勇者カリナ/未来戦線クロスロード ―魔王を倒した少女は、AI戦争の未来世界で、聖剣精霊と豪剣人機とともに人類を救う― 作:美風慶伍
イスタンボールはそもそも3つの地区に分かれる。
地中海と黒海をつなぐボスポラス海峡周辺から北西へ約50キロまでが物量拠点であるセントラルポートエリア、ボスポラス海峡から南東へ先が経済領域であるシチズンエリア、反対に北西へ50キロより先が戦闘拠点であるミリタリーエリアとなる。
2人が向かったのはミリタリーエリアの南西の外れにある〝シリウリ〟の街だ。ミリタリーエリアとセントラルポートエリアの境に在り、位置的に戦闘職の者たちの休息の場として、その家族の生活の場として機能している。
目抜き通りには酒場や歓楽街が立ち並び荒くれ者が日頃のうさを晴らしている。
店の名前は【アーセナル・リロード・ロッジ】
今日もその店は盛り上がっていた。
すでに日も沈み夜7時半を回っていた。
ハイウェイから降りて一般道を海へと向かう。地中海に臨む海岸近くの一角にその店はあった。屋根に派手なネオンの看板があるカジュアルなバーで、屋外席と屋内席があり、店内にはテーブル席とカウンター席もあった。店の奥のステージではバンドとシンガーが音楽を提供している。
店の外の駐車場には多種多様なヴァンガードや軍用車両が並んでいる。いかにも任務の傍らに飲みに来た雰囲気がある。
ヴァンガード乗りの傭兵としては定番のカーゴズボンにTシャツという服装の男が比較的多い。バーのアーセナル・リロード・ロッジにはすでに多くの人が集まっていた。
車を止めて中から降りる。ルーカスとカリナ2人連れ立って店内へと向かえばそこにはすでに多くのアーセナルコマンドたちが盛り上がっていた。もちろん、先回りしていたエレナの姿もあった。いつものつなぎ姿でなく、パンツルック姿で着飾っている。
多くの言葉が交わされ、酒盃が行き交っている。その最中にカリナが現れたので場はより盛り上がった。
「お!? やっと来た」
「功労者のご登場だ」
多くの言葉と共に歓声が上がる。それはカリナを歓迎する宴の始まりだった。
「初陣で怪我は無いようだな」
「出所おめでとう!」
「3日間ぶち込まれたんだってな」
初陣の無事を案じ、3日間の勾留を揶揄する声もあれば、
「うわさ以上だな」
「すごい美人じゃん」
「こりゃ簡単に手出したらいかねえな」
「そう簡単に釣り合わねぇっつうの」
カリナの美しさに感嘆する声もある。
「見てくれで戦うわけじゃないが」
「あの圧倒的不利な状況でよく戦えたな」
「外見と成果が一致しねえな」
「コマンドは見かけによらないって言うだろ?」
「まさにそれだな」
カリナの戦闘成果に疑問の声を漏らす者もいた。
「まあ難しいことは後にしようぜ」
「そうだな」
「みんなグラス持ったか?」
すでに乾杯の準備はできていた。
店に訪れたカリナとルーカスにシャンパンのグラスを差し出したのは、レオン隊長とイリスだった。
レオンは傭兵としての定番のカーゴパンツにTシャツで、イリスは以前の革ジャケット姿と異なり、素肌の露出の多いノースリーブのボディーコンシャスドレス、日焼け色の肌に白い生地が鮮やかだった。
「無事で何よりだ」
「ライセンス取得、あらためておめでとう! よくやったわね!」
それぞれにグラスを受け取り言葉を返す。
「ありがとうございます!」
レオンが答える。
「礼を言うならここにいる全員に言うんだな。みんなお前の活躍に感謝していた」
その言葉に導かれるように後ろを振り返れば、店の常連の傭兵達はもとより、その恋人やパートナーもパーティーに参加していた。必然的にカリナも言葉を送らなければならないだろう。
「皆さん! ご心配おかけしました。そして、こんな素敵な席にお招きいただき本当にありがとうございます! 今は心ゆくまで楽しみたいと思います」
みんながグラスを手に持ってかけ声を待っていた。
「それでは皆さん」
満面の笑顔でカリナは高らかに告げた。
「乾杯!」
「乾杯!!」
グラスを飲み干せば拍手がわき起こる。カリナの回復祝いのパーティーの始まりだ。