勇者カリナ/未来戦線クロスロード ―魔王を倒した少女は、AI戦争の未来世界で、聖剣精霊と豪剣人機とともに人類を救う― 作:美風慶伍
エミルはカリナのお目付け役として居合わせているエレナにまずは挨拶する。
「久しぶり、ミスエレナ」
「お久しぶり。スターライト・グレースの調子はどうだい?」
「ああ、すこぶる快調だ。当分はリーグの頂点を譲る気はないよ」
「トップリーグには行かないのかい?」
「この街を離れたくないからな、当分行くつもりはない」
「まぁ、せいぜい頑張りな」
顔馴染みな会話の後でエミルは質問をしてきた。
「それで? 彼女が例の英雄かい?」
「そうだよ。紹介しようカリナ・ウィングスだ」
それまでスツールに腰掛けていたが立ち上がると礼儀正しく挨拶する。
「カリナです。よろしくお願いします」
するとエミルも右手を差し出してくる。
「エミル・ティムルだ。ヴァンガードを使った戦闘競技ヴァーストライク・アリーナの選手をやっている」
「よろしくお願いします」
「表に止めてある〝アレ〟について説明しよう。ついて来い」
堂々とした王者然とした立ち振る舞いのままグラスを手にバーの外へと向かう。カリナは興味を引かれてその背中を追う。彼の言う〝アレ〟が店の表に停められている真新しいヴァンガードであることは皆が即座に気づいた。
エミルとカリナ、2人の歩きを追うように店の中の男たちもぞろぞろと店の外へと出てきた。
エミルはカリナに告げる。
「このヴァンガードは、俺たちからの君への心づくしたと思ってほしい」
「えっ? どういうことですか?」
エミルは口元に恵みを浮かべて言葉を続けた。
「このヴァンガードは今回君の活躍で助けられた全ての人々から感謝の気持ちなんだ。君がまだ自分専用のヴァンガードを持っていないと聞いてね。それに、あの――スティール・ウォーリアーを今回乗りこなしたと言う。あのいわくつきの白兵戦機体をだ。そこで未完成だったあの機体を完全整備して、綺麗にしようと言うことになった。君の〝愛機〟とするためにね」
「私の愛機」
「そうだ。そのために多くの人々が資金を出し合い作り上げたんだ」
「私に?」
突然の出来事にカリナは驚くことしきりだったが、周囲を見回せば皆の気持ちは同じだったようだ。
「そうだ。事実、俺も妹や弟たちが命を助けられた。俺の兄弟はヴァンガード関連の仕事で働いている。君が命をかけて戦ってくれなかったら間違いなく死んでいただろう。ところが、あれだけの活躍をしたと言うのに君は自分専用のヴァンガードを持っていないという。それを聞いた人々が誰が言うともなく手持ちの金を少しずつ出し合って費用を集めたんだ」
そしてエミルは視線をエレナに向ける。
「そして集まった資金を元手に、エレナさんが改修案を設計し、彼女の指導のもと俺のワークスチームで作り上げたんだ。無論俺も資金提供している」
するとちょうどそこでマイクがトレーラーのハンガーを操作した。仰向けになっていた機体は90度持ち上がり垂直になる。立っていたのは鈍い灰銀色にかがやく2足歩行2本腕の美しいシルエットのヴァンガード――生まれ変わった新生スティール・ウォーリアーだ。
驚きと喜びと感謝の気持ちでカリナは満たされていた。そしてそんな彼女にエミルは1枚のカードキーを差し出した。
「これが新生スティール・ウォーリアーのベーシックイグニッションキーだ。これは君のものだ、君の自由意志で好きに使うがいい」
「ありがとうございます!」
それを受け取りながら自然に感謝の言葉が漏れていた。