勇者カリナ/未来戦線クロスロード ―魔王を倒した少女は、AI戦争の未来世界で、聖剣精霊と豪剣人機とともに人類を救う― 作:美風慶伍
エレナのガレージに戻ったあと、カリナはグリーンドワーフを用いて教習の残り課程を一気に修めた。その頃にはレオンたちも絶対防壁外の防衛戦に勝利したとの知らせが届いていた。そして、正式なライセンス取得――、カリナはそれをジェイの墓前に知らせた。
この世界では遺体の運搬はされないことになっている。死んだ現地で処理されるのが鉄則だ。だから、生まれ故郷や、生活の縁の地では、慰霊碑などで弔うのが主流だ。カリナが花を供えたのは〝無名戦士の墓塔〟である。大理石の堅牢な石造りの塔、その中には戦死者の墓碑銘が収められており、ジェイの名もそこに加えられると言う。
ルーカスをともない墓前に華を添える。
「ジェイさん、ライセンス取得しました。ようやくここからスタート地点です」
カリナが言葉を投げかけた時、まるで喜んでくれるかのようにどこからか一迅の風が吹いた。
「ジェイ、後のことは任せろ。今は、親父さんとゆっくり休んでくれ」
ルーカスの言葉にも風は吹いた。それはまるでカリナを託すかのような風だった。
二人はジェイの記憶を噛み締めながら墓塔をあとにしたのである。
そして――
それからさらに数日が過ぎた。ルーカスの紹介で都市の治安維持任務を受けて、これを終えカリナは休暇をとっていた。何もせずに体を休めていたが、その間ルーカスとはなかなか会えなかった。カリナは慣れないながらも、ルーカスに電子メールを送った。
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To:Lucus
From:Karina
Title:Inquire about your schedule
会いたいです。ご予定は空いていますか?
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苦労しつつなんとかこれだけでも送信できた。でも、半日かかって帰ってきたメールは無慈悲だった。
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To:Karinas
From:Lucus
Title:Re:Inquire about yours chedule
すまない。都市部でテロ事件が起きた。応援で駆り出されてしまった。
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「しかたないか」
それが彼の仕事だ。でも――
「せっかくのお休みなのにな」
会えないことがどことなくもどかしかった。それでも、2時間後にもう一つ送られてきた。
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To:Karinas
From:Lucus
Title:I'll make it up to you.
予定が空き次第必ず連絡する。約束する
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そして、メールには画像が添えられていた。小さな薄紫色の花がたくさん咲く〝シオン〟の花だ。花言葉は――
「君を忘れない、だっけ」
その意味に気づいた時、カリナの頬は思わず緩んでしまう。一抹の寂しさなどどこかに吹き飛んでいた。
それから、休暇の5日めの朝のことだ。エレナの事務所で留守番をしているとルーカスから電話がかかってきた。
「はい、カリナです」
『僕だ。今日の夜、時間取れるか?』
「ルーカスさん? はい、大丈夫です」
『それならよかった。君を連れて行きたい場所があるんだ。アーセナル・リロード・ロッジと言う盛り場だ』
「盛り場? お酒を飲むんですか?」
『そうだ! そこに夜の8時に集まる事になった。君の勝利祝いだ』
「本当ですか? はい! 喜んで」
『それじゃあ、今日の午後、迎えに行くから』
「わかりました!」
カリナの退院のお祝いパーティーをするという。そのことをエレナにも話したらエレナもすでに知っていて参加するという。
「わたしは別件があるから。先に行ってる。あんたはルーカスと一緒に来るといいよ」
「わかりました」
午後3時頃にルーカスが迎えに来る。
「待たせたな」
ルーカスはスーツ姿だったが服の仕立ての細部が違う。色合いが違う。社交パーティーに出るかのような雰囲気だった。
対してカリナはまだ、こちらの世界での社交用の衣装は持ち合わせていなかった。念のためワンピース衣装を選んだのだが、気後れしてしまう。
「そんなシッカリ目に着飾るんですか?」
「あぁ、かなり派手目に盛り上げるからな」
「そんな――どうしよう――」
途方に暮れるカリナにルーカスは言った。
「大丈夫だ、すでに準備してある。さ、乗れよ」
「あ――、はい!」
ルーカスはカリナを自らの愛車に乗せて走り出すのだった。