限界社畜おじさんが、猫耳Vtuberになって世界をかわいく征服する   作:双葉 鳴

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 一方その頃、大塚君達は。

 切った張ったのバトルを繰り広げていた。

 茶の間でその映像を眺めながら、僕たち家族は食事をしている。

 

「大迫力ねぇ」

 

 迫り来るドラゴン、とそれ以外のモンスター達。

 りゅう族の支配下であろうとも、直接産んだ子供以外には威圧をかけた後襲ってくるのが慣わしらしい。

 今の姿に変化する前のアキオは逃げ足だけ早くて、難を逃れて来れたようだ。

 

「あ、変身されるようですよ」

「変身?」

「そ。僕が渡したアイテムでね、NYAOの変身コンパクト。彼にはヒーローになれるとだけ伝えてある」

「まんまと騙されたわけねぇ」

 

 母さんがニヤニヤしながら僕を見る。

 別に騙してないよ?

 本当のことは言ってないけど。

 僕と後輩もニヤニヤしながらその光景を見守った。

 

『く、数が多い。父さんは後ろに!』

『いつもはこんなことにはならないんだ。秋生、任せて平気か?』

『うん、そのための力を借りてきてるから』

 

 すっかり後輩の衣装に身を包んだアキオ、もとい秋生。

 ベルトに装着した専用転送陣に、ネイルの認証キーを承認させると、ヒロインらしからぬ音声と輝きが秋生の身を包んだ。

 

『変身!』

 

〝ドレスチェーンジ!〟

 

 変身ヒーローさながらの音声と、一瞬にして姿が置き換わる。

 全身のボディラインを強調したピッタリとしたレオタードの上から、(スピード)を基調としたドレスを纏う。ちょっと恥ずかしそうにはにかむ姿に、後輩がカメラ輪激写する。

 その横では母さんが感心していた。

 

「NYAOのアイシャドウ効果を衣装に実装したのねぇ」

「全部化粧にしちゃうのは忌避感強いからね。中身男の子だから」

「まぁ! まぁまぁ! なんだかんだもあなた、その気にさせるのが得意ねぇ」

「ふふん、伊達に僕だって男として生きてないからね。彼も特撮ヒーローは好んでいたみたいだし、これは彼にとってもチャンスだった。それだけだよ」

「守られてるだけの父親の心情は定かではないですけどね」

 

槍込(やぁりぃこみぃ)ィイイイイイイイ!』

 

 めっちゃ怨嗟の声を出してて草。

 あいつやりやがった! みたいな顔で、変貌した息子を頼りながらも困惑する大塚君。どんまい!

 

『スピードは出た、けれどこれじゃあ敵わない。けどこの装置で』

 

〝ネイルチェーンジ!〟

 今の秋生の肉体は大塚君と一緒。

 腕と点が一体化して、分厚い鱗に覆われている。

 つまりはより攻撃な形に変貌しているのだ。

 そんな腕では人間だった時のような細かな操作ができない。

 だからこそ、爪を媒介にした。

 

「今度はネイルね。いいアイディア思いついちゃった」

「追加武装ですか?」

「そんなとこよ」

「これはルージュの効果をネイルに当てたんだ」

「男子はネイルの色を変えたりしませんからねー、新鮮です」

「オシャレにそこまで興味がないだけだよ」

 

 茶の間ではまるで人ごとのように家族の活躍劇が描かれている。

 

『フラッシュザッパー』

 

 ラメ入りパールを爪に宿した秋生が、斬撃強化を付与して敵を切り裂く。

 その姿は舞踏を嗜む乙女のようであった。

 秋生の動きに追従するように、尻尾による二段攻撃。

 こっちは狙ってなかったようだが、それである程度の雑魚は一掃できた感じか。

 

「あ、危ない!」

 

 しかしそんな快進撃も束の間。

 物理的拘束が通用せぬのならと遠距離からのブレスを吐き出すドラゴン種。

 

『だろうね、そうくることも読んでたよ』

 

〝メイク、アーップ〟

 

 腕をクロスして顔をかくし、顔に近づけた腕の模様が変わる。

 白粉だけの効果を、顔全体に置くことで防御性能を大幅にパワーアップさせた。

 つまり、これ一つで、より女の子らしく変貌するのだ。

 その横では後輩が手を叩いて喜んでいた。

 ツボに入ったらしい。

 

『防御の相、鉄壁!』

 

 秋生はノリノリでメイクをし、父親のサポートに準じた。

 ここには鏡がないことが幸いしたのだろう。

 自分が今どんな顔をしているのか、父親の表情でしか判断できないのだから。

 

「ナイス、ナイスよヒー君!」

「こーれはいい気味ですね」

「ダメだこの二人、早くなんとかしないと」

 

 なんとかできる見込みは薄いが、指を加えて見てたら被害が僕にまで及ぶ。

 いや、もうとっくに及んで抗えてないのが現状か。

 

『秋生、その変身はあまり多用するな』

『どうして? この力がなかったら僕たち生き延びれなかったよ?』

『お前はそうでも、父さんは色々複雑だ』

『変な父さん。今はそんなこと言ってる場合じゃないじゃない』

 

 実際、今は生き延びるのが大変な時。

 いつまでも安いプライドに振り回されている場合ではないぞ大塚君!

 僕だって大変だったんだからな!

 君も僕の苦労の一端を味わうといい。

 

「しかし、モンスターは襲って来ないという触れ込みだったのでは?」

 

 後輩の指摘に、僕も頷く。

 実際大塚君も意味がわからないだろう。

 軟禁される前はドラゴン種から攻撃されることはなかったという。

 実際生みの親という特別性から仲間意識が強かったのかもしれない。

 しかし長く離れていたのもあり、そこの感覚が薄れてしまったのだろうか?

 仲間かどうかの判別もつかないので、ブレスを履いて確かめたとかかな?

 だったら元ドラゴンのアキオを襲う意味もわからない。

 まぁ今のアキオはだいぶ姿違うし、襲われても仕方はないと思うけど。

 

「おそらく、今の外見に問題があるのではないかと思う」

「外見?」

「ほら、保護した時に、彼ってば全裸だったじゃない?」

「あー」

 

 後輩がようやく納得いったという顔をする。

 では今から服を脱いでもらうか?

 流石にそれはダメでしょ。

 しかし二人は乗り気でどんな指示出しをするか迷っていた。

 脱がす前提でいいんだ?

 

「ダンジョンに入るには全裸推奨ってことですか?」

「いいわね、続けなさい。お母さん興奮してきたわ」

 

 ダメだこの二人。合わせちゃいけない人種だった。

 話を聞かない人物が一人増えたことに頭を抱え、様子を伺う。

 服を脱がしたかって?

 こっちで指示したって拒否するでしょ、そんなん。

 他人だったらいいけど親子なんだぞ!

 

『父さん、解体は僕がやるから。アイテム袋広げる係はお願いね』

『俺だって解体くらいは』

『本当にやったことあるの?』

 

 今は一刻の猶予もない。プライドだけで対抗してるのならやめてほしいという目で見られ、大塚君は素直にアイテム袋を広げた。

 そこで随分と手際の良い動きに見入り、なんとなくどこでそんな経験を積んだのか興味を持った。

 

『お前、随分手際がいいな』

『リコさんに教わったんだ』

『槍込が? そうか、あいつ……本当に親身になって教えてたんだな。それを俺は、反骨精神で酷い言葉を浴びせてしまった』

『いいから、手を動かして。僕たちに休んでる時間はないからね?』

『あ、ああ』

 

 おや、ここにきて殊勝な態度。

 情緒が安定しないな。

 

「ヒー君」

「なんだよ」

「あなたいつの間に中学生男子をたぶらかす悪い女になったの?」

「僕は男だが?」

「でも女装はしてましたよね?」

「そりゃオモテの顔は名前が売れ過ぎてたからね。変装はするでしょ」

「だとしたって女装は選ばないでしょ」

 

 それはそう。

 しかし僕の持ち込んだ服は全て後輩によって女子の服に真改造されてしまっていた。クローゼットにも女性物しか並んでおらず、仕方なくその中から着ても恥ずかしくないものをチョイスして出て行ったんだけど、秋生には刺激的過ぎたみたいだな。

 オシャレって難しい。

 

「ちなみに、集めた素材って先輩が入手する流れなんですか?」

「違うよ」

「え、じゃあこのアイテムって一体どこに?」

「僕がどうしてわざわざ大塚君に男だった頃の、錬金術師だった頃の地位を思い出させてあげたと思う?」

「まさか先輩……」

 

 後輩は思い詰めた顔。

 そうだ、僕は秋生に集めさせた素材を使って大塚君に再び錬金術師の道を歩ませようとしている。

 確かにブランクはあるだろう。

 しかしいつまでも被害者ぶっていては事は前に進まない。

 秋生を同行させたのは、彼にもっと真剣に事にあたっていただきたいという思惑があったのだ。

 

 それに成功の暁には彼の地位と立場の回復を条件づけている。

 しかしその時に本人に腕がありませんじゃ話にならないのだ。

 彼には薄れていく中でも知識がある。

 本体でそれが為せないのなら、スペアボディでそれを為していただきたいと思ってるんだよね。

 

「でも、全部彼に持たせるのは勿体無いので僕もそのうちの1割をもらう」

「ですよね」

「それで彼の研究室に設置されてるテレビ向けに配信を行う。その素材を使ったレシピなどの発表だ」

「大塚さんは果たして本腰入れてやるでしょうか?」

 

 今までの彼ならば難しいだろう。

 向上心があり、出世欲が強い。

 他人を引き摺り下ろして、その地位につこうとしてきた。

 しかし引き摺り下ろす対象がいなければ?

 その上失敗すれば実の息子が傷つく。

 父親風を吹かせたい彼としては覚悟が決まるだろう。

 

「一応保険は打ってあるけど、彼には一念発起してもらいたい所かな?」

「保険って?」

「スペアボディは残機制で死んでもやり直せるってことと」

「他にも?」

「うん、これは本当に最後の切り札なんだけど、おんなじことを僕とアメリアさんでやる感じ」

「イジメですか?」

「酷いな。これには世界の命運がかかってるんだよ? 彼だけに託して高みの見物の方が悪趣味じゃないか」

 

 大塚君をいじめるために選出したわけじゃないじゃんね。

 なんで今すぐやらないのかと言えば、単純にハッピーエンドになる可能性が大塚君の方がわずかに高いから。

 僕たちでやった場合、確実に遺恨が残る終わりになる。

 彼らの場合はりゅう族との共存ルートの可能性がわずかにだが残されている。

 対して僕らはそれらが一切ない。

 その差かな?

 戦わずに済むならその方がいいし。

 

「でも先輩、口元緩んでますよ」

「おっと」

「なんだかんだ、ヒー君も私のこと言えなくなぁい?」

「一緒にしないでいただきたい」

 

 母さんに仲間意識を持たれるが。

 なんで嘘つきと一緒にされなきゃいけないんだろう。

 僕のはほら、あれだ。

 嘘はついてないけど、本当のことも言ってない。

 つまりはいつも通りである。

 

 まさか配信で培ったメンタルがここにきて発揮されようとはね。

 大塚君に悪意が向かわないようにしつつ、それとなく国民を満足できる形での発表が望ましいか。

 そんな話を家族ですると、母さんがここにきて挙手をする。

 

「何?」

「お母さん、この子で一本ネタが思いついたわ。ちょっと編集さんに連絡入れてくる」

 

 どうやらこの配信をネタにして漫画を一本捻出するそうだ。

 ただでさえNYAOで忙しいのに商魂逞しいな。

 いや、だが売れっ子漫画家だからこその発言力もあるか。

 世界の命運を賭けた戦いは二人の親子に託された。

 考えればなくはないストーリーラインだ。

 

 そんな話はとんとん拍子で決まり、ネットで不定期更新するという形で契約をとってきた。

 まぁ本業のNYAOを疎かにするなんて担当編集が許すわけないもんな。

 そしてその漫画は早くも閲覧数が50万を更新するくらいにはバズっていた。

 

 大塚君にとっては黒歴史の誕生である。

 まぁ、どんまい。骨は拾ってあげるから。

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