勇者カリナ/未来戦線クロスロード ―魔王を倒した少女は、AI戦争の未来世界で、聖剣精霊と豪剣人機とともに人類を救う― 作:美風慶伍
その男性は歩き方、立ち振る舞い、ともに端正で落ち着きがあり優雅だ。雰囲気から言って軍人や戦士と言うよりも、政治官僚や貴族の上級侍従のような落ち着き払った雰囲気があった。
身につけているスーツの左胸には、その組織の紋章のようなものなのだろう丸い星を背後に翼を大きく広げた鷹のエンブレムの徽章が付けられている。
――鷹の紋章?――
カリナが知る限り鷹を紋章として取り入れているのは、貴族や騎士団でも由緒ある高位の家系である事が多い。
――鷹は、国土防衛や国家守護に貢献のあった高位貴族に許されるものだわ。組織としても、都市や国家の治安維持や犯罪取締りを目的とした憲兵組織や軍警察が用いるもの。今までの人たちとは明らかに違うわ――
カリナはそのシンボルに彼の出自と所属の確かさを感じた。なにより、その男性からは、これまでこの世界で出会ったどの人物よりも威厳を感じる。彼は胸元から1枚の小さな板を取り出す。板には顔写真と名前が長い数字と共に刻印されている。それを示して青い目でカリナを見つめながら名乗った。
「公的機関、平和維持ネットワーク『ピースセーファー』情報管理官エージェントのルーカス・アイヴァーソンだ。君の処遇に対して伝える」
非常に理知的な語り口だった。自然と丁寧な返答が口を出た。
「ご丁寧に恐縮です。カリナ・ウィングスです。よろしくお願いします」
机を挟み向かい合わせに椅子に腰掛けて対話が始まる。
「尋問や様々な検査を行ったが、全ては君が何者なのか? と言うことを確定するためだ。身体検査を兼ねて精神状態も調査した。それらの検査結果をもとに総合的に判断、発言には嘘や作為的な部分がなく事実を話しているものと判断した」
ルーカスは一呼吸おいてカリナに告げた。
「次元の壁を超えて異なる別世界から転移漂着した人間であると認識する」
その一言はカリナにとって何よりもホッとする言葉だった。
「信じてもらえて何よりです。感謝いたします」
「実は君を別の世界の人間と認識した理由はもう1つある」
「え? それは一体?」
ルーカスは懐から何か手のひら台の機械を取り出すとそれに向けて話しかけた。
「例の剣を」
その時、尋問室の扉が開き1人の男性がカリナの愛剣のレギオンブレイドを携えて現れた。無論、危険がないように透明なフィルムでくるまれていた。
「私の!」
カリナは思わず立ち上がりそうになる。その様子を見てルーカスは冷たく言う。
「落ち着け、所持許可はまだ出ていない」
「あ、はい――」
意気銷沈するカリナにルーカスは告げる。
「この剣の中にエリュシオと名乗る意識体が有る事が確認され、〝彼女〟に対しても尋問を行った。その結果、人間と同等の人格を有すること、この地球世界には存在しないものであると判断された。そして、それを所持していた君も、エリュシオと同じように、別次元世界の存在であると類推し、これが了承された」
一枚の書類が渡される。書かれている文字は奇しくもソルスター世界の物とほぼ同一だった。
「――処遇決定通知?――」
「発言、情報、精神状態も考慮し、私たちはあなたを保護しこの世界において生活が営めるように支援すると決定した。この剣も貴方の所持物として後ほど返却となる」
「はい! ありがとうございます!」
相手が誠意をもって対応してくれているのだ、礼儀をもって応じるのは当然だろう。カリナの言葉にかすかに微笑みながらルーカスは手のひらより小さい板を取り出した。カリナの顔写真が貼られ様々な文字が刻印されている。
「これを支給する。身分証明用のIDだ」
〝ID〟と言う言葉にピンとくる。
「それ、戦場で部隊長の方に提示を求められました!」
「ならば話は速い。この世界で必要な個人番号を証明するものだ。紛失は絶対にするな」
「絶対にですか?」
「あぁ」
断言する声にその重要性を知らずには居られなかった。
「わかりました。しかしなぜこういうものが必要になるのですか?」
「いい質問だな」
ルーカスは真剣な表情で語り始めた。
「君が生まれた世界は〝ソルスター〟と言うそうだな」
「はい」
「ソルスターの世界に魔法があるように、この世界〝ネクシスドメイン〟は〝情報〟で成り立っているんだ」
その言葉にカリナは思う。
――ネクシスドメイン? それがこの〝鋼の世界〟の世界の名前なんだわ――
同時に気になる言葉があった。
「情報?」
ルーカスは頷き1つの機械を取り出した。手のひら大の板で表面に様々な画像が表示されている。
「この世界ではその情報をやりするための〝
「端末とネットワーク、それがこの世界の根幹をなすということなのですか?」
ルーカスは頷きながらもう一つ端末を取り出すと、それをカリナに向けて差し出す。彼は自分の手元の端末を操作する。するとカリナ側に置かれた端末に文字が表示された。
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件 名:テスト送信
送信者:ルーカス・アイヴァーソン
内 容:カリナ・ウィングスへ説明のため
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「これはその情報のやり取りのひとつで〝メール〟と言うものだ」
「
戦場の巨大機械よりもこちらの方が驚きが大きい。食事に出された氷菓でも驚いたが、文明の根幹があまりに違う事が嫌でもわかる。
カリナは思わず驚愕した。