勇者カリナ/未来戦線クロスロード ―魔王を倒した少女は、AI戦争の未来世界で、聖剣精霊と豪剣人機とともに人類を救う― 作:美風慶伍
カリナが初めてスティールウォーリアーを操縦して、マルマラ海に望むシリウリ地区にて、アイアンオーダー率いるクロムハウンド部隊を撃破して――
あれから一ヶ月が過ぎていった。
カリナはスティールウォーリアーを駆り、愛剣レギオンブレイドと、魂の家族である精霊エリュシオとともに戦場の空にあった。
超大型輸送機の機内にスティールウォーリアーは待機している。
輸送機の機体後部はハッチとなっており、戦闘機械シャドウスティールヴァンガード=通称ヴァンガードをそこから空中発進させられる構造になっていた。
カリナは上下分割式のパイロットスーツに身を包んで、すでに機体の中で待機していた。長い金色の髪は後頭部で結び、結い上げてある。
手には指出しの薄手のグローブ、脚にはパイロット用のブーツ、腹部周囲には気嚢構造を持つ腹圧ベルトも備えている。その着こなしぶりから、かなり慣れてきているのがよくわかった。
そこに通信が入ってくる。
『聞こえるか? カリナ』
これの主は独立傭兵部隊サイファーブレイクスの隊長であるベテラン傭兵のレオンだった。
「聞こえます。通信順調です」
『よし、任務の最終確認だ。現在、WOC周辺には、遠距離砲撃型のクロムハウンドが複数たむろしている。そのため、空中輸送機が狙い撃ちされる状況にある』
「はい、すでに複数の空中輸送機や民間機が撃墜されてます」
『今回は、その遠距離砲撃型クロムハウンドの中でも最もロングレンジの砲撃能力を持つ最重要ターゲット〝アルゲスの瞳〟を破壊することにある』
するとエリュシオがデータベースから情報を取得してメインディスプレイに〝アルゲスの瞳〟とよばれる機体の再現画像を表示した。
そこに映ったのは〝6脚〟〝球体のような胴体〟〝その球体構造の表面を自在に動き回るビーム砲口〟まさに異様と言える敵機体であった。
『こちらです、マスター、まるで蜘蛛です』
『そうだ、しかも恐るべき蜘蛛だ。攻撃部分であるビーム砲が球体構造の胴体の表面を動き回り360度自由自在に動き回れる。これにより敵機体の死角はゼロ、さらには6脚の脚故に、走行能力も極めて高く、地上からの接近では120%狙い撃ちにされる。まさにお手上げ状態だ』
そこには遠距離から捉えられたアルゲスの瞳の戦闘動画が映し出されていた。
どんなに高速走行するヴァンガードでも、一瞬にして反撃されている。
『だが、ようやく敵の攻撃パターンを解析できた。アルゲスは水平方向360度には強いが、上方向90度から前後左右30度の範囲にはそのビーム砲を向けられない。厳密にはその角度にも向けられるのだが――』
カリナは答えを見抜いた。
「つまり上方向に目が向いている時は攻撃できないんですね?」
『そのとおりだ。ただし、上からミサイルを打ち込んでもすぐにかわされる。その高機動な脚で逃げ回るからだ。そこでお前の出番だ』
「わかってます」
カリナは作戦内容を理解していた。
「上空から急降下して、トップアタックを決めるか、敵の動きまわる目を停めれば良いんですよね」
『そうだ! お前とエリュシオの計算能力とスティールウォーリアーの飛行起動性能が頼りだ!』
「任せて下さい! 一撃で仕留めてみせます!」
『頼むぞ! 成功を祈る!』
「PROCEED!」
通信は終わり、輸送機は安定飛行に入る。高度は上空1万3000m――機内の温度は極端に下る。発進時の機内スタッフは酸素マスクと防寒スーツを備えて高高度発進に備えていた。まさに命がけの作戦である。カリナはスティールウォーリアーをセミアイドリングモードからメインドライブモードへとシフトさせるべく起動操作を開始した。
「イグニッションマスタースイッチオン!」
所定のスロットに装填されているイグニッションカードの認識を通し――
「ミリタリーID個人認証チェック!」
所定のスロットに入れてあるミリタリーIDカードを認識してエントリーIDを通す。
「レギオンブレイド連係確認」
愛剣のレギオンブレイドが機体システムと連携しているのが確認された。そこにエリュシオの声が聞こえる。
『人工精霊エリュシオ、スティールウォーリアー機体制御システムと連動しております』
さらに、
『スティールウォーリアー、機体制御AI 何時でもいけます』
「それじゃぁ、エリュシオ! スティール! 今日も行くわよ!」
『お任せください』
『作戦完了までご支援いたします』
2人の忠実なる補佐役も準備万端だった。
次、左側コンソールでメインリアクターのプレヒートを設定確認する。
「メインリアクター、プレヒート設定チェックOK、イグニッションカウントダウンスタート」
『メインリアクター内圧上昇、イグニッション可能内圧まで残り10秒――、3、2、1――』
リアクター内の圧力が必要十分に上昇したのを確かめてリアクターを始動させる。高高度で外気温がマイナスなので予備加熱も存分に行った。
「メインリアクター点火!」
イグニッションボタンを押せばリアクターは一発でかかった。
「正面コンソール機体情報チェック、オールグリーン異常なし!」
そこにエリュシオの声が聞こえた。
『マスター、戦闘準備OKです、いつでも行けます!』
カリナはコントロール用のマスタースレーブグローブを両手にはめながら答えた。
「さあ行くよ!」
カリナの新たな戦いの始まりである。
( 'ω'o[ 読者さまへ ]o
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