勇者カリナ/未来戦線クロスロード ―魔王を倒した少女は、AI戦争の未来世界で、聖剣精霊と豪剣人機とともに人類を救う―   作:美風慶伍

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第5章:カリナ、傭兵たちと触れ合う
ジェイ、カリナを連れ出す


 日常生活の適用訓練をカリナは見事にこなし終えると、次の段階に入る前として2日ほど休息をもらった。

 カリナは無難なワンピースの部屋着姿で、何をするでもなく自分に与えられた部屋の中でこの世界の歴史の本や、軍事情報などを記した本を施設の図書室から持ってきて読んでいた。

 そして昼過ぎ、本を読み続けるのもそろそろ飽きてきた頃だ。

 

「聖剣はまだ返却されないし、エリュシオとも話せないし――」

 

 まだこちらの世界で生活基盤が出来上がっていない。暇を潰すにも限度がある。さてどうしようかと考えていた時だった。部屋のドアがノックされた。

 

「はい」

「俺だ、ジェイだ」

「あ! どうぞ」

 

 今なら一番来てもらって嬉しい人物がやってきたのだ。丸首シャツにカーゴズボンに野戦用ベストという、いかにも戦闘職らしい装いで彼は現れた。

 

「カリナ! 適応訓練も一段落したんだ、気分転換兼ねて打ち上げに行かないか?」

 

 つまりは外出してお酒のお誘いである。今は管理されてる身の上なので外に出ることは諦めていたのだが予想外のことに素直に驚いた。

 

「え? 外に出ていいんですか?」

「お目付け役の俺が一緒なんだ、何も問題ないだろ?」

「あ、そういえばそうですね」

 

 でもカリナはすぐに別な問題にも気づいた。

 

「あ、ルーカスさんが何て言うか――」

「あいつは硬すぎるんだよ。説明するのに手間食うから見つからないうちにさっさと行くぞ」

 

 手続きを重視する理知的なルーカスと、目的を達成するためにはには手段にこだわらないジェイ。その違いがはっきり現れていた。

 勢い重視のジェイに苦笑しつつも、外を出て歩けるのはカリナにとっても一番の気分転換だった。

 

「分かりました今すぐ着替えます」

「ああ、このフロアのコミュニケーションルームで待ってるぞ」

「はい」

 

 そしてジェイが約束の場所で待っていると15分後にカリナが現れた。

 身につけているのはワンピースでもスカート姿でもない。パンツルックにゆったりとした七分袖のブラウスを合わせていた。さらにその上に薄手のクロークマントを重ねている。彼女なりに必死に考えたコーディネートである。

 

「お待たせしました」

「お? 来たな? なかなか面白いコーディネートじゃないか」

「はい、頑張って考えました」

「いいんじゃないか? 繁華街ではあまり肌を出さないほうがいいからな。それじゃ行こうか」

「はい! どこに行くのか楽しみにしてますね」

「任せろ」

 

 こうして2人は医療施設からこっそりと外に出て、目的の場所へと向かったのである。

 

§

 

 医療施設をこっそりと出ると、通りを流して走っているタクシーを拾った。

 

「新市街区ベイオールのカラキョイまで頼む」

 

 運転手が頷いて答え、カリナとジェイをあるエリアへと運んでいく。

 タクシーはかつてのイスタンブールのボスポラス海峡の入り口で金角湾の目と鼻の先という深い歴史あるエリアへと向かう。

 

【ベイオール・カラキョイ地区】

 

 海に面した場所で、昔からの港湾地区や倉庫街を再開発して生まれた場所だ。

 通りを歩いている人々も若い世代が多く、ややささくれだった空気もどことなく漂っていた。

 目的とする店のすぐ近くで下ろしてもらい、優しくエスコートするジェイに導かれながらカリナはこの歴史ある町の片隅を悠然と歩いていた。

 石畳の街路を歩いて様々な雑居ビルが立ち並ぶバックストリートを2人でそぞろ歩いた。

 様々な飲食店が軒を並べ、路上にもテーブルや椅子が並べられているオープンカフェスタイルである。そうした店で茶やコーヒーや酒を嗜む人々もいれば、席に腰かけた者同士で世間話をしている人々もいた。

 店は真新しいのが多いが、建物自体は古いものが多く、この町の歴史を語っているかのようだった。そんな迷路のような市街地の歩いてカリナはジェイにある場所へと案内された。

 

「ここだ。お前を連れてきたかったのは」

 

 2人が今、たどり着いた場所には、1つの古い雑居ビルがあった。入り口からすぐ階段になっており、そこからはそこはかとなく人の気配と賑やかな喧騒が聞こえてくるかのようだった。

 その階段入り口のアーチ部分には店の名前の看板が取り付けられていた。

 

――ジ・アンバー・ベースメント――

 

 そう書かれておりその意味は〝琥珀の地下室〟――

 

「ここに何があるんですか?」

 

 カリナは素直にジェイに疑問をぶつけた。

 

「お前のこれからに、必要なことを教えてくれる人たちだ」

 

 そう意味深な言葉を彼は残した。

 

「さ、行くぞ」

「は、はい!」

 

 勝手を知ったる風にジェイは堂々と歩き、その後をついていくカリナはどこか腰が引けていた。そんな2人は店のドアを開けて中へと、入って行ったのである。

 

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