限界社畜おじさんが、猫耳Vtuberになって世界をかわいく征服する   作:双葉 鳴

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第三章『おじさん、猫ちゃんになる』
猫耳薬


「せんぱーい、次の配信どうします?」

 

「えーと、今みんなの熟練度どれくらいまで上がってるっけ?」

 

「そうですね、最近公開したレシピですと、90ぐらいでしょうか」

 

「あー、100はある意味で壁だからね。僕もどうやっても上がらなかった記憶がある。けどコツを掴んだらあっさり抜けたんだよね」

 

「それを超えられる人は世界でも限られてますから。後でそのコツ教えてくださいね」

 

「教えてもできるかどうかはその人次第だよ?」

 

「がむしゃらにやります」

 

 後輩のやる気に水を注すのも悪いか。

 この子は目的があるんなら本当にがむしゃらにやる子だからなぁ。辺に焚き付けると酷い目に遭うと僕は学習している。

 

「でもそうか、100の壁か。ならちょうどいいレシピがある」

 

「どんな奴です?」

 

「いつも君が見慣れてるものさ」

 

「?」

 

「今情報書き出すからテロップ制作お願い」

 

「はーい」

 

 そこでレシピを覗き見た後輩が頷いた。

 こんなもので? という顔だが、材料と錬金製法を見て真顔になった。

 この中級融合というのが曲者でね。尚且つ成功率は驚異の2%!

 

 制作難易度は115という曲者中の曲者である。

 と、いうことで早速いってみようか!

 

「はい、こんにちは。休暇中は新人ダンチューバーに熱を入れてた先輩と」

 

「その先輩に似合う衣装を考案していた後輩でお送りする錬金チャンネル、始めますよー」

 

<コメント>

:待ってた

:これって実質何ヶ月ぶり?

:随分と長い間潜伏してたなー

:あれ、もう始まってる?

:先輩、お久!

:告知ゼロで始めるのここくらいだよ

:実際、仕事でしてないしな

:もうトレンド入りしてるの草

:みんなそれだけ待ってた

:復帰おめでとー

:先輩ロスキツかったー

:今回はいったいどんな奇想天外レシピが世に解き放たれるんやろう

:楽しみ

:作らない勢は他人事でいられるもんな

 

「まぁね、ほとぼりが覚めるの待ってたら随分経ってた」

 

「方々で私たちの噂が拡散されてましたからねー」

 

<コメント>

:ところで新人ダンチューバーって誰推してたの?

:それ、気になる

 

「それは今回の配信と何ら関係ないので、お話できません」

 

<コメント>

:急に辛辣になるやん

:相変わらずの後輩である

:この塩対応、クセになるね

:しっかり訓練されてきてるな

:このやりとりも懐かしい

 

「別に隠すことのもんじゃないでしょ。聖矢リコちゃんて子。背格好が僕と同じなので、やたら僕と間違われるけど、知らない人だからね。あまり向こうさんにも迷惑かけないようにね」

 

 釘を刺す。

 もう向こうで活躍することはないと思うが、いつボロが出るかもわからないというのもあった。

 特に秋生関連での口滑らしは……うん、やめておこう。

 

 あの子たちに正体は明かしたものの、正直信じてもらえてないところもあった。

 頑なに僕を同年代だと思い込んでたもんなぁ。

 不思議だ。

 僕は30代のおじさんなのに。

 どこで道を間違えてしまったんだろうか?

 

<コメント>

:あれ、先輩ちゃうんか

:ずっと先輩だと思ってた

:自称おじさんは本当に自称だったか

:そりゃそうだよな

:つまり、先輩も探索者デビューを予定してるってこと?

 

「どうして君たちは非戦闘員の僕をバトルの場に参加させようとしてくるのか。これがわからない」

 

「ここのリスナーは他人事で物を言いますからね。誰に似たのか皮算用ばかりしてるイメージあります」

 

「あー……ね」

 

<コメント>

:納得しないでもらえます?

:それは一部の過激派なんだよなー

:もう少し自分たちがやりすぎてる自覚というのを

:いまだに入手できないむくみとりポーションをですね!

:↑こういうのがいるから誤解されたまま

:むくみとりポーションはNNPが出してるので我慢しろ

:あれは別物じゃないですか!

:一回本物使ったことがある人は、満足できない体になっちまってるんだ

:難儀だなぁ

 

 そんなの知ったことではない。

 まぁ、そんな話はさておいて。

 

「さて、後輩。本日のお題はー?」

 

「デデン!」

 

<コメント>

:相変わらずの謎演出

:効果音を口で言っちゃうのが後輩らしい

:後輩ちゃん、良い加減壁の中から出てきてくれない?

:テロップに流す技術持ってるのに、この手作り感よ

 

「はい、みんな見えてるかなー? 今日はですね、この猫耳が生えるお薬をですね、紹介していこうと思います」

 

<コメント>

:でも、熟練度はお高いんでしょ?

:用途、用途をお願いします!

:これ、需要あるか?

:リアル嗜好のコスプレ用かな?

 

「ふふん。みんなはただのコスプレグッズか何かと思っているようだけど、実はこれ。設定した動物の言語を理解できちゃう優れものだったりする。今回は猫ちゃんの変身セットだけど、いろいろレパートリーを考えてあるんだよね」

 

「ローディック氏やドリィちゃん用にも考えてあるんですよね」

 

「ねー」

 

<コメント>

:この2人……

:すっかりあの人たちを巻き込む気でいやがる

:この潜伏期間にそんなこと企んでいたのか

:つまりこの猫耳薬は?

:言わせんなよ

:明らかに先輩用の飲み薬だろ

:草

 

「まぁみんなはそこに行き着くよね。けど中には僕の真似をしたがる熱心なファンもいると思っての公開さ。側だけつけてても僕になれないというガチ勢のためのレシピと捉えてもらってもいいよ」

 

「先輩はそれだけ世界中から愛されてるってことですね」

 

「今ちょっと寒気がしたけど気のせいかな?」

 

「気のせいです!」

 

「まぁいいや。僕は飲みなれてるけど、これ飲んでどんな症状が出るかもわかってないから心配だけど、どうせ熟練度上げにしか使われないだろうから気にしないで続けるよー」

 

<コメント>

:副作用が判明してないものを公開するな!

:まだだ、まだ簡単に作れると判明したわけじゃない!

:そこなんよなー

:リアルなケモミミ生えるだけなら普通に欲しいな

:別に全身猫ちゃんになるわけでもないんなら、飲んでみたいが

:逆に猫飼ってる人たちは飲むの躊躇いそうよな

:それ

:相手の言葉がわからないからこそ、取れるコミュニケーションとかあるから

:草

:飼い主に関しては諸刃の剣じゃんか

:なんでも使い方次第ではあるけどね

 

「はい、じゃあレシピ公開! どどん」

 

 テロップに載って、レシピが公開される。

 内訳は玉こんにゃく150個、炭酸水5L、溶解液5L、むくみ取りポーション【S】が15本だ。

 これを数回に分けて錬金窯でお祈りする。

 いつものやつである。

 

<コメント>

:素材www

:また無茶な量の素材を求めてくるな

:例の如く入り込む玉こんにゃく君

:また市場から玉こんにゃくが消えるぞ

:まーたドロップ素材の代用品ですか?

:一体なんの素材の代用品なんやろな

:あの、すいませんそこに使われてるむくみ取りポーションをですね

:それーーーーー! 再配布してーーーー!

:無茶言うな

 

「ごめんねー。一度公開したレシピは二度と配布しないって他の錬金術師と約束してるから。今有志の錬金術師が頑張ってくれてるから、それの結果を待っててほしいよね」

 

「今だとにゃんにゃんプラントさんや望月製薬さんなんかが最有力候補ですかねー」

 

「湿布やバンドエイドも日の目を浴びてきたよね」

 

「ねー」

 

<コメント>

:そのメーカーのCEOが先輩な件

:明らかなマッチポンプの絵図が見える

:でもそこ、大手製薬の社員を全員引き取ったって噂が

:最近ポーションそのものが値上がり傾向にあるから

:むくみ取りポーションもずいぶん値上がりしたよね

:あれは転売してるやつの言い分で、そもそも最初から価値は低いぞ

:一個50万だっけ?

:いや、草

:それでも買うやつは買うから

:美白効果は世に出回ってる化粧品の比じゃないからな

:まじで肌が十歳以上若返るから、あれ

 

「僕が作れば確かに簡単にはできるけど。それは熟練度の高さによるものだからね」

 

「でもみなさん、このチャンネルを視聴してからずいぶんと腕を上げましたよね」

 

「だよねー。僕も楽しみだよ。今まで溜め込んだ日の目を見る事のなかったレシピを少しづつ公開できて、みんなにっこり、僕もにっこり」

 

「良いことづくめですね!」

 

<コメント>

:それは実際感謝の極み

:当初は転売厨がキレ散らかしてたけどな

:そりゃ、ダンジョンで必死こいて集めた素材が二束三文になればな

:元々ぼったくり価格だったし

:新規錬金術師が熟練度10の壁を低価格で乗り越えられたのは先輩のおかげでもあるから

 

 良いことをした気分になりながら錬金術を始めていく。

 

「それじゃあ実験開始! みなさんはこの素材をどのように使うか予測してみてくださいねー」

 

「今なら先輩の猫耳姿が見れる!」

 

「それ、必要?」

 

「先輩はリアルでも可愛いですからね」

 

「やめれ!」

 

 なんのためのVの側かわからなくなるじゃないか。

 それと転送陣があるからと、顔を晒すつもりはないからね。

 

<コメント>

:そしていつも通りの風景である

:炭酸水と玉こんにゃくを茹でる風景

:先輩、昼間からお酒ですか?

:側は幼女だけど、中身は普通におじさんだからな

:相変わらず絵面がやばい

:でた、お供の煮卵

:そして相変わらずお祈りは一発成功

:できたのはテンタクルスのコアでしたー、じゃないんだわ

:A級素材君! A級素材君じゃないか!

:おま、それ普通に入手したら単価10万は下らないぞ

:そんな高級素材なんか?

:遭遇自体滅多にしないモンスターなんやで

:あぁ、希少価値って意味のほうね

 

「へぇ、今そんなするんだ、これ。じゃあ代用品を用意してきてよかったね」

 

「さすが先輩です、先のことまで見据えて行動できてえらいですね」

 

「まぁね」

 

 それをトータルで15本生成したら、軽率に溶解液にポイする。

 このコアから取れる金属が今回のメイン素材なのだ。

 

<コメント>

:ぐわーーーーー!

:テンタクルスコアーーーー!

:このチャンネル、一般人には心臓に悪すぎる

:今の一瞬で150万が溶け……溶け……

:錬金術なんて完成させるまでもっと素材を溶かしてるぞ

:一般の方はそこが見えてないから

:一発で製作できると思ってるやつしかおらん

:むしろ、このチャンネルを見てるのって錬金術師の卵くらいかと思ってたケド

:今は一般の方が多いで

:主にむくみ取りポーション再配布勢

:買え!

:入手が半年待ちなんだよなー

:買いたくても買えないからって集るなよ

:一縷の望みをかけて

:再配布はしないって言ってるのに来る時点でな

 

「見事に罵倒が飛び交いましたね」

 

「ドッキリ大成功かな?」

 

「あまりにひどい罵声を書き込んだリスナーさんには、後々粛清のメールをお送りしますからねー」

 

「ほどほどにね?」

 

「はーい」

 

<コメント>

:返事だけは可愛いな

:後輩ちゃんは実際可愛い

:先輩の方が可愛いだろ

───────────

¥15,000:衣装代

───────────

:スパチャニキ!

:ネキかもしれないだろ!

:相変わらずの貢ぎ額

:先輩の猫耳に似合う可愛い衣装を作ってあげてくださーい

 

「ありがとうございます! すでにデザインは考えてあるんですよね。次の配信までには仕上げておくので、どれが良いかの多数決を取ろうかと思います」

 

 そう言いながら、全部僕に着せるつもりだろ?

 僕は詳しいんだ。

 

 テンタクルスコアから取り出した金属を、むくみ取りポーションの中で溶かしながらよーく混ぜ込んでいく。

 さっきのテンタクルスコアよりも叫び声が酷いのはきっと気のせいだろう。

 特に美容勢からの絶叫が顕著だ。

 

「はい、でこれを炭酸水で希釈すれば、猫耳薬の出来上がりー」

 

「おめでとうございまーす」

 

「今からメールをくれた先着10名様に、この薬品を送りつけますねー」

 

<コメント>

:はい! はーい(アメリア)

:アメリアネキ! 素早い

:いつからいたんだ?

:アメリアちゃんも猫耳姿似合ってたもんね

:先着応募ですらないのか

:無差別テロやめろ!

:身に覚えのない薬品が送り届けられる恐怖

:逆に、これを飲めば毛が?

:頭部後退ニキ! 頭部後退ニキじゃないか!

:キングって呼んでやれよ

:キングさんなら今頃フサフサだろ

:あの槍の性能恐ろしすぎてな

:全部持ち出し禁止だろ、あんなん

:番組の企画商品なのに特級呪物扱いで草

:これ、素材的に肌が若返ったりなんかは?

 

「若返り効果はないです」

 

<コメント>

:草

:そんな上手い話なかった

:ほしい人は欲しいと思うけどねー

 

 

 

 


 

 

 

「先輩! きたぞ」

 

「いらっしゃい、アメリアさん」

 

「ヤッホー」

 

 後日、猫耳を生やしたアメリアさんがやってきた。

 以前渡した転送装置から直での入場だ。

 忙しい身分だろうに、最近割と頻繁に顔を出すよなぁ。

 

「早速遊ぼっか」

 

「またバトルウェーブ?」

 

「今はこういうのが出てるんだぞ!」

 

 持ち出してきたゲームタイトルはもちろん聞いたことがないやつで、フルダイブ型の映像作品だった。

 体を動かすのが得意な彼女らしい。

 けどそれに巻き込むのは勘弁してほしかった。

 

 そこでキャラクター選択の項目がある。

 人間以外に獣人なんかも選べるみたいだ。

 扱える項目が異なっていて、嗅覚とかが鋭くなるみたいだ。

 

「私はこれで獣人のトップに立ちたいんだ! そこで先輩の作ったこの薬で、その道が開けるんじゃないかと思った!」

 

 残念だけど動体視力が高まった感覚はない。

 日常的に摂取してる僕がいうんだから間違いない。

 が、僕だけの感想より、他人の感想も欲しいところだった。

 

 今回は誰よりも前向きにのめり込んで使ってくれそうな彼女だからこそ、率直な感想が聞けると思ってプレイする。

 

「ちょ、先輩。なんで先輩はヒューマン選んでるんだよー」

 

「なはは。人間モードでもどう変化するか知りたくてさ。それとも一緒に獣人をしてほしかった?」

 

「べ、別にそういうわけじゃないんだぞ」

 

「あとでお揃いのイラスト用意しておきますね。あ、これって配信しても?」

 

 特に問題ないだろう。そう思って配信許可。

 どうしてそこで実写の僕も映ってるのか、アーカイブ化してから知った事実である。

 可愛い猫耳を生やした、猫ちゃんパジャマに身を包んだ僕が、アメリアさんと一緒になってゲームを配信する動画が瞬く間に拡散されてあっという間にトレンド入りしてた件。

 

 頭おかしいのかな?

 もっと気になる情報とかいっぱいあるはずだって。

 

「ねぇ後輩」

 

「なんですか? あ、早速猫耳薬のレシピに挑戦して儚く散っていった同僚からの苦情のお便りがきてますよ。一緒に見ます?」

 

 なぜそれを嬉々として見せてくるのか。

 これがわからない。

 

 そこで僕は別のトレンドで気になる情報を発見する。

 そこには、ダンジョンの中で猫耳を生やした知的生命体との接触を綴る手記などが世に出回るという情報媒体だった。

 それを差し置いて僕のアーカイブがトレンド上位に上がる。

 今の世界を嘆かわしく思うよ。

 とほほ。




この薬は、リアルに猫耳がくっつくだけです!
熟練度?素材?
まぁいつものです。
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