勇者カリナ/未来戦線クロスロード ―魔王を倒した少女は、AI戦争の未来世界で、聖剣精霊と豪剣人機とともに人類を救う― 作:美風慶伍
疲れ果てたカリナと、貴族となったカリナ
それはルミナリア王国の中の光景だった。
場所は、ルミナリア王宮殿付属の大討議場――、
魔族大戦の戦後世界の政治の中枢だ。
本来なら、勇者時代のカリナは、王との謁見の際に稀にしか足を踏み入れたことのない場所だった。
だが、その夢の中ではカリナは、勇者としての魔法剣士装束とはやや異なる姿をしていた。
サーコートと
大討議場から離れ、カリナ専用の控室に場所を移した。
それはまるで、大邸宅に使用人や従者を多数抱える貴族の如き暮らしを想像させるものだった。
控室にはすでに女性侍従が数名控えており、彼女たちの手を借り礼装衣装の一部である
「お茶をおねがい」
「はい、巫女様」
その呼び方がカリナの立場を匂わせている。
エリュシオはあいも変わらず、カリナの左腰のレギオンブレイドの中に宿っている。
『なれない政治の討論の場での活躍、お疲れ様でした――、カリナ』
「ありがとう、エリュシオ。今日もあなたのお陰でなんとか乗り越えられたわ」
『私ごときの助言でよろしければ』
エリュシオは、カリナがたとえ戦場から離れたとしても常に寄り添っていた。
「これからもよろしくね」
『もちろんです』
そんなやり取りがかわされた時、部屋のドアがノックされる。
「はい、どなたでしょうか?」
女性侍従が問いかければ聞き慣れた声が返ってきた。
「私だ」
「これはエルリック様! 少々お待ちを!」
ドアを開ければ入ってきたのはエルリックやソフィアやミレアと言った仲間たちだった。
「国政参加、ご苦労」
「カリナ!」
「お疲れ様」
「エルリック! それにソフィアにミリアも」
「久しぶりね」
「ああ、3ヶ月ぶりだな」
その言葉は、彼らがそれぞれに立場を確立し多忙を極めている事を示していた。〝かつての〟仲間の来訪に、カリナも疲れが吹っ飛んだのか、自ら立ち上がり、エルリックたちを出迎える。
エルリックは騎士の正装のサーコート衣装と略式鎧と帯剣姿で、
ソフィアは古式ゆかしいブリオードレスにハーフヴェールとロングマント、
ミリアは普段の戦場での男勝りな姿とは異なり、ゆったりとしたガウンドレス姿にベール付きのヘッドドレスと言う落ち着いた装いだった。
「こういう場所でない限り滅多に顔を合わせられんからな」
「そうね! 座って! 少し話しましょう」
「ああ」
「じゃ、遠慮なく」
カリナは3人を迎えると茶の用意を命じるのだった。