勇者カリナ/未来戦線クロスロード ―魔王を倒した少女は、AI戦争の未来世界で、聖剣精霊と豪剣人機とともに人類を救う― 作:美風慶伍
レオンはカリナに問うた。
「それで任務の依頼を回したい時どこに連絡すればいい?」
「今は技術屋のエレナさんの所に厄介になってます」
「あの凄腕の婆さんのところか、分かった。もしもの時は協力してくれ」
だがその言葉にカリナは問い返した。
「レオンさん、私なんかでいいんですか? 教習を終えてから日も浅いし」
カリナはこの世界での実戦の少なさをしっかり認識していた。だがレオンは言う。
「お前が経験が浅い事など百も承知だ。分かって言ってる。それにヴァンガードに乗るのが大前提と言うこの世界の戦場の常識をお前はしっかりこなした。それだけで十分だ」
レオンは無骨だが義理堅い男だった。
「じゃあな」
その言葉を残してレオンは去って行った。見送っていると、その背中に彼が背負ってきた戦いの足跡が見えるような気がした。その時、別な人たちと会話していたルーカスが歩み寄ってくる。
「お疲れさま、カリナ」
「はい! 今日はとても楽しかったです」
「疲れなかったかい?」
「いいえ、素敵な人たちばかりだったので気にもなりませんでした」
「そうか」
穏やかに笑みを浮かべるルーカスにカリナは笑顔を浮かべて感謝を口にした。
「今日はお誘いくださってありがとうございました」
「どういたしまして。もっと僕が主催したわけじゃないけどね。ここで集まってるいつもの顔ぶれが誰が言うともなくやろうということになったんだ。それで君に連絡が取りやすい僕がエスコート役になったってわけさ」
「そうですか。それじゃ」
そう呟くとカリナはルーカスの右腕にすがった。
「帰りの道もエスコートお願いしますね」
「それなんだが、今日は無理に帰らず泊まっていかないか? 夜も遅いしお酒を飲んだからね。大丈夫、ホテルのあてはあるんだ」
一周迷ったような表情をしたがそれもすぐで笑顔に変わる。
「ルーカスと一緒なら」
「決まりだな」
その言葉と一緒にカリナはルーカスの腕にすがる。体を密着させてさも嬉しそうに歩き出す。
「行こうか」
「はい」
そしてカリナはルーカスとともに今夜の宿へと向かった。海沿いに立つ小綺麗なコテージのホテル。フロントで受付を済ませると一緒の部屋だった。メインの部屋の他に、予備の部屋があり、別々に寝ることは可能だった。
「俺はあっちの離れた方で寝るよ」
「お気を使わせて大変申し訳ありません」
「いいって、気にするな」
そう言いながら真面目な表情のカリナに顔を近づけてくちづけをする。予想外の事態にカリナは目を丸くした。
「え? あの――」
半ばパニックになり言葉を失うカリナをベッドに座らせ、顔を真っ赤にしているカリナにルーカスは尋ねる。
「キスをしたことはあるのかい?」
カリナは目線を落としてもじもじしていた。
「――初めてです」
ルーカスはカリナをそっと抱きしめて囁く。
「それじゃあ今日は、君のファーストキスが俺の報酬ということで――、おやすみカリナ」
「おやすみなさい」
そしてルーカスはベッドのある別部屋へと行ったのだった。
1人になり、心地よい気分の中、ドレスを脱いでベッドの中に潜り込む。大切な聖剣はベッドの片隅に横たえておいた。
「おやすみ、エリュシオ」
『はい、おやすみなさいませ』
カリナは夢の中へと落ちていったのだった。