勇者カリナ/未来戦線クロスロード ―魔王を倒した少女は、AI戦争の未来世界で、聖剣精霊と豪剣人機とともに人類を救う― 作:美風慶伍
カリナは落ち着いた口調で語り始めた。
「ここだけの話ですが――、私、この地球世界とは別の世界から漂着してきた人間なんです。そこで魔王軍を相手に6歳の頃からずっと戦ってきました。幼い頃に強制徴用されたんです」
老バーテンダーが問いかけてくる。
「少年兵か?」
「はい、戦闘適性で強引に選ばれたんです。それから剣を持たされてずっと戦場です」
カリナの語る言葉に男たちはあっけにとられていた。話だけを聞けば荒唐無稽な妄想話しか聞こえない。しかしその手のひらの跡があまりにもリアルで、彼女の語る言葉を妄想と一蹴できないのだ。
「マジか――」
「あの噂本当だったのか?」
「あれだろ、戦場で身元不明の女性を保護したって話」
「状況的にどっから来たのかわからないって対応を検討してるって聞いたが――」
そこでジェイが言葉を添えた。
「その噂話でほぼ間違いない。彼女は別世界から次元の壁を越えてやってきた漂着者だ。戦歴は全て事実、剣を握りながら世界を脅かす魔族とそれを率いる魔王の軍勢と10年以上やり合ってきた」
「本当かよ?」
「ああ、保護された時、新しい傷や古い傷、体中がガタガタだったんでセントラル医療施設で治療を受けていた。それが終わってこっちの世界に慣れるための適応訓練を受けてやっと自由になったってわけさ」
ジェイの言葉を否定せずカリナは終始うなずいていた。ジェイが一緒にいるからというのもあるだろう。その堂々とした態度を男たちは受け入れ始めていた。
「どうやら本物だな」
「ああ、人は見かけによらんて本当だな」
「疑って悪かった!」
「今日は俺たちがおごる!」
彼らの言葉にカリナは笑顔で頷いた。
「ありがとうございます!」
そこから彼らのにこやかな対話が始まろうとしていた。
§
そこからそれぞれに自己紹介が始まる。
彼らは傭兵――、レオンやジェイと同じような立場だった。
機械軍アイアンオーダーが繰り出す戦力クロムハウンドを相手に、自ら愛機のヴァンガードで戦っているのだ。
「この店は俺らみたいな傭兵のどものたまり場でね。都市内部での仕事や、休暇期間の時に、顔を出しては仲間たちと酒を傾けてるんだ」
「そうだったんですね――では今は休暇ですか?」
「ああ、3ヶ月間、都市外部の遠隔地の駐屯基地で警戒任務をしていた」
「熾烈な戦闘はあったがなんとか死なずに帰ってこれたよ」
魔王軍との戦いという強烈な過去を持つカリナは男たちの語る言葉の意味がよくわかった。
「戦場に赴くとき、たくさんの仲間と戦地に向かいます。10人が戦場に行ったとして帰ってくる時も10人だとは限りませんよね」
「そうだな――、無言の帰宅ってやつさ」
「でも、戦場に感傷は存在しないからな」
「そうですね、事実だけが結果につながりますから」
そしてカリナはグラスを掲げてこう言った。
「戦場の命に乾杯――」
その言葉にも男たちは――
「ありがとう」
「ようこそ、糞ったれな世界へ!」
「歓迎するぜ!」
そして男たちとも乾杯を交わしたのである。