勇者カリナ/未来戦線クロスロード ―魔王を倒した少女は、AI戦争の未来世界で、聖剣精霊と豪剣人機とともに人類を救う― 作:美風慶伍
かたやルーカスからすればカリナの反応はまだ望ましい方だ。文明の差異にパニックになり人事不省になられたら事だからだ。
「我々の世界には、こうした仕組みがありとあらゆる場所に存在する。そして、それを制御するために存在するのが〝
「電脳? お話から推察すると私の故郷の世界にある〝人工精霊〟に似ていますね」
「人工精霊?」
「はい、人為的に造形創出されて作られる人為的な精霊です。通常は物体や器物に宿らせて使役するんです。私の剣のエリュシオも人工精霊です」
「そうだったか。生命体として扱った判断は正しかったな」
そこでルーカスは少し怖い事を口にした。
「実は分析に当たった調査官の一人が分解調査したいと食い下がってな。認めるかどうかで意見が分かれたんだ。しかし生命体の可能性の意見が採択され分解は却下された」
「分解――」
思わずカリナは真っ青になった。そうなったらこの先自分を保てなかったかもしれない。
「案ずるな、傷ひとつ付けていないよ」
「よかった」
カリナの反応にルーカスは苦笑していた。
「そもそも、この世界のありとあらゆる物に大小様々な電脳が内蔵され駆動している」
「ネットワークと端末によって繋がりを保ちながらですか?」
「そのとおり」
落ち着いた凛とした声のあとで、ルーカスはカリナを見つめて告げた。
「カリナ・ウィングスさん、時に――この世界で戦っていく意思はありますか?」
その時、戦場でカリナを保護して声をかけてくれたあのジェイの顔が浮かんだ。彼らが戦ってくれたおかげでカリナは助かった。それが、ルーカスの言葉がそれと重なった。
「その前にお聞かせください」
「何なりと」
「私は元の世界で、人間に仇なす〝魔族〟と戦ってきました。千年余りに渡る魔族との戦乱の歴史の末期に勃発した大戦に勝利し平和を掴みました。ですが、この世界がまだ戦乱の中にあるというなら戦う相手が居るはずです。それについて教えてほしいんです」
そう問うたとき、ルーカスはそれまでにない真剣な表情で向かってきた。
「それを聞いたら後戻りはできないぞ?」
何だそんなことかとカリナは思う。
「故郷の世界では常に戦いの矢面に立ってきました。特別扱いで安寧を貪るつもりはありません」
「そうだ。君は〝勇者〟だったな」
ルーカスは新たに大型のタブレット端末を取り出すと、それを操作して動画を映し出す。それはこの世界での戦闘の光景だった。
「わかるか? この巨大な人型の戦闘機械が」
「これは、この世界で最初に出会った」
「これが俺たち人間の戦力だ。そして、彼らが戦っているのが俺たちの敵だ」
カリナを戦場で保護したあの人型の戦闘に似たシルエットが戦列を組んでいた。その彼らが猛烈な砲火で戦っている。それと対峙していたのはまた別な機械のシルエット。それはもはや人の形すらしていない。
「鉄の獣?」
「獣程度ならどれほどいいか」
それは嘆きの声だ。絶望と悲しみが伝わってくる。
「そんな生やさしい物じゃない」
「えっ?」
映像に視線を注ぐカリナにルーカスが強い言葉で告げた。
「奴らは
アイアンオーダー――即ち、
「〝
その言葉にカリナは戦慄を覚える。
映像の中で人間側の攻撃をものともせずに進軍する異形の機械たち。生物的な動きをしつつもそこに命の暖かさは微塵もなかった。
「鋼鉄でできた侵略者?」
魔族とはあまりに違う異質な存在にカリナはただただ驚くだけであった。