勇者カリナ/未来戦線クロスロード ―魔王を倒した少女は、AI戦争の未来世界で、聖剣精霊と豪剣人機とともに人類を救う― 作:美風慶伍
宴も時間が過ぎていく中でカリナはある人物の姿を探した。
「先輩どこに行ったのかしら」
カリナが探していたのは傭兵として先輩であるイリスである。
パーティーの序盤の時は挨拶を交わしたし他の傭兵たちと談笑していたのも見かけていた。
そして少し話し込みたくなり彼女の姿を探したからなかなか見つからない。
「もしかして」
そう思ってバーの店内から外に出るとヴァンガード停めてある場所へと向かった。
すると彼女はいた。スティールウォーリアーのところに。
トレーラーのハンガーに止めてある状態の機体の前に佇んでいたのだ。
「イリス先輩」
カリナに声をかけられてイリスは振り向いた。
「カリナ――」
「姿が見えなかったのでどちらに行かれたのだろうと思って」
「悪いね。探させちゃって」
「いえ、大丈夫です」
そう言いながら2人は並んで立つ。2人の視線はスティールウォーリアに向けられていた。
「この機体、ようやく日の目を見ることになったんだね」
「――ご存知だったんですか?」
「ああ、こいつに乗るはずだった傭兵は私の先輩だったからね」
「えっ?」
さすがに驚く事実だった。そして意外な繋がりだったのだ。
「東洋人でね。大陸の反対側のニホンと言う土地から流れてきた人物だった。礼儀正しくて、曲がったことが嫌いで、練習や積み重ねを絶対に怠らない人だった。私はあの人を見て〝技〟というものの重要性を学んだんだ」
「技――、ですか?」
「ああ」
その言葉のニュアンスには過去を懐かしむ雰囲気があった。
「誰にも負けない技を持つこと。それが戦場ではとてつもない意味を持つ。何物にも変えられない絶対的な価値を自ら持つことで、それが強さに変わっていき戦場で生き残るチャンスを広げてくれる。あの人の背中に私はそう教わった」
だがそこで大きくため息をつく。
「そう思ってたのに、戦場であっさりいっちまった。この機体を残してね」
そう語るイリスの表情は寂しそうだった。
「クレタ島の人工農場基地が襲われた時に、基地住民の避難に駆けつけたのよ。でも、支援が不十分でね――」
「敵に押し負けられたんですか?」
「そう――、それでも単騎で敵のクロムハウンドを200機、白兵戦等だけで破壊して退避拠点となった港にちなんで〝イクラリオンの奇跡〟と言われたわ」
「単騎で200機?」
「本当よ。ブレイブハーツアライアンスの本部にも記録されているわ。あまりにバカげた戦績なんで、他のアーセナルコマンドも参考にならないってぼやいてるけどね」
数字があまりにもすごいので流石にカリナも驚いていたが、その戦いのさまを脳裏に描いた時、奇妙な親近感が湧いた。
「その方に会ってみたかったです」
カリナのつぶやきにイリスは笑みを浮かべて頷き返した。カリナは更に語った。
「戦いで死ぬことは敗北ではありません。そこに何を残すか、そして、何を救うかです。救われた命があるのなら、次世代に続くなら、それは負けではありません」
「ありがとう、カリナ」
そしてイリスはカリナの目を見ながら、こう告げたのだ。
「こないだの海上での戦闘の映像、見させてもらったよ」
「恐縮です」
「このクソ難しい機体をあんたあれだけ完璧に乗りこなした。それだけでも立派だよ」
そしてカリナの方をそっと叩く。
「前の持ち主も、きっと満足してくれてるよ」
「ありがとうございます」
「いずれまた戦場でどこかで会うこともあるだろう」
その言葉にはしばらく距離を置くようなニュアンスがあった。
「どこかに行かれるんですか?」
「難しい話じゃないよ。あの壁の外側の任務地に少し行くことになったんだ」
「それじゃあ戦場へ?」
「ご指名だよ、断る理由はなかったからね」
そう語るイリスの口調は務めて明るかった。
「私もいずれ向かうことになると思います」
「ああ、待ってるよ」
「ご武運を――」
そしてそのまま立ち去っていくイリスの背中を感慨深くじっと見つめていたのである。