勇者カリナ/未来戦線クロスロード ―魔王を倒した少女は、AI戦争の未来世界で、聖剣精霊と豪剣人機とともに人類を救う― 作:美風慶伍
エレナが離れて機体起動のファーストシークエンスが始まる。
パイロットのIDカードセット、機体起動IDカードセット、機体メインスイッチオン、各部スイッチオン、メインエンジンの余熱は自動制御でコクピット前方のメインスクリーンに10秒のカウントダウンが表示される。それがゼロを告げた時イグニッション可能になる。
「メインエンジンイグニッション!」
イグニッションスイッチを操作すると音が鳴ってメインエンジンが動き始める。コックピットのスクリーンに機体外部の映像が写り全ての機能が有効になったことが表示される。操縦席の両脇には所定のデータブローブがある。それをはめてカリナは動いた。両腕を意識して動かせば、スティール・ウォーリアーの両腕も同調するように動く。
「これが、マスタースレーブ!」
『そうだよ、アンタの上半身の動きを完璧にトレースする。アンタが剣を振るえば、コイツも剣を振るう。何を成すかはあんた次第だ』
「はい!」
エレナの声にカリナは勇気をもらった気がした。その傍らではエリュシオとスティール・ウォーリアーのAIが対話をしていた。
『スティール・ウォーリアーの魂よ。私は人工精霊エリュシオ、この機体の操縦者カリナ・ウィングスを補佐する者です。聞こえますか?』
『聞こえる。私は機体名スティール・ウォーリアー、その固有AIパーソナリティだ』
『ならば、スティール・ウォーリアー、我が主人カリナの意思に従い、この機体との仲立ちをするに当たり貴方の協力を得たい。機体の直接制御は貴方が、操縦意図の解釈と戦闘情報の総括、そして、特殊兵装の制御は私に任せてもらいたい』
『ならば、マスターIDの保持者の意思を確認したい。パイロット・カリナ――人格名エリュシオの申し出を了承するか?』
問われた言葉にカリナは答える。
「了承します! 二人で連携し、私の戦闘を支援してください!」
『了解した、パイロット・カリナ、そして、エリュシオ――戦闘行動を開始してくれ』
『ご理解に感謝する』
そして、この機体にはもう一人、乗っていた。
『それで? 俺は何をすれば良い?』
英霊として降臨したジェイだ。機体の中、カリナのシートの背後の空間に控えていた。
「ジェイさんは私の戦闘への助言をお願いします。私はまだヴァンガードでの実戦がありません。戦闘局面を一緒に見届けてアドバイスしてほしいんです」
『わかった! 抜かり無くアドバイスする!』
「はい!」
そして、いよいよ出陣の時は来た。ルーカスからの通信だ。
『カリナ! ブレイブハーツアライアンスから招集された地上偵察迎撃部隊が来た! 俺はそっちに合流する! 上空強襲部隊の支援ヘリも来た!』
「了解! 出陣します!」
ルーカスは先んじて、地上部隊に合流していた。そして、カリナも頭上を見れば合流する武装支援ヘリが4機ほど上空に差し掛かっていた。
「来たわ! 私達も行きましょう!」
『おう!』
ジェイの威勢のよい声がする。さらに、エリュシオも、
『機体構造、機体制御情報、把握――メインエンジン推力上昇、パイロットは市街路へと移動してください』
「了解!」
ガレージ前の表通りに足を進める。両足を開き気味に立ちカリナは宣言する。
「電磁プラズマ型ブラストスラスター作動! 出力上昇!」
『電磁プラズマ型ブラストスラスター作動開始、出力上昇します』
スティール・ウォーリアーの全身各部から白銀色のプラズマの奔流が吹き出し始めた。その高音で空気が揺らいでいた。
「飛行開始!」
『全プラズマブラスト推力制御、飛行浮揚ベクトル発生――、機体上昇します』
――ゴッ! ヴゥワァァアアアッ!――
スティール・ウォーリアーは全身から白銀色の奔流をほとばしらせて空へと舞い上がっていく。そして、頭上で待機していた支援ヘリ部隊と合流し、一路、マルマラ湾へと進路を取る。その時、エレナから通信が入る。
『カリナ、気をつけていっておいで』
「はい!」
『あんたならやれるよ! 自信をお持ち!』
「ありがとうございます! 行ってきます!」
そのエレナからの言葉がカリナに勇気をもたらした。
「それではこれより、洋上不審船の偵察および上陸勢力の迎撃打撃攻撃に向かいます! 各自、周囲警戒を怠らず、連携連絡は密にしてください! 移動開始!」
『PROCEED!』
カリナの指示に対して返ってきた言葉が、この世界における〝了解〟という意味の言葉だということをジェイから教わる。今、まさに戦いの火蓋は切って落とされたのだった。