限界社畜おじさんが、猫耳Vtuberになって世界をかわいく征服する   作:双葉 鳴

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こちら、日用品で代用可能です

「は〜いみんなぁ。そろそろ熟練度10になった頃かな? 先輩でーす」

 

「普通の人は24時間のほとんどを錬金術に充てたりしないんですよ? 先輩。それとスモア(焼きマシュマロ)から場違いなクレームがいくつかきてますね」

 

 スモア(匿名質問箱)に中間素材のレシピ提供で、稼ぎが減ったというコメントが寄せられていた。

 

 :あんたのレシピのおかげで毒消しポーションの素材価値が死んだんだが?

 :別に死んでないだろ

 :うるせー、こっちは鎬を削られて迷惑してんだ! 

 

「との事ですが、実際に材料の価値は下がってるのかな?」

 

「いえ、むしろ相場よりは全然上がってますよ。買取を行う企業の相場では一律500円のところ、750円に値上がりしてます」

 

「だ、そうだ。だからそっちの鎬が削れたのは僕のせいじゃないと結果が出たね。それに探索者の方にとっても朗報なのでは?」

 

 僕は探索者であろうリスナーさんへ優しく問いかける。

 

 :実際に損失出てんだ! いつも買ってくれる顧客が見向きもしなくなった!

 :それ、相場の倍額で売り出してたのを見限っただけじゃね?

 :自業自得で草

 :実際にいくらで売ってたんですかぁ?

 :あれあれ〜あんなに息巻いてたのに答えないんだ?

 :転売じゃないけど、不必要な値上げは悪質だったもんね

 

 何やらイキリコメントに対するお気持ちが爆発してるようだね。

 素材価格高騰の影響で僕以外の錬金術師から顰蹙を買った探索者の行く末が見えるようだった。

 

「それにだ。確かに僕のレシピは熟練度上げ用の中間素材として効果を上げたかもしれない。けど逆に考えてみようよ、バザーで粗悪品を掴ませられる機会が減ったって。裏を返せば熟練度上げに使われる薬品って品質度外視で投げ売りされることが多くて、当然元を取ろうと少しばかり強気の値段を設定するバザー主も少なくない。が、僕のレシピで熟練度上げ用から目を逸らすことに成功したわけだ。これで表に並ぶ薬品でロシアンルーレットしなくて済むよ。やったね!」

 

 長文でお気持ちを表明すると、後輩が何か言いたげな顔でぼそっと溢す。

 

「先輩、その物言いは全ての錬金術師に刺さります。もうちょっと言葉を慎んでもらえますか?」

 

「なんか、ごめん」

 

 :すまねぇ、粗悪品をバザーに流してすまねぇ!

 :どうしてもお金にしたくて、でも安価で売ったし許されるよね?

 :探索者さん見てる〜? これが錬金術師の現実だ

 :素材買いつけても100%成功は稀……うっ、頭が

 :低品質のものばかりバザーに流れるのは仕方ないことなんよな

 :だから成功品は言い値で売る

 :あれ? そう考えると俺らも大概……

 :うるせー、珠玉の一品を有象無象と同じ値段で売れるかってんだ!

 :それでも品質Bだけどな

 :通常DだからBでもマシ

 :で、素材の費用が高いから総じて値段も上がる、と

 :毒消しポーションが高騰してる原因がお前らだって現実見えたか?

 :良かったな、これからは企業が買ってくれるぞ? 

 

「ちなみにこの買付価格は大手製薬のものですね。他製薬会社では半額の300円です」

 

「あれ? 大手って最近品質落ちた企業じゃないっけ?」

 

「多分素材の品質が低いから高い素材で成功率を上げようと企んでいるのかもしれませんね。これで低品質を持っていこうものなら出禁を受けるかも」

 

「はぇ〜、どこも世知辛いね」

 

「全くです」

 

 僕も後輩も全く知らない素振りで落ちぶれてしまった元勤務先の近況を報告する。

 

 :探索者から買うのって基本低品質なんですよね

 :それ、マジ?

 :品質で成功率変わるって知らないのか探索者は!

 :専門外だから多分知らないぞ

 :探索者組合は何してんだよ!

 :多分教えても探索者が聞いてない奴

 :そういえばさっきイキってた探索者どこ行った?

 :さぁ? 無言決め込んでるな

 :ここのコメント錬金術の闇が垣間見えるもんな

 

「なんだか業界ごとの闇が透けて見えるねぇ、後輩」

 

「その火付け人は間違いなく先輩ですけどね」

 

「えー、そんなことないよ?」

 

 :自覚なしか、この人!

 :このチャンネルは初めてか? 肩の力抜けよ。先輩は常にこの調子だぞ

 :サラッと爆弾落としてくるから

 :それなー

 

「と、いうわけで切り替えていこうか! 今日のレシピは、成功率の壁を越えればいろんなスライムコアの代用品が作れるって代物だ。素材はこちら、デデン☆」

 

 僕のポーズに後輩がレシピを画面に投影する。

 

<製作難易度【25】 材料三つ! おうちで簡単スライムコアもどき!>

 みたいなテロップが流れ、僕の手元と錬金窯、素材が映った。

 

 :用意された玉こんにゃくが気になる

 :練乳!? 知ってるメーカーの練乳だ!

 :かき氷シロップまであるんよ

 :かき氷でも作るのかな?

 :安定のローパーの体液さん、チィ──ッス

 :ごめん、俺の知ってる錬金術とはちょっと違うみたいですね

 

「見慣れないのは仕方ないよ。今日の目玉はこの界隈でも“ゴミオブゴミ”と称される熟練度20で覚えるスキル『下級融合』を使ったレシピだからね。融合成功率は驚異の5%。君たちはこの運命に打ち勝つことができるか? 僕はできる! 早速作っていくねー?」

 

 :サラッと煽ってくるのやめてもろて

 :成功率ひっく!

 :錬金術は1%の成功率を祈るところあるからな

 :それどんだけ難易度と熟練度が見合ってないんだよ

 :このチャンネル出来るまでは常識だった(キリッ)

 :買い占め厨以外にレシピ独占厨がいるって証拠

 :まず表に出てない時点で有用性0なんだよ

 :先輩のレシピが世に出たところで見向きもされないのと一緒

 :あ〜〜(納得)

 

 納得しないでもらえます?

 なんだかんだ言いつつ熟練度上げには活用してる癖に。

 ツンデレかな?

 

「はいはーい。じゃあ今日の主役の錬金窯君のお手入れからしていくよ。これらの品質は低くても全然構わないけど、お手入れをサボると著しく成功率が下がるので気をつけるように」

 

「例えばどのような不利益があるのですか?」

 

「簡単にいうと、カレー作った後の鍋でそのまんまラーメン作ろうとしてもカレー味のラーメンにしかならないよね?」

 

 :流石に鍋は洗えよ!

 :もちろん、錬金窯も洗いますよね? 

 

「うん、まぁ画面見て貰えばわかるけど、基本的に下級融合は失敗すればするほど『窯買い替えた方が良くね?』という大惨事になるんだが、実はこの失敗した窯に成功率アップの秘訣がある」

 

「私もそのお話を聞くの初めてです」

 

「良かろう、では耳をかっぽじって聞くように」

 

「はーい」

 

 :はーい

 :はーい

 :はーい

 

 僕は錬金窯の失敗作を以下用にして新品同様に手入れするかの順序を立てて説明する。

 

 基本的に失敗は窯に深刻なダメージを負わせる行為だ。

 鍋でいえば熱しすぎたり食材を焦がすことで発するダメージを負う。

 

 無理やりタワシでガシガシ擦ると以前までと同様に扱えなくなるなんてことは錬金窯にも同様に起こり得るのだ。

 

「で、僕はこの窯で何回も失敗してるわけだが、いつの日か成功率が10%になっていた日があった」

 

「それでも低いですね」

 

「でも実際は二倍だ。なぜそんな事が起きたかと言えば、ちょうど前の日に遊びで作った汚れだけを溶かして食べる魔法生物のスライムを錬成してな。そいつを窯に突っ込んで一晩置いていたことを思い出した」

 

「先にそのレシピをお出ししましょう、ね?」

 

「製作難易度80だけど聞くか?」

 

「やっぱり何も聞かなかったことにしてください」

 

「ヨシッ」

 

 :ヨシではないです

 :話すたびにボロが出るな、この人

 :安定の先輩クオリティ

 

「まぁ僕が言いたいのは、下級融合は鍋のお手入れ次第で決まる。失敗してもその鍋を大事に使い続ければいいことあるよってことだけ覚えてくれればいい。じゃあメインのスライムコアもどきを作っていくね。錬金窯にローパーの体液を半分くらいになるまで張り、そこに練乳の缶詰一つをドバッと開けて、玉こんにゃくを10個投入します。この玉こんにゃくの投入個数で成功確率がグッと下がるので、成功率を上げたい人は個数を減らすといいよ」

 

「ちなみに成功率を上げても?」

 

「上限は5%」

 

 :はいクソー

 :誰も見向きされないわ、こんなん

 :熟練度10で湿布作ってるのと同じ成功率で草

 :湿布の中間素材が発表されて本当に良かった!

 :錬金術界隈、我慢強い人多すぎ問題

 

「こいつを窯でぐつぐつ煮ます。大体五分ぐつぐつすれば終わります」

 

 :急に料理番組みたいに振る舞ってきたな

 :錬金術と料理って結構似通ってるところあるよ

 :それな

 :錬金術できても料理できない奴多いけど

 :やめろ! 

 

「出来ました。見てください、この艶々な輝き。これはどこからどう見てもスライムコア(白)ですね!」

 

 :おい!

 :サラッとやばいもの作るな!

 :これ、湿布の素材ですwww

 :あれ? これ一個1,000円くらいしないっけ?

 :マジか、玉こんにゃく!

 :くそ、俺たちは今まで玉こんにゃくの有用性を見逃していた?

 :目から鱗が落ちるようだわ

 :いや、みんな現実見ようぜ?

 :当然のように成功させてるこの人がおかしいだけ

 :初手で5%引くな!

 :いや、これ本当に5%なのか?

 :10個投入で5%以下(絶望)

 :食品からモンスターの高級素材を作ったと聞いて

 :あーあー拡散されてるよ

 :いや、これはしゃーない

 :白スライムは数は居るけどコアのドロップ率マジ低いからな

 

「先輩、このチャンネルの登録者数が150万人を突破しました」

 

「え、さっきまで10万人行くか行かないかってくらいじゃなかった?」

 

 10万人達成企画も用意してたのに150万人達成企画に変えちゃうかー?

 

「ダンジョン掲示板にウチのチャンネルURLが投下、瞬く間に拡散されたみたいです」

 

「マジかー」

 

 :残当

 :もう少し自分がやばいもの錬成したって自覚してもろて

 :ダンジョン素材をお家で錬成しないで!

 :ああ、値崩れ起こしてる!

 :言うて成功率5%だぞ?

 :希少神話が崩れたらそりゃそうよ

 

 ちなみにこれは序の口も序の口で、これからスライムコア(虹)作ろうとしてるんだけど、良いのかな?

 まぁ良いか。

 

 僕はそのままかき氷シロップでうまいこと虹色を作り出して先ほどと同じ手順でローパーの体液と玉こんにゃくを設置して鍋でぐつぐつ煮た。

 

 出来上がったスライムコアもどき(虹)の画像と、実際にそれでハイポーションもどきを作ったレシピと製作画像がバズって登録者数が更に5倍に増えた。

 

 もう笑うしかないので乾いた笑みを浮かべるので精一杯だったよね。

 

 配信後に回ってないお寿司を食べて豪遊した。

 今日くらいはこんな贅沢も許されるよね?

 

「先輩、バザーに出したお掃除スライム。飛ぶように売れてますよ」

 

「マジか。割と吹っ掛けたのに買う人いるんだ?」

 

 正気か? と聞き返す。

 

「成功率を上げられると言うパワーワードにみんな惹かれたようです」

 

「必死だね」

 

「そのスキルを活かすも殺すも自分次第ですから。それに今まで素材で10万円以上損失してる人もいますし、それ以上の利益が見込めるなら投資しますよ」

 

「そんなものかね」

 

「そんなもんです」

 

 ノリで作ってバザーに流した『お掃除スライム(3個セット)10万円』は無事完売した。

 

 買い損ねた人から再販を望む声を聞くくらいには人気商品になったようだ。

 

 これを機にみんな作れば良いのに、誰も作らないんだよなぁ。

 不思議。




おまけ
【初心者向け】錬金術師・熟練度上げ【レシピ集】
難易度薬品名一般公開先輩発表融合
ポーション
1ライムポーション
2ヒートポーション
炸裂玉
3オイルポーション
マッドポーション
毒消しポーション
味変ポーション
10目薬
15溶解液
23湿布
25スライムコアもどき(白)下級
25スライムコアもどき(虹)下級
30ハイポーション
30ハイポーションもどき下級
80お掃除スライム中級
80エクスポーションもどき中級
85エクスポーション
90快癒湿布
250エリクサー
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