勇者カリナ/未来戦線クロスロード ―魔王を倒した少女は、AI戦争の未来世界で、聖剣精霊と豪剣人機とともに人類を救う― 作:美風慶伍
カリナはエリュシオに問うた。
「エリュシオ、敵、さらなら増援部隊は?」
『確認できません、全センサー、全レーダー、全て無反応です。敵攻撃部隊を殲滅したと認識します』
「了解」
カリナは心の中から安堵する気持ちを抱いていた。
「やった、無事に守れた!」
そして、カリナの戦いを労う声もあった。ジェイだ。
『よくやったな、カリナ!』
「はい」
そしてもう一つ悲しい言葉があった。
『俺がいなくても、もう大丈夫だな』
召喚の限界だった。ジェイの姿が揺らいでいる。体の末端から少しずつ光の粒子に変わっている。
「ジェイさん、ありがとうございました」
『俺は何もしてねえよ。ただ、お前の1人立ちを見届けただけだ』
そしてジェイは消えかかった体でカリナを抱きしめた。
『この世界の戦いはお前が元いた世界の戦いよりも過酷かもしれない。しかし――、火柱を拭き上げるしか知らない俺たちが、あの鉄の悪魔を完膚なきまで叩き伏せるのは、カリナ――お前のような素晴らしい〝技〟を持った戦士だ』
別れの時に際して、カリナは静かに涙を浮かべた。
「ジェイさん、最後まで本当にありがとうございました」
そして最後に笑顔を浮かべてジェイはつぶやく。
『負けるなよ』
ジェイはついに、光の粒子に霧散した。背中から見守ってくれていたはずのジェイの気配は微塵も残っていなかった。寂しさと空虚感がカリナを襲う。
「ジェイさん……」
その時にカリナの胸のなかに去来したのは、この世界で初めてジェイにあった時に彼から向けられたあの笑顔だった。
荒野のどまんなかで、アイアンオーダーのクロムハウンドに襲われ逃げ延び、初めて出会った未来世界の人間が、レオンとジェイだった。
右も左もわからない状態で、つきっきりで面倒を見てくれたのがジェイだった。
なんど心が折れかけたかわからない。なんのためにこの世界に導かれたのか、理解できたためしもない。
それでも、カリナのそばにはジェイが居た。
あの力強い手がいつでもカリナの背中を押してくれたのだ。
カリナがこの世界の戦士であるアーセナルコマンドとして独り立ちできるようになるまで――
――誰にも負けない強い心を持っている。その心の強さがお前の強さの源だ――
ジェイにそう言われたことを思い出した。
ならば、今はうつむくべきではない。前を見るべきだ。
「うっ――」
涙が溢れて声が漏れそうになる。だが、
「まだここ戦場だよね」
『マスター、任務は最後までこなしましょう』
「うん、分かってる」
そしてカリナは前を向いて通信で一斉に報じた。
「こちらカリナ、敵攻撃部隊全滅を確認! この戦い我々の勝利です!」
『カリナ! こちらでも確認した! 今ブレイブハーツアライアンスに迎撃の成功を報告した! 急いで戻って来い!』
ルーカスの声だ。その言葉に心が満たされて空虚感が消えていくのがわかる。
そうだ、自分にはまだ帰る場所があるのだから。
「今行きます!」
カリナはスティールウォリアーを地上へと飛行させる。
『よくやったな! 新入り!』
『殊勲賞ものだぜ!』
『早く帰ってこい! 祝勝会が待ってるぞ』
地上部隊の傭兵たちだった。それは仲間としての言葉だった。
「はい!」
仲間がいる。待ってくれてる人がいる。
それこそが戦場で一番勇気をもらえるのだから。
カリナは笑顔で地上へと向かったのだった。
( 'ω'o[ 読者様へ ]o
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