勇者カリナ/未来戦線クロスロード ―魔王を倒した少女は、AI戦争の未来世界で、聖剣精霊と豪剣人機とともに人類を救う― 作:美風慶伍
ピースセーファーの最終判断 ―カリナお泊り3日間―
戦いが終わった後のカリナの周囲は極めて慌ただしかった。
そもそもがカリナがアーセナルコマンドとしてのライセンス取得前に戦場に出たことが問題視された。
「ちょっと待ってください! 緊急事態に対する特例の一つとして志願兵扱いをするという承認を得たじゃないですか!」
ルーカスは敢然と抗議した。これに対し犯罪取り締まりと治安維持を主体とする組織ピースセーファーは妥協案としてブレイブハーツアライアンスとの協議の上で、3日間だけの短期勾留をカリナに課した。
ルーカスの上司のトルコ系の男性は毅然として告げた。
「ルーカス、お前の言うことももっともだ。確かに志願兵特例はブレイブハーツアライアンスから許可を得た」
「だったら!」
「ルーカス! 彼女の行動が都市の危機的状況を回避したのは事実だ。しかしだ、アーセナルコマンドの制度はこの世界における軍事組織の根幹をなす制度だ。ヴァンガードのパイロットとして戦場に出れるのはライセンスを取得した後のみ――、これはこの世界の絶対の鉄則だ。たとえどんな勇者であったとしても〝法〟を曲げることはできないのだよ」
「つまりは戦況への対応と法律の順守の狭間の〝妥協〟ですか?」
「その通りだ。プラスマイナスゼロにすることはピースセーファーがどうしても認めなかった。それゆえ3日間の勾留、それに加えて速やかなライセンスの取得。この2つを持ってライセンス未取得で戦場へ出た行為を黙認するという結論だ」
つまりは正式な資格を持っていないのに戦場に飛び出したことへのお仕置きだけは絶対譲らないという判断なのだ。納得できないルーカスだったが、カリナ自身は意外とあっけらかんとしていた。
「戦場に出るのは資格が必要という鉄則があるのなら、それを無理に曲げて飛び出して行ったのは私ですから。3日間ゆっくり休ませてもらいます」
当然ながらその3日間はレギオンブレイドとも距離を置くことになる。その間はエレナが預かることになった。
「しっかり勤めておいで。3日間なんてあっという間だけどね」
『マスター、留守番はしっかりしておりますので』
2人に見送られてカリナはイスタンボールのピースセーファーの附属勾留施設で鉄格子のはまった部屋に3日間寝泊まりする羽目になったのだ。
とはいえ――、カリナがイスタンボールの危機的状況を打破したのは事実で勾留施設の誰もが知っていた。ピースセーファーが対面を保つための短期勾留だったこともあり、施設側の待遇は決して悪いものではなかった。
「差し入れまた来てるわよ」
女性看守がカリナへの差し入れ品を持ってくる。カリナの戦果を知った人々からの贈り物で、菓子類や食事やら、着替えやら何やら、次から次へと持ち込まれてくる。
「またですか? 今度は何だろう」
「えーと、こっちは寝巻き。こっちは嗜好品のお菓子関係ね、あ、女性用の下着もあるわね。受け取りきれないならこっちで保管しておくわよ」
「お願いします、もういっぱいいっぱいなんで……」
狭い勾留室の中は物の置き場もないくらいだった。食事関係は食べきれないし、衣類関係はサイズが合わないものもあった。なので他の勾留者に譲ってしまった。
そういうことなので、ベッドがやや硬いことを除けばそれ以外は快適な3日間だった。そして4日目の朝、勾留から解放されると迎えに来てくれたのはルーカスだった。
「お勤めご苦労様。無事だったかい?」
「はい、とても親切だったので」
「勾留と言うより、3日間ホテルに缶詰になったようなもんだな」
「かもしれません」
明るく笑ってルーカスの手を取り2人で並んで施設を後にしたのだった。