勇者カリナ/未来戦線クロスロード ―魔王を倒した少女は、AI戦争の未来世界で、聖剣精霊と豪剣人機とともに人類を救う― 作:美風慶伍
戦況報告 カリナとルーカスは筒抜けだった
自分たちは目的を達した。しかし他はどうだろう?
『確認しました、アルガスの瞳の類似機体ですが、いずれも破壊され、攻略されつつあります』
「やっぱりこれが、敵の最主力だったのね」
『こちらの目標が破壊されたことで、敵は連携して遠距離攻撃をすることが困難になり、戦況は我々人類に有利に傾くでしょう』
「よしそれじゃ、輸送機に上空で回収してもらいましょう」
『了解しました、輸送機とコンタクトを取ります』
「お願いね!」
エリュシオが別回線で輸送機とコンタクトを取るそばで、彼らのところに直接通信を送ってきたものがいる。
『カリナ、無事目標攻撃達成したようだね』
それは青年男性の声だった。力強くも非常によく通る美しい声だった。
「ルーカス!」
『よくやった! これでイスタンボールへの物資搬入を妨害しようとする敵の作戦は完全に崩壊した。そのまま戦域外に離脱してくれ』
「はい!」
ルーカスの声にカリナは嬉しそうだった。そしてつい、口走ってしまった。
「ルーカス! この作戦で終わったら逢えますか?」
『もちろんだよ! 頑張ったご褒美だ』
「やった!」
2人がいかに仲がいいかわかろうというものだ。だが――
『おいお前ら!』
聞こえてきたのはレオンの声だった。
『作戦用の軍事音声回線で何やってる! 全員に丸聞こえだぞ!』
「え?」
『あ、そういえばそうだった』
そこに続々と他の傭兵からも介入が入った。
まずは先輩傭兵のイリス。アフリカ系の女性でロングレンジの攻撃を得意とする大砲屋だ。
『あんたら何やってんの! 最近熱すぎない?』
さらにレオンの部下であるハシムという男まで調子に乗って割り込んでくる。
『お2人さん! 関係どこまで行ってるんすか?!』
「え? それはその――」
するとルーカスも口を滑らせた。
「ハシム、勘弁してくれ。彼女、戦闘の外では恥ずかしがり屋なんだよ。メンタル弱いからあまり絡まないでくれ」
『ってことはそういうことがわかる段階まで仲がいいってことっすね』
見事な誘導尋問だった。そんなやり取りにレオンがキれた。
『お前ら一体何をやっとる! さっさと作戦に戻れ!』
『うわっと! 失礼しました!』
ハシムは慌てて回線を切った。でもイリスはカリナたちにねぎらいの言葉を送った。
『一番重要ターゲットを見事に潰してくれたんだから、こっちは後の仕事もやりやすくなるよ。先に戦域離脱して、ゆっくり休みな!』
「はい! そうさせていただきます!」
『お疲れ様』
イリスも通信回線から離脱した。そしてカリナはレオンに報告をする。
「戦闘作戦指揮官へ報告、敵最重要攻撃目標〝アルガスの瞳〟完全破壊しました。これより戦闘領域から離脱します」
『見事だった! あとは任せてゆっくり休め! ルーカスそっちは任せたぞ』
『分かってますよ。残りの戦闘、成功を祈ってます』
「では作戦終了し離脱します」
それを最後に軍事作戦回線から離脱した。
そしてコード3000mに戻った時、一般回線からルーカスから声がかかってきた。
『カリナ改めてお疲れ様』
「ルーカス! ありがとう!」
『13000mからの急降下攻撃だろ? 難易度の高いミッションをよくやった! さすがに疲れたろ』
「うん、さすがにちょっとね。戦闘が終わったらなんか一気に気抜けしちゃって」
『だったらゆっくり休まないか? 明日から3日間珍しく休暇がもらえたんだ』
「本当ですか!?」
『ああ、上司から言われたよ。お前の素敵な彼女をゆっくり休ませてやれってね』
「彼女……」
その言葉にカリナは思わず言葉は詰まらせてしまった。そのことをからかわずルーカスはさらに言葉を続けた。
『ギノル湾って言ってね、トルコの東側、黒海に面した場所でね穴場的な静かなビーチがあるんだ』
「ビーチって海ですか?」
『ああ、たまにはいいだろ?』
「海ってことは泳ぐんですか?」
その微妙な言い方がルーカスには気になった。
『海で泳いだことってないのかい?』
するとそこにエリュシオが言葉を添えた。
『カリナがこれまで住んでた国は内陸なんで、海に触れるということがなかなかなかったんです』
「はい、それに水辺でゆっくり泳ぐなんてなかなかできない情勢でしたから」
『そうか、魔王軍と戦ってたんだもんな。だったら初めての海、2人だけで楽しまないか?』
そう誘われて拒絶する理由は何もなかった。
「私まだ水着持ってないんです」
『水着なら現地で買えるよ。明日の朝迎えに行く。待っててくれ』
「はい!」
『それじゃまた明日!』
「楽しみにしてますね」
2人の通信は切れた。カリナにエリュシオがからかうように言った。
『カリナ、顔が緩みっぱなしですよ?』
「え? だってすごく嬉しいし」
『いいんじゃないでしょうか。たまには休むことも必要ですから』
「うん」
『私を連れて行くのもよし、置いてかれるのでしたらエレナ様に預けておいてください』
「そうだねどうしようか――、ちょっとじっくり考えてみる」
『ええ、ごゆっくり』
そんな風に言葉を交わしながらもカリナの心が明るく晴れていた。
上空3000mに登った時、また輸送機が後部ハッチを開けて待っていた。
そしてカリナは戦闘領域から離脱したのである。
( 'ω'o[ 読者さまへ ]o
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