勇者カリナ/未来戦線クロスロード ―魔王を倒した少女は、AI戦争の未来世界で、聖剣精霊と豪剣人機とともに人類を救う― 作:美風慶伍
多くの人が次々にカリナの元を訪れる。言葉が交わされお互いに感謝する。
会場に傭兵だけでなくその恋人や家族、仕事仲間が多いのもカリナの行動が彼らを救ったからに他ならなかった。そして、カリナ自ら歩き出す。そして1人1人声をかけ多くの人と言葉を交わした。
そんな彼女が向かったのはあの人物のところだった。
「レオン隊長」
「来たか」
カリナはレオンの真正面に向かい合った。
「本当にありがとうございました」
「礼を言うのはこっちだ。敵の策略にまんまとハマっちまった。お前が動いてくれなかったらここに来ている連中の何人かは生きちゃいないだろう。アイアンの連中が警戒網を突破して洋上から上陸してきたってことも驚きだが、それ以上にコマンドたちの生活域に肉薄したということも大きな問題だ」
「それは本当に私も戦慄しました」
レオンはバーテンにオーダーしてカリナにカクテルを差し出しながら問いかけてきた。
「それにしてもよく分かったな、敵の策略が」
「それは――」
レオンの問いかけに周りが関心を持って聞き耳を立てているのがわかる。カリナは言葉を選んで慎重に返答した。
「昔、似たような戦いをしたことがあるんです」
今ならここに集まってる人たちに対して自らの素性を打ち明けてもいいだろう。カリナは心に決めた。
「一部の方たちはご存知かもしれませんが、私は別の世界からやってきた人間なんです。そこで魔族と呼ばれる異種族と熾烈な戦いを繰り広げてきました。当然、色々な戦闘を経験しています」
周囲が感心を持って見守っている。
「人間が人間以外の種族と戦うと言うことは、お互いの生き残りをかけた潰し合いです。そのためには手段を選べません。魔族は人間の戦意を削ぐためならば何でもやります。人間でないからこそ、非人道的な倫理にもとる手段も嬉々としてやってのけます。だからこそです」
その言葉に多くの人が頷いていた。魔族とアイアンオーダー、その類似性には気になるところも多いのは事実だ。
カリナは周りのアーセナルコマンドたちを眺めながら言った。
「非人間的な種族であるアイアンオーダーとの戦いの過酷さが私にはわかるんです。奴らは人間の心を持ちません。だからこそ人間が一番苦しむ手段を平然と行います。あの日、あの場所において、人間が一番辛い思いをするのは何だろう? そのことが頭をよぎった時気づいたんです」
イリスはレオンの隣で冷静に指摘する。
「非戦闘員を攻撃対象とした殺戮ね?」
「はい、しかもアイアンオーダーは、目的が達成されれば戦闘の駒は捨ててもいいと思っています。敵陣に食い込むだけ食い込んで自壊する。そんな作戦を平然と行うはずです。ある意味、同族意識がないゆえに魔族よりも厄介です。ここで食い止めなければ大変なことになる。そう思ったんです」
「野性的感ってやつね」
さすがのイリスも感心しきっていた。
「さすがだな」
「可愛いだけじゃないってわけだ」
「違いねぇ」
居合わせた男たちは口々に言葉を述べた。そんな空気を察しながらレオンは語った。
「お前がどんな戦いを生きてきたのか分かったような気がする」
そして右手を差し出す。
「これからもよろしく頼む」
朴訥ながら口元に笑みが浮かんだ。その右手にカリナも右手を差し出して握手をする。
「はい! こちらこそよろしくお願いいたします」
そこでまたカリナは柔和な優しい笑みを浮かべるのだった。