな

 :新規資源欲しさにSランクの保有権を手放す総理だぞ?

 

 

「ちなみにこのアイテムを使用するにはとある連盟に入っていただく必要がありまして、それらがSランクを保有する諸外国でして。あとは総理のサインをいただくだけでいつでも販売可能となりますね。本日はプレオープンでしたが、明日から組合で普通に販売しますよ。あっちいけシリーズやSランク探索者召喚権は連盟に参加した国の権利みたいなもんです」

 

 

<コメント>

 :ほーん

 :日本国包囲網始まったな

 :個人Vがワールドワイドな連盟結んでるのは草

 :一応先輩、お偉いさんだから全く見えないけど

 :日本以外旨みしかないのがwww

 :そりゃSランク抱えてれば待ってるだけで資源が送られてくるからな

 :資源を放棄するか、Sランクを抱えるかの瀬戸際なのか

 :これどっちも選ばなかったらどうなるの?

 

 

「僕たちはできる限りの提案は示した。連盟に入るかどうかは総理の気持ち一つ。参加したら国防も潤う。Sランクを抱えたりする無駄な維持費を支払う必要もないんだし、良い話だと思うんだけど?」

 

 

<コメント>

 :ほぼ脅しなんだよ

 :その連盟、日本から資源奪い尽くすつもりだろ!

 

 

「何か勘違いしてる人が居るけど、あっちいけシリーズで送らない限り、資源は自国のものになるよ?」

 

 

<コメント>

 :ほっ

 :じゃあSランクを召喚して倒して貰えばええのか

 :ガイウス→石化剣(資源ブレイカー)

 :トール→素材泥棒

 :キング→物置

 :実質アメリアちゃん一択なんだよな

 :そう言えばアメリアちゃんについてる期間限定って何?

 

 

「彼女がプライベートで日本に来ている間だけ暇してるから、お手伝いできるのはその時だけって意味。ガイウスやキング、トールは日本人だし、いつでも呼んでくれって言ってるぞ! ちなみに今週いっぱいまでいてくれる。良かったな、こんなチャンス滅多にないんだからな?」

 

 

<コメント>

 :それまでにスタンプ300個貯めろと?

 :7日以内に3億?

 :一番安くてもな

 :これ、Dランクで300ポイント貯めてもダメなの?

 

 

「だめでぇす♡」

 

『アタシはそんなに安くないぞ!』

 

 

<コメント>

 :うざっ

 :アメリアちゃん、ごもっとも

 :殴りたい、この笑顔

 :逆に言えば3億で雇えるならお得

 :大統領にアポ取るのだって相当むずいぞ?

 :総理クラスか身内じゃないと門前払いだろ

 :この前総理が門前払いされてたんだが

 :それ

 :そもそもCランクで話しかけてもSランクは振り向かないから

 :気分屋だから先輩が呼ばなきゃ来ないんだぞ? 雇えるだけマシ

 :問題はそんな金を持ってるCランクが皆無って事で……

 :詰んでるじゃん

 :それ以前に政府が連盟に入らないと召喚すらできないから

 :あ、そうじゃん。その縛りがあった

 :総理──!! この国が救われるのはあんた次第だ!

 :先輩は答え出したぞー!

 :逃げるな──ー!! 責任から逃げるな──ー!!

 

 

 

 ようし、良い感じに風向きが政府に向いたぞ。

 あとは放っておくだけで良いだろ。

 

 

「と、主な告知はこんなもんですね。僕は経営に関わってないので、クレームを入れてこられても困ります。文句があるなら会社か連盟国、コーディさん、ローディック師に言ってね!」

 

「先輩は横のつながりと資金提供、レシピ提供でしか関与してませんもんね?」

 

「そうそう。なので僕に言われても困るんだ。と言うわけで以下雑談」

 

『センパイ、暇ならBWやろ! アタシヘルモードまだやれてない』

 

 

 と、お誘いいただいたので以降はコメントを垂れ流しつつゲーム配信とした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その頃首相官邸では。

 

 

「総理、官邸前にマスコミたちが押し掛けてます」

 

「なんの騒ぎだ」

 

 

 安倍川望夫は苛立たしげに使用人を睨みつける。

 今まで政務に取りかかりきりで、ニュースになど全く目を通さなかったというのもあるが、米国から脅しとも取れる連盟加入を勧められて怒り心頭というのが大きかった。

 

 

「例の配信者です。猫耳の」

 

「どこの誰だ、そいつは!」

 

 

 安倍川望夫は配信者にあまり詳しくない。

 だから猫耳と言ってもピンと来なかった。

 

 

「先輩と後輩の錬金チャンネル、という日本の配信者なのですが、現在は世界規模の登録者数を持つVtuberと呼ばれる人達です」

 

「そいつらが何をしたっていうんだ?」

 

「米国大統領クリム・カスターが一枚噛んでる案の首謀者であることが発覚しました」

 

「たかが配信者が国のトップに意見できるのか?」

 

「たかが配信者ではないので。彼、便宜上先輩と呼ばれてる存在は国家錬金術師として米国に在籍し、その熟練度は330、新たな技術転送陣を世に発表した世界屈指の技術者として記憶に新しい人物ではありますね」

 

「なぜそんな人物が配信者などしてるんだ?」

 

「さぁ、趣味では?」

 

 

 意味が分からん、と切り捨て。

 同時にその存在は使えるなと企む安倍川。

 

 

「マスコミが押しかけてると言ったな? 要件はなんだ?」

 

「米国主催の連盟に加入しろとの事です」

 

「やはりそれか。なぜ国土の資源をみすみす他国に渡すなどという条件が飲めるのか理解に苦しむ」

 

「どうも件の配信者の出した条件が破格だったようで……」

 

「どんな物だ?」

 

「海外の所有するSランク探索者の貸し出し権という物です」

 

「ほう。加盟するだけでいいのか? 直接資源を取られるわけではないのだな?」

 

「それは手に負えないモンスターが現れた時に限るそうで」

 

「なんだ、一方的に取られるわけではないのか。なら、この議題は特に悩むこともなかったな」

 

「それがそうもいかないようです」

 

「まだ何かあるのか?」

 

 

 風向きが変わったことを理解しつつも不安げな使用人に悪い予感が拭えない。

 

 

「その権利を扱えるのがCランク探索者に限ること、そして実際にその額を稼ぐとなると現状の課税制度では到底無理であることが証明されています」

 

「税率を下げろというのか?」

 

 

 それは今最も選択したくない一つだった。

 探索者制度が出来てから犯罪件数は軒並み上がっている。

 

 死因の多くが自殺を占めていた日本でさえ、殺人が多発するくらいには探索者の数が増えるのは良くない。

 

 重税を課して不自由にさせたのは他国の犯罪者を野放しにした結果を目の当たりにしてきたからだ。

 

 ここで税を緩めることは国内犯罪の増加を容認する事になる。

 それは絶対に認められない。

 

 平和を売りにしてる日本国には観光地としての価値が非常に高い。外貨を稼ぐのにこれほど都合のいい土地もない。

 

 そこに来てダンジョン資源だ。

 今まで輸入に頼っていた資源を保有して輸出に回せるのは資源が枯渇した日本国にとってありがたいことだった。

 

 土地の狭さもあってそこまでの数は保有できなかったが、それでも世界と渡り合えるくらいに国としての価値も高まってきている。

 

 それをハイそうですかと手放せと言われても手放せる物ではない。

 

 

「何か他に策はないのか? 自衛隊を向かわせるとか」

 

「無理です総理。自衛隊と自国内探索者を統合した結果をお忘れですか?」

 

「海外への戦力流出か……」

 

「資源の流出か、Sランクの保有。このどちらかを選択する時が来たのです」

 

 

 今まで保身に走ってきたツケが回ってきたか、と全てを観念した顔で安倍川は使用人へと伝える。

 

 記者会見を開く。それと共に総理大臣辞任の決意表明もすると。

 責任を逃れるのではない。叱責を一任するのも内閣総理大臣の務めだと認識しているのだ。

 

 

「貧乏くじを引かされたか。恨みますよ、希菜子さん」

 

 

 百道希菜子(ももちきなこ)。安倍川の前任を務める内閣総理大臣。

 

 そして国内のSランク探索者の保有を諦めた張本人でもあった。

 まだ後釜が育ちきってない。

 

 次は誰をその席につけるか考えながら、安倍川は席を立った。

 

 

 日本は改めて資源連盟に参加し、探索者にかけられた課税の見直しを報道陣へ発表した。突然の発表にそれで甘い汁を吸っていた議員から責任を追及されて辞任した。

 

 

 足の引っ張り合いの目立つ国会議事堂は混沌を極めた。

 

 

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