勇者カリナ/未来戦線クロスロード ―魔王を倒した少女は、AI戦争の未来世界で、聖剣精霊と豪剣人機とともに人類を救う― 作:美風慶伍
ジェイはカリナを勾留施設に送り届けてから、レオン隊長たちが待機している、都市外部の駐留基地へと帰還した。
距離的には車を飛ばしてほぼ丸1日。速度の決して早くない人員輸送車なので、なおさら時間がかかるのだ。
そしてその帰路の途中でジェイはレオンへと通信を行った。
『レオンだ。どうした』
「こちらジャミーユ。隊長、彼女を勾留施設に送り届けました」
『無事たどり着いたか。ご苦労』
1つの任務を終えたということでねぎらいの言葉が返ってきた。しかしレオンはレオンで、カリナのことが気がかりだったようだ。
『それで彼女のメンタルの方はどうだ?』
「それですが、一度取り乱したあの時以降、積極的に話し相手になったらパニックになるようなことはなかったです」
『とりあえずは落ち着きを取り戻したってところか』
「そうだといいんですが」
ジェイの微妙な言い方がレオンは気になったようだ。
『何か問題でもあるのか?』
「ええ、勾留施設の中で絶対に尋問されますよね。それに独房の中で話し相手もなく1人となれば、また取り乱すのは目に見えてます」
『そんなに弱いのかメンタルが――』
その言葉にジェイは思わずため息をついた。
「正直まるで仔ウサギでも飼ってる気分です。ひとりぼっちにされるとピーピー泣き始める」
『なんだそれは――、到底、名のある戦士には見えないな』
「まぁ、そう言いたくなるのをわからないでもないです。あの剣には俺達の世界で言うAIみたいなのが宿っているみたいで、それと常に対話していたんです」
『それと引き離したのか……、なるほど、それで〝急所〟が丸見えになったと言う所か』
「はい、性格的にはひねくれたところのない素直ないい子ですが――」
『俺としてはなんでそんなのが戦闘職に関わっていたのか気になるよ』
「それですが――、彼女の生い立ちを聞かせてもらったんですが――彼女が戦場に立ったのは〝6歳〟の時からだそうです」
『おい、何の冗談だ?』
「隊長、俺、冗談でこんなことは言いませんよ。彼女が持っていた剣は特別なもので、使用する人間との相性が重要になるんだそうです。そして、ある軍隊が、剣と相性のいい人間を探していたそうです」
ジェイのその言葉にレオンはピンと来たようだ。
『〝人間狩り〟か』
「ええ、無理やり連れて行かれて訓練を受けさせられたそうですよ。そこから10年間、ずっと戦場です。今の世の中、こっちの世界でも子供の頃から戦場に関わってる奴は山ほどいる。でも無理やりというのはさすがにもうない」
レオンが息を呑むのが聞こえる。
『――まさかそれに加えて親に死に別れてるとかはないよな? 居たら不幸のフルコースだ』
「そのまさかですよ」
通信の向こうでため息が聞こえた。
『神様ってやつは不公平だからな、時折一個人に八つ当たりみたいに不幸と試練をぶつけようとする』
「彼女はその八つ当たりの結果ですか?」
『ここは――生き残りと言った方がいいな』
レオンはしみじみと言う。
『よく、生きてこれたな』
「彼女一人では無理だったでしょうね」
そこでジェイは切り出した。
「向こうの組織に彼女をこのまま預けっぱなしというのも気が引けます」
『お前もそう思うか?』
「はい。俺に何かができるなら、少なくとも彼女がこの世界で1人で生きていくための道を示してやりたい。それが彼女を拾った俺たちがしてやれることだと思います」
するとレオンも意外な言葉を発した。
『奇遇だな、俺もそう思ってた』
「それじゃぁ」
『治安維持組織のピースセーファーに話のわかる奴がいる。俺がお前と入れ替わりに出向いてそいつと話をする。お前が今後も関われるようにな』
「ありがとうございます」
『礼はまだ早いぞ。それより先に彼女がこちらの世界で自由を得られるかどうかがまず問題になる』
「問題人物とみなされないようにですね」
『そうだ。そのためにも何か心の支えになることを考えてやれ』
「わかりました。思いつくやり方が一つあるんでそれを試します」
『頼むぞ――、これは俺の勘だが、心の壁を乗り越えればあいつはいい傭兵になれるはずだ』
「あの泣き虫がですか? 想像もつかないんですけど」
『いい傭兵なんてのは大概が泣き虫だよ』
そしてジェイは通信を切った。
レオン隊長たちの所へと戻りながら、ジェイはカリナのことを脳裏に思い浮かべていたのである。