聖剣機兵カリナ ―魔王を倒した少女勇者は、AI戦争の未来世界でも人類を救う―   作:美風慶伍

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レオン来訪 ―カリナ、新兵として生きる―

 そして、自室に戻り、ベッドをソファー代わりに腰掛けた時だった。部屋の扉がノックされた。

 

「はい、どうぞ」

 

 部屋のドアがスライドして開けられれば、そこからは以外な人物が姿を表したのだ。

 

「邪魔するぞ」

「え? あなたは――」

 

 そこに佇んでいたのはこの世界でカリナが初めて出会った人物だった。

 

「レオン隊長!」

 

 レオンストライク、傭兵独立部隊の隊長である。戦地から戻ってきたばかりのようで、戦闘用の上下服に野戦ベスト、腰には拳銃ホルスターのついたポーチ付きベルトを撒いている。飾り気はないが質実剛健な装いだ。

 

「元気そうだな。こっちの世界の水にも慣れたようでなによりだ」

「はい! ありがとうございます!」

 

 そう言いながらレオンは右手に提げた紙の包みを手渡す。中には砂糖のたっぷりかかった菓子パンが入っている。素朴だがカリナには受け取りやすい手土産だ。

 

「こっちの世界の食い物が合うかわからなかったので、適当に見繕った」

「はい、いただきます」

 

 そう言いながらカリナはレオンに椅子を勧める。

 

「勾留施設から出れたと聞いたのでな、様子を見に来たんだ」

「はい、なんとかこちらの世界での行動の自由を認めていただけました」

「敵対的とはみなされなかったんだな」

「お陰様で、レオンさんやジェイさんからも、ご助言を頂きましたから」

 

 その言葉にレオンは苦笑する。

 

「俺は大したことはしてないさ――だが――」

 

 そこでレオンは真剣な表情を浮かべた。

 

「こちらの世界の戦いに足を踏み入れるというのは本当か?」

 

 それは心配と警告が混じったような言い回しだった。だが、カリナはすでに心に決めていた。

 

「はい、戦いから逃げるつもりはありません」

「――お前は元の世界には魔法があり剣と弓矢が戦う手段だったそうだな?」

「はい。私はもともと魔法剣士をしていました」

「お前が〝勇者〟と呼ばれていた事も聞いた。戦闘の実績があるということも――、だがこれだけは言う」

「はい」

 

 レオンが慎重に言葉を紡ごうとしていることはいたいほど伝わってくる。カリナは真摯に耳を傾けた。

 

「〝向こう側〟と〝こちら側〟――戦う手段が根本から違う。こっちの世界に魔法はなく、戦場では剣など何の役には立たん。こちらの世界では〝戦闘機械〟こそが、有力な戦闘手段だ。その事も判っていて、戦う覚悟を決めたんだな?」

 

 つまりは――過去の経験や身につけているスキルが全く通用しない可能性があると告げているのだ。

 だがカリナには迷いはなかった。

 

「こちらの世界では私は新兵も同然です。たとえそうだとしても〝平和でない世界〟の片隅で、目を塞いで生きるつもりはありません。自分ができることを一から積み上げようと思います。それが私を拾って救ってくれたこの世界への恩返しだと思います」

 

 その言葉にはカリナの覚悟のすべてが詰まっていた。レオンは深く息を吸うとゆっくりと吐き出しながら、言葉を吐いた。

 

「愚問だったな――」

 

 レオンは口元に笑みを浮かべる。

 

「ならば、カリナ、お前が、こちらの世界での戦闘手段を覚えるための支援をしてやろう」

「えっ? ほんとうですか?」

「あぁ、新兵の勧誘と教育はしょっちゅうやっている。ノウハウもある」

 

 皺の刻まれた風貌の中の青い目は、戦場の過酷さをつぶさに見つめてきた目だった。だからこそ、今のカリナに手を差し伸べることができるのだろう。

 

「ありがとうございます!」

「礼を言うには早いぞ、覚えることが山ほどあるからな。ただ、そのための補助役を二人ほど用意する」

「二人? どんな人ですか?」

「指導教官と、技術屋だ」

 

 戦う術を教える者と、戦う手段を用意してくれる者だ。

 

「指導教官はうちのサイファーブレイクスから一人派遣する。技術屋は、腕のいいのを知ってるからそいつに繋がりを取る。悪いようにはしないはずだ」

「その方たちからこちらの世界での戦い方を学べばいいんですね?」

「そうだ――、だが、一癖も二癖もあるから気をつけろよ」

「大丈夫です」

 

 カリナは笑みを浮かべる。

 

「戦場と軍隊は私の人生の半分です。試練の向こうに勝利があるのですから」

 

 その言葉を耳にして、レオンは右手でカリナの肩をそっと叩いた。

 

「カリナ、あの戦場でお前を助けたことは間違いでなかった」

 

 そして立ち上がりながら言葉を吐く。

 

「戦場で待っているからな」

「はい!」

 

 そうしてレオンは去っていったのだった。

 




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