勇者カリナ/未来戦線クロスロード ―魔王を倒した少女は、AI戦争の未来世界で、聖剣精霊と豪剣人機とともに人類を救う― 作:美風慶伍
人間勢と魔族勢の悠久の戦い――
その不変の理が、今から300年前に変貌した。
――〝最後の覇王〟――
魔王ヴァルガリアスが唯一無二の大魔力で対立する魔族勢力諸派を自らの支配下に掌握し、歴史上初めての〝魔族勢力の完全統一〟を果たしたのだ。
魔族はそれまでは、魔族内部で抗争を繰り替えし権力の簒奪が繰り返された。その争いの混乱を突いて、人間や諸種族は連帯して抵抗し、魔族を打ち破るのが普通だった。
だが、最後の覇王・ヴァルガリアスにより、魔族対人間の戦いは激化。大陸全土を巻き込むほどの大戦が勃発する。
――これが悪名高き『魔族大戦』だ――
戦乱はより拡大し、アストラル大陸全土に拡がり混迷を深めた。幾人もの勇者が立ち、魔王ヴァルガリアス打倒を願い、戦い、そして――倒れていった。大地の上に戦火と死者は溢れ、光明の見えない日々に人々は絶望する。
しかし、救いの日は来たる。
勇者カリナ・ウィングスの出現である。
幼くして父母を亡くし、過酷な運命に翻弄されながらも、聖剣を手にしたその日から勇者としての片鱗を現し始めた。過酷な戦いを乗り越え、勇者としての名声を勝ち得ていく。
その彼女の勇者としての素質を語るなら、人々いわく――
――神の恵み――
――これぞ勇者――
――これぞ救世者――
若干16歳の少女のカリナを人々は称賛し、彼女の力になろうと次々に彼女の掲げる旗たる〝聖剣レギオンブレイド〟のもとに集まってくる。
八つの人間種族の国家の軍勢――、十以上の人間以外の種族の勢力――、
果ては、竜の眷属や、巨人種族に至るまで、多くの人々が集まった。
彼らは、一進一退を繰り返しつつも着実に勝利を掴んでゆく。そして、戦いはついに、最終決戦の時を迎える。
まさに〝勇者カリナ・ウィングス〟の名のものとに世界の行く末は決まろうとしていた。
人々はいう。
――カリナこそ、戦いを終焉へと導く〝運命の申し子〟だと――
人々は今、それを目の当たりにしようとしていた。
§
――そして、戦いは終局へと向かう。
そこは戦いの最後の場所だった。
魔王ヴァルガリアスの居城であるダークフォージ城の最奥部、魔王の謁見の間であった。
ソルスター自由連合軍の諸派は、それぞれの攻撃任地で魔王軍と最後の戦いを繰り広げている。
そして、彼らによって生み出された魔王城防衛網の〝隙間〟――そこを突破して、魔王城軍門へと接近を果たし、それを見事突破して魔王城突入を果たす。
エントランスホール――、中間領域――、魔王城最奥部の大階段――、謁見の間正面扉前――、そして、謁見の間へと続いた。
今、重苦しい扉が左右に開き、醜悪な黒気が溢れ出してくる。その鼻の曲がるような異臭、吐き気を催すような瘴気――
「げほっ! なんて匂い!」
思わず咳き込むカリナにソフィアが発破をかけた。
「気持ちをしっかり! 匂いではないわ! 魔王の持つ闇属性の魔気よ! 気を抜くと意識を持っていかれるわ!」
「判った!」
気合いを入れるかのように聖剣を一閃する。
――ブォッ!――
瞬間、理性と正気が戻り、カリナは状況を冷静に把握し始めた。
そこはまさに魔の支配者の空間、その一番奥に玉座が据えられ座していたのはまさに魔王ヴァルガリアスその人だ。
漆黒で肌、どす暗いオーラ、黄金色のフルプレートアーマーを身につけ、ネジ曲がった右の角、褐色の髪が乱雑に伸びている。眼光鋭く赤い光を放っていた。
剣は下げておらず、その持てる魔力そのものが彼の武器だ。その鋭く伸びた両手の爪からは有り余る魔力が火花を散らすようにほとばしっていた。
対するカリナは――
騎士風のサーコートにホーズズボン、胸に金モールの装飾のついた
その、少女剣士の――カリナはそこで激戦の末に魔王と対峙し、最後の戦いの最中にあった。
魔王城の謁見の間、そこにそびえる魔王の巨躯を前にして、カリナは心のうちに畏れを抱かずにはいれられない。
――これが、魔王――
魔王もまた勇者を名のる少女を前にして全力を尽くしていた。
「そろそろ終わりにしてやろう、勇者カリナ」
そうつぶやきながら両手を握りしめる。絶大な魔力が両拳から溢れて火花を散らす。
――バチィッ!――
その火花にカリナは思わず歩みを止める。腹の底に恐怖が湧いてくる。
だが、歩みは止めなかった。なぜなら、すぐ近くに仲間が居る。背後に、軍団の部下たちが居る。数多くの戦友たちが居る。
――そうだ、私は一人じゃない――
そう思い至った時、震えが止まった。
「魔族ごときにやられはしない!」
恐怖を追い払うようにカリナは叫び、魔王は不快そうに口元を歪める。
「永劫に渡るこの戦い! 今こそ決着をつける!」
仲間たちにも号令を下す。
「各員配置! エルリックは敵の攻撃を防いで! ソフィアは魔導対応! ミリアは援護射撃!」
「了解!」
「任せて!」
「砲撃開始します!」
エルリックは重装歩兵の鎧に装備された魔導回路を起動し、
ソフィアは、高速自動詠唱用の小型水晶カードを取り出して、魔王の魔導抑制の結界魔法を発動させる。
ミリアも、小型水晶カードを取り出し、空間転移召喚で銃火器の収められている武器コンテナを呼び出すと謁見の間の各所に分散配置した。
「準備よし!」とミリア
「詠唱完了」とソフィア
「行くぞ! カリナ!」とエルリック
そして――
「全員、かかれ!」
カリナの号令がかかり、4人同時に一斉に動く。
「舐めるな人間どもが! 縊り殺してくれるわ!」
魔王ヴァルガリアスも、一歩も引く気配はない。こうして両者はぶつかりあったのだった。
§
戦いは、一進一退を繰り返した。
重装戦士のエルリックが巨大なタワーシールドで魔王の攻撃を受け止め、ソフィアの至高の呪力結界魔法が魔王の行動を制限する。
ミリアがフリントロックライフルを次々に繰り出しながら銃撃して魔王の体力を削る。その完璧な連携に魔王は攻撃を繰り出せずに居た。
それと並行して、カリナはある秘技を繰り出す。
「エリュシオ! 英霊召喚!」
『心得ました、マスター』
カリナの呼びかけに聖剣は答えた。
聖剣レギオンブレイドの中に宿る偉大なる精霊〝エリュシオ〟だ。
勇者を支える者として、少女カリナのそばに常に寄り添っていた。
『英霊召喚に備え、ソウルサモンズゲートを開放いたします』
「ありがとう、エリュシオ!」
聖剣に組み込まれた人工精霊エリュシオが聖剣に秘められた機能を開放する。そしてカリナは魔法呪文を詠唱した。
「
『双風の剣舞士〝エアリス・レオンハート〟召喚いたします』
英霊召喚――、
それは聖剣レギオンブレイドを所持する者にのみ許された極めて特別な偉大なる魔法だ。
聖剣レギオンブレイドと、それに宿る精霊エリュシオ――
彼らは、これまでの長き戦いの中で出会った数多の数え切れぬほどの〝英霊たち〟の存在を記憶し続ける。
レギオンブレイドを所持することを許された〝勇者〟は、英霊たちの魂を天界から地上へと召喚し、英霊たちが持つその魔法や様々な力を借りることができるのだ。
そして今、勇者カリナはかつての偉大なる魔法剣士の存在を呼び出そうとしていた。
カリナが詠唱し、エリュシオが選んだ英霊が呼び出される。天と地上が光で繋がれ、カリナの背後に光の扉が開かれた。そしてそこから現れたのは二人の英霊だった。
カリナの求めにて呼ばれた英霊は2体、
一人――
黒い剣士装束の魔導剣士・切り札の黒い剣士〝ブレイズ・レオンハート〟
もう一人――
薄緑色のキャソックを纏った風魔導士・知恵の
常に二人で行動する、2人で1人の英霊だった。
「二人の力をお貸し下さい!」
「あぁ、もちろんだ!」とブレイズ、
「いつも通り、風魔導はお任せあれ」とエアリス、
カリナはレギオンブレイドを両手で構えて更に詠唱する。
「魔導剣技!招来! 風魔法!疾駆! 来たれ! 伏魔の〝切り札の風〟よ!」
そして、二人で一人の英霊はカリナの体へと重なる。そして、その時の魔法詠唱を二人同時に高らかに告げた。
『
カリナの肉体にブレイズとエアリスが重なる。ブレイズがカリナの肉体の基本能力を強化し、その卓越した剣技を与える。そして、エアリスは風魔法で移動や攻撃を強力に補助した。
彼らの体の周囲を黒いオーラが鎧のように浮かび上がり、さらにその周囲を緑色に光る風のイメージがつむじ風を描くように飛び交っていた。カリナはひときわ大きく叫ぶ。
双風の剣舞士〝エアリス・レオンハート〟は、カリナが最も好んで、召喚した英霊のである。彼らの方も、カリナの意図を親友であるかのように個々得ていた。
「行きます!」
2人の英霊の助力を得て、カリナは戦闘を開始する。ここからカリナの猛攻が始まるのである。
第2話までお読みいただき、ありがとうございます。
いきなり、魔王決戦で驚いたと思います。ですが、カリナの物語はまさにここからはじまります。
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聖剣と英霊、そして鋼の機兵が交差する物語を、引き続きよろしくお願いいたします。